ごみっと・SUN61号

市民ごみ大学セミナー2007#2

どう進める? プラスチックリサイクル
環境負荷とコストを減らす方法を考える

ごみかん理事 小野寺 勲

 市民ごみ大学では、視点を変えながら毎年廃プラスチック問題を取り上げてきましたが、今回は、環境負荷と循環コストを減らすリサイクル方法を考えてみることにしました。
自治体での分別収集から再商品化までを視野に入れ、専門家、リサイクル事業者、自治体担当者の3人を講師に迎えました。


 市民ごみ大学は、このところ満席続きですが、当日の講演・報告内容についても、アンケートへのご回答で非常に高い評価をいただきました。


循環型社会から廃プラスチック問題を考える
   …容器包装プラスチックを中心として…

国立環境研究所循環型社会・廃棄物研究センター長
森口祐一さん

循環社会とリサイクル …何のためのリサイクルか?

1.循環型社会とは何か
 大量生産・大量消費・大量廃棄型社会が、大量のモノの一過性利用に特徴づけられた、20世紀型の経済社会であるのに対し、循環型社会というのは、それに代わる持続可能な経済社会のビジョンです。
なぜ一過性の利用ではいけないかというと、地球環境は、排出物の吸収源としても、資源の供給源としても有限だからです。

 高度経済成長期には「消費は美徳」とされ、廃棄物の焼却や埋立による環境汚染の問題が発生しました。
また、世界的には「持続可能な発展」という概念が出てきて、将来の世代や発展途上国のことを考えると、先進国は環境の有限性を認識すべきではないかと指摘されています。

 今のままではいけないという合意はできているものの、循環型社会とは何かについては専門家の間でも考えが違っています。私の考えは最後に述べます。

2.循環型社会の定義
 循環型社会形成推進基本法(2000年6月公布)第2条では「『循環型社会』とは、製品等が廃棄物等になることが抑制され、並びに製品等が循環資源となった場合においてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進され、及び循環的な利用が行われない循環資源については適正な処分が確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会を言う」と定義されています。

 従来ごみ問題としてとらえていたものをもう少し広い視野でみていこうというものです。

プラスチックのマテリアルフローとリサイクルの動向

1.プラスチックの生産量・消費量
 プラスチックの2004年の生産量は約1,400万トンで、そのうち約1,100万トンが国内消費され、約300万トンが輸出されています。
ちなみに、他の主要材料の生産量をみますと、鉄鋼約1.12億トン、セメント約7,400万トン、紙約3,100万トンとなっており、プラスチックはそれに次いでいます。

2.廃プラスチックの資源化・処理処分内訳
 廃プラスチック排出量の用途別内訳をみますと、容器包装が約500トンと半分を占めています。

3.PETボトルの生産量・回収量
 PETボトルの2005年の生産量は約50万トンで、市町村分別収集量と自動販売機などの事業系の回収量を合わせて約35万トンが回収されています。

4.循環型社会の定義
 中国でのPETボトルへの需要が増加し、高い値段で輸出されているため、国内での再商品化は競争が激化しています。

 PETボトルの再商品化の平均落札単価は年々下がってきて、2006年度からは有償入札となり、2006年度はトン当たり17,300円、2007年度は38,900円となっています。

リサイクル技術の種類と比較の考え方

1.プラスチックの主なリサイクル手法
 プラスチックのリサイクル手法を大きく分けると、材料リサイクル、ケミカルリサイクル、エネルギーリカバリーの3つになります。

 材料リサイクル(マテリアルリサイクル)は、廃プラスチックをプラスチックのまま原料として使う技術です。

 ケミカルリサイクルは、何らかの化学的処理を行って他のものをつくる原料に使う技術で、ガス化、油化、高炉還元剤化、コークス炉化学原料化の4つの手法があります。
エネルギーリカバリー(サーマルリサイクル)は、燃料として使うものですが、容リ法では認められていません。

2.適用する技術と用途からみたプラスチックのリサイクル手法
 適用する技術をタテ軸に、用途をヨコ軸にして、3つのリサイクル手法の特徴をマップで示したのが、下記の表です。

 なるべく左上の元のものに戻せるリサイクル手法をめざすのが望ましいと思っています。
しかし、現在行われている材料リサイクルは、質の低い製品をつくるのに使われ、約半分が残渣となっていると批判されており、改善の余地があります。



