市民ごみ大学セミナー’99 実施報告


第三回 時代はもうごみゼロへ ・・・・・ 生ごみの多様な資源化
開催日 99年 9月25日
 

講師の方々の実践報告
 

基 調 講 演

内野  滋一さん(東大和市自然農法研究会・代表)

土は命の源 自然農法の実践
 自然農法に取り組んだ原点は、東京農業大学(土壌学)の横井先生の『土は総ての生物の生命を保つ場所である』という言葉でした。
そのためには、土が健全でなくてはならないと考え、
7年前に一切の化学肥料・農薬の使用をやめて堆肥のみによる栽培方式に切り換えました。
 平成6年9月、9人の仲間と東大和自然農法研究会を立ち上げ、堆肥作りと学校給食残菜利用の研究に取り組み始めました。2年後には、東京都の都市農業プラント化推進事業に参画して堆肥プラントと農産物共同直売所を建て、落ち葉と給食残菜と水だけを使った腐葉土づくりを始めました。
 現在、仲間は14人となりコーヒー滓、ウーロン茶滓、剪定枝チップなどの堆肥化も研究しています。

化学肥料のもたらしたもの
 20世紀初頭に登場した化学肥料(チッ素、燐酸、カリ)は食糧の驚異的な増産をもたらし化学肥料神話を生み出しました。
しかし、自然の摂理に反した生産はこの百年の間に農地の死減、砂漠化を招いてしまったのです。消費者とともに生産者の健康も脅かす農薬も、この農業形態の中から多用されるようになりました。
 植物はチッ素を過剰に吸収し葉に蓄積するので、それが害虫を呼び『殺虫剤』が必要になります。化学肥料が農薬を招くのです。『殺菌剤』も土中の微生物が正常に働けば病原菌はおさえ込まれて本来必要のないものです。『除草剤』については、それに代わるものは手作業しかありませんが。

総ては土作りにある
  農地も畑になる前は林や森で、土の中の多くの微生物が生態系を保っていました。
土作りとは畑に第二の生態系を作ることです。堆肥を畑に入れると小動物や微生物が大繁殖し、それらの生活活動が盛んに行われます。
その結果、土が粒団構造となって通気性と排水性が良くなり、根は土の中で生き生きと活動するようになります。こうして、健全な野菜が作られるのです。

地域循環型のまちづくりに向けて
  東大和市で<家庭の生ごみの堆肥化>に向けて画期的なプロジェクトが動きだしています。
まず実験的に生ごみを堆肥化し農地に入れ作物を作り地域に供給する、ゆくゆくは市内の農家に広げていく
・・・・・・こんな構想の下で行政組織のなかに横断的チームをつくり、ごみ対策と都市農業をつなぐ活動を開始しました。


実 践 報 告 1

酒本 良平さん(千成産業株式会社 代表取締役会長)

まちのいろんな生ごみが堆肥に生まれ変わる
 有機肥料と園芸用土の製造をはじめて30年になります。
生ごみについては、業界の新聞に取り上げられたのがきっかけで、一次処理したものの堆肥化を処理機メーカーから依頼されたのが始まりです。
 生ごみ堆肥は2タイプあり、Aタイプのぼかし肥料は保育園、学校等の小規模のもので、花壇などに入れられたり無料配布されています。
豊島区では226の公共施設から出た生ごみを回収・一次処理し(民問委託)、当社で油粕、鶏糞などを加えて肥料にしたものを「豊有機」という名前で市内販売しています。
 Bタイプは、コーヒー滓、牛糞、鶏糞など加えた農家むけ堆肥です。
コンビニチェーンのローソンでは神奈川県下の230店舗で発生した賞味期限切れの弁当を回収しています。中間処理の業者が人海戦術で包装材を分別、生ごみをコンポスト化します。それを当社で堆肥化しています。
堆肥は契約農家で野菜の栽培に使用され食材となって再び店頭に並びます。
 最近は生ごみ堆肥に対する許可条件が厳しく分析試験を受けています。生ごみ以外の廃棄物については、水道局から発生する残き、し尿焼却灰、ゴルフ場で空気清浄用に使った活性炭などを培養土や堆肥にしています。


実 践 報 告 2

田浦 茂さん (新百合ヶ丘ビブレ店 次長)

