ごみっと・SUN60号

どうなる疑問?「改正容器リサイクル法」

自治体への拠出金、10万人規模の自治体で400万円

容リ法の改正を求める全国ネットワーク 事務局 服部美佐子

 

 法改正に引き続き、政省令が審議されていましたが、「資金拠出制度」の審議を最後に、4年間に亘る議論はすべて終了しました。
プラスチック製容器包装のリサイクル手法を検討する専門委員会は論点整理に入りました。


 拠出金の総額

 拠出金の総額は、自治体が日本容器包装リサイクル協会に引渡す『見込み量』を使って算出することになりました。

 この『見込み量』から市町村が実際に集めた引渡し『実績量』を引いた分が「想定量」となり、これに『想定単価』(ペットボトルやプラスチック製容器包装など委託単価の3年間の平均単価)をかけたものが拠出金の総額になります。

 国会審議で環境省は「30〜60億円」と答弁していましたが、審議会でも「シミュレーションは30〜60億円だった」と回答があり、倍の開きはありますが、答弁の範囲内に落ち着きました。



 自治体への配分

 自治体への配分は、どれだけ品質のいい容器包装を集めたか、で判断されます。

@…前出の『想定単価』と市町村での再商品化事業者の落札単価の差額に、『引渡し実績量』をかけたもの。
想定単価より落札単価が上回った場合は出ませんが、ほとんどの自治体が該当すると思われます。

A…容器包装の比率が90%(異物が10%)以上で前年度に比べて2%以上向上した場合(例:92%⇒94%)、または95%以上の場合。こちらは努力しないと、もらえません。

 容器包装ごとに、@のみ、または@+Aが各自治体の(品質のいい収集)寄与分となり、全市町村の寄与分を分母とした寄与度に応じて支払われる額が決まります。

 全国市長会委員の発言によると「人口10万人の池田市で試算したら、プラスチック製容器包装の特Aベール(異物5%未満)で400万円弱」。
同市の「ペットボトル収集費の数%」に相当するそうです。

 でも、自治体の収集選別費用は推計3000億円。
こんな微々たるお金で、精度のいい分別収集のインセンティブが働くとは思えませんが、自治体職員にとっては「貴重なお金」かもしれません。

 いずれにしても、改正で事業者負担が強まらず、妥協の産物として出てきた制度。
次の改正までの暫定的な仕組みと考えたいものです。



 自主回収認定制度は見直しなし

 これは約90%以上回収できると認定された容器は再商品化の義務を免れるという制度です。
生協のリユースびんなどが該当します。

 改正の審議会でリユースを推進するために見直すことが意見具申されていましたが、見直さないことになってしまいました。

 環境省のアンケートでは、80%、または70%以上と要件を変えた場合、自主回収量が増えるよりも、再商品化に関わる自治体の負担が多くなる、というのがその理由です。

 しかし、自主回収分は自治体の収集費用が要らないのですから、この見方は当たりません。
 リユースを推進する対策として、経産省はモデル事業の実施、環境省はリターナブル調査、3R推進の表彰を挙げていますが、制度改正とは次元が違う話です。

 新聞やテレビで『3R』を強調し、国会の附帯決議でもリユースの推進が明記されているのに、これではリユースは無策に等しい、と言いたくなります。



 プラスチック製容器包装関係者の意見

 この間、ケミカル、マテリアル、利用事業者などのヒアリングが行われました。

 高炉還元から油化までケミカルにもいろいろありますが、国立環境研究所・森口委員の「いずれも破砕して造流物を作り、その後油にするか、ガスにするかという違い」という発言を聞いて納得しました。

 事業者は自分の手法が優れていることを力説。
マテリアル優先をはずせと言わんばかりに受け入れの拡大を要望しました。
マテリアル事業者の話からは、自治体が集めたベールのランクによって処理コストが違うことが分かりました。

 Aランクは夜間(賃金+25%)で人手を3分の2から2分の1に減らせる▼AとDの処理単価はキロ10円違う、などです。

 また、複合素材を控える、LCA(注)評価、事業者のランク付けなどを提言する事業者もいました。

 再生ペレットを使って製品を作る利用事業者からは、マテリアル事業者から受け入れる際に、塩素分や水分量などの品質基準を設ける必要がある、と提言がありました。

 最近では、プラスチックパレット(PP=輸送に使われる荷台)に成型されることが多いのですが、2分の1ぐらい再生ペレットで代替でき、耐用年数(約7年)がきて戻った場合でも、再びPPにできる、ということです。

 複合素材や塩ビはリサイクルの厄介者ですが、メーカーはあいかわらず「複合素材で減量化を実現。
中身のために必要」と一歩も譲りません。

 しかも、「マテリアルの再商品化の価値は低い」というのであきれます。
マテリアルに不向きなものを作っておいて、マテリアルの優先をはずせ、ではあまりに身勝手です。



 リサイクル手法の比較

 日本容器包装リサイクル協会に設置された検討委員会で、手法ごとの環境負荷分析を行っています。

 各々の手法ごとに、再生品を使用した場合とそうでない場合の環境負荷の比較が示されました。中間報告をした森口委員は「LCA手法を活用することで、今後の改善につなげたい」と話しました。

 これまでの論点を整理してでてきたのは、リサイクルだけではなく単一素材など生産につなげる、社会の流れの中で捉えるべきという発言でした。
 でも、その一方で、「機能性など複合素材の果たす役目も大きい」「マテリアルとケミカルという分類がおかしい」という意見もあります。

 長期戦になりそうな気もしますが、自治体の拠出金にも絡むので、次年度の入札に反映させたいという意向があります。

 紙面では語りきれない、プラスチックリサイクルの問題…。
そこで、次回のごみ大学には、この検討会で的確な発言をされている森口祐一さんをお呼びしています。



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