ごみっと・SUN58号
 

 特集 ごみかん新春座談会

ごみ担当行政職員、大いに語る!


 

新しい一年が始まりました。
今年最初のごみっと・SUNの特集は『ごみ担当行政職員、大いに語る!』

 一般廃棄物の処理が地方自治体の仕事とされ、次々に生産される新商品や処理困難物に悲鳴をあげながらもごみ減量に向けて市民と向き合い仕事に打ち込むごみ担当職員の皆さんに一度、
本音で語ってほしい、というのがこの特集の発端でした。

 日頃の仕事を通して感じていること、苦労や喜び、市民への要望など市民も交えて、予定していた2時間と場所を変えての1時間半熱い熱いディスカッションとなりました。

 ごみかん会員(個人約350名・団体12)の中には行政のごみ担当者もかなりいらっしゃるようですがさて、その代弁となりますかどうか?!



語った人
  さん
 … 凸市のごみ担当職員
  さん
 … 凹市のごみ担当職員
  さん
 … 市民
  さん
 … 市民
 司会
 … ごみっと


 司会
 今日はお忙しい中、事務所までおいでいただき、ありがとうございます。
 行政職員のAさんBさんともに、ごみかんのセミナーや交流会によく出席していただいていますので今回は、ざっくばらんにお話してくださいね。
 では、まずは簡単に自己紹介を。


  さん
 1959年生まれ、47歳です。ごみ担当は通算8年ほどになります。
途中4年は他の部署でしたが、戻ってきて3年です。
 中抜けで出戻ってきてみると「市民参画・協働」ということが進んでいて、以前にはなかったことだったのでびっくりしました。
 市役所の仕事はいろいろありますが、ごみの世界は数量で示せるので、減ったり増えたり、
その原因を探ったりと、奥が深いです。
市民の皆さんと一緒にやるウエイトが高くなっていますが、未だに慣れないところもあります。


  さん
 1966年生まれ、年が明けると本厄です。(笑)
ごみはH15年4月からですから、3年半が過ぎたところです。
児童館や交通対策、社会教育部の体育課などを経て、今のごみ減量、啓発の担当になりました。

 私の場合、前の担当でも何らかの形で市民の方との接触が多かったのですが、今もさらに深く一緒にやっているという感じです。


ごみ行政の位置と市民との協働

 司会
 行政の中でのごみ行政の位置づけ、というか重要度はどんな具合ですか?


  さん
 位置づけは高くしてもらっていると思います。
家庭ごみ有料化も終わり、次の手を考えているところです。
歴史的にみても、ごみ量のランキングが下から上にと上がってきたことで、市政の中でも高い評価をしてもらっています。


  さん
 うちはたぶんトップ事項でしょう。
家庭系ごみの有料化への賛否も含め、毎回議会でも質疑がありますし、市民の関心もかなり高いと思います。
色々な面でフル回転でやってきた一年でした。


 司会
 「市民との協働」が、ごみでは特に必要と言われていますが、それぞれの自治体ではどうでしょうか。


  さん
 ごみ行政の中での市民参画は、環境基本計画策定が最初です。
 その後、同じく市民参画でごみ処理基本計画を、H13年6月からH14年3月までに、策定しました。
その推進母体としての市民団体が今も活動中です。


  さん
 市政全般で言うと、前の市長の時に自治基本条例ができて市民協働が明文化されました。
 ちょうど2000年にはごみの収集方法の見直しがあり、市民に呼びかけて、いっしょにごみ減量を進めていくための団体ができ、行動計画の策定にも関わってもらいました。
今もさまざまなアイデアを出してもらって、いっしょに取組んでいます。


こんな市民には泣かされる

 司会
 一般的に市民と接していて、悲しくなること、困ることもあるかと思います。どんなことでしょうか。


  さん
 うーん、これから増えていくのかな、とちょっと心配になるのは、ごみ減量推進員さんなど地域から推薦してもらうような場合、定年退職して地域デビューで推進員になる男性がよく見受けられます。

 研修会で清掃工場や最終処分場などへ見学に行くと、実際にさまざまな知識を持っていらっしゃるのはわかりますが、そういう男性は往々にして自己主張しすぎる傾向があります。
あまり専門的な話題になってしまうと、説明会や見学会全体がしらけてしまうということもあります。
グループに溶け込むのが苦手というような方もお見受けしますね。

 女性の方が社会進出は先で、スムーズにいくのに比べると、これから団塊世代の大量退職時代のスタートで、どう団塊世代を受け入れていくか、心配な部分もあります。


  さん
 ごみ行政の中での市民参画は、環境基本計画策定が最初です。
 電話の苦情なんかを聞いていると、行政に対して一言持っている方は、自己主張が激しく、肩書きで判断する方が多いです。
 「オマエじゃわからないから、上司を出せ」と…。

