見学会レポート
高温メタン発酵式有機性廃棄物処理システム [METAKLES]

最終更新日 2000年 1月 6日

市民ごみ大学に触発されて
 市民ごみ大学『第三回 時代はもうごみゼロへ・・・・・・生ごみの多様な資源化』が99年9月25日に開催された。
ここで新百合ヶ丘ビブレ店・次長 田浦 茂さんが実践報告として鹿島建設(株)・技術研究で開発された『高温メタン発酵式有機性廃棄物処理システム』の導入とその成果を発表されました。
 この講演に触発されてごみかん主催の見学会が11月26日に開催されました。当日京王線・飛田給駅前にある(株)鹿島・技術研究に集合、予定を大幅に上回る40名強の参加者がありました。システムの説明、見学、そして予定時間を1時間も超えての熱心な質疑応答が行われました。
 見学会で得られた情報を選択して概要を紹介します。報告の内容に誤解や間違いの可能性もあり、新しい技術のため日々更新されることが予想されますので、より正確に知りたい方は鹿島・建設総事業本部 エンジニアリング本部 環境技術部(п@03-3746-6919)へ直接お尋ね下さい。

見学したシステムの概要
 見学したシステムは『NEDO平成10年度即効型提案公募事業』に選ばれ研究中のシステムであった。今回の研究のポイントは発生したバイオガスを燃料電池に供給して安定した稼働を実証することにあるとのこと。 実験は年内で終了し年度内に報告をまとめ終了の予定である。

主要な実証実験システムの仕様
◇ 生ごみ投入量     200s/日
◇ 発電実験       バッチ運転(4〜6時間/日)
◇ バイオリアクター   3立方メートル
◇ ガスホルダー     50立方メートル
◇ 燃料電池       50KW(リン酸型)
◇ 発生バイオガス    40立方メートル/日
◇ 発電量        1トンの生ごみから約580KWh
の電力を発電出来る

 高温メタン発酵式有機性廃棄物処理システムは連続運転をしているが、連続発電は行っていない。また短期的な実験で電力事業法の関係もあり、所内使用・売電はせず疑似負荷装置に供給(消費)している。下のシステムの全体フローでは(系統連系)と商用電力網との接続機能が書かれている。この機能を持てば所内使用・売電が可能となる。

システムの説明

システムの全体フロー …… (株)鹿島・パンフレットより

生ごみ分別機
 投入された生ごみに高い圧力をかけて押し潰し、混入しているプラスチックなどを取り除く装置。
前掲のシステム全体のフローでは省略されているが異物は除去され廃棄される。

ここでは僅かに混入している異物を取り除くのが目的で、排出時に十分な分別が必要である。今回の実験では分別が徹底している生ごみを使用したため、取り除かれた異物は投入した生ごみの1%以下の実績であった。このシステムを担当されている部長さんからも分別の大切さが強調された。

生ごみ粉砕器
 投入した生ごみに同量の希釈水(200リットル)を加え砕いて流動性の高いスラリーにする。

スラリータンク
 細かく砕かれたスラリーを蓄える機能のタンクである。生ごみ粉砕器とパイプでループ状に結合され、スラリーは常時このループを循環して何度も生ごみ粉砕器を通り細かく粉砕される。
 実験プラントではパイプの一部が透明になっていて、スラリーが循環している様子が目視できた。

バイオリアクター(反応器)
 本システムの心臓部、外気を遮断して高温を保った中でメタン発酵菌等の他種類の嫌気性菌が活動して有機物をメタンガスと二酸化炭素と水に分解する装置。

バイオリアクター内部…パンフレットより
メタン発酵菌ばかりでなく生ごみなどの有機質をメタン発酵菌が使える酢酸などの低分子に分解、変換する微生物もバランス良く共存して1つの系を構成しています。
タンクの中には炭素繊維で作られたパイプが縦に配置されている。炭素繊維が複雑に絡まった間隙に他種類の微生物が棲み着き活発に活動している。

 この中を55℃に保たれたスラリーが循環する。
 中温発酵(37℃)に比較して高温発酵(55℃)では約2倍の活性(2倍のスピードで有機物を分解する)を示すという。
 1日40立方メートルのバイオガスが発生する。
バイオガスの主要な成分はメタン(CH)、二酸化炭素(CO)である。
成分比の平均値はメタン 65%、二酸化炭素 35%である。
 バイオリアクター内の高温を維持するために発生したバイオガスの一部を燃料として使用する。
前掲のパンフレットでは燃料電池で発生する熱を利用する様に書かれている。いずれの方法も可能であろう。

