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ドイツの廃棄物処理・最前線
開催日 99年 1月24日
講師 アーヘン工科大学 松島さん

新たな挑戦!冷たいごみ処理

 99年 1月24日はあいにくの小雨模様でしたが、40名の方が参加しました。
講師である松島範行さんはドイツのアーヘン工科大学で選鉱学を専攻する大学院生で、プラスチックリサイクリングの研究をされています。
帰国中の松島さんをお迎えし、 ドイツの廃棄物処理とリサイクルの全体像から、本題の“機械・生物的前処理処理”まで、OHPを示しながら、わかりやすく話していただきました。

忘れてはならないごみの区分”有価物と廃棄物”
 一般廃棄物はごみの総排出量の13%で年間4350万t。家庭ごみは、有価物、生ごみ、有害物質、有害物質に汚染されたもの、薬品で構成され、有価物という分類があるのが特徴。生ごみも有価物といえる。それ以外は、処分される廃棄物となる。

回収はDSDと自治体=デュアル(二重)システム
 容器包装材は有価物として、DSDのイエローザックで回収される。
もう一方が廃棄物で、自治体で回収される。自治体回収ごみ2,300万トンのうち、焼却対象物は州によつて異なり、焼却を進めている州と焼却に消極的な州からでたものを合わると670トン。

ごみが多いから、燃やせばいいということはない!
 ハンブルグなど焼却量が多いベスト5の上位3番目までは、発生量の上位には入つていない。
燃やさなくてもよいということを統計が示している。世界を見渡すと、埋立ての多いイギリスやドイツは国土が狭いがなだらかで、一方、焼却の多いデンマークや日本などほ、比較的山間地が多いことから、焼却に傾く原因には、地理的要因が影響する。

プラスチック処理は高額!技術的にも限界!
 プラスチツクリサイクルは横這い状態。高炉還元材としての廃プラ利用は賛否両論だが、認めざるを得ない状況もある。またラミネートケースやテトラパツクなど混成包装材のリサイクルは非常に困難。DSDほ手選別なので、処理費が高い。そこで、ランデイル郡では、固形燃料化方式を取り入れた焼却を前提とするシステムを取入れた。

2005年問題とMBA
 93年に一般廃棄物技術指針によつて、2005年から埋立て地に入れる廃棄物は、有機炭素量(焼失率)の割合が3〜5%でなければならない。
それを満たすには、焼却がいいといわれている。そこで、ごみの大きさ別に処理を変えて、小さい順に、腐敗処理、発酵処理、焼却処理(30mm以上)をする方法が試行されている。

 MBA=機械・生物的廃棄物処理法「機械による有価物の回収や廃棄物の均質化。残った有機物を微生物などで発酵、または雄肥にする」というコンセプトを持つ処理方法である。

MBAの二つの手法”MBEとMBS”
*MBE(機械的・生物的完全分解法) 炭素結合を切る。微生物による分解を早め、原料として利用する。炭素は廃棄物。
*MBS(機械的・生物的安定化法) 炭素結合を保持したまま、安定化させて、効率よく焼却する。炭素を資源と位置付ける。
MBEは機械選別後、燃えないもの、燃えるものに分ける。燃えないものは20週間置いて、焼却。
MBSは破砕して、有価物は生物的に10日間安定化し、できた混含安定化物をさらに振るい分けし、焼却する。
また、最後まで焼却しないてリサイクルする方法が、ミュンヘン市などて実証中である。

”冷たいごみ処理”を試みる地方自治体
 ドイツでは、4分の1の州がMBA方式を考えている。
技術指針で決められた、埋立ての有機炭素量の割合3〜5%をクリアーするのは難しいが、その基準を緩めようという動きもあり、今後の展開が注目される。
これらの方式は、焼却処理と対比させ、“冷たいごみ処理”と呼ばれている。

雑感”ドイツと違う日本のごみ”目指せD
 最近、ドイツも焼却処理に逆行したかのような論調が見られます。でも有価物をリサイクルした後のドイツの最終廃棄物と日本のリサイクル不十分なごみでは、焼却対象物の中身自体がそもそも違います。
 またドイツては、企業と自治体の貢任をはっきり分けていますが、日本の場合、こみ処理は全て自治体の責任です。こうしたシステムの違いを踏まえ、松島さんは、日本で“冷たいごみ処理”をするまでに、20年以上かかると言われました。
 確かに、最終のごみ処理方法を議論する前に、日本は幾つものハードルを越えなければならないでしょう。
法制度、企業責任、環境学習などなど、様々な取組みで、20年をできるだけ縮められるようにしていくしかありません。

 生産、消費、廃棄<リデユース>処理<リサイクル>生産という循環の輪が閉じているドイツとリサイクルが生産に戻らない日本を、松島さんは各々の頭文字D(ドイツ)とJ(ジャパン)に例えました。
 でもMBAの情報は、燃やさないごみ処理をめざす私たちに、最終のごみさえもリサイク)できる可能性を示唆していることは確かです。


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