ごみっと・SUN48号
ごみかん的見学記
   愛 ・ 地 球 博

 
  愛知万博が開かれています。
ごみっと読者の中にはすでに行かれた方、予定されている方もいるのではないでしょうか。
思い起せば、一昨年前、容リ法改正で初めて経産省と意見交換をした際、名刺に「モリゾー&キッコロ」を発見。「イラスト入りとは官僚もソフト路線か」なんて能天気なことを思ったり…。

 その後も経産省の肝いりで進んだ「愛・地球博」、環境に配慮した会場作り、環境負荷の少ない交通手段や新エネルギーなど、環境に配慮したさまざまな活動を紹介して「環境」のてんこ盛りになっています。
実際はどうなのでしょうか? 

ごみかん理事 服部美佐子

       
税金の無駄遣い!

  現地報告の前に「愛知万博の失敗を静かに見守るサイト」などアンチ万博サイトを参考に、にわか勉強で問題を探ってみました。
昨年の今ごろ、自動車メーカー・トヨタ(豊田市)にリサイクルの話を聞きに行ったのですが、折しも大々的な道路工事の真っ最中でした。
豊田から万博会場の長久手まで新しい道路を造っている、とタクシーの運転手さんに教えてもらいました。気になる建設予算は別な道路と合わせ7500億円なり。

 会場へのアクセスの目玉となった「リニモ」は、リニアモーターカーとモノレールを合体させた愛称。
リニアといえば、電磁波に対する不安や莫大な走行コストなどで、とっくにお蔵入りと思っていましたが、こんなところで息を吹き返すとは。
見た目はモノレールですが、磁力で車体が浮いているそうで振動がなく、乗り心地は困ったことに?快適でした。
でも、万博が終われば無用の長物です。

 造成やらパビリオンの建設には1350億もの税金が注ぎ込まれたそうです。
5月の連休に入場者数を挽回したようですが、予想を下回ればさらに何億円も上積みされるのでしょうか?

環境万博で消えた森

  一方、会場造成のために自然も壊されました。
主な会場となった長久手町には「愛知青少年公園」という自然豊かなオアシス的空間があったそうです。もうひとつの会場になった瀬戸市の「海上の森」ともども森林が伐採され、パビリオンが造られました。
 長久手会場と瀬戸会場を空中で結ぶ“モリゾーゴンドラ”は鉄塔建設に反対したマンションを隠すために、到着寸前に幕がかかり瞬時に視界が遮られます。
このゴンドラも閉会後は撤去される予定です。

 「地球市民村」はNPO・NGOコーナー。
寝転んで天井のスクリーンに映し出される空を眺めるという部屋があって、某広告会社が手がけたようですが、人工的すぎて落ち着きません。
毎月5団体1ヶ月単位で出展するNPOには、万博協会から600万円の経費が支払わますが、物産展まがいの団体もあり、選び方に首を傾げたくなりました。

プラントは立派でも中身は?

  NEDO(新エネルギー・産業技術開発機構)が中心になって、いま注目の燃料電池(注1)、太陽光発電、電力貯蔵システムを組み合わせて(経産省の)「長久手日本館」の消費電力をまかない、ハイブリッドバスを動かすという実証実験が行われていました。
会場から出る生ごみをメタン発酵させてバイオガスを取り出します。来場者が捨てた生ごみは使えないため、レストランなどが対象。
しかし、NEDO・新エネルギー開発部の高須賀邦充さんの説明によると、燃料電池は「生ごみが少ないため3分の2は都市ガス」です。
施設は独特の臭気がなく、フル稼動には程遠い様子。他に高温ガス化システムによって木材や廃ペットボトルから取り出したバイオガスも使っています。

 しかし、廃ペットも廃材もいったん外に持ち出しリサイクル業者で粉末にして持ち込むため、手間も経費もかかります。
他に2種類の燃料電池と3箇所に設置された太陽光パネルの発電を組み合わせて、「長久手日本館」に330kwから真夏は1600kw供給するというのですが・・・。

 長久手と瀬戸会場を往復する「燃料電池ハイブリッドバス」の乗り心地はまあまあでしたが、都市ガスを3分の2も使っていると思うと…。
いろいろな新技術を制御して電気と熱を生み出すシステムはまだ実験途上でした。
そびえ立つ生ごみ発酵層やガス化プラントがもったいないと思ったら、「中部空港に移して実験を続ける」とのこと。

9種類分別のごみ箱

  入場者は予想を下回っていても、超目玉の冷凍マンモスの頭部やロボットなどが展示してある人気のパビリオンなどでは2時間待ち状態。
大勢の人たちが飲んだり食べたりすれば、出てくるごみもハンパじゃありません。