脱硫塔
 生ごみに含まれる硫黄分から発生する硫化水素(HS)などがバイオガスに含まれる。硫化水素を取り除くために脱硫塔に導かれ酸化鉄により脱硫される。酸化鉄は硫黄分と化合して硫化鉄に変化する。1トン/日の処理をして年間500sの硫化鉄が排出され、産廃として処理される。
 燃料電池で発電を行うには硫化水素以外にも微量に含まれる可能性のある不純ガスを除去するため活性炭も充填されている。

精製塔
 バイオガスに含まれる35%の二酸化炭素(CO)を苛性ソーダにより取り除き濃縮される。濃縮されたバイオガスを燃料電池に供給する。なお、濃縮しないでも使えるので必須の装置ではない。

ガスホルダー
 バイオガスを一時蓄えるための球形のガスタンク。発電は電力の需要の変動に応じて変化させる必要があり、またバイオガスの発生量/質の変動がある。これらの変化を吸収するために必要である。 容量は50mである。

燃料電池
 水素ガスと空気を電解質の中で反応させて電気を発生させる装置である。エネルギー効率の高さと非燃焼のため排気ガスがクリーン(水)のため注目されている。需要地の近くでの発電と廃熱利用(コジェネ)によるエネルギー効率の向上、また自動車の排ガス問題を解決する技術として開発・実用化が進められている。
 見学したシステムでは富士電機製のリン酸型、50KWが使用されていた。

◇ 燃料電池の原理
 改質器でメタンガスを分解して水素ガスを発生させる
 触媒と750℃の温度下でメタンガスと水蒸気を反応させる
 ☆  CH +2HO → 4H + CO
 改質器で出来た水素ガスを燃料電池に送り以下の反応をさせる
 ☆  2H + O → 2HO + 熱 + 電気エネルギー

排水処理
 バイオリアクターでの発酵処理後の排水には有機物が残存している。二次廃水処理として活性汚泥方と膜濾過を組み合わせた浸透膜活性汚泥法を採用している。ここでは好気性処理であり、必要な酸素を供給するため空気をブロアーにより吹き込んでいる。

◇ メタクレスの処理水質と除去率

 生ごみ
(加水・粉砕後)
高温メタン発酵
処理後
二次処理後 除去率
 化学的酸素要求量
 (T-CODcr)
130,000r/l25,000r/l300r/l99.76%
 生物化学的酸素
 要求量(T-BOD)
91,000r/l10,000r/l20r/l99.98%
 浮遊物質(SS)45,000r/l8,500r/l0r/l100%
高温メタン発酵式有機性廃棄物処理システム・パンフレットから引用

バイオガスの利用方法
 今回見学したシステムは発生したバイオガスを燃料電池に供給して発電する方式であるが、バイオガスの利用方法として次の3方式が考えられる。

@ ボイラーの燃料ガスと利用する
 ボイラーの燃料として使い、温水や水蒸気を得る。温水や蒸気を必要とするケースは多く、建設費も安価である。ごみ大学で実践報告にあったように(株)マイカルの新百合ヶ丘ビブレ店、明石店に導入され順調に稼働している。

A ガスタービンの燃料として利用する
 ガスタービンの燃料として使い、発電機を回して発電する。

B 燃料電池の燃料として利用する
 騒音、臭いなどの問題が無く優れた方式である。まだまだ解決すべきポイントは存在するとは思うが、最大の問題は燃料電池のコストの高さにある。コストに関しては多くの分野で燃料電池への期待が大きく、機関で開発・実証試験が行われている。また、大量生産される自動車への利用を巡って自動車産業が実用化に力を入れているので、近い将来解決の解決が期待されている。

各方式の特徴

エネルギーの発生方法発電効率コスト環境影響
 ボイラー燃料 燃焼
 ガスエンジン発電 燃焼
 燃料電池発電非燃焼
高温メタン発酵式有機性廃棄物処理システム・パンフレットから引用

 

