ごみっと・SUN55号

 缶ビールのクラスターパックは

難離解古紙だが優良古紙でもある

清瀬ごみともだち(東京都清瀬市)会員 坂巻真砂子
 

 国内のマルチパックの6割を生産しているのが、板紙・段ボール最大手のレンゴー・グループです。
5月11日、キリンビール(株)社会環境室の方に案内していただいて、マルチパックをリサイクルしているレンゴー八潮工場を見学してきました。
 


 マルチパックリサイクルの現場、レンゴー八潮工場へ!

 レンゴー株式会社は、統廃合の進む板紙・段ボールメーカーの中で、現在シェア1〜2位を競う企業です。
全国に37工場、海外に27工場があります。
八潮工場は足立区に隣接する埼玉県八潮市にあり、首都圏からの古紙を原料に、板紙生産量日本一の工場です。

スケールの大きさにビックリ
 13万u(東京ドームの約2.8倍)の敷地に抄紙機5機と、焼却炉、発電所、廃水処理設備を備えています。
見せていただいた7号抄紙機(紙を漉く機械=次ページ写真参照)は、全長100mもの巨大なもので、水分99%の原液を数分間で水分8%の紙にしてしまうスピード。
7.25m巾の巨大な原紙ロールが見る見るうちに巻き上がっていきます。
この1機だけで日産950トンです。

段ボールの原紙にも2種類ある
 この工場では主に段ボール原紙を生産しています。
段ボール原紙は中の波状の紙(中芯)と、それを挟む紙(ライナー)の2種類があり、それぞれ別の抄紙機で作られます。
ライナーは3枚の紙を1枚に漉きあわせています。
マルチパックをリサイクルした紙は印刷の乗りがよいので、ライナーの一番外側に使われます。

マルチパック処理工程「難離解古紙処理ライン」は企業秘密
 マルチパックを作っているのは、レンゴー利根川工場です。
失敗作や端切れなど製造工程で出る端材(全体の2割)がそっくり八潮工場に運ばれ、「難離解古紙処理ライン」と呼ばれる特別な工程でリサイクルされています。
処理工程は企業秘密ということで、詳しくは見せていただけませんでしたが、簡単に言うと、次のような流れです。

<AとBの詳細は秘密>
@ 60℃の水で30分、パルパー(巨大なミキサーのような機械)にかけ、ドロドロにする。
A 長く、丈夫な繊維を、短く、柔らかくする。
B 普通の古紙原料を足して、ライナーに適した状態にする。
 繰り返し使うと繊維が弱くなる古紙原料の中で、繊維が長いマルチパックは、とても良い原料(優良古紙)だから、段ボール原紙の原料として欲しい素材だということです。

 それならば、商品として市場に出た8割も、ぜひ集めてリサイクルしてほしいところですが、「集めるルートはない」ということです。
 


 使い終わっても有益な「優良古紙」
 …問題は「集めるルートをどう作る?」

 当日は、日本にマルチパックシステムを導入したレンゴー・リバーウッド・パッケージング株式会社の方も同席され、マルチパックについて説明してくださいました。

*マルチパック用原紙は、建築用に計画的に伐採されたルイジアナ州の南部松の樹皮を、
 未晒しパルプで輸入している。
 輸入材で割高だが、未晒しで繊維が長く丈夫という点で、使い終わっても有益な原料である。

*耐水性の強いアクアコート紙と、普通のパールコート紙があり、全部合わせて、
 他社のものも含めて年間約10万dが輸入されている。

*アクアコート紙は「マツヤニ」を添加して耐水性をもたせている。

*冷やせる、印刷ができる、パッケージデザインの宣伝効果が大きいなどの特徴から、ビールや
 清涼飲料メーカーに利用されている。

*包装機械の販売、賃貸もふくめ、パッケージング・システムとして販売している。

*一般の板紙メーカーに、ふつうの古紙とまざってマルチパックが入ってきたら、
 リサイクルできないのは確かだが、異物混入は3%までは許容範囲なので問題はない。

 私たちの住む清瀬市近辺の古紙問屋からも、レンゴー八潮工場に古紙が納入されているのですが、古紙問屋にとっては複数の納入先のひとつですし、他の紙と混ざっていたら、やはりリサイクルできません。
中身メーカー、板紙メーカー、古紙問屋、回収業者などの関係者が一堂に会して対策を考えないと、せっかくの優良古紙も今のままでは、やっぱり「困りもの」です。


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