ごみっと・SUN49号
環境にこだわる 水俣市の取り組み
ごみかん 理事 服部美佐子

 

 この夏、熊本市の「R(リユース)びんを広める会」と「Rびんで(筆者注:焼酎を)飲む会」に呼ばれました。容リ法の話をさせていただき、その足で水俣市を訪ねました。

 水俣駅を降りると真正面、わずか100メートル程のところにチッソ工場の正門が見えます。
メチル水銀をたれ流し水俣病を引き起こした工場が、今もこの地で操業するのを目の当たりにして、複雑な思いでした。

 水俣病は1956年に公式確認され、来年50年という節目の年を迎えます。
この間、世界に類のない公害に苦しんだ水俣市では、水俣病を教訓に「環境」にこだわったさまざまな取組みが始まっています。

生きびんも回収!売り上げは地域に分配
 今でこそ、ごみを細分別する市町村は珍しくありませんが、水俣市は1993年に起こった小型ボンベの爆発がきっかけになってその後徐々に分別を増やし、98年には20分別に踏み切りました。
現在は22分別、右の写真のように色別のびんからペットボトルまで大半がコンテナを使って収集しています。

 中でも、特徴は「生きびん(リユースびん)」(次ページ写真)と生ごみの回収です。
焼酎などの900ml.びんは立てて運ぶように専用のケースが用意してあります。
ほとんどの市町村では、砕いてリサイクルするワンウェイびんしか集めていないため、ビールびんなどの生きびんが出されても傷がついて使えないという話を聞きます。

 容リ法では「リユースびん」は「酒屋〜びん商」ルートのように自主回収が基本。「分別不適合物」となっていて行政回収から外されています。
3Rの救世主である「リユースびん」がワンウェイびんとは別の土俵に追いやられているのです。

 水俣市が回収したびんの売上げは年間600万円。
ごみかん会員でもある「ごみ減量女性連絡会議」の坂本ミサ子さんに伺ったところ、お金は26ある行政区ごとに還元、分配された5〜60万円の使途は全く自由で、お祭りに使ったり、ごみの置き場を作ったりいろいろだそうです。

広域処理になっても炉の大きさは変わらず
 次は広域処理になったのに「焼却炉の大きさをほとんど変えなかった」という、うらやましい話です。

 水俣市は自前の焼却炉で燃やしていましたが、施設の建て替えを機に、芦北町(田浦町と合併)、津名木町と共に一部事務組合として「広域クリーンセンター」を建設、2003年から稼動しています。
水俣市の人口は現在29,700人、両町を合わせると倍近くになります。ところが、単独焼却炉は日量20トン2基の40トンでしたが、新炉は43トン1基で、たった3トンしか増やしていません。

 理由のひとつは1市2町が「生ごみ」を分別収集、堆肥化を始めたことです。集めた生ごみは隣の芦北町の山中にある民間業者「葛g永商会」で堆肥化しています。水俣市では山林や農家の多い地区は自家処理できるため、1〜8区、17〜22区が対象地区を決めて回収しています。
いずれにしても、可燃ごみにはほとんど生ごみが入っていないのです。

 しかし、過疎化が過大な炉を必要としないという別な側面もあります。
水俣市の人口はピーク時の4万人から徐々に減っています。
さらに、敷地内には財政的に難しくて取り壊すことができない旧炉が残され、用地面積、処分場の延命化を理由にガス化溶融炉が選定されました。

 また、市では「産廃処分場建設」という新たな問題が持ち上がっています。
予定地が水源地であり、水俣病の二の舞にしてはならない、と市民は反対運動を展開、議会も反対を表明しています。

しかし、すでに事業者が用地を購入しており、市長は「エコタウンなど企業から出る産廃は市外に持ち出しているのに、一切持ち込ませないのはどうか」として中立な立場をとっており、今後のゆくえが気掛かりです。

生分解プラの収集袋とシール
 生ごみの集め方と中身のチェックについて紹介しましょう。
まず回収には生分解プラスチックの袋を使っています。
生ごみ収集のことを聞きつけた業者が袋を持ち込んだそうです。
生分解プラには賛否両論ありますが、生ごみと一緒にそのまま堆肥化できるので、こんな使い方ならありかな、という気がします。
680ヵ所、週2回の収集で、生分解プラの袋は高いため5リットル18円、10リットル26円、と有料(実費)になっています。