世界初、ショッピングビルに生ごみ処理システムを導入
店は1つの町“タウン構想”として環境問題に取り組む
 話に入る前にビデオで生ごみ処理にの実情を見ていただきました。今日は皆様の貴重な時間を頂戴して、小売業の現場でどの様にごみ減量化に取り組んでいるかを紹介したいと思います。
 (株)マイカルは営利目的の企業でございます。企業がどの様にごみ減量に取り組んでいるか、紹介していきます。新百合ヶ丘ビブレは小田急線の新百合ヶ丘駅前に97年8月にオープンしました。
 進出に当たり、川崎市が公害問題で苦労してきた町であり、このことを踏まえて地元の方々といろいろ相談しながらオープンしました。生ごみの資源化・リサイクルにも真剣に取り組まなければならないのです。
 我が社は“タウン構想”を基に事業を進めています。これは店を1つの町になぞらえ、店という町が活動すると必ずごみが出てきます。このごみを町の外に出さないようにすると言うことです。このために多くの企業の協力を得て実現していきます。
 先ほどビデオで紹介しましたものは鹿島建設の開発したプラントであります。当時はまだ研究所で研究している段階にありました。このプラントを初めて事業所の中に取り組んだのです。新百合ヶ丘に導入した機械が元祖で、世界で初めて実用化しました。続いて明石に2ヶ月遅れでオープンした店にも同じ機械が設置されています。

生ごみの減量努力でプラントに余裕が生まれた
 この機械をまる2年間稼働させてきましたが、上手に費用を圧縮する道具なんだという発想もあり、今までは積極的にPRはしていませんでした。初めての実用化というので心配もありましたが、結果は100%稼働しています。
 このプラントは1日に1トンの生ごみを処理する能力を持っています。しかしながらお手元の資料の「リサイクル実績表」に月別に処理した生ごみの量が書いてあります。例えば98年9月の処理量は6,065Kgとなっています。1日に換算すると200Kgです。
 1日に200Kgしか生ごみが出てこないのです。新百合ヶ丘ビブレは地上7階、床面積7,000坪ございます。食品関係の店舗の占める面積が1,300坪、食品関係の売り上げが年間65億円、ここでは総菜も売っていますし魚屋、肉屋などが揃っています。ここから出るごみが200Kg、同業他社に比べると1/5程です。
   当然売れ残りや期限切れで廃棄する物もありますし、野菜などは要らない部分は全部取り除いて売りますので生ごみとして出てきます。これらを全部たして200Kgしかでないのです。
売れ残りのごみを出さないためには、夕方6時に100%品揃えをしたら、その後一切作らないで売りきってしまいます。この様にごみを出さない方策を工夫し徹底した結果こんなに少なくなったのです。
 この様なことで機械の処理能力は日量1トンあり、毎日1トンのごみが出ても全部処理できるのですが、残念ですが? 20%でしか稼働していません。このようにして生ごみは総て店の中で処理しています。情報として川崎市に処理の実績を報告しています。
 この装置ではメタン発酵の後に残さが5%ほど出ると言われていますが、2年間稼働させていますがまだ1度も取り出していません。発酵の結果1日39立方メートルのバイオガスが出来ます。
このガスは処理システムのタンクを暖めるエネルギーや店内の清掃用の温水を作る熱源に使っています。
 200Kgの生ごみに200リットルの水を加えて発酵させると390リットルの水が出来ます。この水は植木の散水に全部使っています。

生ごみ処理方式には立地により3つの選択肢がある
 PRになりますが、普通では生ごみは焼却処理するのですがマイカルグループの“タウン発想”で処理しているのです。この構想には3つの選択肢があります。
都市部ではここで紹介した「メタン発酵処理装置」、もう一つ郊外で農家と連携できるところでは「コンポスト化装置」があり福島の店で実際にやっています。
もう一つは「炭化装置」、生ごみを炭にしてしまう。出来た炭は土壌の改良材として高速道路のグリーンベルトに使われています。
 現在マイカルグループには130程の店があります。今後出来る新しい店はこの3つの方法を採用するか、また新しい技術が開発されればこの技術も積極的に取り入れていくことになります。

その他のごみの資源化
 配布させていただいた資料の「リサイクル実績表」によると生ごみが年間60トン、段ボールが534トン、びんは6.5トン、缶が32トン、ハッポー処理機によって20トンの発泡スチロールの資源化も実施しています。発泡スチロールは原材料として1Kg3円でメーカーが買い取ってくれます。その他ここに挙げた物は材料として業者に引き取ってもらった実績数字と理解して下さい。
 牛乳パックやペットボトルの回収も実施しています。生活者に一番近い企業として、お客さんが持ち込んだ牛乳パック等は全店から集めます。
集めますと何十トン、何百トンの量になります。この様な量になりますと古紙業者もお金を持って買いに来てくれます。30や40個ですとこちらが持っていって処理してもらうことになります。
 回収の方法は商品の配送のトラックは帰りが空車になります。この空車に乗せて流通センターに集め、古紙業者に引き取ってもらいます。

