ごみっと・SUN60号

 PHENIX 見学記
自治体のお悩み解決?!
容器包装プラスチックと生ごみの処理工場

ごみかん理事 江川美穂子

 

 家庭系ごみの中で、大きなウエイトを占めているのがプラスチックと生ごみ。
この厄介なふたつのごみは、自治体にとって、ずっと悩みの種だ。

 プラスチックについては、東京多摩地域では、西多摩郡日の出町の二ツ塚最終処分場を共有している26自治体中、すでに22自治体が、何らかの形で分別収集している。
品目はプラスチック全般のところもあれば、容器包装類に限定している自治体、ボトル類などの特定品目だけに絞っている自治体と様々だ。
容リ法に基づく「その他プラスチック容器包装」を収集している自治体でも、収集後の選別・圧縮・梱包といった中間処理を自前の施設で行っているところと、民間業者に委託して行っているところ、これから施設を予定しているところもある。

 東村山・清瀬・東久留米の3市は東村山市にある加藤商事に委託し中間処理しており、そこでは東村山市内約200世帯の家庭の生ごみも乾燥処理しているとのこと。
プラスチックと生ごみがいっぺんに見られる!ということで一石二鳥の見学会を企画し、ごみかん会員にもメールニュースで呼びかけて4月26日に工場を見学に行ってきた。


工場と出荷待ちのペール

33万人のプラ容器包装を一手に処理

 JR武蔵野線新秋津駅に集合し、車で約6、7分。加藤商事の『ECO工場フェニックス』は、東久留米市と隣接する東村山市の恩多町1丁目にあった。
近隣には柳泉園組合の清掃工場(清瀬市、西東京市、東久留米市で構成)もあり、準工業地域になっている。

 加藤商事は、廃棄物の収集・運搬・積替え保管・中間処理を業務とし、東村山市許可第1号を取得、2003年4月、恩多町に本社を移転した。
このエコ工場フェニックスでは、3市の容器包装プラスチックと、東村山市内の事業系・家庭系生ごみの処理を行っている。

 3市の人口は、合計33万人強。
その家庭から出される容器包装プラスチックが集まってくる工場ということで、相当大きな工場を想像していたが、敷地面積は車の出入りがあるので3300uほどあるものの、 建築面積585uと大変コンパクトな建物だった。
工場は開放型だが、近隣住民とのトラブルはないようだ。

 工場内に入ると、すぐ搬入ホッパーがあり、収集車から落とされたプラスチック容器包装類は袋に入ったまま搬送コンベアを上って、まず破袋機で袋が破られ、手選別ラインで容器包装以外の不適物が取り除かれる。


手選別ラインで不適物を取り除く

 次に圧縮機で1立方メートルのサイコロ状にしてビニールで梱包、その上からプラスチックバンドで結束して「ベール品」が出来上がる。
この一連の工程が建物内の右側のスペースに逆コの字型に配置されており、コの字の真ん中はベールの保管スペースになっている。

不適物は約一割、品質はBランク

 収集車からドサッと東村山市の指定袋に入ったプラスチックが下ろされた。

取り除かれた不適物
前日の雨の影響か、袋は結構濡れている。
中には汚汁が垂れている袋もあり、決してきれいな状態ではない。
中身の分別状況が気になる。手選別ラインは搬送コンベアを上がった2階部分にあり、不適物は下に落とすようになっている。

 不適物の袋を覗くと、乾電池や缶、ペットボトル、カセットテープやフライパンまで入っていた。
それらはまた東村山市に戻されるのだが、不適物の量は収集を始めた当初は全体の2割もあったそうだ。
現在は1割強程度になっているとのこと。
しかし、「返却品」のプレートの前には大袋がずらりと並んでいた。

 3市ともに言えるのは「ほとんどが洗っていない状態の容器包装が入っている」ことだそうだ。
夏場の作業が思いやられる。
保管されているベール品は、ビニール袋に梱包されているので、匂いは感じなかった。

 手選別ラインは9メートルあり、6人の作業員の手で不適物が取り除かれていた。
容リ協会のベール品の検査では、品質はBランク。
それらのベールは、昨年度は日本鋼管が入札し、高炉還元材として使われ、今年度は昭和電工が入札して、アンモニアガス化の材料として使われている。