 女性はひたすらしゃべって30分聞いてあげればいいですが、男性はむずかしい。
相対で話をした方が早いので、出向いていくこともあります。
そうすると、その奥さんがご主人に「いい加減にしたら」と意見してくれることもあります。

 一緒になって攻められるケースもありますが…。
家庭ごみの有料化をしているので、いろいろとサービスを求めてくる人もいて、窓口に怒鳴り込んできたり、ということもあります。


  さん
 うちはごみの部署が不便なところにあるので、怒鳴り込んでくるケースはあまりないです(笑)。

 収集の苦情でも、一方的に、自分のとこだけ特例的にやれと言われたり、無理難題を言って非を認めない、そういう人はプライドを傷つけてしまうと、もう収まりがつきません。
出向くと住まいも見た目もとても立派だったりするんですが…。


  さん
 そうなると、もうこれははっきりいって税金の無駄使いですよね。一人の市民にそんなに時間割いていいのかなぁ、と。

 お話を伺っていると、これは私たち男性にありがちなんだけれど、学校を出て企業社会だけで育ってしまっている人は、いわゆる一般社会の経験というのがないんですよ。
社会的な訓練ができていない、自己中心的な人が多いみたいです。


カギは退職した男性の地域デビュー

 司会
 市民と一口に言っても、実に幅広いですから大変ですねぇ。
ごみかんの理事は男性と女性がほぼ半々です。その中でCさんは退職後、市民活動で知恵と
技術を発揮していらっしゃいますが、地域デビューが成功した秘訣は何だと思いますか?


  さん
 私は高度経済成長の時代に会社に入りました。先ほどの話では「年代の差が大きいのでは?」と思いますね。

 私の場合は、社会訓練はもっぱら妻と生活する中で、身につけていったというか。妻は専業主婦でしたが生協活動を熱心にやっていました。
今、私が市内のごみ関係の市民活動でも、ちゃんと専業主婦とも付き合っていけるのは、妻から話を聞いていたからとも言えますね。


 司会
 なるほど、Cさんの退職後の活躍は、奥さんの長年の教育の成果なんですね!


  さん
 そうすると、そういう訓練ができていない方の地域デビューは、まず仕事や専門性とは無関係の、趣味の会、例えば、絵画教室とかウォーキングの会から始めて、さまざまな人とのコミュニケーション訓練ができてからテーマ性のある市民活動に入ってくるのがいいかもしれませんね。


  さん
 私は男性ばかりでなく、同姓の女性にも注文がありますよ。
 女性は、とにかく、余計なお世話をしがち。どうでもいいことなのに自分のやり方を押し付けておせっかいをすることも多いです。
そうすると、押し付けられた市民の方は反発して、ごみのことは嫌になってしまう。

 また、市民活動も古手の団体になると、排他的になりがちで、バランス感覚がなくなって、新しい人も入れず、後継者が育たないケースも見られます。

 男性にしても、女性にしても、どちらも専門分野のエキスパートとして、それこそ知識やノーハウを生かさないと、「もったいない」ですよね。
培ってきた仕事や活動の蓄積を、上手に生かして人の輪を広げていくことが大事ですね。


ごみの仕事、これが醍醐味!

 司会
 だいぶ話が白熱化してきましたが、次は、ごみの仕事をしてきてうれしいなぁ、と思うことは何ですか?


  さん
 やはり、私のセクションについて「元気がいいですね」と市民の方や外部の方から評価された時でしょうか。

 市の立場で他の自治体に行って話をするケースもありますが、そのような評価を受けるとうれしいです。
それに、他で話をすると、多摩地域とその他の地方とでは、危機感がまったく違うということも実感します。非常にがんばって切磋琢磨している中での評価はうれしいですね。


  さん
 私は、市民の方に評価してもらった時です。
仕事で、市民との連携がスムーズにいって、ほめられるのが一番うれしいですね。


 司会
 BさんもAさんも、ごみかんの市民ごみ大学セミナーには、熱心に参加していただいています。
それだけ、自分の仕事に生かそうという熱意があるということですよね。

 Bさんは、市民とのごみのキャンペーンの時には、啓発グッズを自費で買ってきたり、作ったりするそうですが、きっとそういう熱意溢れるノリが、立場を超えて、協働する市民の方にも評価されるんでしょうね。


今後のごみ行政…どう考える?

