ごみっと・SUN64号
不信と対立を乗り越えて

協働の時代を迎えた東京・町田市
ごみかん理事 江川美穂子


100名を超える市民が 280回に及ぶ会合と
各種実証実験を経てまとめ上げた 「ごみゼロまちだ」への提言

 07年11月17日、東京都町田市の『ごみゼロ市民会議』が約1年間の活動内容を報告書『もったいない精神で「ごみゼロまちだ」をつくろう』としてまとめ、石阪市長に手渡した。
市長は“この取組みを途切れさせない”と表明し、市の中期経営計画に環境先進都市を掲げ、積極的に反映させていく構えだ。

 『ごみゼロ市民会議』代表の広瀬立成さんに、提言に至るまでの市民活動についてお話を伺った。



「ごみゼロ市民会議」発足までの紆余曲折
 町田市は人口41万人、東京の西南部に位置する中核都市だ。
かっては先進的な「リサイクル文化都市」として名を馳せた町田市だが、この10年あまりは、ダイオキシン値が都内ワースト2、市内の最終処分場の3メートル嵩上げ、など問題が続き、ごみ行政は混迷していた。

 さらに99年からは、廃プラスチックの中間処理施設の建設を巡り「市民不在のごみ行政」と糾弾され、市が示した計画は3度にわたって流れた。

 05年には新たに八王子市との隣接地に計画が示されたが、ここで八王子市民も巻き込んで反対運動が一気に拡大した。同年12月、5団体から計8万筆の陳情が提出され、市議会はこれを採択した。

 06年2月、任期満了に伴う市長選で誕生した新市長によって、施設計画は白紙撤回され、
「ごみになるものを作らない、燃やさない、埋立てない」が市の基本方針として示された。
06年7月、市はこの方針に沿ってごみの減量・再資源化を検討するために市民委員を公募し、
「町田市ごみゼロ市民会議」が10月にスタートした。

 広瀬さんは町田市のごみ問題にどう関わってこられたのですか?
 2000年春、近くに住む3人の主婦の方の訪問を受けたことからごみ問題に関わるようになりました。
市の最終処分場や焼却場が集中している小山田地区に、今度は廃プラスチック処理工場の計画が示されたということで、私は物理学を研究している学者ですが、地域住民として共に闘ってほしいということでした。

 活動に参加されてみていかがでしたか?
 まず多くの人が意欲的に真剣に勉強し、実態調査し、実践活動に取組んでいることに驚きました。
そして、市民も行政も共にごみの排出者でありながら、なぜこのように真っ向から対立しなければならないのか、という疑問が膨らみました。
以来、約7年活動してきたのですが、行政にどんな提案をしても受け入れられず、辛い時代でした。

 市の対応はどうでしたか?
 「できあがった計画を受け入れてほしい」ということに終始するばかりで、必要な情報も示されず、住民の理解が得られませんでした。
 2年後には、そっくりそのままの計画を鶴間地区に提案して、また同様の結果になりました。
4度目は、なんとすでに市が土地を購入して、委託業者まで決めていたので、猛烈な反対運動に発展しました。

トップ交代でがらりと変わった市の基本方針
 それまでの膠着した行政と市民の関係を打ち破るように、新市長は、市民と共に歩む行政へと大きく舵を切っていった。
「行政主導」から「市民が主体」となったごみ行政へ。
市民の出番がようやく訪れ、市民委員の募集には、定員50名に124名もの応募があった。

 市は応募者全員を受け入れるという決定をし、市民委員124名、町内会・自治会連合会選出の委員10名、アドバイザー5名、市職員19名という構成で、2006年10月7日、第1回市民会議が開催された。

 1月20日からはいよいよ「生ごみ」「廃プラスチック」「その他の資源拡大」の3部会に属する11の分科会と2チームに分かれて、具体的な活動や実証実験が展開された。
また、月1回の全体会の進行管理のために、26回にも及ぶ会議が平行して開かれている。

