ごみかん
ドイツ特派員の
理穂です
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第 5 巻 |
ごみっと・SUN 47号 第25回 市民の力で風力発電を ♪
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ハノーファー郊外に立つ、風力発電“マティーナ”。 風力発電装置にはいつも名前がついています。フランスの芸術家がデザインしたマティーナは高さ85メートルで、本体に色とりどりの水玉模様がついています。 夜になると発電量に応じて光る仕組み。遠くからでも見え、地元の人に親しまれています。
ハノーファーにあるヴィンドヴェルツ(Windwaerts=風上へ)という会社は、風力発電装置建設のお手伝いをしています。 場所の確保、建設許可の取得、そして出資者を募ります。マティーナのプロジェクトもその一つで、ハノーファーで万博が開かれた2000年に完成しました。
現在、同社には約30人が勤務。1994年に風力でやっていくと会社方針を決めてから2000年までは厳しい状況でした。 風力発電装置が建設されて初めて収入になるのですから、先行投資がかかる。 普通のエンジニアの3分の1程度の給料しか払われなかったけれど、その分会社の共同経営権を持つという形で補いました。
2000年の自然エネルギー買取法の改正により、風力は投資の対象として見合うようになりました。 ドイツ全土で増え、現在では電気の約6%を風力が生み出しています。
現在の買取価格は法的に1KWあたり8.5セントに定められており、20年間保証されています。 ですから現在建設プロジェクトに出資すれば20年で270〜280%になって帰ってきます。 現在は12のプロジェクトが進行中で、各プロジェクトには百から四百人が参加。最低3千ユーロからで、1万から1万5千ユーロ出す人が大方を占めます。(1ユーロ=約140円)
1991年に自然エネルギー買取法が施行されてから、太陽や風力などの分野で徐々に増えてきましたが、当時は環境のためにという意識の高い人たちのみが参加していました。 2000年の法改正以降は、エコロジーはエコノミーと、ビジネスとして参入する人が増加。何かを広めるには法的な整備が不可欠で、その分野での雇用が増えれば、安定度は増します。 現在は再生可能エネルギーの分野は躍進していますから、従来の化石燃料重視の政治家もうかつに自然エネルギー反対を唱えることができません。
代表のルトゲンさんは「百年後には自然エネルギーが主流となり、石油やガスを地中から掘り出していた時代を博物館で振り返るようになるだろう」と化石エネルギーから脱却した未来像を描いています。
ごみっと・SUN 48号 第26回 家庭ごみの埋め立て禁止へ
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ドイツでは家庭ごみはそのまま埋めるのが主流です。 郊外を車で走ると小高い丘があちこちにみられますが、これは埋め立てられた後に土盛りをしたものです。
ごみは目に見えるところに積んでおいて「ごみが増えると大変なことになる」という意識を喚起するんだ、と以前ドイツ人から聞いたことがありますが、埋め立てできる場所がどんどん減ってきていること、また埋め立て地から有害物質が土壌や地下水に染み出るなど汚染が問題になっていました。
これを受けて6月からごみ処理法が変わり、家庭ごみについてそのまま埋め立てるのは禁止されます。 分別など前処理をして残ったものだけ埋め立てが許されることになり、全国各地で新しい形の処理場建設が急ピッチで進められています。
ハノーファーでもそう。 法律では家庭ごみを分別して、資源となるものは活用するというのが建前です。 「エコロジーなごみ処理」をコンセプトに、機械生物的処理とごみ焼却を組み合わせた処理場を建設。ハノーファー周辺約20市町村のごみを年間12万トン処理する計画で、2月から試験運転を開始。6月からは全面使用となります。
まず処理場に運び込まれたごみは、機械的に焼却可能なものと有機的なものに分別されます。全体の約3分の1が熱エネルギー資源として焼却可能となる予定で、例えばゴム類はセメント工場に売却して電気と熱の利用を目的に焼却してもらうことになります。 残りの3分の2は機械生物的処理場に回され、蒸気を加えるなど数週間かけて発酵処理し、バイオガスを抽出。 かすは埋め立てとなり、ガスはコジェネレーションで発熱、発電します。 電気は電力会社に売却するのですが、バイオガスは通常の電気よりも高いので、この電気販売収入で同施設全体の電気がまかなえる計算になります。
今回の法律改正により、これまでドイツでは少数派だった焼却処理が注目を集め、焼却炉がどんどん建設されています。日本に視察に出かけた人もいたとか。 確かに埋め立てに問題はあるのですが、だからといって焼却がいいわけではない。 機械生物的処理と焼却によるごみ処理ならば、現行のようにプラスチック類を家庭で分別する必要はないという声もでており、ドイツのごみ処理は大きな転機を迎えています。
ごみっと・SUN 49号 第27回 電化製品の処理は製造者責任で
