ごみっと・SUN54号
一度は紙パックになった牛乳容器だったけど…

学校給食にビン牛乳が復活!
東京都日野・生活者ネットワーク 古池 初美

 

 2年前の04年7月、学校給食の牛乳容器が、05年4月よりビンから紙に変更になるということがわかりました。
発端は、森永乳業が、学校給食の容量に決められている200mlのラインを廃止することや日本ミルクコミュニティー(元「雪印」)がビンでの生産縮小を決めたことからでした。

 私たちは、日野市が環境に配慮した政策を進め、市民と共に環境基本条例を制定し、ごみ改革でごみを半分にまで減らしたまちなのに、子ども達が毎日飲む牛乳を紙パックにしてはならないと思い、ビンでの継続を求めて、市民団体や有志の方々ともに活動しました。

 しかし、そのままビンでの供給を継続するには至らず、05年度は紙パックへ移行しました。
その後の粘り強い働きかけが実り、日野市は一年間で業者を探し、市単独による契約を行い、
今年の4月からビン容器による供給が再開しました。

学校牛乳がビンから紙への移行?!
 「05年4月から学校給食の牛乳容器がビンから紙に移行されるようだ」という情報が入り、生活者ネットで市の担当課へ現状と今後についてヒアリングを行いました。

 それによると、東京都から04年6月頃に、来年度は紙パックでの供給になることが報告され、市の対応も含めたアンケート調査が行われていたことがわかりました。
日野市としては、ビンによる供給を継続したいが業者がいないのなら仕方がないということでした。

 学校給食の牛乳は、各自治体で業者を決めることができず、農林水産省の要綱により制約があります。
業者、東京都教育委員会、(財)学校給食会で調整を行い、東京全体を12ブロックに分けて、ブロック毎に配送経路、価格などの協定が結ばれ、1本あたり38円前後という安価で供給されています。

 宅配と違い年間200日前後の供給のため、残り100日分は他にまわす事を考えると採算が取れず撤退する業者もいます。
このことにより、自治体がビンでの継続を要望しても、協定業者が紙パックを選択すれば、自治体はこれから離脱しない限り受け入れなければならないしくみになっています。

 この時点で日野市は、離脱してまでビンによる継続を進めようとは考えていない様子が伺えました。
というより、独自で業者を探すまでの方針を決めていなかったように感じています。

要望書を出し、議会で質問…でも…
 市内の消費者団体や市民活動をしている方々に現状を伝え、ビン継続の要望書を提出しました。
私は日野市が離脱してでも「ビンでの供給を継続すべき」と9月議会で質問し、市長も紙パックよりビンの方が環境面で優れていることを認め、ぜひ模索してみたいとの意向を示しました。

 その後、ビンでの供給のできる業者を探す活動を進めようと現在供給している業者に聞き取りを行い、市内の業者へもビンによるラインを残すように要望しました。

 また、毎年行われている「暮らしのフェスタ」では、日野市消費者運動連絡会が市民へビンでの優位性をアピールし、情報提供しました。
しかし、独自契約をする業者が見つからず、05年度は紙パックで供給することが、11月の契約で決まってしまいました。

国立&小平市が独自契約でビンを継続だって!
 11月5日の新聞報道で国立市と小平市が群馬県の業者との独自契約により、ビンでの供給を継続することがわかりました。
「他市に出来て、どうして日野市が出来ないのか!」と担当課に再びヒアリングを行い、05年度は無理でも06年度は再開できるように進めてほしいと要望しました。担当課では、すぐにこの業者へ日野市も契約したい旨の打診をしましたが、供給量が足りないことでダメだったとの話でした。

 05年1月には日野市消費者運動連絡会からも、06年度からのビンでの供給を要望し、日野市も前向きな姿勢を示しました。

 生活者ネットでも、3月議会の予算委員会で06年度再開についての質問を行い、「独自契約に向けた業者を見つけたが、06年度再開できるかについては課題があるため検討」したいとの答弁を引き出しました。

市民団体、有志市民と共に連絡会を発足
 市の動きや活動を情報提供、情報共有することも含め「学校給食のビン牛乳を再開させる連絡会」を発足。
生活者ネット、生活クラブ生協、日野市消費者運動連絡会の有志とともに準備会を立ち上げ、全小中学校のPTA、環境基本計画見直しのメンバーなどに呼びかけました。

 連絡会では、国立市、小平市への視察を行い、日野市へも報告をしました。さらに、毎月のように連絡会と担当課の情報交換、共有を続けました。

 また、小中学校の保護者への情報提供の一環として「学校給食の牛乳容器に関するアンケート」を実施。
価格変更に対する意見やビン、紙パックの選択についての意向を中心として意識調査と情報を伝える為の学習会も実施しました。
学習会では、ビンと紙パックによるLCA(Life Cycle Assessment )調査結果も行い、報告しました。

06年度からビン牛乳を再開!
 05年9月議会の決算委員会でビンでの供給再開を要求し、再開したいとの方針が決まりました。

 そして現在、4月から学校給食の牛乳容器は紙パックからビンに変わりました。
市民と共に活動したことで、日野市も環境に対する姿勢を強く持て、一年間かかりましたが再開することが出来ました。
しかし、国ではリユースビン容器を促進できるような容器包装リサイクル法の改正案に至っていないのが残念です。まだまだ環境を重視した社会を作り上げるのは大変な時代ですが、ひとつひとつ自治体でできることを積み上げ、拡げていきたいと思います。


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