ごみっと・SUN53号
缶ビールのクラスターパックは

難リサイクル品?
清瀬ごみともだち(東京都清瀬市)会員 坂巻真砂子
 

 本誌51号でお伝えした「缶ビール用クラスターパック」についてのビールメーカー4社への
質問メールの続報です。

リサイクルマークのついた「難リサイクル品」
 ビールメーカー4社からの回答は、11月中にあり、表現に多少の違いはあるものの4社とも
おおむね以下の内容でした。
 @ クラスターパックは、雑紙と混ぜてリサイクルされている。
 A 段ボールと区別できるよう、リサイクルマークをつけている。
 B 溶解がやや難しいのは確かだが、古紙全体に占める率が少ないため、問題はない。
 C 「冷やして飲む」というビールの特性上、現状では最適の素材なので、やめる予定はない。
   (今後も良い素材の追求は続ける)

 しかし、私たちの調査では、クラスターパックを古紙に再生する設備をもつ再生紙メーカーは2つしかなく、そこにクラスターパックだけ集めて送るシステムはありません。
ふつうは、溶けずに残ったクラスターパックを残渣として捨てるか、燃やす(一応サーマルリサイクル)という処理のされ方です。
「処理不適物」扱いで代金から引かれることもあるため、古紙問屋には迷惑な混入物です。
また「量的に少ない」ため、逆に、専用のリサイクルシステムや処理工程をつくることがコスト的に成り立たない現状です。

ビールメーカー4社の環境担当者、清瀬に来る!
 そこで、「確かに法的には問題ないかも知れないが、本当に実態をきちんと把握しているのでしょうか?」という趣旨の再質問をしたところ、直接お話ししたいということで、ビールメーカーとの話合いが実現しました。

 2月25日(土)午後、アサヒ、キリン、サッポロ、サントリー各社の環境担当の方々(室長、課長など)とビール酒造組合審議役の方が清瀬までお見えになり、『清瀬ごみともだち』メンバー6名と情報交換をしました。

 2時間以上に及ぶ話合いの中で、缶ビールのクラスターパック(メーカー側の呼び名は
「マルチパック」)について、互いに知らなかった事実を知ることができ、共通の現状認識を得ることができました。

 @ メーカー側は、今回のことで初めてリサイクルできていない実態を知り、なんとかせねばと
  考え始めた。
 A 素材は「アクアコート」というロール紙の状態で輸入される紙で、北米の管理された森林で
  計画的に伐採された木の、建築用木材に使われた後の、以前は捨てられていた樹皮に
  近い部分を使用している。
  そう言う意味で「環境優良児」との売り込みがなされ、プラスチックに比べ総合的に環境負荷が
  少ないという判断で採用した。
  長い繊維を未晒しのまま加工し、水濡れ、荷重に強い。コーティングはしていない。
  ロール紙の状態で輸入され、板紙メーカー3社がマルチパックにしている。
 B 10年以上前から使われているが、2000年の容リ法完全施行に伴いリサイクルマークが
  つけられたため、資源で出されるようになり、数年前から古紙リサイクルの現場で問題に
  なってきた。

問題解決の第一歩がスタート
 今や、製造工場ではゼロエミッション、環境への配慮が徹底されています。
しかし、いったん工場から出荷され、消費者に渡った後のことまでは、全く配慮されていないという現実がわかりました。
メーカーも「これではいけない」との認識をもってくれました。それが、この日の最大の成果だと思います。問題解決に向け「互いに知恵を絞りあいましょう」との合意が得られました。解決の糸口もいくつか得られました。

 容リ法の問題点も新たに見えてきました。
容器であるというだけで、難リサイクル品まで従来の古紙リサイクルシステムに入ってくるようになり、資源回収段階でのコスト負担が増大しています。
技術の進歩で、こういった特殊な紙は今後も増えることが予想され、対策を講じないと、逆に、リサイクル可能な古紙がサーマル処理される心配があります。

 私たちは、メーカーとの話合いをふまえ、再度古紙リサイクルの専門家のお話をお聞きし、
「どうしたらよいか」を考えます。
その結果をメーカー、行政に提案し、市民に情報提供していきます。

 市民、行政、事業者が協力してごみ問題の解決をはかる、具体的な一歩です。
*次号ごみっと・SUNで続報をお届けします。


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