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使い古された電化製品が、来年から無料で回収されることになりました。 「処理やリサイクルは製造者責任で行う」というもので、このほど連邦議会で可決。 来年3月24日から市町村のゴミ捨て場に持ち込まれた電化製品は、無料で引き取られることに なります。
コンピュータやステレオなどの電気製品のごみは1992年には118万トンでしたが、2000年には約210万トンと年々増加しています。この法律は処理の責任を製造者に求めたものです。 これにより電気機器に再利用可能な素材が使われ、またそれに伴う電化ごみの減少が期待されています。 同法は、法実施前に購入された電化製品も含まれ、製造者が不明なもの、もうすでに製造会社が存在しないものもすべて対象となります。
例えばハノーファーのごみ事業所では現在、コーヒーメーカーやラジオ、電話など35cmx35cmx50cm以下のものは、自分で所定の回収所に持っていけば無料で引き取ってくれます。 しかし洗濯機や冷蔵庫など大きなものは有料です。 自分で持ち込むと12.5ユーロ(1,700円)、自宅の敷地に取りに来てもらうと19.5ユーロ(2,700円)、アパートの部屋まで取りに来てもらうと29ユーロ(4,000円)、それぞれ一点につきかかります。
これが無料になるのですから、市民にはありがたいこと。 捨てるのは来年にしようと、さっそく電気製品を地下室に溜めている人もいるとききます。 産業界は当初、同法律に反対していましたが、回収は市町村が行うことで合意しました。 処理やリサイクル、輸送コストについては製造者が負担します。
同法は欧州連合(EU)が定めている基本方針に沿ったもので、EU圏内ではドイツが実施第1号になります。 また来年2006年7月からは合わせて、電気機器への特定の重金属や臭素処理した防火剤などが使用禁止となります。 ヨルゲン・トリッティン環境大臣はプレス発表で「製造者責任は将来、電化製品についても適用されることとなった。 これは環境や健康によい。原材料は大事にされ、有害物質による汚染は減るだろう」と語り、法制定を環境保護に対する大きな進展ととらえています。
ごみっと・SUN 50号 第28回 近況報告…ドイツのこと・私的なことも…
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ごみっと・SUNさん50号おめでとうございます。
ちょうど半分くらい書かせてもらっているんですね。ごみっと・SUNの半生を一緒に歩んできたかと思うとジーンとします。 私のドイツ生活も10年目に入り、やっと今春大学を卒業し、会社勤めを始めました。 しかしなんとか時間をひねり出して、環境関係の活動やエコツアーのコーディネートは継続しています。
さて、私がドイツに来たのは1996年の夏です。 まず感じたのは、人々の生活がゆったりとしていること。当時はまだ平日は午後6時、土曜日は午後1時で店が閉まり、週末は散歩くらいしかすることがなかった。そのおかげで家族で団欒したり、自分の趣味を伸ばしたりと、それぞれにゆったりと過ごすことができたのでした。 今は閉店法の改正で月曜日から土曜日までは夜8時まで営業できるようになりました。 これがいいのか悪いのか。営業時間は延びる方向にあります。
その当時はリユース瓶が主流でペットボトルなどほとんど見かけませんでした。 今はいつの間にかリユース瓶は追いやられ、一昨年から強制デポジット制が導入されたにもかかわらずプラスチックの威力は強まるばかりです。
ハノーファーで勤め始めた会社は、建築用車両を製造しています。日系企業ですが日本人はたった2%で、残りはドイツ人や外国人です。平社員はIGメタル(金属産業労働組合)に所属。 同組合は会社を超えて連帯しており、弱くなってきたとはいえドイツで一番力のある労働組合です。だから私の職場は週35時間労働。フレックス制で、週35時間を守っていれば会社にいる時間を自分で決めることができます。 タイムカードで分単位まで記録。残業が7時間たまれば、一日休みです。お昼休みは30分ですから、朝8時にくれば3時半には終わり。通常月−木曜日は長めに働いて、金曜日は昼頃帰るというのが一般的です。
こういうところ、ドイツはつくづくありがたい。有給休暇は年30日あり、取らないと上司の管理能力が問われるため消化するよういわれます。夏は3週間工場が一斉に閉まるため、みんなお休み。 罪悪感なく休暇でリフレッシュできるというわけです。病欠の休みは有給とは別途ですから、それも安心。 しかし失業率は10%を超え、失業扶養手当が削られたり、医療費の自己負担が増えたりと社会福祉は削減の一途です。グローバル化の波でペットボトルも失業率も増加しました。 キリスト教民主同盟が18日の選挙で社会民主党と緑の党の赤緑連立政権を打倒すれば、環境税は凍結され、原発が復活するでしょう。 現政権が最高だとは思わないけれど、進んでいるドイツの環境政策を後退させることは阻止したい。 今は環境先進国ドイツなどといわれていますが、そうでなくなる日がくるかもしれません。
暗い結びになってしまいました。ごみっと・SUNの今後の活躍を期待しています。
ごみっと・SUN 51号 第29回 法律改正を受けて ハノーファごみ事業所では…
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ドイツのごみ収集車 …ずいぶん大きい、さすがアウトバーンの国 |
