ごみっと・SUN52号
PRESS PICK UP

町田市の廃プラ処理施設「住民が待った!」


市町村を悩ますプラスチックの処理…
  「ごみっと」紙上でも再三に亘って取り上げてきました。
容器包装リサイクル法の制定後、焼却や埋立てという「ごみ処理」から「資源化」に切り替える自治体が年々増えています。
容リ法での資源化は、市町村が分別収集したプラスチック製容器包装から異物を取り除き、ベールという1メートル四方の塊に圧縮して梱包し、リサイクル業者に引き渡す決まりになっています。

 東京都町田市では、公募で決まった民間業者がそうした圧縮・梱包施設を設置することになったのですが、その建設に市民が「待った!」をかけ、大々的な集会の様子などが新聞に報道されました。
市民が出した請願が昨年12月の市議会で採択され、計画は「凍結」状態になっています。

 久々のプレスピックアップは、この施設建設問題を中心にプラスチック処理、市民運動のあり方まで、町田市民のAさんとごみかん編集委員会のBが対談しました。

 
行政不信が引き金に
 10月頃、新聞でこの問題を知ってインターネットで『廃プラ処理施設』と検索したら、
真っ先に「町田市廃プラ施設問題を考える八王子・相模原・多摩・町田市民の会」のブログが出てきました。
その時点ですでにやり取りも多くて、これを見て集会に出てみようと思った人もいるのでは。
 市議会の環境委員会で説明があったのが8月末。
その前から市報に業者を公募していることが出ていたので、傍聴した市民もいたわけですが、この委員会で初めて予定地が明らかになりました。
市の事業ではないので行政説明だけで、議員からの質問も出なかったそうです。

 それから、あのブログで情報が広まって、9月末に初めて業者が開いた説明会に多くの市民が集まったわけですね。
そういえば、廃プラスチック処理施設を作る計画は今回が3度目ということですが。
 最初は1999年に市の審議会で「プラスチック製容器包装を資源化する」という答申が出て、小山田地区に予定されたのですが、処理施設が集中していることや杉並中継所の周りで健康被害が起きたことで住民の理解を得られませんでした。
 2度目の時の候補地はモデル的に分別回収をしていた南地区で、2002年に業者も決まったのですが、安全性の議論が再燃してだめになりました。

 今回の場合、市の経過説明を読むと、民間業者に設置してもらって、その施設を使って資源化しよう…と業者を公募し、申し込んだ2社のうち轄イ久間に決定。
佐久間は10月に予定地として小山ヶ丘2丁目を確保、とあります。これでは、まるで市が業者に丸投げしたような格好ですね。
 問題はそこです。予定地が分かって、周辺の人たちが行政にヒアリングしたときも
「その施設は市が造るわけではないから」というような回答だったと聞いています。
 町田市のプラスチックを資源化するのに業者にお任せで、説明会にも出ないなんて納得できません。
それに予定地は準工業地帯ですが、八王子との市境でそちらは住宅地域です。
 その後、市は町田で2回、八王子で1回説明会をしましたが、すでに白紙撤回の署名運動が地域に広がっていて、抗議が激しく流会同然になったりしています。

 2度の失敗に懲りたのならば、行政はなおさらていねいに進めるべきで、市民参加の検討委員会を作るなどやり方はいくらでもあったはず。
アカウンタビリティ(説明責任)が当たり前の時代、これからの行政は市民を遠ざけるのではなく、うるさい市民(笑)こそ取り込むほどの度量がないとうまくいきませんね。
 12月議会で市民の請願が採択され、「市民合意が得られるまで計画は凍結」ということになりました。結果的に振り出しに戻りましたが、これでよかったと思います。
2月に市長選があり、争点になるかもしれません。

 その通りで、行政の責任は大きいと思います。今後、担当者に対してきちんと反省を求めるべきでしょう。
ただ、行政の無策や進め方を批判するだけではなく、杉並中継施設を引き合いに出し健康被害を理由にして反対したことはどうでしょう。
市民側にも反省点があったと思いますが。
 初めの頃、小さな子どもをもつ若いお母さんたちから相談を受けました。
ごみについていろいろ知っている人なら別ですが、初めて化学物質がどうこうという情報が流れて不安になった人は多かったと思います。

廃プラスチックをどうするか
 町田市は他市よりリサイクルが進んでいると聞いて、10年ほど前に見学に行ったことがあります。
職員の説明ぶりにも先進自治体の気構えを感じました。
ところが、その後、武蔵野市を初め多摩地域で次々にプラスチック製容器包装のリサイクルが始まって、追い抜かれてしまった感じですね。
 確かに、町田市も昔はよかったですね(笑い)。
でも今、特にプラスチック類は、私たち市民は不燃ごみとして分けているのですが、せっかく分けて回収したプラスチックをリサイクルせずに市の焼却施設で燃やしています。

 この騒ぎで、あの町田市がまだ資源化していないことを知った人も多かったのではないでしょうか。
処分場の搬入規制をクリアーするためだと思いますが。
 横浜市や大阪市のような大都市でさえ、プラスチックの全量焼却からリサイクルに切り替えています。
予算確保が難しく施設が作れない自治体はたくさんありますが、町田のケースは珍しい。
 いち早く資源化の方針が出たのに、初めの失敗が尾を引いて、住民は行政に対して不信感があると思います。

