ごみっと・SUN 33号
追っかけルポ 東京・東村山市より
有料化初日・ごみ収集車に乗り雨のまちを走る
ごみ・環境ビジョン21 田浪 政博

 

ひきりなしの電話
PRのため掲げられた横断幕
  戦後最大級と言われた台風21号は、前日、東海地方に上陸し、10月1日関東地方もその影響下に入った。
朝9時30分、東京都東村山市の環境部ごみ減量推進課に行った私は、そこに、いつもとは全く違った空気を感じた。
  次々とかかってくる電話に対応する
7名の職員。同課には、指導、ごみ減量、リサイクル推進、収集の4つの係がある。
絶えることのない市民からの電話は、この日からの家庭ごみ有料化に伴うもので、「近くの販売店で指定袋が売り切れて買えない」、「ごみの収集が遅れていて来ない」、「有料袋でなければ、ごみは出せないのか」といった問い合わせや苦情だった。

  予定時聞より早く行ったのだが、そこには予想通りの光景が繰り広げられていた。
普段なら、駄ジャレのーつも飛ばして、職員と話を始めるところだが、挨拶もできないまま、
空いている椅子に腰を降ろした。


いざ収集車へ !
  10時、家庭ごみ有料化初日、ごみ収集車に乗り込む。
この歴史的な日に立ち会おうと、一週間前から申し入れをし、やっと前日、OKの返事がきた。市長はじめ幹部職員もジャンパー姿でごみ収集車に乗り、収集作業をするという。

収集車も広報に一役
 
  風はあるものの、雨は小降り。私が乗ったのはM町を回る車だった。運転手はYさん、収集はAさんだ。
運転台に置かれた受け持ち地区の住宅地図のコピーは、3色に色分けされて、コースと進入路への入り方(バックで進入など)まで綿密に記入されていた。
道路事情の悪いM町では、これは絶対に必要なことだが、その周到さには感心した。
  これまで東村山市では、ごみは集積所に出すことになっていた。3,000数ケ所に及ぶ集積所があったが、有料化を機に戸別収集となった。アパート・マンションは今まで通りの集積所で収集する。

  市の委託を受けた3業者が収集しているが、家庭ごみ有料化が決まって、ある業者は2000年10月より有料化した日野市に出向いて、いろいろ学習したと聞く。

  戸別収集は手間がかかる。
奥まった家は車が入れないので、歩いて取りにいくが、Yさんは、Aさんに「走って行くな!」と声をかける。「走ってたらバテちゃいますからネー。夏は大変ですよ。ペットボトルを手放せませんョ」と。
  私が乗つたT社は、今回の有料化に伴い、市当局との交渉で、2割の増車を要求したという。他の2社も同様とのこと。けれど2割ぐらいの増車では追いつかないだろうし、収集は大幅に遅れそうだと語気が鋭い。

  収集は順調に進んでいく。私も何回か降りて写真を撮る。
戸別に出された可燃ごみは、100%有料袋に入っていて、どれも満腹状態。集合住宅では、有料袋と従来のレジ袋や都推奨のごみ袋で出されたものが入り混じっていた。
これは、有料化は10月1日からだが、ごみはそれ以前から発生しているので、いままで通りの袋に入れてあったものを出したのか、それとも有料化を無視したものか…と、運転手との会話。
いずれにせよ、有料化実施の数日間は、全部収集するようにと、市から通達があったそうだ。

  出発時は小降りだったが、突然雨が激しく降り始めた。
収集するAさんは大変だ。予定していた地区の収集は終わったが、出ている量が少なく、車に空きがあるので、別の所も回ることにした。二人の話によると、いつもより3割ぐらいは少ないんじゃないかという。
  収集車が来るのを待っていた女性からは、「ご苦労様、一軒一軒で大変ねぇー」とねぎらいの声が掛かる。ある横町に入って行くと、高齢の男性が飲物の入ったコップ2つと菓子をお盆にのせて出てきた。
しばしの休憩。……こんなこともあるンだ!


圧倒された 駆け込みゴミ出し
  9月に入って、私は数回、秋水園(注)に足を運んだが、日を追って不燃ごみが増えていくのを実感した。収集車や持ち込みの車が、ひっきりなしに入ってきて、次々と台換と呼ばれる計量機に乗り、集積所へと入っていた。
ごみの重量を計測している担当者と話し、奥に行って不燃物の集積場を見たが、馴染みの職員が「秋水園始まって以来ですよ」というのを聞くまでもなく、施設内に飽和状態になったものすごい量のごみに圧倒された。

注:秋水園
東村山市(人口143,000人、世帯数6万)のごみとし尿の中間処理施設
75トン×2基のごみ焼却炉がある。
  ここに、情報公開で取り寄せた資料がある。昨年9月期と比べて、今年9月の不燃ごみ搬入量は2倍をゆうに越えている。生ごみが半分近くを占める可燃ごみと比べて、不燃ごみは家庭内に蓄積されやすく、圧倒的にプラスチック類だ。それが有料化を目前にして、一気にどっと出され、処理が間に合わず、方々に積み上げられている。