「地球にやさしい、人にやさしい」がキャッチフレーズ
 マイカルでは「地球にやさしい、人にやさしい」をキャッチフレーズに環境問題に取り組んでいます。お客さんと共に活動した成果は皆さんに還元させていただくと言う趣旨で、回収した牛乳パックを売ったお金は、1年間まとめそれぞれの店にキックバックされます。
 新百合ヶ丘店では年間7万5千円にもなり、お金は川崎市麻生区の社会福祉協会に「お客様の回収した牛乳パックの売り上げ」として寄付しています。
 つい先頃、隣の国で大震災が起こりました。マイカルの本社は大阪にあり、神戸の地震の時は被災者の方々のご苦労を目の当たりにしてきました。震災で困るものに飲み水が無いことです。神戸ではペットボトル入りの飲料水を買いに多くの人が駆け回りました。
 新百合ヶ丘店のオープン一周年に地元の方々に貢献できることとして、本社と掛け合い井戸を完成させました。新百合ヶ丘店は周辺の5万8千世帯を商圏と設定していまして、最小限でも1世帯1日2リットルのボトル5本の飲み水が必要です。
 万一の地震に備えて生活者に一番近い企業としていつでも水を配れる施設として整えました。井戸も一基でなく三基掘りました。深さ120メートル、150メートル、220メートルの合計三基です。
 川崎市の給水車を待ちますか?それともペットボトルを買いに走りますか?もしも水に困ったらポリバケツを持ってビブレに来て下さい。とお客様に話しているのです。
 生ごみの処理機を現物を見ながら説明するのが一番良いと思います。中学生、高校生の皆さんも見学に見えています。機会がありましたら皆さんにも見ていただきたいと思っています。


実 践 報 告 3

秋山裕司さん (国分寺市環境部生活環境課)

国分寺市の生ごみ自家処理施策
  国分寺市は<生ごみの自家処理>に重点をおいている。
平成3年からコンポスターのあっせん(計975基)、6年度には市と業者が共同でべランダにも置けるコンポプランター『花工房』を開発・あつせん(846基)、11年度には共同開発新製品『ごみけしくん』のあっせんを開始した。
独自開発により助成金を交付する以上市が後まで責任を持つ、という態勢を実現できた。
 あっせんだけに終わらせないで、自宅への訪問指導、意見交換会の開催、生ごみ処理相談日の開設、詳しい使用説明書の作成・配布などアフターケアに力を入れている。
今後は市民専門家の養成、庁内の横断的取り組み、排出抑制策の検討などを課題としていく。


ディスカッション

●メタン発酵システムについて(答える人・・・・田浦さん)
Q: 面積、経費などについてもう少し詳しく・・・・
A: 建物に組み込まれているので、設備のみのサイズを示すのは難しいが、投入口が8坪、高さ3.5メートル、投入物は40トンの圧力をかけて粉砕、同量の水とともにパイプラインで地下3階のタンク(16リューベ)に運ばれ7日後にガス化する。
このガスをエネルギー源として発酵タンクを55℃に保っているので、ランニングコストは水以外ほとんどかからない。運営経費としては、持ち込みした人が投入・セットする方式で、洗浄などに月75万円がかかっている。

Q: 処理水と残さはどうしているのか
A: ガス化した後の処理水は下水道に生放流できる程度になる。植木の散水に使っている。
残さは5%出ると言われていたが、いままで一度も取り出していない。

Q:処理能力に余裕があるが、他の生ごみを受け入れる予定は?
A:分別が完全にできていないものは受け取れない。微生物にとって混入物は命取り。
『生ごみ処理』ではなく『リサイクル』の発想に立つ必要がある。導入するにあたっては、パートの方に至るまで徹底した研修をした。

●生ごみ堆肥の成分で気になること
Q: 食品中の塩分の問題は?
A:(酒本) 生ごみだけだと1.7%ほどになるので骨粉、油粕等を混ぜて0.2%に調整する。使用する生ごみの比率は最高でも2割。
油分の方が問題で、県の指導で頻繁に切り返して飛ばしている。
(内野) 露地栽培に使う場合は、塩分は雨で流れるので問題ない。施設栽培では蓄積するかもしれない。

Q: 残留農薬についての心配は?
A: (内野) 微生物を使つて「ぼかし堆肥」にする過程で日数がかかり、問題ないのではと推定している。


前のページに戻る
ページトップへ