容器包装プラスチックのリサイクルの現状と方向性

1.ライフサイクルの各断面におけるコスト
 材料リサイクルの場合は、自治体の分別収集・選別保管に約100円/kg、材料リサイクルに約100円/kg、合わせて約200円/kgかかり、さらに、歩留まりが半分くらいなので、製品当たりでは約400円/kgかかる計算になります。

 汎用プラスチックを石油からつくると、実は百数十円/kgでできます。
残念ながら、リサイクルしてつくる方が高くつきますが、リサイクルすることによって資源や焼却・埋立コストが節約されるわけですから、それを含めて評価する必要があります。

         

2.循環型社会に関する考え
 優れた技術を生かしつつ、足るを知る心を大事にし、「少ないモノで豊かな社会」へと変わっていくべきです。
こうした社会の大きな変革は一朝一夕にはできないので、社会の仕組みを1つ1つその方向に向けていくことが必要です。

 公平な負担のもとに、より有効なリサイクルの仕組みをつくることは可能であり、優れた技術、熱心な市民の行動の両方を有効に生かすことを考えるべきです。
しかし、リサイクルだけでごみ問題や資源問題が根本的に解決できるわけではなく、リサイクルはあくまでも手段の1つです。

 身近なごみ問題やリサイクルを通じて、より広い視点で環境問題や社会の仕組みに関心を持つことにも大きな意味があります。

 

容器包装プラチックのマテリアルリサイクル

プラスチックマテリアルリサイクル推進協議会代表
株式会社リング取締役CEO
山根弘充さん

マテリアルリサイクルとは

1.マテリアルリサイクルの工程
 @投入工程
  圧縮梱包されたベールをリフトで解砕機に投入。
 A解砕工程
  ベールを解砕機で粗く解砕。
 B選別工程
  手選別で大きな異物を除去後、光学式自動選別機でPP・PEを選別。
  その後手選別でPSを回収。
 C破砕工程
  選別されたPP・PEを破砕機で2〜5cm程度に破砕。
  汚れが多い場合には、細かく破砕する必要があり、コストがかかります。
 D洗浄工程
  破砕後、洗浄機で2回洗浄。1回だけでは臭いが残ります。
 E比重分離工程
  水より重い塩化ビニルやPETなどの異物を除去。
 F脱水・乾燥工程
  脱水機と乾燥機で水分率2〜4%に乾燥。
 Gペレット製造工程
  ペレタイザーでプラスチック原料のペレットに。ペレット状にするのは減容のため。

2.マテリアルリサイクル製品
 日本容器包装リサイクル協会の資料(2005年度実績)によると、マテリアルリサイクル製品の販売量は約87,000トンで、用途別内訳は、パレット31%、プラスチック板20%、再生樹脂(コンパウンド)13%、棒・杭・擬木12%、その他24%となっています。

マテリアルリサイクルの現状と課題
 
1.コストが高い
 マテリアルリサイクルの単価は年々下がっているものの、ケミカルリサイクルよりも高いのが実態。
選別工程が必要なことや資源化率が低いことなどがネックとなっているのですが、納得が得られるものにしようとがんばっているところです。

2.再資源化率は50%
 約50%が残渣となり、その大部分はサーマルリカバリーに回っています。
 かといって、マテリアルリサイクルをやめたら、資源であるという意識が薄れ、分別がいい加減になります。

3.製品の付加価値が低い
 原料の供給にとどまっており、付加価値の高い製品をつくっていく必要があります。

マテリアルリサイクル事業者の取組み

1.リサイクル費用の低減
  光学式自動選別機や破除袋機の導入など、ライン自動化による人員削減や、歩留まり率向上による生産性向上に取り組んでいます。

2.残渣の有効利用
  残渣は、RPF(固形燃料)化、セメント原燃料化といったサーマルリカバリーや、油化によるカスケード(多段階)リサイクルによって有効利用されています。

3.静脈産業の動脈化
  原料をつくるだけの委託費依存型事業=静脈産業から、付加価値がプラスチック板の5倍くらいになる製品をつくる付加価値追求型事業=動脈産業へ転換しなければ生き残れないと考えています。

容器包装リサイクルのあるべき姿

 各主体の取り組みとして、自治体(住民)には、ベール品質の指導強化(2008年度にインセンティブ制度発足)、再生製品の利用(グリーン購入)、環境教育など、マテリアルリサイクル事業者にはオートメーション化の促進、製品の高付加価値化など、さらに特定事業者(容器包装の利用・製造事業者)にはリサイクルに適した素材の提供、包装材の簡素化・識別表示などが求められています。