 「プラスチックの資源化」というのは、行政が一方的に打ち出したのではなく、市民も参加した審議会の答申だったはず。
 ところが、昨年11月に5,000人規模の住民集会の記事を読むと、「有害物質が発生する危険性がある施設を行政が秘密裏に進めた」という主張になっています。
 確かにごみ問題としてとらえると、この騒ぎはどうだったのかなという気がします。
私もそうですが、燃やさないでリサイクルをして欲しいと考えている市民はたくさんいますから。

 杉並区の中継施設は、見学したことがありますが、プラスチック製容器包装をベールに梱包する施設とは圧縮の仕方が全く違います。施設を混同しているようです。
また資料には「資源化と焼却を比べ、COの排出量が多い」など、リサイクルを否定することまで書いてあります。
ですから、ごみ問題に関わってきた人たちの中で反感を覚えた人も多かったのです。
 12月1日の市報はごみの資源化特集として、これまでの経過や杉並の中継施設や町田で予定しているのと同じ圧縮保管施設周辺の環境データを載せています。
 こうした情報を早く出して、市民に明らかにすべきだったと思います。
そうすれば、冷静な論議もでき、市民を巻き込んだごみ減量政策への弾みともなったはずです。

 今ごろ、という市報ですが、経過について書いてあっても、「業者にお任せで悪かった」と反省している訳ではありませんから、そこはきちんと抑えておかないと。
 ただ、行政のやり方が間違っていたから、何を言ってもいいということにはならないと思います。
たとえ大学教授であっても、多摩地域に同じような施設があるのですから、しっかり見て担当者や市民の話を聞いて、正しい情報を入手すべきです。
また容リ法自体に反対している人の考えだけ聞いて、専門家の提案とするのは偏っています。
 急速に広がった運動だったので、さまざまな人が参加して、問題点もあったのではないでしょうか。
 行政との新たな関係を築いてくためにも、間違った情報を流した人たちがあとで気づいてくれて、きちんと反省できるかどうか、それも大事ですね。

 子どもたちのため、とか、未来のため、という理念は、行政も事業者も同じだと思います。
でも、どんなにごみ減らしの努力をしても、プラスチック製容器包装のごみは出てくるし、恩恵にもあずかっているという現実から逃れることはできません。
ごみの施設というと排ガスを撒き散らす、みたいな決めつけ方はどうでしょうか。

 発生抑制はもちろんしなければいけないけれど、ゼロにならない以上、燃やすのも
ダメ、資源化も「NO!」なら、プラスチックごみを自宅に貯め込むか、いっさい使わない生活をするしかなくなってしまいますよね。

市民と行政の協働のあり方
 町田市にはごみ関係の市民団体のネットワークがあって、長い間、集団回収などもしていて行政とは足並みをそろえてやってきました。
市民参加のしくみは早い時期にできましたが、審議会などもこの組織から出ることが多く、行政にとってもやり易いという状態が続いています。
いまだに行政はお任せください、という古い体質です。
 それを聞いてよく分かりました。今の体質を変えないと先に進みませんね。
日野市のように、市民と一緒に検討して、結果については市民も責任をもつという自治体が増えています。
武蔵野市でも、行政と近い団体がありますが、団体内部で改革して行政との関係性も運動の質も変えています。

 町田市の場合、2回失敗して、次は業者にお任せですから、何も学習してないとしか言いようがありません。
施設建設をめぐる問題で表面化した訳ですが、行政不信や旧態依然とした市民との関係がどう改めていくか、ですね。
 まず、学習能力のない担当者を代えた方がいいですよ。私が市長だったら、そうしますけれど…。(笑い)
 施設の問題ですが、税金でプラごみを焼却している限り、事業者の負担は生じません。無駄な容器包装を減らせるのは事業者で、その責任を強めるための第一歩が資源化です。
資源化するためには施設が必要だという前提に立たないと先に進めません。 

 新市長にはぜひ的確な人事を期待したいです。
ただ、町田市民にとって必要な施設でも周辺の八王子市民が納得するかどうか。
迷惑施設を歓迎する人はいませんから。
 隣接した他市は関係ないということにはなりませんよ。
周辺住民の理解は必要です。予定地の選定も初めから市民参加ですればよかったと思います。
今後 市民が参画した検討委員会を作って、今の場所が適地でないという判断が下されたら、業者にお金を支払っても断念するしかないのではないですか。

 それはそれで揉めそうですが。ともかく、市民と行政が一緒に計画を進める土台を作ることですね。
真剣にごみのことを考えている市民が中心になって、焼却に逆戻りするのは止めさせたいと思います。
 いろいろお節介なことを言ってしまいましたが(笑い)ついでに言うと、集会に人をたくさん集めたり、説明会が空中分解したりすると、マスコミは飛びつきますが、行政はますます硬化してしまいます。
地域の人が中心になって行政に変革を迫ることが大切だと思います。
 三鷹と調布で計画中の処理施設もガス化溶融炉ありきで進んでいたのが、両市の
市民の働きかけでガス化溶融炉ではなく、ストーカ炉になりました。 

 話しているうちに、これからの方向性が見えてきたような気がします。
うちの市もまた昔のように、先進自治体として評価されるようになればと思います。


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