 会場では、ごみ減量で名を上げた名古屋市の分別を見習ってごみステーションが用意されています。「燃える」「燃えない」「新聞・雑誌・パンフレット」「飲み残し水・氷」「紙コップ・紙パック」「ペットボトル」「プラスチック類」「生ごみ」「割り箸」の9種類で、燃えるごみが3、プラスチックが2あるので合計12箱。
 箱と言っても上下部分以外は透明な袋状で中身が見えます。トイレの入り口など場内に56箇所ものごみステーションがありますが、昼食を挟む2時間はごみのピークで、委託の回収業者が日に何回か回収しても間に合わない場合もあるとか。

分別指導はボランティアの手で

  ごみステーションの男性スタッフに声をかけました。
解説しながら生ごみの中から取り出したストローを「プラスチック類」の箱へ。
ちなみに生分解性プラスチックの弁当箱は「生ごみ」、ラップは家庭用が「燃えるごみ」で、事業用は「プラスチック類」と決められています。

 あちこちで無理やり「環境」を取って付けた中で、ごみ分別だけは地に足が付いている気がしないでもありませんが、押し寄せるごみをここまで細かく分別をさせるのは無理があります。
名古屋市民にとっては日常的な分別作業でも、全国からの来場者の分別方法とは異なります。

 「同じプラスチックでも燃えるところに入れたり、燃えないごみに入れたり、いろんな人がいる」という分別マンの何気ない言葉に、プラスチック処理の問題が浮き彫りになります。

 分別マンはすべてボランティア。
1日5時間で3交代だそうです。アンチ・サイトでは、官僚の天下りや利権で潤う人たちがいる一方で、目標15,000人ものボランティアを募集することを批判していました。
まずは彼らの家族や親族を駆り出すべきと…。
財団法人2005年日本国際博覧会協会の会長は(社)日本経済団体連合会名誉会長ですから、万博の仕掛け人がどんな方々か分かりますね。

生分解プラスチックのリユース食器?

  万博にはたくさんの飲食店が出店しています。
協会がごみ同様に気にしたのは、その飲食器類。生分解性プラスチックを使っているらしい、という情報を元に探しました。
どこの店でも使うのかと思いましたが、尋ねた店は普通のプラスチックの食器。何だか話が違います。何軒目かで“バイオマスプラスチック製食器”を発見!

 使い捨てだけではなく、写真の通りリターナブル食器も用意されていました。バイオマス(生物資源)の素材はとうもろこしのでん粉から取り出した乳酸。
生分解プラの評価は分かれると思いますが、チラシには「バイオマスニッポン総合戦略」「国家事業として推進し積極的に導入」とちょっと引いてしまうような文言が並んでいます。
中途半端な使われ方といい、リターナブルなら陶器で充分と思いつつ、アメリカの穀物大商社であるカーギル社もからんでいるようでどうも怪しい。

 再びごみ分別に戻りますが、飲食店でバイオ食器よりも徹底されていたのは分別です。
使われるものが限られている上、表示の仕方も工夫してあるので、見事に分けてあります。年配の女性が連れの男性に指示をする微笑ましい光景も。
個人のごみは持ち帰り、飲食店のごみは種類別に分別というのが最も相応しい気がしました。

負の遺産を語らない日本館

  ごみばかり追いかけた万博でしたが、30分待ちで長久手日本館に入りました。
竹篭のドームと壁面に並んだ苗床は心地いいのですが、映像で地球の環境破壊を見るあたりから現実感が薄れていきます。

 歩く歩道に乗って見せられるのは、60年間でいかに暮らしが便利になったかという繁栄の生活史。1950年代から年代ごとの塊で、レコードからCDに、手絞り機付きの洗濯機から全自動に、白黒からカラーテレビに、黒電話から携帯電話に…、展示内容は豊かな暮らしを辿っても、発想は貧困です。

 ここで本来見せて欲しいのは、便利な生活を目指した社会の負の面。水俣病やカネミ油症、四日市、豊島、日の出など命を奪い、環境を破壊した「負の歴史」です。

   メインテーマに『自然の叡智』、サブテーマの1つは『循環型社会』を掲げた愛・地球博。お土産を手に帰路に着く人々を横目に「環境商法」という言葉さえ浮かびます。これだけ多くの来場者に枕詞ではない、中身のある“環境”を伝えられないものかと、もどかしく思います。

 来年は水俣病公式確認から50年という節目の年を迎えます。あれから50年。
環境省では「水俣病に関わる懇談会」が立ち上がりました。
負の遺産を語らず、国と産業界、それに追従する自治体や宣伝紙と化したメディアとともに繰り広げられる万博という祭典を検証する必要がありそうです。


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