ごみっと・SUN51号
地域グループ

底ぢから

清瀬ごみともだち(東京都・清瀬市)

代表・織田祐輔
  
古紙に混ぜてはいけない紙
 今週、私はビールメーカー4社に質問のメールを発信した。
みなさんもよくご存知の缶ビールや発泡酒などの6缶パック。あの板紙に似た材質のクラスターパックについてメーカーの見解を聞くためである。

 発端は今年6月の<清瀬ごみともだち>学習会『教えて!紙を分けるコツ〜古紙リサイクルと手軽な分別方法』であった。
「技術革新による状況(条件)の変化が紙のリサイクルについても起こっているのではないか?」「私たちが信じて市民の役割として実行している分別方法に間違いはないか?」…ということを紙リサイクルの専門家に確認するためであった。

 結果、幾つかの新しい事実が確認された。
その中でも特にリサイクルの妨げとなっているものとして「臭いのついた紙」「アイロンプリント用紙(捺染紙)」「感熱性発泡紙」「缶ビール用クラスターパック」が取り上げられた。

 「臭いのついた紙」とは石鹸や線香の箱などのことで、分別に熱心な人ほど手間を掛けて分解したりして雑紙として分別して資源ごみとして出している。
ところがこれらの紙が混ざってできた再生紙が、例えばお菓子などの食品のパッケージに使用された場合、原料紙についていた臭いが残っていて商品価値を損ない、クレームとなるからだという。

 原料紙段階から再生紙の用途まで限定してリサイクルすればよいのかもしれないが、そんな細かい仕組みや、多分かなり割高になるだろうコストから考えると、非現実的ということになる。
従って可燃ごみに入れるしかないという。

 「アイロンプリント用紙(捺染紙)」「感熱性発泡紙」も同様の理由(再生紙に原料紙の特性が残る)でやはり可燃ごみに入れるしかないという。
「缶ビール用クラスターパック」は一見、板紙のようで紙のリサイクルマークも表示されているが、
ふつうの再生紙製造のための処理方法では原料紙が溶けず処理できないとのことである。

 水濡れにも強く、最近多い量販店の冷蔵店頭陳列にも最適で、輸入した特別な原紙を加工しているのだという。
国内ではクラスターパックを再生処理できる工場は2ヶ所だけとのことでとても現実的に対応は難しく、これも可燃ごみにするしかないと思われる。

ごみともだち、動く!
 学習会の後さっそく清瀬市にも話をし、これらの問題を踏まえた分別方法を分別チラシ等の改版などを通じて今後市民に伝えていくこととした。

 また<清瀬ごみともだち>としてもリサイクルを阻害するこれらの情報をいち早く関係者や市民に伝えるために、月刊会報「ごみともだち通信」を通じてお知らせすることにした。

 加えて10月10日に開催された恒例の市民祭りの中の消費生活展で「紙分別クイズ」を行い、
特に紙リサイクル全体への影響の大きい「臭いのついた紙」と「缶ビール用クラスターパック」を取り上げ、禁忌品として可燃ごみに回すように伝えることにした。

 かつて分別収集が本格導入された際にも、市民祭りで「ごみ分別体験テント」を提案・運営したことがあるので、メンバーもこの手のことはお手の物である。

 市民の反応は予想した通りで、ほとんどの人がこの問題を認識していなかった。特に分別に熱心な人たちほど驚きを隠せなかったようだ。
リサイクル業者が困る間違った分別を「良かれ」と思って実行していたのである。
市民祭りでの活動は大変タイムリーで有効な手立てであったと思っている。
市民からも「缶ビール用クラスターパック」についてはメーカーの姿勢に批判的な意見も多く聞かれた。

 「なぜそのようなリサイクル困難な物をパッケージに使うのか? すぐ止めさせるべきだ」というわけである。
確かにごみを減らし、資源循環型社会を構築するためには、市民の役割云々の前に生産者がもっとライフサイクルアセスメントの観点から商品を考えるべきである。
そういう考えから冒頭のメーカー4社への質問メールとなったわけである。

グループの成り立ち
 「清瀬ごみともだち」は1994年に多摩地域のごみ問題を提起したドキュメンタリー映画「水からの速達」の上映委員会の有志により創設され、地域のごみ問題を解決し、ごみの減量と環境負荷の少ない資源循環型社会を実現するために活動している。
常時活動しているメンバーは10名足らずであり、他のグループなどでも活動している人も多いが精鋭揃いである。

 地域における「ごみともだち」の役割は市民、行政、事業者が協力してごみ問題の解決に当たれるように迅速にまた柔軟に情報を伝えたり、問題を提起したり、改善を提案したりすることであると思っている。
市民が市民の役割を果たせるように、市民祭りなどで市民に直接情報を伝え、改善を促したりすることは今後も続けていくが、問題の本質はやはり生産者の負うべきものが多いとつくづく感じるこの頃である。

 私はサラリーマンをしながらの活動ではあるが、メンバーが協力して清瀬で市民や行政に働きかけをするとともに、「ごみ・環境ビジョン21」のメンバーとも協力して生産者側の改善を実現して行きたいものである。
 清瀬ごみともだち ホームページ


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