 そこで職員に「生ごみを無料の可燃ごみの袋に入れてしまうのでは?」と訊ねたところ「ほとんどない」との応えでした。
可燃・不燃ごみ、さらに資源の有料化までが議論される中、特筆すべきことでしょう。

 さらに、袋の中にプラスチックなどの異物が入っていた場合は、委託業者がグリーンのシールを貼って回収し、計量のために運び込むクリーンセンターで袋を開けて取り出しています。
このシールは、例えば本物の葉っぱとプラスチックが区別できないような視力が衰えたお年寄りのために考えた方法だそうです。
分別できない袋を見つけ出すという発想ではなく、福祉的な意味合いであるところに、ほとんどの人はきちんと出しているという自信が伺えます。

みなまたエコタウン
 現在、日本のエコタウン事業は全国で24地域あります。水俣市はその13番目として2001年に国の認証を受けました。
チッソが埋め立てて他社に転売し、そのままになっていた工業跡地20ヘクタールを市が買い取って整備した水俣産業団地を、総称して総合リサイクルセンターと呼んでいます。

 家電、廃プラスチックなどのリサイクル施設と肥料製造施設など8施設が稼動しています。経済産業省と環境省が自治体の申請を受けて地域を指定、エコタウンに相応しい事業には2分の1の補助金を出しています。
水俣ではリユースびんの洗浄とリサイクル工場、廃プラスチックのリサイクル工場の2つが選ばれました。

 お話をうかがった市商工観光課の島田竜守さんの口からは何度か「環境モデル都市」という言葉が聞かれました。
廃棄物関係の工場が集中してしまうなどエコタウン事業を一概に肯定することはできませんが、パンフレットに書かれた「水俣病によって疲弊した水俣市を再生する」「水俣病によって分断された地域社会の連帯感を再構築する(もやい直し運動)」の言葉には共感を覚えます。

新たな試み焼酎びんのリユース
 そのひとつ、びんのリユースとリサイクルを手がける鞄c中商店・エコボ(ecology-bottle)水俣の専務田中利和さんにお話を伺いました。 熊本、宮崎、鹿児島の南九州3市には240社余りの清酒、焼酎メーカーがあり、その60%のメーカーが900ml.(旧型)を使っています。
出荷量約1,100万本/年のうち、770万本が地元で消費されています。田中さんは900ml.びんのリユースに積極的に取り組み、市民たちと共に1月に旗揚げした「Rびんを広めよう会」の事務局も担っています。

 また従来40〜50%に上っていた不良びんを何とかしようと、酒造メーカー4社の了解を取り付け、ガラス会社にRびんの設計を依頼しました。
しかし、最初はいくつものメーカーに断られたそうです。

 最初はいくつものメーカーに断られたそうですが、最終的にはガラスびん協会が引き受けて、実際の製造を山村ガラスが担当し、2年前から環境省の実証事業として認可を受け、補助金を得て本格的にスタートしました。

 現在125万本のRびんで焼酎が販売され、85%は業務用で、その内約30%が回収され新しいメーカー3社で再使用されています。
市場は主に九州ですが、東京でもRびんの芋焼酎を飲むことができるそうです。でも、ほとんどは飲食店だとか、残念!

 回収はびん商を通じて、野菜などを運ぶトラックの帰りの便を使って南九州に戻すそうです。
回収には2年程度の時差があるため、まだ回収率は一桁に過ぎませんが、だんだん高まると思われます。

 洗浄工程を見学しましたが、人手は傷や汚れの検査が主で、化学臭もなく、音も小さく、環境にやさしい容器であることを再確認しました。

   隣の八代市役所にも「Rびんを広めよう会・八代」ができ、「南九州900ml.茶びん統一リユースモデル事業」は芋焼酎に加え、まもなく熊本の米焼酎(熊焼酎)のメーカーも参加するそうです。

 Rびん入り芋焼酎、今回の熊本行きですっかりファンになり、1本抱えて戻りました。
店頭にはさまざまな形のびんが並んでいますが、銘柄で選ぶ焼酎は、統一のRびんで構わないはず。
折りしも焼酎ブーム、南九州からの発信を受け、全国どこでもRびんで飲めるようになれば、と思います。


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