ごみを減らす法律に変えよう!
徹底討論!容器包装リサイクル法(1)
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今号の「ごみっと・SUN」は、従来の“特集”の枠を超え、3月14日(日)東京都・国分寺市Lホールで開催したシンポジウム「ごみを減らす法律に変えよう!徹底討論・容器包装リサイクル法」のダイジェスト版を、大特集としてお届けします。
「容器包装リサイクル法(容リ法)」は、対象が誰にも身近な容器包装ということもあり、改正に向けた取り組みが全国的に広がっている。
「拡大生産者責任」「発生抑制」「循環型社会」など今後のごみ処理を示唆するキーワードがやっと具体的に語られ始めた感がある。
今回のパネルディスカッションには「容リ法」に各々の立場で関わる4名のパネリストをお迎えし、120名を越す多くの方々に参加をいただいた。
率直な発言を通じて、容リ法の論点がより鮮明になり、新たな情報を得て、相互理解を深めることができた。また議論の手応えを多くの方と共有できたのは、大きな収穫であろう。
自治体のごみ行政を左右する改正へ向け、「合意形成」を図るための公正な議論が今後も積極的に行なわれることを期待したい。
 | ◆ 自治体から 山田 宏 さん 東京都・杉並区 区長 |
 | ◆ 事業者として 公文 正人 さん サントリー(株)環境部長 |
 | ◆ 容器包装リサイクル協会から 土居 敬和 さん (財)日本容器包装リサイクル協会 広報部長 |
 | ◆ 環境省から 藤井 康弘 さん 環境省廃棄物・リサイクル対策部リサイクル推進室長 |
| ◇ コーディネーター 服部 美佐子 ごみ・環境ビジョン21 |
コーディネーターの服部です。 私は現在「容リ法の改正を求める全国ネットワーク」の事務局をしています。まず初めに市民サイドからの問題提起をさせていただきます。
容リ法は1995年に制定され、97年から運用されておりますが、施行後10年に見直すことが法律の附則に書かれています。改正ネットには全国約200団体が参加し、05年頃には始まるであろう政府の検討に合わせて国民の声を届けようと請願署名に取り組んでいます。
多摩地域では最終処分場への搬入規制が厳しく、リサイクルにはとても熱心ですが、現行の容リ法は自治体負担が重いため「リサイクル貧乏」という声も聞こえています。
先日、渋谷区の職員に聞いたところ「ペットボトルは店舗回収しかできない」ということでした。
ステーション回収をするとお金が掛かり過ぎる、というのがその理由で、不燃袋に小型ペットがかなり入っているそうです。
請願署名の主な改正のポイントは、リサイクル費用、つまり静脈コストは産業界で担うこと、またごみになるものは作らない仕組みを作ることです。使い捨て容器包装のリサイクルにお金をかけるのではなく、使い捨て容器自体を少なくしていく法律に変えたいと思います。
今日は各々の立場で容リ法に関わっていらっしゃるパネリストをお迎えしました。いよいよディスカッションに入りますが、あくまでも議論を深める場です。vs霞ヶ関、vs産業界など対立を深める場ではありません。誰より私自身が一番気をつけて進めていきたいと思います。(笑い)
まず、初めは杉並区の山田区長です。 杉並区ではレジ袋税条例をつくり、削減に取り組んでいますが、反面、不燃ごみ中継所周辺で発生した「杉並病」の問題を抱え、特にプラスチックに関しては頭を悩ませつつ新しい試みもしているという注目すべき自治体です。
私は実はここ国分寺市の三中の卒業生です。
杉並区でペットボトルの収集はH10年から始めて、全体の1/4は回収、3/4は不燃か可燃になっています。費用的に4分の1しか集められません。
処理コスト比較をすると、可燃ごみがトンあたり約4万円、不燃が7.5万円、ペットボトルは約19万円で可燃ごみとして処理した方が安いです。税の使い方からすると、どうかと思います。
また立地条件の法的な問題もあり、集積所や中間処理施設も造れません。燃やしてしまったほうがいいとさえ思います。片方は作りっぱなしで処理する人はごみをかぶるだけ。 容リ法でリサイクルは増えましたが、税の負担がどんどん増えて、このままでは続かないのが現状です。
行政の厳しい実情の後にサントリーの公文さんになってしまいましたが(笑い)、まずはご出席を快くお引き受けいただき、ありがとうございます。(拍手)
平素は当社の商品をご愛飲いただきありがとうございます。(笑い) 「環境レポート2003」で容器に対する活動についてご説明します。
