ごみっと・SUN56号

進め容器包装削減!

レジ袋有料化に向けて・先ず実績づくりを!

ごみかん理事 小野寺勲

 全国で1年間に使用されるレジ袋の量は、約305億枚と推定されています。
1世帯当たり年間約600枚にのぼり、大半は、すぐにごみとして捨てられています。
これほど広範かつ大量に使い捨てが行われているものは他に類がなく、それゆえに、レジ袋は使い捨て社会を象徴する存在といえ、レジ袋の削減はごみの発生抑制のシンボルともなっています。

 このため、レジ袋削減を目指して、各地で自治体や市民団体などによるマイバッグ運動が繰り広げられる一方、スーパーなどは、レジ袋辞退者へのポイントやスタンプによる還元制度を実施してきました。
しかし、啓発や還元制度では、効果に限界があることが各地のデータで証明されています。
その原因は、レジ袋が無料で配布されている状況自体にあることは明らかで、有料化しない限り、レジ袋の大幅な削減は望めません。

 一方、生協やスーパーのオーケー、Big-Aなど、レジ袋有料化を実施している場合は1枚5〜10円ですが、レジ袋辞退率は5〜9割に達しています。

 海外では、すでに国レベルで有料化やレジ袋税を実施している国は、韓国、台湾、ドイツ、イタリア、アイルランドなど10カ国以上にのぼり、これらの国ではマイバッグの持参が当たり前になっています。

 本稿では、レジ袋有料化を巡っての各方面の動向を踏まえながら、改正容器包装リサイクル法(容リ法)の下でレジ袋有料化を点から面へ拡大するための道筋を探りたいと思います。

容リ法改正…見送られたレジ袋有料化
 レジ袋有料化は、中央環境審議会(中環審)と産業構造審議会(産構審)の容リ法改正審議の中で発生抑制策の1つとして急浮上し、メディアでしばしば取り上げられたことから、容リ法改正の目玉として位置付けられるようになりました。

 中環審の意見具申では、「レジ袋有料化の法制化」(法律によるレジ袋の無料配布禁止)こそ盛り込まれなかったものの、「レジ袋を大きく削減できるよう、スーパー、コンビニ、百貨店などにおける無料配布抑制のための法的措置と、地域での小売店と行政・消費者の連携による取り組みが必要である」としており、筆者にはこれで有料化への道筋がつけられたかに思えました。

 ところが、産構審の方の報告書からは有料化の文言が消え、改正容リ法では結局、有料化の義務付けは見送られて、事業者の自主的取り組みを促すためのスキームを導入するにとどまりました。
その内容は、「取り組みに関する事業者の判断基準を国が定めるとともに、容器包装を多量に利用する事業者に対し、取り組み状況の報告を義務付け、取り組みが不十分な場合は勧告・公表・命令・罰金の措置を講ずる」というものです。
肝心の事業者の判断基準については、政令でもレジ袋削減の数値目標は示されず、単に「事業者が目標を定め、相当程度削減するものとする」としているだけです。
これでは、「自主行動計画」の域を出ず、レジ袋有料化を促すインセンティブが働くとは思えません。

業界団体の動向…自主的取り組みへ

☆ 日本チェーンストアー協会
 スーパー87社でつくる日本チェーンストア協会(チェーン協)は、当初「全店舗でレジ袋を有料化しないと、有料化していない店にお客が流れてしまう」という理由をあげ、レジ袋有料化の法制化を強く求めていました。
しかし、法制化は憲法の「営業の自由」などに抵触する恐れがあるという指摘があり、その後軌道修正し、基本的には中環審の意見具申の線と同じ立場をとるようになりました。

 現在、国に対しては、有料化しなければ達成できない50%以上の削減目標を政省令に盛り込むよう求める一方、自主的な取り組みとして、行政や消費者のサポートが得られる地域から有料化していくことを検討しており、その対象として数地域が候補にのぼっています。
しかし、事業者の間には、有料化による客離れへの不安は根強く、有料化に対して温度差があることから、事業者の足並みがそろうかどうかが有料化実現のカギを握っています。

☆ 日本フランチャイズチェーン協会
 コンビニ12社が加盟する日本フランチャイズチェーン協会は、レジ袋有料化には一貫して反対の立場をとってきました。反対の理由としては「業態特性として、レンジアップ商品(弁当、惣菜等)や冷蔵・冷凍商品(飲料、アイスクリーム、氷等)のように、品質管理・安全・衛生面からレジ袋が必要不可欠な商品がある」「通りすがりの客が多く、マイバッグの持参は期待できない」といったことをあげています。

 しかし、韓国や台湾には有料化しているコンビニもあり、コンビニは特殊な業態とはいえません。日本でも、一部の商品に限ってレジ袋を無料にするなどの対応をすれば、有料化は実施可能なはずです。

 自主行動計画では、1店舗当たりのレジ袋使用総重量を、2000年度比で2006年度の20%削減から2010年度には35%削減に引き上げることを目標とし、取り組みとしては声かけの徹底を中心に据えています。

☆ 日本百貨店協会
 百貨店96社からなる日本百貨店協会は、基本的にはレジ袋や同様の機能を有する紙袋の有料化に賛成の立場です。
しかし、紙製手提げ袋の有料化には「機能や使用目的が異なる」「企業PRの重要な手段である」として難色を示しています。

 自主行動計画では、紙製容器包装の使用原単位(売上高当たりの使用量)を、2000年を基準として2010年には25%削減することを目標に掲げていますが、プラスチック製容器包装については「可能な限り削減に努める」とするにとどまっています。
取り組みとしては、ふろしきの普及やマイバッグ運動を推進するとしています。

