ごみっと・SUN51号
 レジ袋削減!活動交流会2005

どう進める?レジ袋有料化

 ごみの発生抑制のシンボルとして各地で取組まれている『マイバッグ運動』や『ノーレジ袋デー』。
ごみかんでは昨年夏から市民・行政・事業者が協働できるこの取組みに焦点を当て、レジ袋削減実行委員会を立ち上げました。
1年前に初めての活動交流会を開催し、行政や市民団体、事業者から報告された取組み事例を記録集にまとめ、その後、実行委員会では『レジ袋の有料化』にテーマを移し、各方面に投げかけ始めました。

 そしてついに今年の春には、国の方針としての有料化がにぎやかにマスコミに登場。
「容器包装リサイクル法」の改正論議の中で急浮上してきた『レジ袋の有料化』ですが、10月29日に開催した『レジ袋削減!活動交流会 2005』では「どう進める?レジ袋有料化」と題して、環境省、杉並区、日野市から担当者をお呼びし、中身の濃い、熱い内容の3時間となりました。



講 演
容器包装リサイクル制度見直しにおける「レジ袋対策」

環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部
企画課リサイクル推進室長 藤井康弘さん


 今まさに環境省の中央環境審議会(中環審)でレジ袋の有料化を検討しているところであり、検討状況についてお話いたします。

 その前に、レジ袋の有料化は、容器包装リサイクル(以下「容リ」)制度見直しの中で検討されていますので、容リ制度の見直しについて、中環審の中間取りまとめの概要をご説明する形で、これまでの
議論をざっと振り返ってみたいと思います。

発生抑制および再使用の推進

 具体的な施策に入りますが、1本目の柱として、市町村・消費者・事業者に対し、発生抑制・再使用への努力を促すための施策が議論されています。
「循環型社会形成推進地域計画」における排出抑 制及び再使用の推進
市町村による家庭ごみの有料化を活用した排出抑 制・分別排出の推進
市町村によるリターナブル瓶の分別収集の推進
公的施設等におけるリターナブル容器の導入促進
レジ袋等無料配布される容器包装に対する対策
業界ごとの指針の策定や達成状況の報告・公表等 による事業者の自主的取組の促進
特定事業者の自主的取組に係る優遇措置の創設
事業者における自主協定締結の推進
自主回収認定基準の弾力的な運用

分別収集・選別保管のあり方

 2本目の柱は分別収集・選別保管のあり方であり、市町村および事業者の責任範囲の見直しが
大きなテーマになっております。
 現行の容リ法では、市町村は分別収集・選別保管、事業者はリサイクルという役割分担が決められています。
中間取りまとめでは、分別収集・選別保管については、引き続き市町村が責任を持つとしながら、
事業者が分別収集・選別保管について一定の役割を果たすことが適切であり、具体的には、費用の一部を負担することが考えられると整理はされていますが、産業界は強く反対しており、さらに議論を重ねていかなければならないという状況です。

再商品化手法の見直し

 3本目の柱は、再商品化手法の見直しということで、特にプラスチック製容器包装の再商品化手法としてサーマルリカバリー(廃棄物を焼却する際に発生する熱を回収・利用する)を認めるべきかどうかが議論の対象になっています。
今日は、その議論をする場ではないので飛ばします。

レジ袋対策

 1本目の柱である「発生抑制及び再使用の推進」の中の1つの重要項目として、レジ袋対策が提言されております。

対応の方向

 具体的には、中間取りまとめでは、対応の方向として、このような提言がなされています。
例えばスーパー等の小売店において無料配布しているレジ袋等に対して、無料配布を禁止する
 措置(法的措置、自主協定の締結等)を講じることにより、買い物袋の持参を促進することが必要
 である。
なお、現行法ではレジ袋等が有料化されると、法の対象外となることから、レジ袋のリサイクルが
 引き続き確実に実施されるような措置を検討することが必要である。

位置付け

レジ袋を実際に有料化するのは事業者ですが、私はレジ袋有料化を、消費者に対して直接
 マイバッグ持参をうながす施策としてとらえています。
啓発や教育だけではなかなか効果が上がらないことから、経済的なインセンティブを与えること
 で、消費者をマイバッグ持参の方向へ誘導しようというのです。
 これを、消費者にライフスタイルを変えてもらう起爆剤にできないか、というのが私どもの思いです。
なぜレジ袋かというと、京都市の調査によると、レジ袋は、プラスチックごみ全体の15%くらいを
 占め、結構大きなウエートを占めています。
 それから、シンボリックな意味もあります。つまり、レジ袋というのは、ほとんどの人が日々接して
 いるので、これをどうするかを考えることが、ライフスタイルそのものの見直しにつながって行く
 のではないか、と期待されます。
レジ袋が有料化されて、マイバッグを持っていかなければならなくなったとしても、それによって
 犠牲になる利便性は大したことがないのではないか。
 これに対し、例えば、ワンウェイのペットボトルをリターナブル瓶に戻すとすると、それによって犠牲
 になる利便性はかなり大きなものがあり、国民全体がついてきてくれることにはならないのでは
 ないか。
 レジ袋であれば、何とかコンセンサスが得られるのではないかと思っています。

