ごみっと・SUN55号
15市町が合併した

新政“新潟市”のリサイクル
ハットリ・モリゾーが行く !
全国各地の
前向きな
環境の取組みを
紹介します。


 地方分権の推進や少子高齢化対策などのため行財政基盤を強化しようと、全国で市町村合併が進んでいます。
自治体数も2004年3100、05年2500、06年(4月現在)1820と、2年足らずの間にずいぶん減っています。
合併は廃棄物行政においても、自治体ごとにばらばらな分別や処理方法を揃えなければならないなど新たな問題が生じています。
 05年に15市町が広域合併した新潟市も、そうした自治体のひとつ。処理方法の統一をめぐって模索する新潟市のリサイクル事情をレポートします。

プラスチックリサイクルの歩み
 新潟市(現新潟地区)は1996年にプラスチック類の分別収集を始めました。
「容器包装リサイクル法(容リ法)」でプラスチックが対象容器になったのは4年後の2000年ですから、プラスチックリサイクルの草分けと言えます。

 リサイクルに踏み切るきっかけは、焼却炉の大きさを現状維持のまま建て替えることでした。市は(財)廃棄物研究財団の報告を受けて廃プラスチックの油化(注)処理を検討、市内にある歴世礦油(株)がプラスチックの油化プラントを建設しました。
96年、新潟プラスチック油化センターが竣工。しかし、試験運転を始めた矢先に火災事故が発生しました。
同じトラブルは、通産省(現・経産省)の実証実験としてプラスチックを油化していた東京都立川市でも起こっています。試行錯誤を繰り返し、新潟プラスチック油化センターは99年に新潟市のリサイクルを受託、油化処理を続けてきました。

 それまで西新潟地区だけで行っていた6分別を、97年に東新潟地区にも拡大。前処理施設の受け入れが困難なため埋め立てに回していましたが、02年に「プラスチックセレクトセンター(鰍oSC)」が稼動して選別を受託、全市でプラスチックリサイクルが始まりました。

 容リ法施行後、同市のプラスチック製容器包装は、独自処理から容リ法に替わり、新潟プラスチック油化センターが容リ法の契約業者として同市分を落札、リサイクルしてきましたが、今年度は落札できず、厳しい状況に立たされています。

プラスチック類の一括収集と選別
 容リ法以前にリサイクルを始めた同市は、現在まで「プラスチック類」という区分で集めているため、他の自治体以上に収集後の前処理が欠かせません。

 選別施設であるPSC鰍ヘ、新潟市役所から日本海沿いの国道を15分ぐらい走ったところにあります。
同社の代表取締役である小泉晴意さんの案内で施設を見学しました。

 選別工程を簡単に紹介しましょう。まず破袋機(風力選別付き)でフィルム系の軽いプラスチック、一次選別機で食品トレイなど軽いプラスチックが除かれてひとつのコンベアに流れます。
残った固形プラスチックは二次選別機で、さらにペットボトルとそれ以外のプラスチックに選別されます。
コンベアごとに2、3人が傍らに立ち、不適物を除きますが、他の施設に比べコンベアがゆっくり流れているため、余裕が感じられました。臭いもほとんど気になりません。

 プラスチックの分別には、容器包装の分かり難さや汚れ、容器以外のプラスチック処理など固有の問題があり、どの自治体にとっても悩みの種ですが、新潟市のように収集後に分けるというのも選択肢のひとつです。混合収集することで収集車の台数を節約できるのもの利点です。
しかし、乾電池が入ったままの玩具や注射器、傘など資源化できないものが混入するなど、問題がない訳ではありません。

 また、びんと缶も混合収集し、資源再生センター「エコープラザ(啓発施設と選別施設)」で選別しています。
磁選機でスチールやアルミ缶を選り分けた後、生きびん(リターナブルびん)を抜き取り、ワンウェイびんを色別に分けますが、車から降ろしてコンベアに乗るまでにかなり割れてしまい、ガラス片が散らばるコンベア上の作業はハラハラしました。

15市町の分別と処理方法の統一
 分別方法の統一などを検討する市の清掃審議会は、6月に現在埋め立てている容器包装以外のプラスチック類は焼却する、プラスチック製容器包装を週1回、ペットボトルをびんや缶と共に隔週に集めるなどを方針とする中間まとめを出しました。

 14市町の中で、巻町など4町は一部事務組合を作ってシャフト式のガス化溶融炉を建設し、02年からプラスチック類を焼却に切り替えており、分別の変更は難航することが予想されていますが、資源化が進む地区に比べ明らかにごみ量が多いため、市の担当者は分別を統一することで資源の質を上げ、ごみを減らす意向です。

 現在、新潟地区では約10%の容器包装以外のプラスチックを選別するのに1億円かかっており、経費削減も大きな課題です。
小畑正敏・廃棄物対策課長は「埋め立て経費約7千万円を加えて1億7千万円の経費が削減できる」と、処理方法を変更することに期待を寄せています。

ごみの有料化、減量をめざして
 新制・新潟市の人口は新潟地区が約50万人、その他の区が約30万人です。新潟地区を含む3地区(56万人)以外は、ごみの有料化を実施しており、統一が課題となっています。

 資源を除くごみ量(2004年度)は有料地区が1日1人559グラム、同じ有料でもガス化溶融炉でほとんど焼却している巻広域組合(4町)が791グラム、旧新潟市など無料地区が718グラムで、有料化と資源分別の効果が読み取れます。
市は調整を取りながら、全市で有料化し、手数料も統一する意向を示しています。

 人口80万人になった新潟市は来年4月に政令指定都市になる可能性が高く「政令都市で最も少ない456グラムの広島市に続きたい」(小畑課長)と、2011年までに570グラムを目標にごみ減量を目指しています。

 自治体が合併した際に、処理方法などを調整した結果、リサイクルが後退してしまうことも少なくありませんが、新潟市には来たるべき政令指定都市としての自覚をもって、ごみ行政に取り組む姿勢を感じました。

*注*油化=廃プラスチックを加熱、溶解、熱分解、気化させ、気化したガスを冷却して生成油に還元する

ごみかん理事 服部美佐子
  


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