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ごみかん

ドイツ特派員の

理穂です

第 7 巻

 

ごみっと・SUN 59号
第37回 地球にやさしい省エネ電球

 
 省エネ電球が注目を浴びている。海面が上昇し、大嵐で家が吹き飛び、暖冬で雪が降らない。
環境保護対策を一刻も早く打たなければ地球はもたないと、新聞で毎日取り上げられている。
それを受け、誰もができる対策のひとつとして脚光を浴びているのが、省エネ電球である。

 省エネ電球とは、同じ電力消費で数倍もの明るさを出し、かつ寿命が通常の電球の5〜10倍長いもの。例えば15ワットの電力消費で明るさは60ワット分の電球がある。
値段は約6ユーロ(1,000円)と初期投資は高くなるが、一日3時間つけるとすると6年もつ。
通常の電球なら1年で寿命である。
これだと2年で元が取れる計算になり、長い目で見るとお得である。

 例えば通常25ワットの電球なら、5〜7ワットの省エネ電球で置き換えることができる。
40ワットなら7〜11ワット、60ワットなら11〜16ワット、75ワットなら15〜20ワットである。
100ワットの場合は20〜23ワットとなる。通常の電球はエネルギーの5%しか明るさに還元していないが、省エネ電球は25%と効率がよい。
同じ明るさなら、通常の電球よりも75〜80%の電力を節約できる計算となる。

 昨年ドイツでは5千万個の省エネ電球が売れた。全世帯の四分の一は、少なくともひとつ省エネ電球を利用している。
もしすべての電球を省エネ電球に置き換えたら1年で8.5テラワット時を節約でき、これはドイツの石炭発電所二つ分となる。

 しかしスイッチを入れてから完全に明るくなるまで2分ほどかかるため、短時間しか利用しないところには向いていない。
また人が感じる明るさと、実際の明るさは異なるため、少し明るめのを選ぶとよい。
最近は「温かみのある白」「日の光のような白」など4種類あり、好みによって選択できるようになった。

 オーストラリアは2010年より省エネ電球だけを使うよう決定。
他国も追随すればオーストラリアの全電力の5倍が節約できると呼びかけている。
またキューバでは電力供給が十分でないため、2005年から15ワット以上の電球の輸入を禁止している。
欧州連合(EU)25カ国は2020年までに電力消費を20%削減することを決議しており、ドイツでも省エネ電球の使用義務化を検討している。

   私も友人に教えられ、7年ほど前から使っている。周りでも普通に使っている人が多い。
エコロジーなだけでなくエコノミーだから、節約好きなドイツ人にひろく受け入れられている。
最近はディスカウントショップでも扱うようになり、どこでも手に入るようになった。
スイッチを入れるとじわりと明るくなるから、寝起きでも目に痛くない。
環境にやさしく、かつ人にもやさしい優れものなのだ。


ごみっと・SUN 60号
第38回 再生可能エネルギー、 ドイツで順調な伸び
…欧州全体でも目標を設定…

 ドイツでは再生可能エネルギーすなわち、太陽、風、水力、バイオマスなどによる発電が順調な伸びを見せている。
前政権のときに2010年に全体の12.5%を再生可能エネルギーでまかなうことを目標としていたが、本年中にも達成の見込みとなった。

 2020年には20%を目標としているが、このままいけば27%達成が予想されている。特に海上での風力発電とバイオマスが大きく貢献するとみられている。

 再生可能エネルギーの年間の増加量は、原子力発電所一機分の年間電力に相当し、環境大臣のジグマー・ガブリエルは「環境保護に寄与するだけでなく、原子力発電からの撤退にもつながる」と話している。
またここ2年間では再生可能エネルギーの分野で5万人の雇用が新たに発生しており、全体では21万4千人が従事している。

 再生可能エネルギーは2000年の買取法により、買取価格が固定されていることから、採算が取れることが保証されている。
エコロジーなだけでなくエコノミーでもあることから、一般の人を含めて多くの人々が参入し、劇的な増加につながった。
その買取価格を支えるための費用は消費者に分配されるており、国民一人あたり年間約50セント(80円)となっている。

 欧州連合25カ国も気候変動に危機感を持っており、2020年には再生可能エネルギーを20%にするという共通目標を定めている。
経済界の力が強い国レベルでは、環境に配慮した施策は通りにくい。だからこそ国を超えた欧州レベルでの決定が重要で、欧州連合のレベルで環境に関する政策の95%が決定されている。

 ドイツは他国に先駆けて20%という目標を達成できる見込みから、欧州で先駆的な役割を果たしている。
欧州議会でドイツは緑の党が13%を占めており、同議員のレベッカ・ハルンスは「ドイツが成功するか否かで、他国の対応も変わってくる」と話す。
ここ30年、ヨーロッパでは環境や気候保護に配慮する緑の党のような政党が各国で生まれてきたが、東ヨーロッパではいまだ皆無。
欧州全体では現在、電力の約8割を石油に依存しており、各国が真剣に取り組まないと目標達成は難しい。


