ごみっと・SUN 29号
田浪 亜央江 前回、シリアの人々がいかにゴミを出さない生活を送っているか、ということを強調しました。今回は、それとは反対に見えることを書きましょう。
シリアの「ゴミの少ない生活」は、特別にゴミを出さないために工夫して生み出された生活スタイルではありません。モノを多く持たず、ゴミを生みやすい加工食品に頼らないのは、経済事情が強いているという側面も強いわけです。 環境のことを考慮して「ゴミを出すのは良くない」と考える人なんて私の知る限り皆無ですし、そもそも「ゴミ問題」が意識されていません。 ゴミを分別して出す、ということが行政から指導されてはいないので、それも当然だと言えます。「ゴミを出す日」も決まっていないようで、ゴミ捨て場には数日間スイカの皮や鶏の骨が放置されていたりするのですが、乾燥した気候のためか、あまり臭わないのは幸いです。
環境問題からは外れますが、「公共のマナー」という観念とも良かれ悪しかれ無縁な社会なので、ゴミのポイ捨ての類は全く問題にされません。
お店で雑貨などの買い物をすると、こちらが要らないと言っても「タダだから気にするな」などと言って強引にビニール袋に入れてくれたりします。
一方でこちらがモノに囲まれた便利な生活を送っていながら、シリアの人たちに「こんなふうになってくれるな」なんて言うのはずるい話です。 筆者紹介 東京外語大アラビア語学科を経て、 一橋大大学院言語社会学科在学中。 これまでにシリア・ダマスカス大学に2年間留学。 イスラエル・ハイファ大学に短期留学 |