市民ごみ大学セミナー2000 実施報告
第 4 回

自治体から変える! 「21世紀のごみ行政」
開催日 2001年 2月24日

 

  「教育」「企業」「海外」をテーマに進めてきた今年度の市民ごみ大学ですが最終回は「自治体」をキーワードに、<21世紀のごみを変える>方策について考えました。

梶山弁護士の講演では、日本の廃棄物政策の構造的な問題点が複数の切り口から明らかにされ、それに対して市町村、地域住民の側から変えていく具体策が例示されました。
そして、杉並区経済部の清水さんからは、「レジ袋税」導入への取り組みの経過が、詳しく報告されました。

補助イスを出すほど盛況だった会場からも、意見が相継ぎ、熱気あふれる3時間となりました。


講演 『ごみの法律と自治体の可能性』

 

講 師 紹 介

梶山 正三 さん(弁護士)
「日の出処分場」「国立景観裁判」「龍ヶ崎焼却施設」など、
  環境関連公訴に多数取り組む。

1944年東京生まれ
1972〜84年
東京都公害研究所(現 環境化学研究所)勤務
1995〜2000年
関東弁護士会運合会 公害対策環境保全委員会 委員長
闘う住民とともに ごみ問題解決をめざす弁護士連絡会
 (ごみ弁運)会長

書書:「廃棄物闘争の上手な対処法」「ごみ問題紛争事典」など

 

◇ 処分場がない! でも、生産はやめない!

  日本のごみ政策の特徴は
● 中央集権的(環境より経済が本音?)
● 「発生抑制」を回避(ごみの元はそのまま)
● 脱「埋め立て」(反対住民が厄介だから)…でも
 「焼却」は強化(ごみは減らさずかさ減らし)
● 末端処理技術の強化(どこまでいってもゴミ処理)
● リサイクル信者の育成(このためには税金使うのもOK)

  つまりは、右肩上がりの経済を回復・維持することを前提に、大量生産・大量消費の構造を温存したまま処分場不足のみを解決し、ダイオキシン対策の名のもとに大型最新炉を導入する路線である。
  ゴミの減らないもう一つの要素は、ゴミマフィアの存在。ゴミ処理業者、ゴミ処理プラントメーカー、製造業者、建設業者などが、中央官僚、御用学者、コンサルタントとともに、ファミリーを作って暗躍している。

 

◇「資源循環型社会」の落とし穴

 昨年、制定・改正された基本法や個別リサイクル法は、物質の大量循環を促すもので、<悪しきリサイクル>が、より環境を汚染していく危険をはらんでいる。
 大量リサイクル路線は、大量消費社会を維持しつつ、処分場不足を解決する決定打として、20世紀の最後に登場したが、資源や製品にはリサイクルに適するものと適さないものがある、循環の過程で環境に負荷を与える、工業的プロセスを経る中で必ず産業廃棄物が増える、エネルギー資源が大量に使われる、などのマイナス要素を含んでいる。
 最優先されるべき『発生抑制』は、お題目的に掲げられているものの、容リ法制定後のペットボトルの増産・氾濫・ゴミ化にみられるように、経費の内部化を伴わない受け皿づくりは、むしろ発生促進にもなってしまう。
 4月施行の家電リサイクル法は、複数の問題 発生が予測される上、再生利用資源の20倍ものコスト(=資源、エネルギー)がかかる<悪しきリサイクル>の典型といえる。
食品リサイクル法にしても、日本の米生産量(約1,000万トン)を上回る食品の廃棄を見直すことが先決である。

 

◇ 自治体の踏ん張りが鍵 地域自決の法則

 法整備の在り方も含めて、国への期待が持てないばかりか、広域ブロック制・大型炉によるごみの集中処理が市町村に押しつけられようとしている。その先には産廃と一廃の垣根を取り払う『産廃共同処理』が。
 この状況の中で、広域化の拒否、分権確立と自治体の主権の強化、条例による規制が鍵となる。

  市町村で可能なことは―
 ● 事業系一般廃棄物の段階的排除(処理を事業者に移行)
 ● 適正処理困難物指定と事業者の回収引取りの義務化
 ● 容リ法からの離脱や上乗せ基準による対処。
 ● 家電リサイクル法に独自品目を追加、運搬費用、処理費用をメーカー負担に
 ● 最終処分場、焼却炉について、独自の基準、規制 手法等を条例で定める
 ● 環境税的手法による経済的誘導策。
             ―などが考えられる。

 いずれにしても、市町村のような身近な行政の政策は、地域住民の力でコントロールできるようでなくてはならない。


 

事例報告 『レジ袋税の導入をめぐって』

 

報 告 者 紹 介

 

 清水 文雄 さん(杉並区経済部課税課)

 

◇ 研究会での検討

 2000年4月の地方分権一括法の施行によって、自治体の課税自治権が強化され、法定外目的税の導入が可能となった。一方、厳しい財政状況のなかで、新しい財源の必要性が生じていたことから、杉並区では研究会を作り論議を重ね、その中で、環境への負荷削減の誘導策としての新税が具体的に検討された。
 課税はレジ袋1枚につき5円程度、小売り事業者等から徴収、施行期間は5年間、税収はごみ減量やリサイクルに使う、 などの内容の報告書が9月に提出された。

 

◇ なぜ、「レジ袋税」か

 ● 買い物袋の持参などの環境負荷の少ないライフスタイルへの変革が期待できる
 ● ごみとして排出されている年間1,500〜1,700トンのレジ袋を減らし、
    ごみ減量と処理経費の削減をはかる。
 ● 石油資源の消費抑制
 ● レジ袋は買い物袋などで代用がきく

 

◇ 区民の反応は …

 区民への説明会を開き、意見を聞いた。
市民や事業者からさまざまな意見が寄せられたが、賛成4割、反対・疑問6割という状況。


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