ごみっと・SUN 61号
第39回 水素バスでエミッションゼロ

 ハンブルクには水素で動くバスが走っています。市内を縦断し、市民の足として活躍しています。
これは欧州委員会の水素プロジェクトとして2003年に始まったもの。
ロンドンやマドリッド、シュツットガルトなどヨーロッパの9都市で実施されています。
ハンブルクは当時3台のバスで始まりましたが、
現在は9台。ダイムラークライスラーが開発した、同プロジェクト専用のバスです。

 ハンブルクではHH2プロジェクトとよばれ、市民に親しまれています。
9台は路線バスとして運行され、日常生活に溶け込んでいます。

 普通のバスは90人乗りですが、水素バスは60人。重量が重いからです。
運転手は運転に関して特別訓練を受けているだけではなく、乗客からの質問にいつでも答えられるよう準備しています。
車体側面は水素をモチーフにしたデザインを利用し、観光客にもアピールしています。

 水素バスの利点はなんといっても排気ガスが出ないこと。
出るのは蒸気だけですから、環境にやさしい。また騒音や、ガソリンエンジン特有の振動もありません。
限りある化石燃料ではなく、水素という無限にある資源を使っています。

 水を電気分解して気体状の水素を取り出す際の電気は購入していますが、「グリーン電気」証書を持った自然エネルギー。
ですから水素バス運行は再生可能エネルギーのみで実行されているわけです。燃料となる水素は水素スタンドで供給されますが、これはノルウェーの会社(Norsk Hydro)が開発したもの。
ハンブルクでは水素バスについて、定期的に一般の人を対象に体験講習会を開いているほか、同プロジェクトを契機に有害物質の出ない、CO発生抑制に有効な駆動装置技術について情報発信しています。

 水素バスのプロジェクトは他でも進んでおり、例えばヨーロッパをはじめ中国やオーストラリアなど10都市で47台のバスを走らせようという計画も進んでいます。

 水素プロジェクトには、バスの運行そのものだけではなく、水素を実用化するにあたってのインフラ整備や、水素ガスの取り扱い、また使いやすい水素スタンドの開発などすべてが含まれています。
技術的、環境的、経済的な側面だけでなく、市民の理解も必要。そのためにも簡単で安全かつ迅速な水素の取り扱いができる状況を整えることが重要です。


ごみっと・SUN 62号
第40回 ドイツの再生可能エネルギーの現状

 ドイツ環境省はこのたび、再生可能エネルギーの現状について報告書をまとめた。これによると2007年中にも本来2010年の目標であった、再生可能エネルギーは総エネルギーの12.5%達成の見込み。2006年には229億ユーロ分の再生可能エネルギーが生み出され、21万人以上がこの分野に従事。1億トンのCOが削減された。

 再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスから作り出される電気や熱エネルギーのこと。
ドイツでは温暖化防止と環境保全、持続可能な発展を目的に2000年に再生可能エネルギー法を設置。買い取り価格を固定することで、2010年には2000年の倍の再生可能エネルギーの利用を目標とした。
すなわち2010年までに全エネルギーの12.5%を、また2020年までに20%、2050年には半分ををまかなうことを目標としている。
実際は予想以上で、環境省ではエネルギー変換・使用の効率化を進めれば、2020年までに25〜30%が達成可能と見ている。

 再生可能エネルギーによる電力発電は1990年には1万8000GWhだったが、2006年には7万4000GWhと大きく増加。総電力の5.8%を占めるまでとなった。
再生可能エネルギーによる発電の内訳は風力41%、続いて水力が29%である。
風力発電は2万メガワットの容量をもち、ドイツの総電力の5%にのぼる。
太陽発電については日本の3倍で、世界一の950MWp(注)を誇る。
熱エネルギー(温水や暖房用)はバイオマス(主に木材)が94%と主流である。

 ドイツは2002年4月に脱原発法を採択し、現在稼働中の原子力発電所は老朽化に伴い、順次停止することを決めている。
しかし2005年には28%の電力が原発でまかなわれており、代替品が必要なのは明らか。再生可能エネルギーを推進するとともに、省エネとエネルギー効率化を進めることが必須である。

 また連邦政府は新築の建物については少なくとも15%、古い建物については10%の暖房エネルギーを再生可能エネルギーでまかなうよう推進している。
現在、総暖房熱の6%しか再生可能エネルギーは利用されていないが、ソーラーやバイオマス装置設置に補助金を出し、2020年までに14%を目標としている。
環境大臣のガブリエルは「気候変動を前に、われわれの将来は再生可能エネルギーにかかっている」とし、積極的に推進に取り組んでいる。

