市民ごみ大学セミナー2002 実施報告 第一回 「古紙リサイクルという名の紙の氾濫」 開催日 2002年 6月30日
古くから行われてきた古紙のリサイクルは、今どうなっているのか、それを知るには、リサイクル現場の現状を語ってもらうのが一番だと、
梅雨の最中、しかもワールドカップ決勝戦当日ということで、出足を心配しましたが、小金井市の
最新の2001年の統計では、紙・板紙(段ボール)の消費量は3087万6千t、国民一人当り 243kgです。相撲の曙に匹敵するほどの紙を、日本人は1年間で消費しています。 ちなみに中国は25kg、ベトナムは1.5kgですから、いかに日本人が紙を大量消費しているかがわかると思います。元日に配達される新聞とチラシで1kgほどありますから、それだけで、ベトナムの人の年間使用量に近いですね。 古紙回収量は昨年、1912万8千t、国民一人当り151kgで、古紙回収率は62%です。製紙メーカーが生産する時の古紙利用率は58%となっていますので、古紙回収率が伸びるにつれ、余剰古紙が発生し、昨年度から急激に、古紙の輸出量が増えています。
なぜ増えたかというと、昨年は146万6千tが輸出されましたが、これは、ここ数年、日本から産業が中国に移り、それに伴って紙の需要が増え、巨大な製紙工場が林立したことによります。
今、古紙の値段は、問屋仕入価格で新聞がキロあたりたったの2円です。それを先ほどのビデオにあったように大変な選別作業をして、プレスして、製紙メーカーまで届けて、今年3月の製紙工場の買入価格は、キロあたり新聞9円、段ボール7円、雑誌5円50銭で、10年前の半値以下です。 私たち回収業界は、自治体からの助成がないと経済的にはとても成り立たないのが現状で、早く助成金をあてにしないでもやっていける正常なリサイクルを取り戻したいものです。
アート紙、コート紙と呼ばれる塗工印刷用紙の、コーティングについては、ドイツには規制がありますが、日本にはありません。 現在、紙の種類は100種類以上にも上っています。 古紙回収に出せない禁忌品については、(財)古紙再生促進センターの規定がありますが、製紙メーカーは自社の製品に合わせた禁忌品を言ってくるので、古紙問屋は、その調整役もやって、メーカーに合わせた品質にして出荷しています。 禁忌品は、取り除く手間がかかる上に、産業廃棄物として処分するのに、キロ50円もかかります。作る側は古紙回収のそんな苦労を知らず、作りっぱなし売りっぱなしです。
回収現場で困っている紙
● 感熱発泡紙…点字の本などに使われ、熱を加えると発泡し、固まる。名刺に使われているケースもあり、可燃ごみへ。
● 缶ビールの持ち帰り用ケースの未晒しの紙…強い防水加工がしてあるので、 ● 洗剤、線香、香水などの匂いのきつい紙…再生不適物なので可燃ごみへ。
茶色の袋は、現場ではお稲荷さんとよんでいますが、新聞といっしょにはリサイクルできず、取り除く手間がかかってたいへんです。 10年来抗議しているのですが、一向に改善されません。 そもそも袋は必要でしょうか。
禁忌品の混入率は、ひもで縛るだけだと7%なのが、袋に入れると35%にもなります。読売新聞は袋の経費に32億円もかけているそうで、結局それも新聞代の一部になっています。 紙の生産とリサイクルの仕組みを健全なものにしていくには、消費者の声をもっと大きくしていく必要があります。
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