  さん
 ところで、行政内の組織の仕組みとして、将来像として委託をどうするか、ごみ処理・リサイクルを行政がどこまでやるのか、ということは、どう考えますか?


  さん
 組合が強いところは、収集などに直営も残っていますが、逆に今は、リサイクル施設など、指定管理者制度などの話もあるようです。ただ、民民ベースで採算がとれるのか…。

 ごみは減らさなくてはならないというのが前提ですから、ごみや資源で収益性をもたせるということと、その自治体との政策と関わってくる部分ですね。

 確かに、ごみやリサイクルに行政が手を出しすぎたというところはあります。うちは年間31億円、毎年小学校をひとつ作るだけの税金をごみにかけている。
しかし、何でもコストだけで考えるとごみはすべて燃やしてしまえ、となってしまう。

 また、市民に委託するということは、いかに地域密着型の良質なサービスを提供できるか、ということで、一部の首長の考えのように「市民に委託する=安くあげる」ということではないですから。


  さん
 安かろう、悪かろうでは困ります。
NPOとの協働でも、最低限、自己責任で行動できる市民ということになります。


  さん
 その自己責任というのは、何なのか、ということですよね。

 市民も充実感があるのはわかりますが「市民をうまくタダ働きさせている」と、うがった見方もできますから、「うまく使われない」ためには、市民団体もお金のことをちゃんとはっきりさせておくことも大事だと思います。
今は表面に出さなすぎると思います。対等な形にならないと。


 司会
 行政も、市民の善意だけに頼り過ぎないということですね。


  さん
 実際に「こんなにやってもらっちゃっていいのかな」と思うこともあります。


  さん
 実は、そのことに関連するんですが、協働が進んでいき、行政も今は模索中です。
難しいのは、ごみ問題は、かなりストイックなまでに進めている市民と、まったく野放図に分別も減量もないという市民に二極化してしまうのではないかという危惧もあるんです。

 ですから、ごみの分別など、市民から市民へ話していく啓発効果は大きく、今、新たな仕事を、市民団体と新しい形でやっていこうとしているところです。年明けには、委託団体が確定します。


ごみのスペシャリストを目指せ!

 司会
 それは楽しみですね。
さて、話は変わりますが、同じごみの担当でも、職員によって温度差はないですか?


  さん
 多少の温度差はあるでしょうが、目標もゴールも同じですから。


  さん
 しかし、現場や市民と接している職員とそうでない職員とでは温度差がやはりあると思います。
 また、民間やNPOとの協働の場合、職員が3年で異動してしまうのではどうしようもないので、
ある程度、専門職を育てろ、ということも市民側からでてきています。


  さん
 そう、エキスパートな職員の必要性は、これからますます必要になってくると思います。
特に多摩地域ではごみ減量の施策も、もうそこそこし尽くしたという段階に入ってきますから、
これからは、効率性についてもNPOとの協働についても新しい段階に対応できる職員が出てくるかどうかで、まったく違うと思いますよ。
また、仕事への熱意、関心の深さなども市民からいっそう問われてくるでしょうね。


  さん
 私は、NPO活動をする前は、マーケティングのコンサルをやっていたんですよ。
クライアントから仕事が来ると、次々にいろんなテーマで仕事を受け持つんですが、1年たてば、
プロとして通用しなくては話にならない。

 行政の職員だって、NPOとの関係性、専門性、環境に対する熱意、すべてに自覚を持って1年やれば専門家とみられて当たり前です。
例えばごみのセクションにきたら、1年で専門家になってやるという気持ちでやる、そういう業務への取組み方というのは他のセクションに移ってもノーハウは蓄積できますからね。


  さん
 へぇ!Cさんの昔の仕事の話は初めて聞きました、Cさん、前の仕事の話ってほとんどしませんよネ。道理で退職後NPO活動に入っても即戦力なわけですね。


 司会
 これからCさんのように、生きがいを求めて退職後に市民活動を始める人が増えていきますから、行政もしっかりしないといけませんね。


  さん
 うちの職場には、希望して入ってくる職員もいるんですよ。
ひと昔前だと、ごみの部署に志願するということは、あまり考えられないことですが、今、ごみをやりたい職員が増えてきています。

 以前は、ごみの部署に異動だと言うと「オマエ何か悪いことでもやったのか」と言われるような具合だったですから。


 司会
 それだけ、やりがいのあるセクションだということでしょう。
生き生きと職員が仕事しているのは、市民にも伝わりますから職場の雰囲気はすごく大事ですよね。

今日は、お忙しい中、快く職務としてお出でいただき、貴重なお話を伺い感謝しています。
どうもありがとうございました。




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