さすが民間工場15時間稼動

 この工場は朝7時から夜10時まで稼動していて、作業員は2交代制。
機械は1時間当たり2t、1日32tの処理能力がある。
土日は休みだが、平日はフル回転だ。東村山市が今年1月から、清瀬市と東久留米市が昨年10月から分別回収を始めたところなのでまだ故障はないが、機械がストップすると1系列しかないので大変なことになる。
メンテナンスにはとても気を使っているとのことだった。

 気になる委託単価は、東村山市の場合、トン当たり3万6千円。
他の2市に比べ、東村山市は不適物の運搬費も含んでいるので、その分だやや高くなっているのだそうだ。

 自治体が自前の施設を持たず、民間委託で処理している場合、市民はその処理現場を目にする機会がほとんどない。
不適物の混入や汚れなどを改善するためにも、直接見学する機会を増やす、広報活動を頻繁に行う、などして啓発していくしかないと感じた。

生ごみをわずか10分で乾燥粉砕

 工場内の左側のスペースには、生ごみの乾燥粉砕処理装置があった。

乾燥された生ごみ
こちらもコンパクトな装置でスペースもとらず、「入れてたったの10分で出てくる」という説明にびっくり。
この時はすでに作業が終わっていたが、装置から出てきた処理物が袋に入っていた。

 細かく粉砕されて香ばしい匂いのする茶色い処理物は、日高市の千成産業鰍ノ1sあたり2円で販売している。
千成産業では、鶏糞、牛糞などとブレンドし、ミックス肥料として全農などを通じて販売しているそうだ。

生ごみの集団回収システム

 現在、東村山市の家庭の生ごみ約200世帯分がここで処理されているが、その回収システムは注(下記)のようになっている。

 この処理装置は5000世帯分の生ごみの処理能力があるそうだ。東村山市の許可業者としては、家庭の生ごみの受け入れを優先的にしていきたいと考えているので、今はレストランやコンビニ、福祉施設などの生ごみも回収しているが、事業系には営業を拡大せず余力を残している、とのこと。

 課題は、生ごみに油分が多いと、処理物が冷めた時に固まりやすい、ということで、これをなんとかしたい、とのことだった。

 市は、生ごみ1kgあたり25円の回収処理費を加藤商事に支払っている。
可燃ごみとして収集・焼却・埋立てするよりずっと安く、しかも処理物は有益な原料として流通に乗っている。今後の拡大にもっと力を入れるべきだろう。
この乾燥粉砕処理装置自体の価格は7千万円だそうだ。

 例えば、自治体の焼却施設の建替え時などに、このような生ごみ処理設備を併設できれば、焼却量はかなり減らせると思う。
回収システムがうまくいけば、有力な選択肢の一つになるのでは?…と思った。

 

〜〜〜生ごみ集団回収実施までの流れ〜〜〜

@ 一緒に活動する方が5名以上集まったら代表者と排出場所を決め、
  市の秋水園に『生ごみ集団回収団体登録申請書』を申請してください。
A 市から代表者宛てへ『生ごみ集団回収団体登録通知書』をお送りします。
  ※通知書が届いた後に、バケツを購入してください。

B 生ごみを保存する専用バケツ(抗酸化溶液配合容器)を購入していただきます。
  専用バケツの購入価格は2,835円(消費税含む)です。

C 専用バケツを購入された方は、市の秋水園へ『専用バケツ購入費補助金交付申請書』
  を各世帯で申請してもらいます。
  ※申請時には、バケツ購入時の領収書が必要になります。
  ※個人情報等の記入がありますので、参加世帯の方で個別に申請してください。

D 専用バケツ購入補助金を各参加者宛に振り込みます。
  補助は1世帯1容器で購入額の1/2(10円未満切捨て)の補助金額(1,410円)です。

E 専用バケツに生ごみを入れておきます。
  生ごみの分別方法は、『入れていいもの・いけないもの』を参考にしてください。

F 毎週1回生ごみを決めた排出場所に専用バケツを出します。
  専用バケツのフタと本体には、氏名を必ず記入してください。

G 市の委託業者が専用バケツ内の生ごみのみ回収します。
  からになったバケツは各自、責任を持って速やかに回収してください。

H 回収された生ごみは、業者の処理施設で資源化されます。

東村山市ホームページより

 
見学を終えて…感想・意見など
 

NPO地球環境・共生ネットワーク 技術委員
星野 豊

 各市でごみの分別が試みられていますが、プラスチックごみの分別もまだ不十分で有機物汚染されたものが含まれ、悪臭を発しています。
作業者の健康や周辺への衛生面からも排出者の注意が必要です。
埼玉県・蕨戸田衛生センターを見学した祭、悪臭の対策として、ごみピットやリサイクルセンター内の臭気対策に有用微生物資材(EM活性液)が霧状に噴霧され、悪臭が抑制されて効果が認められています。
今年度は、焼却施設のプラットホームや焼却炉にも投入を拡大するため、EM活性液を作る拡大培養装置が増設され、7月には、見学が出来るようになります。

