ごみっと・SUN60号
小金井市のごみ、広域支援で西多摩へ年間1万トン、西多摩衛生組合が受入れへ |
西多摩密着ジャーナリスト 緑川圭介
4月3日午前10時頃、小金井市のごみを乗せた収集車が続々と西多摩衛生組合の焼却施設「環境センター」に到着した。 雨の降りしきる中、入口近くの歩道に8人ほどの羽村市民がプラカードを持ち抗議の声を上げたが、収集車はそのまま構内へ。 広域支援協定による小金井市のごみ焼却が始まった。
多摩地域ごみ処理広域支援体制実施協定(第2条2項)「市町村等のごみ処理施設等が、予め計画された定期点検、改修、更新・新設のため、その運転を停止して適正なごみ処理に支障が生じる見込みの場合」の要件を満たしていないと一度は受入を断っていた西衛だが、タイムリミットの迫った2月13日の正副管理者会議で受入やむなしの判断を下し、組合議会全員協議会に4月からの年間1万トン受入決定を報告した。
無論、一部の議員から反対意見が出たのだが、報告事項であると処理され、4月からの受入に GOサインが出された。
3月13日、西多摩衛生組合は地元の羽村九町内会自治会生活環境保全協議会および瑞穂町環境問題連絡協議会を構成する町内会、自治会の住民を対象とした説明会を開催。 「寝耳に水」状態だった住民の多くは、小金井市政の失態による西多摩へのごみ搬入に厳しい抗議の発言を続けた。
そもそも、ごみ行政は15〜20年先を見据えて滞りなく行われるべきもの。 新焼却施設が建設されるまで10年間のブランクをつくった小金井市政の怠慢は非難されて当然であり、稲葉市長の責任能力が疑われてもやむを得まい。
二枚橋衛生組合の構成市のうち、調布市は三鷹市との共同処理、府中市は多摩川衛生組合での処理が決まっている。 小金井市は国分寺市に共同処理を申し入れ、新焼却施設用地を小金井市が確保する代わりに、新炉が完成するまで国分寺の焼却施設での小金井のごみ焼却を求めていた。
国分寺にとっても将来の焼却施設確保というメリットがあり、前向きな協議を行ってきたが、小金井市が確保するとした新施設の用地は確定していない。 用地が確定していない段階で、支援協定第2条2項の適用が適切な判断とは思えないが、西多摩衛生組合構成団体(羽村市、福生市、青梅市、瑞穂町)としては小金井市に恩を売り、トン当たり4万8千円もの受入費用を呑ませたというところだろう。 小金井市は何を言われても呑まざるを得ない立場ある。
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どうなる? 年ごとの受入協定継続 用地決定なければ支援の前提崩れる
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小金井市の焼却ごみは年間1万9千トン。 受入要請期間は、新炉が完成するまでの10年間と長い。 途中、用地選定、環境アセスメント、住民説明などがストップし建設着手が遅れれば更に長期になることもありうる。
国分寺市と同様、新炉建設が順当に進まなければ、それ以降の受入は西多摩衛生組合でも行わない。 西多摩衛生組合は1年ごとの協定とし、地元への説明書には「支援の継続については小金井市の建設スケジュールに基づく進捗状況の確認、組合業務への影響を総合的かつ慎重に判断して対応していきます」と記述され、小金井市が自前の焼却施設建設に躊躇した場合、協定の継続はないと説明されている。
今から注目されるのは1年後の協定継続が行われるかどうか。 これまでの小金井市議会や市民運動の様子を知れば、1年後に建設地が確定している可能性は低いと思えてならない。
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西多摩衛生組合の十全な即応準備が奏功 混乱少なく受入態勢を短時間で構築
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西多摩衛生組合事務局の今回の受入即応の態勢づくりは見事であった。 早くから小金井市のごみの行き場に不安があることを察知し、西多摩衛生組合へ泣きを入れてくる可能性を警戒していた。
情報収集に努め、昨年9月には二枚橋衛生組合の焼却停止に伴い構成市のごみがどこへ動くかを予測したカラー刷りの資料を作成。 各市ごみの総量、受入要請先、行き場のなくなるごみの量などがA3紙一枚に解りやすくまとめられ、その裏面には、西多摩衛生組合が受け入れざるを得なくなった場合の、西多摩衛生組合がクリヤーしなければならない手続き等が詳細な流れ図としてまとめられている。
事態の推移に沿って訂正を加えながら、組合の正副管理者、議員などへの説明資料として使われ、これが組合関係者の判断時間の短縮に大きな貢献をしたことは間違いない。 その完成度は高く「この資料をみて、はじめて二枚橋衛生組合の焼却停止に伴う問題の全体像がわかった」と清掃関係職員をうならせたという話も伝わってくる。
現在、小金井の街にごみが溢れていないのは、西多摩衛生組合事務局の努力によるものだが、小金井市民がその恩恵を感じているようには思えない。 受入態勢が遅れて、たとえ1週間でも街に焼却するしかない不衛生なごみが滞る事態があったほうが、市民がごみ問題を真剣に考える契機になり良かったかもしれないとも私は思っている。
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自区内処理原則」は堅持されるのか ごみ市民運動はどのような選択をするか
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多摩地域の都市化が進む中で、羽村市と瑞穂町の砂利採掘穴に多摩の各自治体のごみが不法投棄されてきた歴史をもつ西多摩。 ごみ行政の不始末のしわ寄せが再び西多摩に押し付けられる形となり、ごみ戦争を経験してきた西多摩衛生組合周辺住民としては小金井市に同情する気にはなれないだろう。
今回の小金井市の不始末で「廃棄物の自区内処理」の思想は再びピンチを迎えている。 小金井市が予定する焼却場建設予定地選定の検討委員会などに関わろうとする委員や市民運動の言動が注目される。
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