ごみっと・SUN62号
レジ袋有料化に向けて
日野市での実験
ごみかん理事 小野寺 勲


 東京・多摩地域を中心に、首都圏で127店舗を展開するスーパーマーケットチェーンのいなげや(本社・立川市)は、8月1日から11月30日までの4ヶ月間、日野市内の日野駅前店・日野栄町店と杉並区の新高円寺店の3店舗でレジ袋有料化の実証実験を行っています。
都内では1月に杉並区のサミット成田東店が先行して実施していますが、多摩地域では一般スーパーの有料化としては日野市が初めてです。

 日野市では、2003年7月から2005年6月までの2年間、全国的にも類を見ない大規模なマイバッグ運動を繰り広げ、それによって市民の間にマイバッグ持参意識を広く浸透させました。
その成果を生かし、2005年2月から市内に店舗を持つすべてのスーパーと商店会連合会に対し、レジ袋有料化の実施を呼びかけてきました。

 いなげやは、それに真っ先に応じたもので、日野市としても失敗は絶対に許されないことから、行政と市民は全力をあげてPRやお客への説明を支援しました。
それが奏功し、有料化は順調にスタートを切りました。実験終了後も継続するかどうかは、経過を見て最終的に判断されます。

 筆者は、この有料化を推進した日野市ごみ減量推進市民会議の一員であり、当事者なので、取り組みの全容をご紹介します。

マイバッグ運動から有料化へ
 1世帯当たりのレジ袋使用量は年間約600枚にのぼり、大半はすぐごみとして捨てられています。その結果、レジ袋は家庭系プラスチックごみの15%(容積比)を占めるに至っています。それゆえに、レジ袋は使い捨て社会を象徴する存在とされ、レジ袋削減はごみの発生抑制のシンボルともなっています。

 このため、日野市では、市民と行政で構成する、日野市ごみ減量推進市民会議(2002年8月発足)がレジ袋削減をめざしてマイバッグ運動を推進してきました。
この運動では、2003年7月から2005年6月までの2年間、毎月5日を「マイバッグ・デー」と定め、市内に13店舗ある大型スーパーの店頭でチラシを配布して、マイバッグ持参を呼びかけました。運動には150人近くの市民が参加しました。

 アンケート調査によると、マイバッグ運動の結果、「買い物はマイバッグ持参で」と思っている人は倍増し、9割強を占めるようになりました。
しかしながら、行動の変革にはつながらず、出口調査でのレジ袋辞退率は3割で頭打ちとなりました。
その原因はレジ袋が無料で配布されている状況自体にあり、有料化しない限り、レジ袋の大幅な削減は望めないと判断して、有料化を推進することにしました。

有料化実施の経緯
 日野市では、レジ袋有料化を推進するため、2005年2月以来、容器包装リサイクル法改正審議におけるレジ袋有料化の行方をにらみながら、市内に店舗を持つすべてのスーパー(店舗面積500u未満の店舗を含む10社20店舗)と商店会連合会に対し、数次にわたって有料化の実施を要請してきました。有料化への取り組みを始めたことは市民に公表し、理解を求めるための啓発も行ってきました。

 有料化を推進するに当たっては、“市が自らの施策として有料化を推進し、各事業者には個々に協力してもらう”という方法を採りました。
この方法は、どうすれば事業者の協力が得られるかを模索した結果、独自に編み出されたものですが、有料化を始めた大概の地域は、期せずして同様の方法を採用していました。

 ところで、2007年4月1日に施行された改正容リ法では、レジ袋有料化の義務化は見送られたものの、レジ袋削減が義務づけられました。
このため、2007年に入って、イオン、サミット、イズミヤ、東急ストア、イトーヨーカ堂、ユニーなど、日本チェーンストア協会加盟のスーパーも、レジ袋削減の切り札として、相次いで有料化に踏み切りました。

 いなげやが実験に踏み切った背景には、自治体からの要請に加え、スーパー業界における相次ぐ有料化導入の動きがあります。
日野市内の店舗に白羽の矢を立てた理由としては、レジ袋辞退率が高く、市民の理解が得られやすいことや、行政や市民がごみ減量に積極的に取り組んでいることをあげています。

有料化実施状況
 実験対象となった日野駅前店と日野栄町店は、いずれも食品・日用雑貨中心の、いわゆる食品スーパー(SM)業態の店舗です。
それぞれJR中央線・日野駅の東側と西側の、駅から徒歩約3分と5分の位置に立地しており、日野駅周辺の同一商圏内にあります。近隣には、コープとうきょう(レジ袋有料化を先行実施)、おおた(地場スーパーチェーン。レジ袋有料化要請中)、ウェルパーク(いなげやグループのドラッグストア)などの店舗があります。

 実施に向けての顧客対策には、行政・市民・いなげやが連携して当たりました。行政は、広報(7/15、8/1)、ホームページ、広報車、自治会回覧板、ポスター(自治会掲示板60カ所、駅、公共施設に掲示)、のぼりによってPRを支援しました。
また、市民と行政が一緒に、店頭でのチラシ配布(7/18、7/20、7/22の3日間。
それぞれ11:00〜13:00と15:00〜17:00。
市民延べ33人・行政延べ8人動員)や、クレームに対処するための説明員の配置(8/1〜8/7の1週間。
それぞれ11:00〜14:30と14:30〜18:00。市民延べ37人・行政延べ28人動員)を行いました。

 一方、いなげや側は、店内ポスター、店内放送、折り込みチラシ(7/23〜8/1に4回配布)による告知や有料になる新レジ袋の無料配布(7/28〜7/30の3日間)、エコバッグの無料配布(8/1限り。各店1,000枚。配布は市民・行政が応援)などを行いました。

 有料化実施の周知状況については、実施約10日前に店頭でのチラシ配布を行った時点で、すでに7〜8割くらいの人が新聞(7/3、7/4に5紙に掲載)や広報、自治会回覧板、ポスターなどで実施を知っている様子でした。

 有料化へのクレームは、チラシを配布していた時も、また、実施後も皆無に近く、逆に決断を評価する声の方が多かったようです。

 レジ袋辞退率は、2店とも目標の6割を上回り、約8割に達しています。
しかし、男性客の多い夜間は日中よりも辞退率が低下するため、対策に苦慮しています。

実証実験の概要
  @実験店舗 …  いなげや日野駅前店・日野栄町店
  A実験期間 …  2007年8月1日〜11月30日
  Bレジ袋の価格 …  1枚5円(LLサイズ・25%厚め)
  Cレジ袋益金の使途 …  地域の環境教育などに還元する予定
  Dスタンプカード 継続実施
  Eレジ袋辞退率の目標 60%

今後の課題
 
 日野市では、一貫して市内一斉のレジ袋有料化を推進してきました。
事業者は客離れを恐れて、個々には有料化に踏み切れないが、市内の事業者が足並みをそろえれば、踏み切れると考えたからです。

 ところが、大多数の事業者は、基本的には同時実施に同意しているものの、客離れへの不安を払拭できず、実際にはなかなか実施を決断できないのが現状です。
これに対し、いなげやは、日野市の店舗の場合には客離れのリスクを回避できると判断し、単独での導入に踏み切ったわけです。

 このように事業者の間には温度差があることから、できるところから有料化を進める一方、全事業者が有料化を決断しやすいよう、あくまでも地域ぐるみでの有料化をめざす必要があります。

 今回の実験は有料化を市内全域に拡大できるかどうかの試金石であり、市民が支えていくことによって、必ず成功させなければなりません。


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