考  察
 生ごみをメタン発酵し得られるバイオガス(メタンガス)をエネルギー源として活用する方法は余り知られていない。堆肥化して農地に還元する方法と共に有力な方法であると思う。
 処理が生物処理によって行われるので環境負荷が少なく、かつ騒音や臭いの問題も少ない。堆肥化によるリサイクルは生ごみの発生量の多い都市部では堆肥のニーズが少ないとの問題がある。また、生ごみから作られた堆肥を農家に安心して使って貰う品質の保証という問題もある。
 一方、バイオガスをエネルギー源としての発電は電力需要の大きい都市部で行えるので長距離の送電が必要なくなり、温水や水蒸気の需要も大きい。発電と同時にエンジンや発電機、燃料電池から出る廃熱を温水や蒸気の発生に利用(コージェネ)できるので総合エネルギー効率が高くなる。
 既存の火力や原子力発電のように大規模な施設ではなく、環境負荷も少ないことから都市部での立地が容易である。ボイラーの燃料として利用し、温水や蒸気を得るシステムは更に容易に建設することが出来る。この様な利点を活かして新百合ヶ丘ビブレ店では店舗の建物の中に組み込んで稼働させている。

 この様に有機性廃棄物をバイオガス化し燃料として利用すれば、化石燃料を使った冷暖房を減らし、化石燃料や原子力エネルギーを使った発電を減少させる事が可能である。これにより地球温暖化原因物質である二酸化炭素の排出を減少させ、もっと処理の困難な使用済み核燃料問題を軽減する効果まである。

 生ごみなど有機性廃棄物を埋め立てた場合、地中で嫌気性メタン発酵が生じメタンガスが大気中に方出されます。メタンガスの温室効果は二酸化炭素の十数倍と言われています。この様にメタンガスを大気中に放出することなく、有効利用する意義はこの点にもあります。

 メタクレスでは生ごみ1トンから580KWhの電力が得られる。平成8年厚生省調べによると食品廃棄物は年間14.6百万トンに達する。この廃棄物を全部このシステムに投入したと仮定すると

14.6×10×580 = 8,468×10 KWh の電力が得られる。
1世帯当たりの年間消費電力を3,000 KWhとすれば
8,468×10÷3,000 ≒ 2.8×10  すなわち 2百80万世帯の電力需要を賄うことが出来るのである。

 更にコージェネで廃熱も利用すれば『生ごみ発電施設』の近くの住宅や福祉施設などに温水を供給したり、 各市に温泉(正しくは温泉と言えないが)を作れば市民の憩いの場になる。

生ごみ問題の解決、エネルギー資源の節約そして楽しいことが出来るシステム

 夢のない時代と言われる昨今、2000年の初夢として素敵ではありませんか!
物質循環の観点で
 ☆ 水と二酸化炭素 → 有機物の合成 → 食糧 → 一部が生ごみ
 生ごみのもとは植物、植物は根から吸収した水と空気中の二酸化炭素を気孔から取り入れ、太陽のエネルギーにより各種の有機物を作り出す。これがそのまま食糧になり、家畜の飼料を経由して食品になる。この一部が生ごみとして廃棄される。

 ☆ 生ごみの発酵 → メタンガス → 水と二酸化炭素
 一連のプロセスで二酸化炭素が発生するので地球温暖化の問題があると勘違いをする人が居る。二酸化炭素は発生するが、1年から半年ほど前には空気中にあった二酸化炭素が再び空気中に放出されるだけで、空気中の二酸化炭素は少しも変わらないのである。

エネルギーの流れの観点で
 植物が有機物を作るエネルギーは太陽の光のエネルギーである。このエネルギーが有機質に蓄えられる。
生物はこの有機物を分解したときに得られるエネルギーを利用して生命活動を行っているのである。
 メタクレスは利用されないで捨てられた有機物である生ごみをメタンガスに分解し、このエネルギーを利用しているのである。言い換えれば太陽のエネルギーを使っていることになるのである。

 生ごみを発電に利用できるからと、どんどん捨てて良いのではありません

年間14.6百万トンの生ごみ、せめて半減しましょう!


 本ページには(株)鹿島・高温メタン発酵式有機性廃棄物処理システム [METAKLES]のパンフレットから一部引用(引用の記述のある部分)しました。文責は『ごみかんWeb Master』にあります。


(株)マイカルの新百合ヶ丘ビブレ店での実践報告は

市民ごみ大学 連続セミナー ’99  実施報告 2

第三回 時代はもうごみゼロへに掲載してありますので参考にされたい。


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