生ごみもプラスチックもいっしょにして、生分解!

日高市・太平洋セメント工場

 

 かつて経験したことのない猛暑に見舞われた日本列島。
炎天下を歩くだけで汗が滴るような日でした。敷地を進み1450℃以上の高温を保っているという「焼成キルン」(全長60m)の真下をくぐった時は息苦しく、このまま身体が溶けてしまうのではないかというほどの熱さでした。

 二年ほど前、実証実験中の市原エコセメント工場(千葉県市原市)を見学しました。
一部建設中だったピカピカのプラントは
「ついにセメント業界がごみ処理に乗り出した」
という勢いを感じました。

 ところが、この日「青梅の水とごみを考える会」が主催する見学会に参加して訪れた「太平洋セメント埼玉工場」(埼玉県日高市)は、「斜陽」という古臭い言葉が当てはまってしまいます。
 歩きながら、赤茶色の錆が幾筋も線を引く休止
キルンを見上げると、「セメント業界も不況なんだ
な〜」としんみり、市原とはまさに正反対の印象です。

焼却を断念し、休止キルンでごみ処理

 日高市では「紙くず、生ごみ、木屑、プラスチック、ビニール、靴、皮革製品等」を「資源化ごみ」として収集、2002年12月からセメント工場で処理しています。
1973年に建替え計画が挫折、その後焼却にこだわらない、新たなごみ処理を模索していました。
93〜97年、地元の日本セメント(現太平洋セメント)との協同で固形燃料化の研究を進めましたが、うまくいかずに断念。

 98年に太平洋セメントから、休止キルンを利用した新技術の提案があったというのが簡単な
イキサツです。

 焼却炉や処分場などの公営の施設建設が困難な現在、民間の技術や施設に任せようという
発想は自治体にとって「渡りに船」であるだけでなく、企業はごみで新たな事業展開ができる訳で、双方にとって「いいこと尽くめ」みたいですが、果たしてそうでしょうか?

 
ごみ処理は新旧二つのキルンで

 工場は約280,000uという広大な敷地面積を有しています。
日高市のほぼ中心にあり、1954年に建設されてから、地元企業として象徴的な存在です。

 元々セメント工場では、原料として石灰石や粘土等のほかに下水汚泥や石炭灰など、燃料として重油や石炭のほかに廃タイヤや農業用ポリエチレンフィルムなども使用しています。

 日高市の方法は一般ごみそのものを普通セメントの燃料にする「AKシステム」といわれるもので、既存のセメント工場を使えるのが特徴です。

 流れを説明しましょう。
まず、市内で回収した家庭ごみと事業系ごみ約60t/日を新設の「資源化キルン」(回転がま)にそのまま投入します。
空気を吹き込みながら低速回転すると、キルンで「好気性発酵」が行なわれます。3日ほどかけて有機物はほとんど分解されて出てきます。

 できた分解物を「セメント焼成キルン」で石灰や粘土などと一緒に原料として投入します。
4年前、三多摩地域では「エコセメント」計画が進行中で、同じ「太平洋セメント」のつながりで、
「日高のごみを考える会」の昆野雅代さんに呼ばれました。
すでに翌年早々の実証実験が報道されていた時期でもあり、「太平洋セメント頼みのごみ行政にしないために、ごみ半減計画など具体的な施策を」と話を結んでいます。

 今回見学をして、やはり「これでごみは減るの」という疑問が浮かびました。
びっくり仰天のチラシやパンフ、お金のことなど、その辺の話は後編で紹介したいと思います。

 ごみかん理事 服部美佐子


トップページへ