ビール事業では約6割の商品がリターナブル容器使用となっています。洋酒の一部にも直接回収を行いリユースしている商品がありますが、良質な回収空容器が少ない為リユースが難しく、悩んでおります。容器のリサイクル率は、びん、アルミ、スチールが80%以上、ペットボトルは事業系を入れると50%以上になっています。
当社の商品のほとんどは液体のため、容器を使用せざるを得ません。 そのため、容器のライフサイクルすべての段階で責任を持たなければいけないと考えています。 まず商品設計の段階でリデュース・リユース・リサイクルを十分配慮しているか、無害であるか、高齢者にも対応できるか、原料調達段階・生産工程でもそれぞれ環境に配慮しています。
消費後の容器に関しては、現行のリサイクル法に則って、責任を果たしています。軽量化はアルミ、スチール缶は限界まで来ています。ペットは軽量化により3年間で1万tを削減しています。
今年から導入されるペットボトルの「ボトルtoボトル(BtoB)」の技術が今後のリサイクルを変える大きな要素になります。 ペットからペットということで、アルミ缶と同じようにペットボトルが循環し始めます。 使用済みペットの需要が大きくなり、回収量が不足してきますと、ペットボトルも有価で回り始め、 アルミ、スチールと同じように容リ法の対象から外れる可能性が見えてきます。当社ではこの再資源化素材を積極的に使用する予定です。
また事業系のガラスびん自主回収ルートも整備しています。最後に、メーカーだから消費者だからではなく、環境を考える立場としては、環境負荷を最小限にし、かつ社会的コストが増大しない手法を常に皆さんと対話をしながら進めていきたいと考えています。
ペットボトルの「ボトルtoボトル(BtoB)」 リサイクルされたペットボトルを原料にして再び食品用のペットボトルを作ること。 ペットボトルの素材であるPET樹脂は原油を分解したナフサを原料に作られている。 一方、リサイクルされたペットボトルは繊維やシートに加工されて衣料品やブルーシートなどの原料として使われている。 回収されたペットボトルを化学的に分子構造まで分解(解重合)して、再び化学反応(重合)させてPET樹脂を作り、食品用ペットボトルに再生すること。 2001年5月公的に認められ、2004年5月から実用化が見込まれている。
容器包装の定義
容器包装リサイクル法で対象になる主な「容器」「包装」は@ガラス製容器、APETボトル、B紙製の容器包装、プラスチック製容器包装です。
スチール缶、アルミ缶、紙パック、ダンボールの4アイテムはすでにリサイクルが進められているなどの理由から、特定事業者に再商品化を義務付けていません。
公文さんの発言はPETボトルも商業ベースのリサイクルシステムが可能になれば、容器包装リサイクル法の義務からなくなる可能性がある。ことを指していると思います。 |
続きまして「財団法人容器包装リサイクル協会」の土居さんです。容リ法協会についてはあまりご存じない方もいらっしゃるかと思います。私も初めてお話を伺います。
15年度、特定事業者数は67,000社、再商品化委託総額は約550億円です。これを再資源化業者に流していくことで、強制的に循環の環が動き出すという仕組みになっています。
次にどれぐらいの量が動いてきたのか、関わる主体はどのぐらいか全国的にみてみます。特定事業者数は97年の500、03年は67,000社。再商品化委託単価は01〜03年にかなり減っています。特にPETは安くなっています。
リサイクル業者が増えて、競争したため、入札単価が下がったのです。次に引き取る市町村の数ですが、97年は約850で03年は約2700で、全国3,200の8割を超えるまでになっています。
再商品化委託単価の推移 (円/kg)
| 平成10年 | 平成11年 | 平成12年 | 平成13年 | 平成14年 | 平成15年 |
ガラスびん 無色 | 1.8 | 2.5 | 4.2 | 4.0 | 3.6 | 3.0 |
茶色 | 2.9 | 4.4 | 7.7 | 7.7 | 7.8 | 5.7 |
その他 | 55 | 63 | 81 | 91 | 91 | 86 |
PETボトル | 101.8 | 95.1 | 88.8 | 83.8 | 75.1 | 64.0 |
紙 | | | 58.6 | 58.6 | 42.0 | 25.2 |
プラスチック | | | 105.0 | 105.0 | 82.0 | 76.0 |
(財)日本容器包装リサイクル協会発行資料より
容器や包装材を利用する中身の製造事業者、商品を販売する際に容器や包装材を利用する小売・卸売り事業者、容器の製造事業者、容器包装に入った商品の輸入事業者、容器を輸入する事業者と呼び製造量、販売量に応じたリサイクル(再商品化)を義務付けている。 実際は日本容器包装リサイクル協会に再商品化を委託し「委託料」を払うことにより義務を果たしている。