 東村山市の200軒の水切りした家庭の生ごみは、抗酸化バケツに入れて温度の低い場所で一週間保管され回収されています。
悪臭がないのかの質問に対し、2年間処理しているが、バケツのふたを開いて悪臭のあったものはないとの回答でした。

 生ごみには植物性や動物性の乳酸菌や酵母など多くの微生物が付いています。
水分をよく切る、腐敗し悪臭のあるものを入れないようにするなどの点に注意すれば、良質の堆肥が出来ます。

 東村山市の実績のある方式は、コンポスト・微生物資材・電気処理器などを試みたが長続きしない人や、忙しくてできない人に試してもらう価値があると思います。

  
東京都国分寺市
永澤 公子

 8年ほど前、名古屋市で藤前干潟の埋立地計画が白紙になり、プラスチックを東海製鉄のコークス炉でケミカルリサイクルするようになった。
私の住む東京国分寺市でも、当時の担当課長が新日鉄と交渉し、試験的にモデル地区で収集したプラスチックをリサイクルするようになった。
その頃、国分寺市は二ツ塚最終処分場に大量の不燃ごみを搬入し、ワースト1の課徴金を払っていたが、この方法で埋立てごみを大幅に減らせるようになり、その後、全市的に容リ法に乗せて処理し始めることになった。

 私は、昨年の夏、一ヶ月間、米国の息子の家に滞在して、毎日食事ごしらえをし、あちこちスーパーへ買い物に行く体験をした。資源浪費国のアメリカはさぞ無駄に資源を使っているだろうと思っていたが、実情は全く反対だった。
どのスーパーでも、野菜や、魚は、パックなどにしてなくて、すべて量り売りで買えるのである。
各売り場の隅に薄いポリ袋がぶら下げてありそれにほしい物を欲しいだけ入れればよい。
商品の並べ方も、レタスだろうが葉物であろうがラップなど全くなしで、山積みのままである。
たまにゴミ箱にトレイが入るのは、息子がニューヨークの日本人社会向けのスーパー“八百半”に出かけて鮮魚を買ってくる時だけ。
私は、米国流のこの簡便な商品の扱い方に何の不便も感じなかった。

 プラスチック資源ごみがどんなに合理的に資源として処理されているとしても、今回の見学で、あの大量の、ありとあらゆる種類の包材を目の当たりにすると、何のためにこんなに包材が要るのだろうかと感じざるを得なかった。
消費者が欲しいのは包材でなく中身なのだから。

東京都多摩市
岩永 ひさか

 「廃プラ施設」はなぜ必要なのか?自分たちが‘ごみ’の生産者であることを忘れてはならないとの思いを一段と強くした見学会だった。

 多摩市では廃プラの中間圧縮処理ラインの増設をめぐって周辺住民との対立が起きている。それが行政区境ということがさらに問題を深刻化させている。
その対立の現場を目の当たりにしながら思うことは、私たち一人ひとり…この際、居住地は関係なく、みんなが被害者であり加害者であるということ。
そして、このような見学会に参加するたびに思うことは、黙々と作業する人たちの汗に私たちはどのくらい思いを馳せることができるのだろうか?ということ。
私たちの想像力が問われている。そこに何よりも解決の路があるのではないか?

 すべきことは‘ごみ’をつくらない社会に変えていくこと。分別の現場を見れば、私たち一人ひとりのマナーが問われていることを思い知らされる。

 手元から排出された‘ごみ’は既に他人事の領域。‘ごみ’は行政の仕事…。行政は多額の税金を投入して‘ごみ処理’をしている。
だから本来は‘自分事’なはずなのに。税金を納めているのだから…で思考停止はできないなぁ。
行政にすべてお任せしているのだからとイコールではないはず。
そして、一番の被害者は未来を生きていかねばならない世代であるということ。
誰しもが予測しなかった事態、そのツケが‘ごみ’の問題に端的に示されているのではないかと思えてならない。


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