先日ハノーファ市一般公開の日があり、市関連の施設や事業所、警察署などが門戸を開いて市民を受け入れました。 例えばごみ事業所もそう。 敷地内をバスで回ったり、施設を見学することができます。 正面広場にはごみ収集車が並び、子どもたちを運転席に乗せてあたりを一周。 ブラスバンドが音楽を披露し、ごみをテーマにしたオブジェが飾られ、生ごみから作られた肥料が売られていました。
以前こちらでご紹介したように、 6月からごみ処理についての法律が変わりました。 家庭ごみは前処理して残ったものだけを埋めることが許可されるようになりました。 ハノーファごみ事業所でも機械生物的処理とごみ焼却を組み合わせた処理場を建設。6月から正式運転を始め、ハノーファ周辺市町村を含め、年間12万トンを扱う予定です。
処理施設は「エコロジーな処理場」をモットーに、環境に配慮した工夫がなされています。 施設の屋根に降った雨水はすべて貯めておき、施設内で利用。またごみの生物分解に利用されている水は浄化して再利用しています。 施設は全部で9ヘクタールの広さがあるのですが、ドイツでは使用している土地と同じ広さの自然を守るよう努力する義務が企業にはあり、独立法人である同事業所も同様。隣接している湿地を昔の形に戻そうと、植生復活に尽力しています。
これまで家庭ごみはそのまま埋立てられていましたが、分別してバクテリアでの生物的前処理により35%の減少が見込まれています。 処理後埋立てる際も、有害物質が排除されてあり環境にやさしい、というのが売りです。 しかしなかなかすべて計画通りにはいきません。
まず、処理施設が予定通りにはすべて完成していませんでした。 加えて事業ごみが予想以上に増加し、処理場はオーバーフローに。日々山になって運び込まれるごみに、焼却が追いつきません。 同事業所では以前使われていた埋立地を、ごみの暫定置き場にすることでしのいでいます。 生物的処理済みのごみは毎日、コンテナー約20個分がごみ置き場に運ばれ、焼却されるのを待っています。
それでなくとも新施設による設備投資で、一般家庭のごみ処理代は値上げ。それなのに見込み違いで適切にごみが処理できず、二度手間をかけている状態に市民から厳しい目が向けられています。 最初はなかなかうまくいかないのは、どこも同じということか。なんとか早く軌道にのってほしいものです。
ごみっと・SUN 52号 第30回 今年の冬は薪ストーブで
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ドイツの薪ストーブ
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この冬はマイナスの日が続き、とても寒い。 ドイツでは各部屋に温水を循環させる集中暖房が一般的ですが、 今年は暖炉がはやっているそう。 ガスや灯油の値上がりをきっかけに、環境保全の視点も手伝って、薪暖炉が見直されています。 しかも自分で森に行き、木を切って、薪にするというのがブーム。 健康にもよいし、値段も安いと一石二鳥です。
ハノーファーは森の中にある街といわれるほど緑が豊かです。 市内北部に位置するアイレンリーデの森は、ヨーロッパの都市に ある森としては、パリのブローニュの森に次いで2番目に大きい ことはあまり知られていません。 市内外に森があり、管理組合と契約し、薪を自分で調達する ことができます。
薪の値段は場所にもよりますが、例えば自分で木を割ってまきにする場合、薪1立方メートルあたり10ユーロ(1400円)から。 横枝を取り除くなど一部手を加えられていると40ユーロ。乾燥されてすぐ使える状態のものを配達してもらうと70ユーロとなります。
今年は特に、自分で切り出し、安く抑える人が多いようです。薪に適しているのはブナ、オーク、ナラ、カバ類など。 モミの木は火を起こすときに向いています。例えばクニゲスの森ではきこりが趣味の250人が、 約1000立方メートルの薪を自分で調達しました。 暖炉のおかげで灯油の使用量が半分になったとの声もききます。しかし新鮮なまきは、水分が多いため、二年間乾燥させなければならない。 乾燥が不十分だと不完全燃焼となり有害物質が排出される恐れがあります。
薪とともに木製ペレットもじわじわ広まってきています。 灯油1リットルはペレット2キロに相当するのですが、灯油代が高くなった今冬初めて、競争力が生まれました。ペレットオーブンがまだ少し高いのが難点ですが、薪より扱いやすく、今後は増えると見られています。
冬の夜長を、暖炉の火とともに過ごすなんてロマンチック。その温かみある炎に癒される人も多いようです。 私が以前住んでいたアパートにも煙突と暖炉の装置はありましたが、長く手を入れていないからと使うのは禁止されていました。 煙突掃除屋さんに毎年来てもらわないと、換気面が心配なのです。 面倒だし、まあいいかと当時は思っていましたが、今思うととても残念。
燃やして二酸化炭素を出しても、これまで木は酸素を生み出してきたわけだからエミッションゼロ。 経済的な利点があるばかりでなく、地球にやさしく、ほのぼのとした気分にしてくれる薪暖炉はこれからますます人気が出そうです。
田口理穂 ごみかんドイツ特派員
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