ごみっと・SUN54号
リサイクル法がリサイクルを壊している
清瀬ごみともだち(東京都清瀬市)会員 坂巻真砂子
 

 缶ビールのマルチパック(クラスターパックのメーカーの呼称が「マルチパック」なので、
その後私たちもマルチパックと呼んでいます)について、ビールメーカーとの話合いの後、古紙リサイクルの専門家からお話をお聞きしました。
そこで、更にいろいろなことがわかりました。

薬品をしみこませて防水加工!
  →「紙にリサイクルできない紙」なら…リサイクルマークに×
 マルチパックに使われている紙は「北米の針葉樹で繊維が長い」牛乳パックに似た素材であるという。
そこで私たちは、全国に6,000ケ所あるという牛乳パックの回収拠点を利用して「茶色のトイレットペーパーに再生する」という方法を考えてみました。
ところが「マルチパックは薬品をしみこませて防水加工しているので、牛乳パックとはちがいます」との専門家の一言。

 な、なんと「水濡れに強い」秘密は、薬剤加工だったのです!

 また、マルチパックを作っている工場は全国に4つあり、そこには、製造工程で出る端切れを処理するために溶解工程があるが、あくまでも工場からごみを出さないためのもので、外部からの受け入れはしていません。
工場は遠隔地にあるため、メーカーが独自に回収してこれらの工場へ運ぶには莫大なコストがかかり、運送にかかるエネルギーも大きな環境負荷になります。

 「リサイクルできない紙」よりはポリエチレンのほうが、総合的にはずっと環境負荷が少ないし、
コストも安いはず。
紙は再商品化費用が安く済むことと、“環境にやさしい”とのイメージで、パッケージに採用されているのではないか。
実際は、紙は加工のしかたで扱いにくくもなるんです…とのご指摘。

 確かに、(財)古紙再生促進センターによる「リサイクルの障害になる禁忌品」一覧には
薬品加工された紙がずらりと並んでいます。
紙は、紙にリサイクルできてこそ“環境にやさしい”のです。

新手の難リサイクル品が登場!
   →リサイクル法がリサイクルを壊している
 技術の進歩でこうした紙が今後ふえることが予想されますが、リサイクル法がこの傾向に拍車をかけています。
●「紙+アルミ」「紙+プラ」のような複合素材は、全体の51%以上が紙なら「紙」の扱いになる。
●紙の再商品化費用は、プラスチックの10分の1〜4分の1で済む。
●段ボールは、容リ法の対象外なので再商品化費用がかからない。

 以上のしくみを利用して、コスト削減に追われるメーカーが、薄い段ボールにプラスチックを裏ばりした箱を採用し始めました。
メーカーは再商品化費用を全く負担せずに済み、一方、古紙リサイクル業者はまた大きな負担を強いられることになります。

 こうした流れに「待った」をかけないと、既存のリサイクルシステムが壊されてしまいます。
難リサイクル品にこそ課金をふやし、(リサイクルマークに×印)をつけて、「資源に出せない」と
消費者にわかるようにしてほしいものです。

 また、飲料・食品メーカーには包材メーカーの主張が強い影響力を持っているようなので、
包材メーカーに「難リサイクル品を作るな」と訴えていく必要があります。

 リサイクル法がリサイクルをこわしている例は、他にもあります。

 ウェスにリサイクルされている古布の10%は反毛材として、自動車の内装に使われていたのですが、自動車リサイクル法が施行されたら、メーカーはリサイクル率を上げるために新品繊維の反毛材を使い始め、その結果古布の反毛材は捨てられることになりました。
(原油高騰で、メーカーはまた古布に戻ったそうですが)

「その他紙類」の容リ法に則った収集・リサイクルは非現実的
 「紙にリサイクルできる紙」だけを効率的に集め、「紙にリサイクルできない紙」を排除することが、古紙リサイクルにとって重要なポイントです。
ところが、容リ法では、そこはまぜこぜにして、「容器か否か」を収集の基準にしています。
そのため、無駄な手間とコストを投入して、結果的に既存のリサイクルシステムを壊すことになる、本来の目的の「資源の有効利用」とは程遠いことになっています。

 「その他紙類」の収集を実施している自治体はほんのわずかで、量も年間3万トンですが、これ以上増えないことを望みます。
マルチパックは『燃やせるごみ』で出しましょう。

 マルチパックに話を戻します。私たちの会では「マルチパックは燃やせるごみで出して」と市民にPRし、市の広報でも訴えてもらいます。
また、小売店には売り場に廃棄方法を表示するよう市から指導してもらう旨、要請しました。
その上で、「燃やしていますが、それでいいんですね?」とメーカーに改めて問いかけていく予定です。

* 次号「ごみっと・SUN」では、マルチパック取り扱い工場見学記をお届けします。


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