ごみっと・SUN65号
古紙リサイクル事業の今
 見えてきた疑問難問
日本再生資源事業協同組合連合会
 会長 紺野武郎


再生紙の古紙混入率偽装」から見えてきたもの
 今回の偽装発覚は、長年古紙リサイクル事業に協力していただいた国民を十数年間もだまし続け、再生紙に対する不信感だけでなく、古紙回収そのものが環境に悪いかの間違った印象まで持たせる事態となった。

 そもそもの原因は、昨年4月24日、日本製紙鰍ェ発表した次のような内容(要約)だった。
「環境負荷が増える古紙100%配合製品を廃止する。そのほうが環境保全と環境負荷軽減に貢献できる。
当社独自の環境コンセプトに基づき再生紙の生産をする」というものだ。
さらに、古紙配合率100%の紙を生産するほうが、0%つまりバージンパルプで作った紙よりCO2の排出量が倍近く多いとのグラフを添えての説明だった。

 バージンパルプで紙を作る場合、パルプ製造段階で木材チップから出る黒液(非化石燃料)を利用するため、これを燃やしてもカーボンニュートラルとして47%分はCO2の排出量をゼロで計算できる。
従って化石燃料だけで生産する古紙100%の紙はCO2の排出量が2倍近くにカウントされ環境に悪いというものだった。

 実際は、このグラフに当てはまるケースはほとんどなく、古紙混入率の高い再生紙を含めて、製紙各社は化石燃料を平均20%程度しか使用していない。
ほとんどがカーボンニュートラルのバイオマス燃料(木くず・固形燃料・タイヤなど)を使用しているのが現状だ。

 しかし製紙業界は、古紙がリサイクルされずにごみ化した時に降りかかる影響など全く論じず、この都合のいいデーターをもとに平成12年5月制定されたグリーン購入法(公的機関が率先して環境物品の調達を推進する法律)の改正を、強く要請した。
再生紙の古紙混入率全体を30%ほど下げるよう要請したもので、その裏には十数年前からの再生紙偽装を合法的に隠そうとした意図があったと疑われても仕方がない。

 再生紙の古紙混入率は、チェックするのが大変困難で、製紙メーカーの報告に頼るしかないのが現状だ。
しかも再生紙の明確な定義もなく古紙1%混入でも再生紙と言っている。

 古紙混入率100%の用紙となれば白色度も70%以下に下げなければ生産困難なはずだが、ユーザーに言われるままに白色度も80%程度に保った。
それにはバージンパルプを増やすしかなかったようだが、技術の伴わない再生紙生産を偽装で誤魔化してきたことになる。

 だが、今回の偽装は、コピー用紙やハガキ印刷用紙の一部だけで、段ボールやボール紙・新聞用紙・トイレット紙などは、古紙を大量使用しなければ生産できないのが真実だ。

 製紙業界は、長い間偽りの環境商品を売り続けながら「再生紙や古紙回収が環境に悪い」と言うような印象まで与えてしまった不祥事に速やかな説明と謝罪をしなければならない。

リサイクル事業地域ネットの堅持が必要
 近年、再生資源物の輸出が拡大し、古紙類も中国などに二割近く輸出していて、そのために古紙の余剰化は解消し国内の古紙価格も徐々に改善してきた。
同時に古紙などを抜取る業者も横行してきたが、彼らはマスコミの言うような民間業者の代表ではなく、遠方の地域から越境してきて行政回収の資源物を横取りしてゆく特殊な業者グループだ。
昨年12月東京高裁は窃盗の罪で有罪判決を出している。
早朝から住宅街を走り回り他人のものを無責任に持ち去る行為は、防犯上も教育上も許されるものではない。

 大多数の民間回収業者は、長年にわたって集団回収や行政回収など地域リサイクル事業に協力しており、事業協同組合を設立してさらに、国の指導で官公需適格組合の資格を取り誠実な営業をしている事業所が殆どだ。

 「資源物として生かされるなら誰が片付けても構わないのでは」と言う解説者もいたが、再生資源はその地域の財産であり、安全な処理施設と流通ルートもその地域になくてはならない財産と考えて、その受け皿は明確にして維持拡充しなければならない。

 このところ、自治体によっては回収作業の委託や回収物売却を入札するところも出てきた。
入札は地域外の業者が経済原理を無視して落札する場合も多く、苦労して地域行政を支え続けてきた地元業者を一蹴してしまうことも多い。
地域に根付いた民間のリサイクル業者と施設・車両重機・雇用の場などを失うだけでなく、蓄積されたノーハウや再生資源類流通のルートや権利なども途切れてしまい、地域リサイクルネットワークを根底から崩壊させる懸念さえ出ている。

 世界同時不況や中国の経済情勢如何では、いつ古紙の余剰化・価格暴落が起こっても不思議でなく、流通が滞った場合、抜取り業者はもちろん他地域の業者も頼りにならないのが業界史上の常だった。
資源回収事業も、地元で集め地元で安全安定して処理加工する地産地消が、環境負荷を最小限に抑える面からも堅持しなければならない大原則ではないだろうか。

 他にも古紙リサイクルにまつわる疑問難問は山積しているが、今こそ現場からの市民の目と声が大切な時ではと思う。


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