ごみっと・SUN52号
変えよう!「容器リサイクル法」

最終まとめ案の「資金支援」とは
容リ法の改正を求める全国ネットワーク 事務局 服部美佐子

 

 一昨年7月から始まった容リ法見直しの審議会が1月23日に終わりました。

最大の論点であった「役割分担の見直し」は盛り込まれず、分別を厳しくして余ったお金を自治体と事業者が折半するという内容にすり替わってしまいました。

プラ製容器包装リサイクルの残渣と費用対効果
 後半の審議では、事業者側の委員が「(原料となる)ベールの質を高めるべきだ」という発言を繰り返しました。

 確かに、プラ製容器包装のマテリアル(材料)リサイクルでは再資源としての利用率が51%(04度)止まりで、残りは残渣として処理されています。
こうした実情を踏まえ、マテリアルに適した容器包装にPP、PEなどの識別表示をする、または形状で分けるといった前向きな議論が進み、まとめ案では材質表示など分別排出しやすくするという事業者の責任にも言及しています。

 また、他の容器包装に比較してリサイクルの落札価格が高止まりしているという問題があり、これについては標準コストを設定し入札する時に活用することを挙げています。

 市町村の市民にとって最も気がかりなサーマルリカバリー(熱回収)は、産構審であっさりRPF(廃プラスチック固形燃料)が承認され、事業者はリサイクル手法として認めることを主張しました。
最終的には、収集量が増え再商品化能力を上回った場合に限定され、中環審ではその時点で改めて検討する、という表現になっています。

排出抑制に偏った費用支援の提案
 日本経済団体連合会が「自主行動計画を作って排出を抑制する。費用の一部負担は不合理」とする文書を提出したことは、前号にも書きました。

 その後、産構審の資料からは「事業者の責任」という文言自体が消え、中環審では収集選別費用の一部を事業者が負担するという、曖昧な表現のままでした。
いずれにしても、かなり隔たりがありましたが、両審議会の合同会議で両省が示した案はほぼ同じものでした。

 それは、プラスチック製容器包装の分別を徹底して収集すれば再商品化費用が下がるので、その分を効率よく集めた自治体と事業者で分けるというものです。

 中環審では「『再商品化の合理化の程度を勘案して』事業者が市町村に資金を拠出するしくみの創設」と長〜い名称の項目立てになっています。
『』で示した部分は、これまで事業者側が執拗に強調してきた「再商品化の質の向上」と重なります。
つまり「きれいなプラスチック製容器包装だけ集めれば、収集量が減って事業者が負担していた費用が安くなるので、浮いたお金は市町村にあげましょう」ということです。これでは「排出抑制」になっても、過剰包装を止め、リサイクルしにくいものは作らないようにするという「発生抑制」にはなりません。

 高炉還元などのケミカルリサイクルでは、多少の汚れは問題ないはずですが、きれいなものだけを集めるという努力に応じてお金が配分されるなら、逆に可燃ごみが増え、自治体の焼却を助長する恐れもあります。

お金の話にすり替わった拡大生産者責任
 市民、自治体、学識者が「受益者負担」を主張してきたことに対し、事業者は「できない」の一点張り、というこう着状態から一歩も抜け出せないまま、このような案が出てきたのです。

 中間まとめで合意されたのは「収集選別費用の一部を事業者が負担する」ということであり、そのお金をどこから工面するか、または収集量を減らしてリサイクル費用を安くするという問題ではなかったはずで、すり替えとしか言いようがありません。
事業者は再商品化費用として04年度450億円負担していますが、収集する市町村が増える2010年には900億円になると見込まれています。
今回の案にはあくまでもこの範囲内で抑えたい、これ以上負担したくない、という事業者の意向が現れています。

 最終の合同会議で、全国ネットは意見書を提出し、自治体や学識者から「拡大生産者責任ではない、遺憾である」という発言は出ましたが、事業者は大筋了承、「まずは一歩を踏み出す」ということで幕を閉じました。最終まとめのパブリックコメントを募集しています。ぜひ意見を出してください。

「条文・市民案」と国会議員へのハガキ
 全国ネットでは市民案に基づく改正容リ法の法案作りをすすめ、専門家の多大な協力を得て11月に「条文・市民案」をまとめました。

 3Rの徹底やEPRのほか、レジ袋の有料化、リユースびん、情報開示、ただ乗り事業者などを改正のポイントにしています。(「条文・市民案」1冊500円で販売中。申込みは全国ネット)

 全国ネットでは第3弾「国会議員へのハガキ作戦」を始めました。
最終まとめ案が拡大生産者責任ではなく、結果的に消費者と市町村の負担を増大させてしまうことを議員に伝える内容です。

 審議会が終わると、省庁でまとめた政府案が国会で審議されることになります。2〜3月はとても重要な時期になりますので、多くの市民の声が国会議員に届くようご協力をお願いします。


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