 注:MWp=標準試験条件(日射強度1000h/u、太陽電池温度25度など)の状態に換算した太陽電池パネルの最大出力の単位。

ごみっと・SUN 64号
第41回 環境ゾーン Umweltzone

 2008年1月1日より、ベルリン、ケルン、ハノーファーの各市が市内中心部を環境ゾーンとし、車両排気ガスの規制を始めた。
高濃度の排気ガスを出すディーゼル車やトラックを締め出すのが目的で、ゾーン内に進入するには濃度基準をみたしていることを証明する浮遊粒子状物質ステッカーをフロントガラスに貼っていなければいけない。

 ステッカーは赤、黄、緑の3色あり、色は96年以降の欧州新車排ガス基準(EURO2,3,4)のどのレベルを満たしているかによって決まる。
赤は今年いっぱい、黄色は来年末まで有効で、2010年からは緑のステッカーのついた車両しか進入できなくなる。

 この規制は2000年に欧州連合で決められた指針に基づくもの。
年間35日以上排気ガスの濃度が基準を超えると規制を実施することになっており、ハノーファーをはじめ多くの大都市が基準を上回っている。
ドイツでは全部で69都市が環境ゾーンの導入を予定しているが、
その中でもハノーファーら上記3都市が、全国に先駆けて実施した。

 ステッカーなく進入した場合、40ユーロ(約6400円)の罰金となる。
海外の車はステッカーなしでも進入できるが、ドイツの車両はすべてステッカーが必要。
ステッカーは全国で使用でき、5ユーロ(800円)で排気ガスの濃度を証明すれば役場や認定車検場で手に入る。
基準を満たしていない車は改造が必要で、また改造が不可能な古い車両は年間の走行距離に応じてお金を払えば進入が許可されることがある。

 
 ハノーファーでは市内中心部をぐるりと囲むように160箇所に標識が立てられ、ドライバーの注意喚起している。
ハノーファー市内には車両が24万台あるが、1月初めの調査では64%しかステッカーを所持していなかった。

 同市では濃度基準違反日が2006年には56日を数えたが、2007年は14日のみ。
そのため規制の必要はないと、州の商業組合などが反対していた。
車の買い替えが必要となる人もおり、負担が大きいとの声もある。
また車両の排気ガスは、空気中の有害物質の5%を占めるにすぎないとあって、環境ゾーンの
有効性に疑問を投げかける声もあがっている。
警察は5月までは暫定期間として罰金を課さない方針で、市は市民への周知に力を入れている。

ごみっと・SUN 65号
第42回 環境エネルギークラブとエクアドルプロジェクト

 ハノーファーにあるケーテコルビッツギムナジウム(小学5年から高校4年まで)では「環境エネルギークラブ」が中心となって、学校全体でエコ政策を実施。
そこから発展したエクアドルプロジェクトでは、熱帯雨林の保護やエコセンターの建設、自然エネルギーの利用を進めている。

 同校では1990年に「環境エネルギークラブ」が発足。
実験を通して太陽熱や風力発電のしくみを知り、エネルギー消費を意識することで、環境や気候保護について考えてきた。
各クラスに二人環境マネージャーをおき、「扉を閉めて暖房の熱を逃さない」「こまめに明かりを消す」など学校ぐるみで省エネやごみ削減に取り組んでいる。

 2000年にはハノーファーでエキスポが開かれ、同校は環境問題に熱心だとして「エキスポ学校」に認定された。
これを機に太陽発電装置や太陽熱温水器、エネルギー消費表示パネルが設置され、ますます生徒の意識を高める結果となった。

 また構内で再生紙を利用した文房具を販売したり、雨水の利用を促進、中庭を環境にやさしい構造に改造するなどさまざまな角度からエコロジカルな活動を続けている。

 エクアドルプロジェクトには教官のラインハード・ベッカーさんのもと、生徒約30人が参加。環境や自然についてだけでなく、他の文化に触れることで、他者とのかかわり方やグローバル化について学ぶことができる。

 毎秋12,3人が現地を訪れ、寄付を募って購入した3000uの森で、現地の若者と協力しながら活動。
自然エネルギーの利用を通じて現地の人々の生活改善を図るほか、植林をして土壌改良や原種保護にも取り組む。
太陽発電装置や太陽熱温水器、小さな風力発電装置を設置したほか、現地の人にワークショップを開いて、レンガの造り方や、ソーラークッキングの伝授なども行っている。

 昨年エクアドルに行った生徒の一人、イスバー・バイフォイさんは「他の文化を尊むということを学んだ。
現地の村は貧しいが、生きる喜びがある。親切に受け入れてもらい、感激した」と話す。
このプロジェクトは将来、ヨーロッパボランティア活動として国から支援を受ける予定で、いつかエクアドルの若者をドイツに招待したいと頑張っている。

田口理穂 ごみかんドイツ特派員


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