 こういった取り組みによって、自治体(住民)では品質向上や減量化、また、特定事業者ではリサイクル性向上や減量化が進展することから、マテリアルリサイクル事業者では、自らの取り組みとあいまって、事業コストの削減、資源化率向上、製品用途の拡大が進み、社会全体のコストが低減されます。

 各主体の役割分担によって初めて、資源を有効利用し、環境負荷が軽減され、なおかつ費用対効果のバランスがとれた循環システムの構築が可能となります。

 

市民・事業者・行政でごみを30%減らす
  …G30の取り組み

横浜市資源循環局資源政策課長
浜田雅巳さん

横浜G30プランとは

1.策定の背景
 G30というのは、ごみを30%減らす計画です。
基本には、「環境行動都市」の創造という考え方があり、
その手段として、地球温暖化防止への取り組み、自然環境の保全と再生などとともに、資源の再使用とリサイクルを推進するものです。

 市民・事業者・行政が協働してごみの減量・リサイクルに取り組むため、2003年1月に策定しました。

2.基本理念
 「市民・事業者・行政が協働し、廃棄物の発生抑制・再使用・再生利用
(3R)を推進することで、資源・エネルギーの消費を抑制し、環境負荷が低減される『循環型社会』の実現をめざす」としています。

 各主体の役割分担としては、行政が3Rのしくみをつくり、市民・事業者にはそれに協力してもらうということになっています。

3.目標
 2010年度のごみ量(資源物を除く)を、2001年度の161万トンに対し30%減の113万トンにしようというものです。
その結果、2005年度には106万3千トン(対2001年度比33.9%減)となり、目標を5年前倒しして達成しました。

横浜市中期計画

1.策定の背景
 G30では、市民がまず行動し、その実践に伴う成果を実感することで、意識を高め、さらなる行動につなげるという「G30の循環の輪」が生まれ、大きな成果をあげることができました。
これを次の行動へ発展させるため、2006年12月に「横浜市中期計画」を策定しました。

   

2.取り組みの方向
 市民・事業者の自主的な取り組みの推進とともに、普及啓発、環境学習等の強化を図り、さらなるごみ減量・リサイクルに挑戦していきます。
 また、資源化の徹底に加え、脱・化石燃料、脱・使い捨ての施策に取り組み、その成果を一層市民に実感してもらうことで、3Rをこれまで以上に推進します。

3.新たな目標
 新たな目標として、2010年度のごみ量を2001年度に対し35%減の104万dにすることにしました。今後の取り組みとして、循環を支える仕組みづくり、より一層の成果の実感、3Rの推進、最終処分場の安定的な確保などを掲げています。

家庭ごみ減量の取り組み

 分別収集品目を、5分別7品目(家庭ごみ、粗大ごみ、[缶、びん、ペットボトル]、小さな金属類、乾電池)から、プラスチック製容器包装、燃えないごみ、スプレー缶、古布、古紙(新聞、雑誌・その他の紙、段ボール、紙パック)を追加し、10分別15品目に拡大しました。

 また、資源集団回収を拡充し、古紙については、集団回収17万トン、行政回収7万トンと、集団回収が主で、行政回収はそれを補完するためのものとなっています。

事業系ごみ減量の取り組み

 燃やすごみは許可業者が収集し、焼却工場に搬入していますが、2003年12月から焼却工場での搬入物検査を強化し、古紙などの資源物や、缶、びん、ペットボトル、その他プラスチックなどの産業廃棄物が多量に混入している場合には、持ち帰ってもらっています。

 このような取り組みによって、許可業者が排出事業者に対して分別への協力を求めるケースも出ています。これは大きな前進だと思います。

G30の効果

1.財政的な効果
 ごみの分別によって、燃やすごみ量が大幅に減少したことから、2005年度に2つの焼却工場を廃止し、将来必要となる建て替え費用1,100億円と年間30億円の運営経費が節減されました。
分別拡大のための年間経費約24億円を差し引いても、約6億円の経費節減となります。

2.環境負荷低減効果
 ごみ量が減少したことで、ごみ処理などに伴って発生するCO排出量も減少し、2005年度は2001年度に対し、75万トン削減されました。
これは、杉の木5,400万本が1年間に吸収するCO量に相当し、杉の木を横浜市の1.2倍の面積に植えたのと同じ効果を上げたことになります。


 講演録を作成し有償頒布しています。講演の詳細を知りたい方はご利用ください。

どう進める?プラスチックリサイクル


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