地域の取り組み…欲しい事業者の協力

☆ 京都市
 スーパー最大手のイオンは、来年1月に京都市内のジャスコ東山二条店で単独でもレジ袋有料化の実験を始める予定です。
同社は、同一地域に店舗を持つスーパー数社に参加を呼びかけていますが、お客が他店に流れることを心配するスーパーが依然として多く、まだ同意が得られていません。

 京都市は草の根運動が盛んな土地で、レジ袋有料化の推進組織として、市民、スーパー、有識者、行政が参加した「京都市レジ袋有料化推進懇談会」を立ち上げています。
同懇談会は、市民団体とスーパーとの間で、有料化した店を市民団体や行政が支える「自主協定」を締結することによって、有料化を促進していくことにしています。
イオンがその第1号となる見込みです。

 イオンは、京都市での試みを他地域にも広げていく考えで、現在京都市以外に4地域で取り組みを進めているといいます。
まずは、京都市での試みが試金石となります。

☆ 杉並区
 杉並区は、2002年3月に、いわゆる「レジ袋税条例」を制定しました。
しかし、施行を延ばし、まずレジ袋の削減を進めることにしました。
同年5月に事業者、市民、行政で構成する「杉並区レジ袋削減推進協議会」(レジ協)を発足させ、考えられる啓発はほとんど実施してきたといいます。

 しかし、2004年7月のマイバッグ持参率は31.8%と目標の40%に届かなかったことから、11月にレジ協から区に対しレジ袋有料化の要請がありました。
それを受けて、今後の方針を決めるため、2005年8月から9月にかけて、レジ協、議会、有識者、行政で、海外の先進事例としてアイルランド、ドイツ、台湾、韓国の4カ国を視察しました。
区は、それをもとに、レジ袋税からレジ袋有料化へ転換します。

 区は、今年の6月に新たに「レジ袋有料化モデル検討会」を設けました。
関東地方環境事務所、レジ協、有識者、行政からなり、事業者の参加も予定しています。
環境省の「容器包装廃棄物の3R推進モデル事業」の指定を受けて、レジ袋有料化のビジネスモデルをつくり、全国に発信したいとしています。

☆ 日野市
 日野市では、市民と行政で構成する「日野市ごみ減量推進市民会議」がレジ袋の削減を推進しています。
2003年7月から2005年6月までの2年間、市内に13店舗ある大型スーパーの店頭でのチラシ配布を中心に、マイバッグ運動を進めてきました。この運動には150人近くの市民が参加しました。

 アンケート調査によると、マイバッグ運動の結果、「買い物はマイバッグ持参で」と思っている人は倍増し、9割強を占めるようになりましたが、出口調査でのレジ袋辞退率は3割で頭打ちとなりました。

 このため、レジ袋が無料で配布されている限り、市民の行動は変わらないと判断し、日野市独自にレジ袋有料化を推進することにしました。
そして、2005年2月から、容リ法改正の審議の行方をにらみながら、市内のすべてのスーパー(店舗面積500u未満の店舗を含む11社)と商店会連合会に対し、断続的に協力を要請してきました。
手応えはあり、来春には実施に持ち込みたいと考えています。

 日野市の取り組みの特徴は、あくまでも市の施策として市内一斉の有料化を推進し、各事業者とは個々に連携を図っていくという形態をとっている点にあります。

消費者の意識…過大視される客離れ

 日本チェーンストア協会(チェーン協)のアンケート調査(右欄@)では、「利用している店でレジ袋が有料になったら、どうしますか」という質問に対し、「無料の店に行く」という回答が17.8%もあります。スーパー業界は、この調査結果を「無料の店にお客を奪われるので、スーパーだけで有料化することはできない」という主張の根拠にしてきました。

 これに対し、兵庫県消費者団体連絡協議会のアンケート調査(右欄A)では、同じ質問に「無料の店に行く」という回答は4.7%に過ぎません。
調査結果に大きな開きが生じたのは、チェーン協のアンケートには「買い物袋を持参する」という選択肢がなかったため、「買い物袋を持参すればお金を払わずに済む」と考え、「今までどおり利用する」と回答した人以外に、そのことを思いつかずに「無料の店に行く」と回答した人がいたからではないかと推測されます。

@日本チェーンストア協会のアンケート調査
Q.現在ご利用のお店のレジ袋が有料になった場合、
  引き 続きそのお店を利用しますか。(回答数9,990)

他の店が無料で提供していれば、その店に行く17.8%
今までどおり利用する80.6%
無回答1.7%

A 兵庫県消費者団体連絡協議会のアンケート調査
   (ふろしき研究会「レジ袋いりませんハンドブック」より)
Q.あなたが利用しているお店でレジ袋が有料化されたら、どうしますか。(回答数1,765)
いつも買い物袋を持参する69.7%
レジ袋の金額によってどちらともいえない15.0%
料金を支払ってレジ袋をもらう 8.1%
レジ袋を無料で提供する店に切り換える4.7%
無回答 2.5%

おわりに…今が正念場

 容リ法の改正ではレジ袋有料化の義務付けが見送られたため、全国一律の有料化は遠のき、有料化そのものも風前の灯となっていましたが、ここにきて、スーパー業界で自主的取り組みの動きが浮上したことから、息を吹き返したかに見えます。

 スーパー業界は、現実的な観点から、行政や消費者のサポートが得られる地域から順次有料化していこうとしていますが、そのためには、まずモデルケースとなる実績をつくる必要があります。
しかし、現状は、それができるかどうかの瀬戸際にあり、各事業者の前向きの対応が求められます。


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