ごみっと・SUN59号
動き始めた「レジ袋有料化」杉並区と京都市
ハットリ・モリゾーが行く !
全国各地の
前向きな
環境の取組みを
紹介します。


 ごみかんでは当たり前のノー・レジ袋。
以前より、断る人を見かけるようになってきましたが、それでも「たまに」というレベル。
 一方、今年1月からレジ袋を有料にしたふたつのスーパー、京都市のジャスコと杉並区のサミットでは、辞退率が90%に
届く勢いです。

杉並区のサミット成田東店

「有料化」を受け止める区民
 初めに紹介するのは杉並区にあるサミット成田東店。五日市街道に面していますが、買い物客のほとんどは徒歩か自転車利用という、どこにでもあるスーパーです。

 他店と違うのは正面ドアに貼り出された「レジ袋有料化実験中。レジ袋お求めの場合は、1枚5円となります」という“お知らせ”。
レジの横や陳列棚の上など店内のあちこちに掲示してあります。午後遅い時間帯のためか、レジ袋を買うのは10人のうち1人いるかいないか。

 手持ちの袋に品物を入れている女性にたずねると、「近くにある生協が前から有料だったので、別に驚かなかった」「区のほうで5、6年前からレジ袋のことを知らせてくれたので、いずれこうなる(有料化する)と思っていた」という、行政が泣いて喜びそうな模範解答が返ってきました。

 店では、レジ袋有料化の開始前に「つぎのお買い物の際にはこの袋をご持参ください」と書かれたレジ袋を配布、それまでほとんどいなかったレジ袋の再利用者が2割を占めるようになりました。

 また、近隣の生協でも、成田東店の有料化に合わせ、募金箱形式から、5円のレジ打ちに切り換え、持参率が1ヶ月で10%上昇して90%になったということです。

スタート時は区職員が説明要員
 2002年に「レジ袋税条例」を制定したものの、中小商店の反対もあって、07年までに60%削減が達成できない場合に導入する、としてきた杉並区。

 しかし、マイバッグ持参率が30%台止まりと、啓発に限界を感じた区は、昨年から有料化を検討していました。

 サミットが名乗りを上げ、06年10月16日に、全国で初めて市民と事業者で作るレジ袋削減推進協議会(レジ協)、杉並区の3者で「レジ袋削減のための地域自主協定」を締結。
レジ協は啓発、区は人的支援などを行うことを決めました。

 区は、有料化に向けて、広報のほか、周辺2万世帯に折り込みチラシを2回配布。また、開始時の1月15日から28日までの2週間は、幹部職員が2人1組になり、9時から21時まで4時間交代で店内に立って、「ご協力ありがとうございます」など声をかけたそうです。
幹部職員の立番、いいですね。市民にも誠意が伝わります。

 事業者がおそれる「客離れ」は「99%影響ない」そうです。が、有料袋はL型一種類のため、大きい袋を必要とするお米などを買い控える人もあり、さっそく、取っ手を付けるなどの工夫をしたそうです。

 井山利秋・区生活経済課長は「最初なので、お金がかかってもやれることはすべてやろうという態勢で臨んだ。
終了するまでに持参率や売り上げに与える影響など、今回のモデルを検証して、成田東店での継続や他店舗での実施を検討する」と話します。

 開始後1ヶ月経った現在、持参率は30%台から85%台に、レジ袋の販売枚数は500枚強(実施前3,000枚)に減少しました。

京都市のジャスコ東山二条店

「地域密着店」で始まったイオンの有料化
 京都市左京区にあるジャスコ東山二条店は、大型店というイオンのイメージとはかけ離れた、古くからある食品中心の小さな店構えです。杉並区同様、レジ台を中心に有料化の協力を呼びかけるポスターやノボリ旗が所狭しと並んでいます。

 さっそく辞退率を調べてみると、レジ袋を買ったのは50人中5人。
その他の人は、買い物袋か、他店のものも含め使用済みのレジ袋でした。

 持参した袋に食品を収めていた女性たちは、
「新聞にも出たし、お店でも知らせていたから、別に困らなかった。他の店もどんどんやったらいい」「5円も払うなんてもったいない、袋を持ってくればいい」と京都弁でキッパリ。

 事前の告知は店内のポスター掲示やチラシ配布に加えて、店長が地元の自治会に出向いて話をしたそうです。
山中和美店長は「婦人会では『がんばって』と逆にこちらが激励された」と振り返ります。

 「環境を守るため、有料に賛成です」ボードに貼られた『お客様の声』は、大半が支持する意見。「苦情はほとんどない。
たまに、他のスーパーは無料なのにと聞かれることもあるが、説明すれば分かってもらえる」と山中店長。レジ袋は5円で販売。
原価は2円程度ですが、再使用できるように18ミクロン(1ミクロン=1000分の1_)から22ミクロンとやや厚く、しっかりとした手触り。

 レシートには、レジ袋のバーコードを読み取って「有料レジ袋5」、買わない場合は「お買い物袋ご持参」と印字されます。
有料化推進の貴重なデータになることでしょう。

有料化に一役かった「推進懇談会」
 東山二条店から鴨川を渡って、程近い京都市役所を訪ねました。
イオンが京都市で有料化を進めるにあたって、受け皿作りを行ったのは「京都市レジ袋有料化推進懇談会(以下、懇談会)」です。

 容リ法の見直しを審議した経産省産業構造審議会の座長である郡嶌孝・同志社大学教授が呼びかけ、スーパー関係者、商工会議所の事業者、市民団体などが集まって、06年6月にスタート。
出入が自由な懇談会という位置付けが功を奏して、イオンのほか、西友やイズミヤなど他店も出席、市民団体も加わって意見が交わされました。

 12月に市は、「マイバッグの持参及びレジ袋の削減に関する協定」への参加を事業者や市民団体に呼びかけ、1月10日に、イオン、古川町商店街振興組合、京都生活協同組合の3事業者と、
市民団体8団体、懇談会、市の4者で協定を締結。

 事業者は持参率の目標を、イオンが有料化を実施して50%以上、京都生協は有料化を継続して90%、古川町商店街は辞退者にポイントを上乗せして60%以上…としました。
市民団体と行政が啓発などで事業者を支え、懇談会が評価するという内容になっています。

 気になるのは東二条店に続くスーパーの出現ですが、「市がオブザーバーに徹して、懇談会形式にしたので、複数の事業者が議論に加わった。
4月に募集する協定には、イズミヤ桂坂店が応募する予定」(循環企画課)ということです。

   今回取材した二つの事例のほか、名古屋市では、ユニー、イオン、ヤマナカ、イトーヨーカドーなど大手が出店する緑区(約22万人)をモデル地域として、6月から実施する準備を進めており、2010年には市内全域に広げたいとしています。

 京都市と同じく、市民団体やスーパー関係者によるレジ袋削減懇談会を設置した仙台市では、6月からイオン、みやぎ生協などが実施する予定です。

 大都市だけでなく、新潟県佐渡市(04年10市町が合併、6万7000人)は4月から、スーパーや小売店など約200店舗が協力して、島内で一斉に有料化に踏み切るとのこと。

 次ぎはどこか、ますます目が離せません。
「客離れ」の不安がやわらぎつつある今、各地でノー・レジ袋の風が吹き荒れることを期待したいと思います。


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