市民ごみ大学セミナー 2002 実施報


第2回 どうする? プラスチック処理
開催日 2002年 9月28日

会場の様子
  「廃プラスチックは理め立てよりも、サーマルリサイクル」…6月下旬、東京都市町村自治調査会の調査研究報告が三多摩の新聞に大きく取り上げられました。
実際、多摩地区だけでなく全国的に、今まで燃やせないごみとして分別回収されていた廃プラスチックの焼却処理が進んでいます。

  また、2000年4月より、完全施行が開始された容器包装リサイクル法ですが、問題が多く、各自治体ではプラスチックリサイクルに頭を悩ませています。
本当にプラスチックの処理・リサイクルはどうすれば良いのでしょう?

  9月28日、小金井公民館で開催した「市民ごみ大学セミナー『どうする? プラスチック処理』」は、70人を越える参加者で超満員となりました。


三多摩地域全自治体へのアンケート調査
ごみ・環境ビジョン21理事 服部美佐子

   はじめに、今回ごみかんが実施した三多摩全自治体へのプラスチック処理に関するアンケート調査結果について発表しました。

◇ プラスチックの収集区分
◇ 容器包装リサイクル法の実施状況
◇ 容リ法を除いた廃プラスチックの処理状況
◇ 自治体の取り組みや国・産業界への要望
  等の質問に対して、30の市町村のうちプラスチックを「可燃ごみ」として収集していた自治体は稲城市、狛江市の2自治体に過ざず、「不燃ごみ」として収集しているのが21自治体ありました。
また、硬質・軟質で可燃・不燃に分ける町田市、「プラスチック類」として分別収集しているところも6自治体ありました。

  容リ法はほとんどの自治体が実施しており、「その他プラスチック」もすでに13自治体で回収しています。
また、小売店への包装削減依頼(小平市)、マイバッグキャンペーン(昭島市、多摩市、東村山市)など各自治体で減量化や資源化の取り組みがみられ、国や企業に対して「(容り法の)収集運搬費を企業に要望する」など拡大生産者責任の徹底や発生抑制を要望する意見が多くみられました。

 

現場からの報告
多摩川衛生組合・事務局長 門真志郎さん

  多摩川衛生組合では、稲城市、狛江市、府中市、国立市の4市の33万7千人の廃棄物処理をしています。
クリーンセンター多摩川には、高度な排ガス処理方式、高出力発電設備の設置、余熱利用システムの採用、灰溶融施設の併設などの施設の特徴があります。

  プラスチック焼却に踏み切ったのは、エコタウンでの廃プラスチックの資源化なども検討しましたが大変コストがかかり、処理施設がプラスチック焼却に十分対応できる構造であることから、最終的に廃プラスチックは焼却することになりました。

  マテリアルリサイクルは産業廃棄物では可能ですが、一般廃棄物の廃プラスチックはこれ以上分別回収できないしコストなどの問題があります。
年に4回組成調査をしていますが、廃プラスチック14〜16%含まれています。
高度な排ガス対策やダイオキシンの再生成抑制を施された焼却炉のダイオキシン濃度は今年12月からの基準1ngに対して、0.00034ng〜0.000086ngとはるかに低い値です。

  最終処分場の延命が最大の問題です。焼却は現状ではやむを得ない手段だと思います。

 

講   演
止めよう!ダイオキシン汚染・関東ネットワーク事務局長 藤原寿和さん

焼却だけが問題じゃない
  廃プラスチックは、23区では埋めたてるにしろリサイクルするにしろ、前処理として圧縮プレスが行われています。
杉並区の不燃ごみ中継施設は、廃プラスチックを主体とする不燃ごみを圧縮減容し積み替える施設ですが、近隣住民にさまざまな健康被書(杉並シンドローム)を招きました。

  400種類以上の化学物質が検出され、先頃、公害調停委員会でもさまざまな化学物質が原因となって健康被害が引き起こされたことが認められました。
焼却処理についても摂南大学の宮田秀明さんは、焼却の際にはダイオキシンだけではなく、数十万種類の化学物質が発生することを指摘しています。中でも芳香族炭化水素のニトロ基を持った物質が毒性が高いといわれています。
また、高温でも酸素が少ないとダイオキシンが発生します。

  藤沢の荏原や豊能郡美化センターでは洗煙過程でダイオキシンが大量発生しました。 「バグフィルターが付いているから安全」そう思われていますが、情報開示請求をすれば一部破損、不具合、事故、故障…と、バグフィルターのトラブルは頻繁におこっています。
しかし、ダイオキシンの測定はトラブルの時には測りません。良い状態の時しか測らないことになっています。

  ベルギーにはアメーザ法といって連続測定方法がありますが、日本は年一回以上4時間測ればいいことになつています。この値では、何の安全の保証にもなりません。

  デノボ合成やダクトの煤塵の煙突、白煙防止装置の再加熱で再合成などダイオキシン発生の可能性があります。町田市と思われる自治体の焼却炉の試験で、バグフィルターの前より後の方がダイオキシン濃度の高いメモリーエフェクト(残存)効果なども見られています。

リサイクルは止めるべき!
  リサイクルについては、 3つのRのうちリデュース(発生抑制)、リユース(再使用)だけにして「リサイクルは止めるべきだ!」というのが私の考えです。
リデュース、リユースをぬきにして大量リサイクルになっているのが今の日本だと思います。

  サーマルリサイクルは特に問題があります。RDF(ごみ固形燃料化)もセメント焼成も「焼却」に変わりありません。
今年の夏も酷暑でしたが、東京や大阪のヒートアイランド現象は都市の焼却施設や自動車の排ガスによることも指摘されています。

  今年5月「新エネルギー特別措置法」が成立しましたが、廃プラスチック発電が盛り込まれ、これから廃プラスチック発電が進みそうです。
これについては「(廃プラスチック発電が)マテリアルリサイクルの推進を阻害しないこと」と衆議院の附帯決議が付いたに過ざません。

  私は地元の団体「残土産廃問題・ちば」でも活動していますが、新日鉄の高炉スラグが資材としていつまでも安置されていて、埋め立てるにしても安全に有効利用されないのではないかと問題にしています。

  消費者が物を買うのは物の価値です。インバースマニュファクチァリング(逆工場)実現を求めて、製品廃棄物は生産者責任で生産者にもどすリサイクルを求めます。

 

質疑・意見

  会場からの質問・意見では、「発生抑制を唱えているうちにもごみは燃やされていく」「今ある廃プラスチックはどうするのか?」「大量の廃プラスチックを処分場に持ち込んでしまうという流れを断ち切るために、条例で市町村が回収することを止められないか」「メーカーに引き取れという運動を起こせないか」など切実な意見が出された熱のこもったセミナーとなりました。
  ごみかんはこれからも、廃プラスチック問題に取り組んでいきます。


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