指定法人=(財)日本容器包装リサイクル協会
特定事業者に代わって再商品化を行う。
具体的には市町村などの保管施設から分別基準適合物を引き取り、「再商品事業者」に委託料を払って(年度毎に入札で決める)再生処理を委託します。
再商品化事業者
「指定法人」から委託を受け保管施設から「分別基準適合物」を引き取り再商品化を行い、再処理製品の販売も行います。
再商品化事業者は毎年、日本容器包装リサイクル協会の審査に合格した中から、保管所ごとに入札などによって選定されます。入札は年1回、全国一斉に行われ、契約期間は1年間です。
再商品化製品利用事業者
再商品化製品利用事業者はガラスびんメーカー、繊維メーカー、シートメーカー、製紙メーカー、プラスチック成型メーカーなどです。
再商品化委託単価 リサイクルされた容器包装を再商品化するために特定業者(メーカー)が再商品化事業者に支払費用。
指定法人(日本容器包装リサイクル協会)が再商品化事業者からの毎年の入札で決め、特定業者から徴収する。 |
特定事業者が総額550億円支払っているというお話がありました。サントリーは委託料として約15億円支払っているとお聞きしています。
いよいよ皆さまお待ち兼ねの霞ヶ関です。容リ法には5省庁が関わっていますが、中でも私達が最も期待を寄せる環境省、リサイクル推進室長の藤井さんです。
現時点では見直しの方向は白紙です。皆さんから意見を伺ったり、施行状況を把握している段階です。
環境省のデータを説明いたします。年間分別収集量、再商品化量ではびんとスチール以外は伸びています。市町村の実施率は高いですが、紙製及びその他プラスチック容器は実施後、まだ数年なので低く、課題となっています。 収集計画では相当数の市町村が分別収集をすることになっており、現行の容リ法は順調に施行している、と考えています。
15年に出された総務省の評価では、一定の効果を挙げているという評価ですが、
@リターナブル容器の減少
A実施していない市町村
B再商品化物の用途
C費用負担の議論を進める上で収集費用のデータを把握、に関する指摘があります。
なお会が始まる前に服部さんにご指摘を受けましたが、関連資料の排出量の減少(Aのグラフ参照)というのは、埋立て量が減ったということです。
改正の議論は経産省、農水省、厚労省、財務省と連携をとりながら進めていきたいと思います。見直しは制定当初からプログラムに含まれており、法のすべてを対象にして、隅から隅までオーバーホールしていきたいと思います。 17年度を頭において、評価検討していきたいと思います。市町村の事業負担がどのぐらいなのか、も整理をしていきたいと考えております。
先ほど、ペットボトルが増えてしまった、という話がでましたが、「ごみを減らす法律にしよう」という本日のテーマに即してご発言をいただければと思います。
杉並区のデータで、t当りのペットの収集コストがとても高いのですが、容積比ではこんなにならないと思います。ペットだけが悪者に思われているのを危惧しています。
施行当初よりは変化しています。中国などへの輸出分もかなりあるし、事業系回収率が入ってないので、回収率は5割以上という説もあります。容リ法改正でペットだけが悪者という議論は視野が狭いと思います。
体積が大きいのが問題です。容積なら容積、重さなら重さで比較するのが適切だと思います。まずペットの回収にこれだけの税金が使われているということを環境省に知っていただきたい。(拍手)。
リサイクルコストは利用者が支払っていくべきです。ペットの生産量は増えていますよね?
お茶、水、ミネラルウォーターのペットが増えています。
消費者の意識に合わせると確かに増えると思います。薄型の努力は評価します。BtoBもいいですが、市町村の回収コストでサイクルが回る訳で、そのコストはどう考えますか?
現行の容リ法で果たすべき義務である再資源化コストは負担しています。容リ法スタート当初には負担割合は5:5になると言われていました。 この問題はこれからの議論です。業界として統一見解が出るはずですが、自治体コストを価格に反映させるにしても、自治体別に上から下まで5〜6倍の差があります。どこを取っていいか分かりません。
費用負担をどう判断するか、各々の立場で鮮明になってきました。自治体間で5〜6倍の差があるというご指摘については、後半のディスカッションで行政の方から意見をいただきたいと思います。
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