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市民ごみ大学 セミナー 2003 実施報告 2


カナダ・ハリファックス市
画期的なごみゼロ政策
講師:津川 敬さん
開催日 2003年12月 6日

 

  今回の市民ごみ大学セミナーは、現地視察された津川 敬さんをお呼びして、ハリファックス市のごみ政策について伺いました。
巧みな経済誘導策だけでも、早く導入したいものです。

ハリファックス市の紹介
  カナダの最東端・大西洋に面するノバスコシア州は、約55,000平方キロメートル、人口94万人。
州都のハリファックス市には37万人が住み、北大西洋最大の漁港・軍港があります。

  70年代半ばには、ノバスコシア州にも数百のごみ処分場がありました。
80年代後半、害虫・浸出水・悪臭被害が広がったため、ハリファックス市で最終処分場問題を巡り激しい処分場反対運動が始まります。
市側が大型焼却炉の導入を示唆したところ、石炭火力発電の公害に悩まされた歴史を持つ住民は反対、数年にわたる交渉が続きました。
  95年、ノバスコシア州は「2000年までにごみ半減、2010年までにごみゼロ」というプランを打ち出します。
RRFB(Resource Recovery Fund Board=資源回復基金委員会)という第三者機関を作り、市民・企業の参画のもと、生ごみの堆肥化や、飲料缶・タイヤのデポジット制度を始めました。


 

デポジットの実態:飲料缶のケース
@ 購入時に10セント(約9円)を負担(価格に上乗せ)
A 市内85ヶ所の回収拠点(ディーポと呼ばれる小きな小屋)に持参すると、
 半額の5セントが戻る
B 残りの5セントをRRFBに行き、これがリサイクル費用となる
 まったく税金を使わずに容器処理をしているのが特徴です。
 この方法で、年間約2億6千万本の飲料缶を回収しています。

 

生ごみ堆肥化の流れ
@ 各家庭に38リットルのミニ容器を配布
A 路上のグリーンカート(240リットル)に移し替え、
 2週間に1度の回収(市中心部は週1度の回収、郊外地域は自家用コンポストで処理)
 *回収後再選別するため、ナプキンやテッシュが多少入ってもOK。
B 州内18ヶ所のコンポスト施設で堆肥化

  その他、新聞・雑誌、デポジットから漏れた容器類は、資源ごみを入れる「ブルーバッグ」で
2週間に一度、路上回収しています。年間約1万2千トンがこの方法で回収され、市内4ヶ所の工場ではこれらを24種に分別し、再資源化しています。
ただ、プラスチック類は中国に輸出していますし、家電や車のリサイクルには手がついていない、リサイクル工場の現場には、アジア・ヒスパニック系が多く、安全管理が追いついていない、など、これから解決していくべき課題もまだいろいろと残っているのが現状です。

 

参加者とのQ&A
市民の意識を高めるために、どのような手法を採っているのでしょう?
たとえば、小中学校の副読本で、かなりしっかりしたものを作っています。
 カナダは森林を産業としている国なので、もともと水や森林資源に対する環境教育には力を
 入れていたという歴史もあるようです。

について、もう少し詳しく数えてください
RRFBは、行政側(州政府・ノバスコシア州環境労働局・州の都市自治体代表など)4名、
 市民側(リサイクル企業代表・技術者代表など)7名の計11名で、基金執行役員(Board of
  Directors)を構成しています。
 自治体が施設を作り、運営は民間で、という公設民営の発想で、運営資金は基本的に、
 デポジットで得た資金で鮪います。

ごみの量はどの位減ったのでしょう?
1990年度では1人あたり年780kgだったのが、2000年度には年380kgまで減りました。
 ただし、この数値の中には、産業廃棄物も含まれているため、実際に個人が出している
 量はもっと少なくなります。

行政は、どう税金を使っているのですか?
基盤整備のための初期投資として、最初に49億円かけていますが、ランニングコストに
 開しては、税金の投入はせず、RRFBからのお金で運営しています。

企業は、どのように協力しているのでしょう?
“ごみになりにくいものを作って”との要請に、企業側もある程度応えている、
 と聞いています。
 デポジット自体、企業の負担にもなる制度です。
 そのため、牛乳関係の企業は“これは食品なんだからデポジットからは除外して”と主張し、
 かなりもめたようです。

堆肥の使い途は、州内で消費されているのでしょうか?
品質の高いものは農業・家庭菜園用に、低いものは土壌改良剤として使用し、
 州内で消費されていると聞いています。
 もともと、生ごみ堆肥化は “とこかく処分場への負荷を減らす” という目的で始まったため、
 堆肥の使い途や質を上げる、というのは今後の課題になるでしょう。


 
[まとめ:斉藤千佳子(ごみかん会員)]

本講座の講演録が出来上がりました詳細はこちらをご利用下さい。


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