検討課題

レジ袋などにかかわる措置としては、法的措置、自主協定の締結などがありますが、どのような
 措置が可能か。
 ここが最大の論点です。
 法律で直接的にレジ袋の無料配布を禁止することは、憲法の営業の自由や財産権にかかわり、
 また、レジ袋だけ取り上げることは平等権にかかわることから、難しいものがあります。
 一方、自主協定はアウトサイダーが出ないようにするのは難しく、なかなか進まないのでは
 ないか。
 実効性のある仕組みにするため、何らかの形で法律に位置づけるようにしたいと思っています。
現行法では、レジ袋が有料化されると、容器包装ではなく商品となり、法の対象から外れて、
 リサイクルの対象外になることから、有料化された場合にも、引き続き法の対象となるような
 法改正あるいは法解釈の変更が必要ではないか。
地域の小規模な小売店などについては、たとえレジ袋の有料化を法的に位置づけるにしても、
 実効性を担保するためには、自治体との自主協定なども活用していくことが有効ではないか。

 レジ袋有料化は、中環審でも1つの焦点として取り上げられてきました。それ自体にはさして異論はないものと解釈しています。
当の小売業界の代表のチェーンストア協会は、むしろ法的に規制してほしいという立場です。

 検討課題は、なお残っていますが、今後の予定としては、何とか年末までに取りまとめ、改正法案を年明けの通常国会(1月〜6月)に提出したいと思っています。



報 告 1
市民と協働のまちづくり <マイバッグ運動とレジ袋有料化>

日野市環境共生部 クリーンセンター長 小林寿美子さん


 私たちは、ごみゼロ社会への挑戦ということで「市民との協働」ということをキーワードにして、まちづくりを進めております。
今日は、市民と一緒にやってきた、マイバッグ運動とレジ袋有料化への取り組みについてお話をさせていただきます。

市民との協働

 市民との協働の発端となったのは、平成7年の環境基本条例の
直接請求による条例化と、それに続く市民参画による環境基本計画の策定です。
おねだりする市民から責任を持つ市民へということが、その根底になっています。
文句をいうだけではなく、一緒にやっていこうと、それ以降の計画づくりはすべて市民参画で進めてきました。

ごみ減量推進市民会議

 平成14年3月にやはり市民参画で策定した「ごみゼロプラン」を推進する母体として、約20人の市民と職員で「ごみ減量推進市民会議」というのをつくりました。
マイバッグ運動やレジ袋有料化を推進する主体となっています。
また、ごみ情報誌やごみカレンダーの市民のページというのを編集し、市民が市民に向かってごみ減量を訴えています。

マイバッグ運動の概要

 マイバッグ運動の立ち上げにあたっては、商店会連合会やスーパーと協議を重ね、また、市民に広く参加を呼びかけました。
平成15年7月から平成17年6月までの2年間、毎月5日の「マイバッグ・デー」には市内に13店舗ある大型スーパーの店頭で、午前中2時間と午後2時間、運動協力員がお店から出てくる人に声かけをしながらチラシを配りました。

 それと並行して出口調査も行い、マイバッグ持参率とレジ袋辞退率をお店の出口で目視で調査しました。(グラフ参照)

 マイバッグ運動への市民の参加人数は100人を超え、1日約50人が稼動しました。もちろん職員も参加しております。

マイバッグ運動の成果と限界

 マイバッグ運動の成果を検証するため、平成16年11月の産業まつりで来場者にアンケート調査を行いました。
それによると、マイバッグ運動の認知率は91%でした。
また、買い物にマイバッグを持っていこうと思っている人は93%で、そのうち「そう思うようになったのはマイバッグ運動を知った後だ」という人が46%いました。

 マイバッグ運動によって、市民の意識は大きく変わりました。
これは、運動に参加された市民ががんばってきた結果だと思っています。

 一方、出口調査のグラフでわかるように、マイバッグ持参率は頭打ちになっています。
市民の意識は変わったけれど、行動に結びついていないことがわかってきました。

レジ袋有料化への取り組み

 レジ袋を有料化しない限り市民の行動は変わらないと考え、平成17年2月から、レジ袋有料化に向けてスーパーと商店会連合会へのアプローチを開始しました。
「市内一斉に実施するなら協力します」というスーパーがある一方「日野市だけで実施すれば市境のお客さんが他市に流れてしまう」というスーパーもありました。

 平成17年4月に、国から有料化の方針が打ち出され、私たちは小躍りしたのですが、同時に、正直なところ、これからどうすればいいのかということでとまどいました。
10月からやっとスーパーへのアプローチを再開したところです。
スーパーはやはりチェーンストア協会の法的規制の立場があるので、慎重です。