  東村山市では、これまでギロチン式の破砕機で処理していたが、小さく破砕できず、東京・日の出町にあるごみの最終処分場(ニッ塚処分場)を管理運営している三多摩地域廃棄物広域処分組合から苦情がきていた。
さらに搬入割り当て量をオーバーしているため、課徴金を支払っており、それらを改善するために二軸の破砕機を導入し、細かくして処分場に運んでいる。
山と積まれたプラ類を見ていると、ニッ塚処分場の建設に反対し、今も運動を続けている仲間たちの顔が、どうしても不燃ごみの中から現れてくるのを、払拭することができなかった。

収集車を降りて…
  12時過ぎ、満載した可燃ごみと共に、収集車は秋水園に戻ってきた。この後、Aさん、Yさんは昼食をすませて、引き続き、残った地区のごみ収集にあたる。
私はわずか2時間同乗しただけだが、この仕事のきつさが身にしみてわかった。   後日、収集業者に聞き取りをしたところ、1日収集作業をすると、万歩計が2万歩になるそうだ。また、狭い道を戸別収集でゆっくりとした速度で走るため、渋滞になることもあり、時には罵声を浴びることもあるという。

  果たして、この苦労に報いるように、今回の家庭ごみ有料化で確実にごみ減量が達成できるのか。市民は反応も素早いが、慣れるのも早いのだ。安易に「右へならえ」で、有料化することより、まず行政は、市民と共に知恵を出し合い、ごみの発生抑制策をこそ、 実行すべきではないのか。
まだまだやること、やれることはあるはずだ。
  「50過ぎて、この仕事をやっていけるかなぁ…」とつぶやいた収集作業員の言葉が、いつまでも頭から離れない。


指定収集袋の種類とごみ処理手数料
収集袋の種類 内  容  容  量 ごみ処理手数料
(指定収集袋の代金)
家庭用指定収集袋 燃やせるごみ

燃やせないごみ

特小袋(5リットル) 1枚  9円
小袋(10リットル) 1枚 18円
中袋(20リットル) 1枚 36円
大袋(40リットル) 1枚 72円
事業所用
指定収集袋
燃やせるごみ
燃やせないごみ
特大袋(45リットル) 1枚 420円
※指定収集袋は10枚単位で販売
※目の不自由な方にも認識が出来る加工がしてある

 

東村山市の家庭ごみ有料化までの流れ
☆ 01・11・ 7   廃棄物減量等推進審議会の答申

☆ 01・12・17    使用料等審議会の答申

☆ 02・ 6月     市議会で可決

☆ 市民説明会
 ・可決前    52回  参加者   2127人
 ・可決後 15小学校を会場に102回  参加者   4275人
 ・可決後依頼によるもの   34回  参加者   1454人
 ・事業者説明会    1回  参加者    412人

 


東京・三多摩 30自治体の有料化の意向
調査 2002年 11月

  都内では98年10月の青梅市を皮切りに、00年10月には日野市、01年6月には清瀬市が家庭ごみを有料化し、さらに01年10月、東京市長会で「家庭ごみ有料化合意」が突然出された。
しかもこれは、03年を目標年度にという期限まで示したもので、このトンプダウンともいうべき合意によって、実際に三多摩地域では有料化へ向かう自治体が続出している。
10月は東村出市だけでなく羽村市も有料化して、計7自治体が実施、という状況になっている。(奥多摩町は77年から4半期ごとに納入しているので、これを入れると8自治体)

  下記の一覧表は30自治体に有料化の意向についてヒアリングしたものである。中には、「うちはやったとしても三多摩で最後に実施することになるだろう」と漏らす関係者や「予定はありません」ときっぱり話す担当者もあった。
明らかに市長会合意以降、検討中、または、予定ありと答える自治体が多く、1年前の市長会事務局の企画政策室が行ったヒヤアリングの時と、状況はだいぶ変わってきているようだ。

自治体名有料化の意向
八王子市予定あり(答申は出たが時期は未定)
立川市予定なし
武蔵野市予定なし
三鷹市予定あり(時期は未定)
青梅市実施している(98年10月より指定袋制)
府中市予定なし(ダストボックスがある以上できない)
昭島市実施している(02年4月より指定袋制)
調布市予定あり(03年度予定)
町田市検討中(来年審議会設置)
小金井市予定なし(庁内では実施したいという声もあるが)
小平市予定あり(答申は出たが時期は未定)
日野市実施している(00年10月より指定袋制)
国分寺市予定なし(いずれせざるを得ないと考えているが)
国立市検討中(市報や循環型社会へ向けた説明会で提案しているが時期は未定)
東村山市実施している(02年10月より指定袋制)
西東京市内部で検討中
福生市実施している(02年4月より指定袋制)
狛江市予定なし(答申は出たがゃ市報や市民討論会で実施するかしないか意見を聞いている)
東大和市予定なし(答申ほ出たが、不況下では実施は困難と判断)
清瀬市実施している(01年6月より指定袋制)
東久留米市内部で検討中(審議会で検討の答申、可燃ごみにダストボックスあり、
一人当たり663グラムとごみ量は少ない)
武蔵村山市予定なし
多摩市予定なし
稲城市検討中(審議会で検討中)
あきる野市検討中(審議会で検討中)
羽村市実施している(02年10月よリ)
端穂町予定あり(時期は未定)
日の出町内部で検討中
奥多摩町実施している(77年より4半期ごとに納入通知書により納入月平均100キロまで500円)
檜原村予定なし

  皆さんの地域ではいかがですか? 有料化についてのご意見をお寄せください。
また、有料化後の状況について、情報をおよせください。


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