市民ごみ大学セミナー’99 実施報告


第四回 どう考える?生活にあふれるプラスチックス
開催日 99年 11月21日
 

特 別 講 演
◇ 別処  珠樹さん(奈良ごみの会 代表)

● 講師のプロフィール
 別処珠樹さんはホームページ“環境と学びの広揚”を開設し、
深い洞察力と語学力を駆使して集めた海外の環境や廃棄物に関する情報を発信している注目の人。
数多くの環境問題に関わりながら、あくまで奈良にこだわり、
ルポや論文を新聞、雑誌などに発表しています。
7月に「技術と人間社」から発刊された『ごみクライシス』は、ごみの現揚を歩き、見据えた人にしか書けない一味も二味も違う話題の本となっています。
 市民ごみ大学連続セミナー第4回目のこの回は、東京ではお目にかかれない別処さんが講師として上京されるということで、受講者の中にはごみ問題で活躍する著名人の姿も多く見られ、会揚は始まる前から熱気に包まれていました。
 どこか瓢々とした印象の別処さんは、まず関西弁のイントネーションで「今回は私の名前間違っていませんよね。
別処の処は処分揚の処です」と自己紹介。
木津川の汚染問題に関わる中で、わかっているだけで50ヶ所もある処分揚の実態を調べてまわったという別処さんにふさわしい第一声が、出席者を和やかな気持ちにさせてくれました。

● プラスチックの現状
 1970年代に世界はプラスチック時代に突入しました。プラスチックの比重を1として考えると、生産量は鉄を越え、組鋼生産量の7億トン、体積0.9億rn(比重7.8)に対してナフサ生産量は1.3億トン、 1.3億mとなっています。
国内生産量(95年度)ではポリエチレン(PE)が22%、ポリプロピレン(PP)が19%、ポリ塩化ビニル(PVC)が17%、ポリスチレン(PS)が15%。この4つで生産量の7割強(1,400万トン)を占めています。 そして、消費量と廃棄量は約1,200万トンとなり、国民一人あたり年間97sものプラスチックを消費、廃棄していることになります。
これは例えていうと国分寺の全市域が1mの高さで埋まるほどの量になるとか。プラごみの処理方法は5割が焼却、4割が埋め立て、1割が再生となっています。

● 添加剤の量はあなどれない
 特に塩ビには1%以上の鉛が含まれていて、年間3万トン以上の鉛系の安定剤が出荷されています。鉛の問題は深刻で、最近、鉛のハンダをやめようという動きもメーカーから出てきています。
 可塑剤や安定剤、着色料など実に多くの種類の添加剤が使用され、プラスチックの処理やリサイクルにはこれらの添加剤の影響がつきまとうことになります。水道水から難燃剤が検出されることもあります。

● プラスチックの再生
 別処さんの住む天理市では昨年10月からプラごみの分別回収を始めました。 その先がどうなつているかを調べてみると、県外ヘ持ち出し、固形燃料(RDF)に加工して北海道の製紙工場で使っていることになっていましたが、結局、ほとんど捨てていることがわかりました。今は民間の処分揚に運び、場内にあるごみ発電施設で燃やしているそうです。
 おそらく日本中で作られているRDFのかなりの部分が捨てられているか、無駄に燃やされている状況だろうということでした。プラスチックの再生が困難な理曲として、
@分別が困難…分別できる機械は技術者のオモチャでしかない。複合材が多く分別はますます絶望的
A再生品は強度が落ちる…ポリマーの鎖が切れて分子が短くなる
B添加剤の問題…油化しても金属などが含まれ、成分は企業秘密
さらに、販路の問題と特にマテリアルリサイクルは大企業はやらず、技術を持っているのは中小企業ということもネツクになっているそうです。

● 適正処理困難物の指定を
 最新情報として、塩ビを1000℃で燃やして何が出るかを調べた同志社大の西岡一教授らの研究論文によると、ベンゾアントロン、ベンゾ(C)シノリンが大量生成し、いずれも変異原性が認められたそうです。またフタル酸エステル化合物群も大量生成され、これらは内分泌かく乱物質として知られています。
 800℃で燃やせばよいとされている説や、今、推進されているガス化溶融にも新たな警告となるでしょう。
プラスチックは処理処分するにしてもリサイクルするにしても大変やっかいで、結局、「急いだ自治体がバカを見る」結果になっています。国に適正処理困難物の指定を迫るべきだ、と別処さんは力説しました。

● 拡大生産者責任(EPR)制度の確立を
 80年代後半からヨーロッパでは処理責任を事業者に負わせる動きが出てきましたが、日本では91年リサイクル法が成立し、廃掃法の大改正では生産者重任は骨抜きになってしまいました。94年にOECDではEPRの討議が始まり、現在日本でも循環社会法の動きがありますが通産と自民が難色を示しています。
 奈良の山の中を歩きまわり処分揚の実態を調べ、ごみ処理の現場を見てきた別処さんは「環境差別」という言葉を何度も口にしました。生産体制を大きく変革しなければこの差別はなくなることはないでしょう。

● 質疑応答
Q…プラスチックを高炉還元することについては?
A…短期間、長期的にどうするか分けて考える必要がある。次善の策として短期的には、高炉に入れるのもしようがないかもしれないが。
(これについては会揚から、「重金属のデータがメーカーから全く出されていない。 このデータを出さない限りは技術に飛びつくのは危険だ」という意見が出ました)

Q…資料の中のごみをドラムカンで燃やした時の生成物について、リサイクルしている家のほうが多く発生しているのはどうしてか。
A…ごみからリサイクルしていろんなものを抜くと、結果として塩ビの濃度が高くなるのでこういうことになる。

Q…適正処理困難物の指定について。
A…廃掃法の6条の3で一定の比率で自治体から適困物の指定が出てきたら厚生大臣が指定することになる
また非常に困難だとは思うが、市町村で条例を作ることもできる(6条の3の第2頂)


会 場 風 景



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