 私たちは、この取り組みの経験を整理し、地域での取り組みの参考にしていただけるような情報を発信していければと考えております。

レジ袋有料化推進のための方策
*市内一斉の実施
  市内一斉に実施し、実施していないお店にお客が流れるようなことがないようにするのが
  ポイント。
*マイバッグ意識の浸透
  マイバッグ意識を浸透させ、市民意識の成熟につなげていく必要があります。
* 行政主導
  行政が推進し、事業者に協力を求めていきます。
  また、市民に対しては、市民説明会や広報、情報誌などによってアピールしていきます。
*地域の連携
  地域が連携して推進すれば、市境問題なども解決されます。



報 告 2
「レジ袋有料化」と市民社会のルールづくり

杉並区区民生活部 生活経済課長 井山利秋さん


 2003年3月に、いわゆる「レジ袋税条例」が成立しましたが、当面は施行せずに、まずレジ袋の削減を進めていこうと、5月にレジ袋削減推進協議会(レジ協)が設立され、本格的な運動が始まりました。

レジ袋削減推進協議会の活動

 レジ協は啓発で考えられるものはほとんど実施しております。
*ポスター、のぼり旗、POPスタンド、横断幕等の作成掲出
*駅頭、街頭宣伝
*広報紙、HPへの掲載
*路線バス車内放送、広報車運行
*ケーブルTVでの放映
*親子向け啓発(紙芝居、ぬり絵、キャラクタ人形)
*スーパー、コンビニ全店訪問(運動強化依頼、掲出物配付)
*転入者向けリーフレットの作成配付
*声かけ運動「ノー!レジ袋の日」
*マイバッグ持参キャンペーン(駅頭、店頭など)
*オリジナル買物袋作成販売
*レジ袋辞退行動の職員への徹底
*小中学校生への絵画募集
*集客のあるイベントを活用した啓発活動
*小学生向けリーフレットの作成配布

 また、ポイントシール制度(エコシール事業)も始めています。
これには、スーパー以外の中小小売店、コンビニなどが加盟しています。
レジ袋を断ったら、1枚4円相当のシールをもらえ、25枚集めると100円のお買い物券として利用できます。お店と行政が2円ずつ負担しています。
私どものレジ袋削減率目標は60%ですが、30%が厚い壁になっています。

海外視察調査から

 2004年11月に、レジ協からレジ袋有料化の要請があり、それを受けて、海外のレジ袋事情を
調査することが計画されました。
レジ協、議会、行政が一体となって、2005年8月から9月にかけて、アイルランド、ドイツ、台湾、
韓国の4ヵ国を訪問しました。

★アイルランド
*アイルランドは、レジ袋に課税
 税額はレジ袋1枚につき15セント(約20円)
 税に反対していた国民も実施後は協力し、レジ袋の96%を削減
*有名スーパーでは、ビジネスチャンスと積極的に対応し、サービス向上と環境配慮経営を実施
*店には厳しい会計監査が入り、違反には重い罰則金がかかる

★ドイツ
*環境先進国のドイツは特にレジ袋のためだけの施策はとっていないが、有料は当然でレジ袋は
 例外的にしか使われない。レジ袋1枚15セント(約20円)
*郊外のエコスーパーではデザイン的な布袋を1ユーロ(約137円)、紙袋・レジ袋も15セント
 で販売
*ゴミの発生を抑えるデポジット制度を強化

★韓国
*韓国は、法律で33u以上の店舗は有料化
 各自治体も条例で、面積の引き下げあり
*同じコンビニでも有料店舗と無料店舗が出ている
*一枚50ウォン(約5円)
*他店のレジ袋の利用も普通
*制度実施当時、違反者を市民通報制度で担保
*61.6%のレジ袋が削減

★台湾
*法律で複数店舗有する法人のみ有料化
*レジ袋を使わないのが当たり前(訪問時レジで見かけた男性はマイかご持参)
 コンビニでも、レジ袋の利用はほとんどなし
*一枚小一元、大二元(約3.5円〜7円)
 必要なときには購入
*法律で一定以上の厚さを規定し、レジ袋には再利用するようにとの記載あり
*67.9%のレジ袋が削減
*日本でレジ袋有料化と結びつけられる「万引き」については、別な問題だという見解

今後の課題

 杉並区としては、今回の海外視察調査を受けて、今後レジ袋税をとるか、レジ袋有料化をとるかを検討しているところです。
 最後に、国の動きはレジ袋有料化の方向ですが、ルールづくりをどうするのか。
自治体まかせになると、うちや日野市さんは大丈夫だと思いますが、ほとんどの自治体はかなり大変ではないかと思っています。
国や各自治体は、これをどのような形にすればいいのかを、ぜひとも考えていただきたいと思います。



 法改正の真っ只中で知恵を絞る環境省と、先進自治体の行政担当者、という「現場」からの実感のこもったリアルな報告などがあり、とても5ページでは収まりきれない内容でした。
質疑応答なども含め、交流会の記録集を現在作成中です。
 また、会場には、東京都をはじめとする行政関係者、チェーンストア協会などの事業者、消費者団体やごみ関連で活動する市民、学生など、幅広い参加者がありました。
まとめ:東京・レジ袋削減実行委員会 小野寺勲


前のページに戻る
ページトップへ