 ごみゼロ市民会議の委員が募集された時、どんな感想を持たれましたか?
 まさに青天のへきれきでした。
新市長の就任挨拶に「市民から信頼される市役所をつくる」という言葉があり、広報「まちだ」で市民会議特集が組まれました。

 そこには「ごみを作らない、燃やさない、埋めない」という大胆な基本計画が示され、その目標達成のために市民と協働するという姿勢がはっきりと表明されたのです。
これは画期的なことだと思いました。
07年度には1億円のごみゼロ市民会議予算も組まれました。

 提言をまとめるまでのご苦労は?
 130名あまりの市民委員には、ずっとごみ問題に取組んできた人もいれば、初めての方もいるというあらゆる層の方が集まりましたから、最初の2,3ヶ月は意見を出し合うことに費やされました。
せめぎあいや丁々発止といった意見のぶつかり合いもありましたが、議論ではなく行動する市民会議ですから、ごみの減量・再資源化を検討するために実証実験をやるのが目的で、合意に至ったのがあの提言に盛り込まれています。

 提言のポイントは?
 一番の苦労はやはりプラスチックの資源化についてどうするか、ということでした。
今までの経緯がありますから、とにかく種類を限定し、まず家庭でやれるところをやる、生ごみの資源化もそのスタンスです。

主な実証実験

●12地区に510台の自家処理用生ごみ処理機器を2ヶ月間貸し出し、
  計量とアンケート調査

●生ごみから製造した堆肥で野菜栽培し、堆肥と土壌の分析。市民へ収穫物の配布。

●「リサイクル広場まちだ」の開設。
  10品目の資源を持ち込んでもらい、ポイント加算で景品進呈。

提言の概要

【1】家庭生ごみの全量資源化を計画的に進める
●自家処理による堆肥化を基本とし、地区単位、棟単位で処理機器を貸与

●一次生成物は各自活用か行政回収して有効活用

●啓発・普及と体制づくり

●メーカーとの連携によるメンテナンス・サポート体制づくり

●「堆肥化センター」設置について農業関係者との協議

●地産地消の推進、バイオマス化の検討

【2】プラスチックごみの減量・資源化は、できることから始める
●マイバッグの推進、プラスチック材から紙材などへの代替、
  店頭回収推進の協議の場の設置

●家庭で分別した柔らかいフィルムシートの収集、低圧圧縮処理のモデル地区実験

●調査研究・実験プロセスの公開、専門家を交えた安全性・技術検討

●条例化をめざしてレジ袋無償配布廃止・有料化の検討

【3】発想の転換で資源化の新しい広場・しくみをつくる
 中心拠点「実験・リサイクル広場まちだ」の常設。
市内各地区に小規模展開し、持ち込みによる資源回収と資源品目の拡大。

【4】まず「ごみゼロ市役所」を実現する

【5】見て、触れて、感じる環境教育を実践

【6】市民が市民に話しかける「ごみゼロの風」(広報紙)を継続する

 提言には次の言葉が添えられている。
“この提言を市がしっかりと受け止め、すみやかに実行し、実現の難しいものについては、その理由や代替政策を市民に示すことを要望します。
私たち市民委員も、自らの提言に責任を持ち、実施状況をしっかりと見守るとともに各自の活動に取組みます”

   32ページにわたる報告書には、6つの提言とその説明、11分科会と2チームごとの活動内容と、その課題や提案が盛り込まれた。

 報告書の「むすび」は“市政50周年にあたる2008年を次の世代に向けて町田市が大きく羽ばたくために、50周年記念事業の一環として「ごみゼロ」の多様な取組みを本格的にスタートさせ、2008年を「ごみゼロまちだ」元年にしましょう”という言葉で締めくくられている。

 市民が汗をかき、議論や実践を重ねて纏め上げたその過程にこそ、町田市の状況を踏まえた問題解決の道筋があると思う。
今年注目の町田市のごみ行政だが、今後はこの市民委員が推進役となって大きく前進していくに違いない。


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