ごみっと・SUN52号
寄稿 西多摩密着ジャーナリスト 緑川圭介
第3処分場をつくるのは困難であり、埋立てに頼るごみ処理は既に限界にあるとの認識を都清掃局内に伝えていた。 本来は多摩の各自治体の主体的事務事業であるはずのごみ処分だが、「自区内処理原則」は 過去のものとなり、あまりにも広域化した廃棄物処理は各自治体の自主性を奪っていたため、都が動かざるを得ない状況があった。 局内では、多摩地域のごみをどうすべきかの検討が急務となった。
当時、清掃局内の技術者の多くは、将来の焼却灰処理は高温で溶融し、溶融スラグにする考えに傾いていた。
そうした中で清掃局環境指導部の江渡順一郎部長(当時)は、溶融スラグより販路が期待できること、安全性がより確かであることなどの理由からエコセメント化技術に注目。
初期の処分場反対運動の中には、処分場を克服する「代替案」として「焼却灰をセメントの原料にすることで埋立て処分を終らせる」発想があった。
製造過程で、焼却灰から鉄や他の重金属を回収して再利用する。
通産省がNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を通じて研究を進める形になっていたが、実質的には秩父小野田セメント(後の太平洋セメント)の研究員らが中心となって開発を進めてきたもの。
現時点では稼動は平成18年6月が予定されており、5年近くの遅れとなっている。 平成9年9月、多摩地域ごみ減量・リサイクル推進会議(多摩31市町村で構成)の下に検討委員会が作られ、5カ月余りの検討の結果、「早急に導入の方向性を決定する必要がある」「事業の推進には強力な執行体制が必要である」との判断が出され、処分組合がその任にあたることとなった。
処分組合は平成11年1月「三多摩地域焼却残渣エコセメント化施設導入基本計画」を策定。 用地選定、環境影響調査や都市計画決定などの手続きに入り、処分組合管理者の土屋正忠武蔵野市長は、限りある処分場の寿命を延ばすためにと、『慎重に、かつ早急に、大胆に』に推進すると組合議会で決意を表明した。
西多摩は戦前戦後を通じてセメント産業が発達していた。しかし、二ツ塚処分場内に決まると予想した人はいただろうか。 処分組合エコセメ担当の片岡正造参事(当時)によると、多摩地域31市町村を対象に地理情報システム(GIS)を使い第1次候補地120カ所余りを抽出。 更に、車両のアクセス、インフラ整備状況、所有権や取得可能性など具体的条件を考慮してしぼり込み調査。
平成12年4月、二ツ塚処分場内の残留緑地部分約3万1000平方メートルでの施設建設を日の出町に申し入れた。
処分組合は平成10年11月から「焼却灰と不燃物の分別埋立てによるフィールドテスト」を谷戸沢処分場内で実施。 テスト結果から、分別埋め立てされた焼却灰は掘り起こしてセメント原料とすることが可能であると判断され、現在、二ツ塚処分場では焼却灰の分別埋め立てが実施されている。
一方、太平洋セメントは平成11年4月から6カ月間、西多摩衛生組合環境センターで発生する焼却灰を同社実証施設に運び、製品製造のための操業を行った。
エコセメントは、塩素分の多い「速硬エコセメント」と、脱塩素処理後の焼却灰を用い塩化物イオン量を0.1%以下にした「普通エコセメント」の2種類が、平成14年7月にJIS化された。
二ツ塚処分場の供用期間は当初想定されていた約16年から大幅に延命され、約34年から39年となった。
平成15年7月、エコセメント化施設整備運営事業について、設計と施工は258億9000万円で太平洋セメント・荏原建設特別共同企業体と契約、特別目的会社の東京たまエコセメント鰍ニ18年4月から38年3月の20年間の運営業務を約504億7900万円で委託した。
エコセメント化施設の稼動で、埋立て処分は回避されても、ごみの減量には繋がらない。 また「焼却処分」が奨励されかねない状況が生ずることも懸念される。 今後、ごみの焼却回避(リサイクル)と発生抑制への努力がますます重要になってくる。 最終処分場の延命策、東京・多摩のエコセメント事業として発行しました。 ご利用下さい。(頒価500円+送料160円)。 エコセメント,エコタロー,最終処分場延命,最終処分場問題,ごみ焼却灰,エコセメント,エコタロー,最終処分場延命,最終処分場問題,ごみ焼却灰 |