変えよう!「容器リサイクル法」

審議会の中間とりまとめ
容リ法の改正を求める全国ネットワーク 事務局 服部美佐子

 

 2005月7月に初めに、経産省と環境省の両審議会で容リ法見直しの「中間とりまとめ」が公表されました。
新聞では「事業者負担の拡大」と報じられていますが、産業構造審議会(産構審*経産省)では「事業者が一定の役割を果たす」、中央環境審議会(中環審)では同じく「一定の責任を果たす」、果たし方として「費用の一部を事業者が負担することが考えられる」という曖昧な表現に止まり、とても「拡大」とは言い難い内容になっています。

 この点に関し審議会で「自治体から事業者へのお金の付け替えではない」という発言をしてきました。
「循環のためのコスト」と「環境負荷」を低減するためには、事業者が分別収集にかかるお金の痛みを感じて使い捨てを止めることや広域収集または分別から再商品化までを一貫して行なうことで負担を軽減することが必要だからです。
けれども、事業者は「負担が増える」「商品選択は消費者にある」と反発、溝は埋まりませんでした。

 全国ネットでは中間とりまとめが公表された後、全国からパブリックコメントを出してもらうよう働きかけました。

レジ袋の有料化と費用不払い問題
 込み入った容リ法改正問題の中で、マスコミの注目の的は「レジ袋の有料化」です。
昨年行なわれたヒアリングの際には筆者の質問に「時期早尚」と応えたチェーンストア協会が一転「法制化」の要望書を提出、まとめに盛り込まれました。

 レジ袋は使い捨ての象徴であり、大賛成と言いたいところですが、本気でごみを減らすつもりであれば、法制化を待たず一刻も早く無料配布を止めるべきです。また有料になれば、レジ袋は商品になるので、容リ法の対象から外れてしまいます。
リサイクルが後退してしまう危険性もあります。
法制化するにしてもスーパーなどに自主回収を義務付ける必要があります。

 今年4月、食品スーパーのライフが「負担金が大きすぎる」としてリサイクル費用の支払いを拒否しました。7月に入って、業界最大手で「環境派」のイオンとダイエーも「負担金の算出根拠が不透明」と、支払いを留保しました。多量のレジ袋を無料配布しながら、法律違反を堂々とプレスする図々しさにはあきれました。
レジ袋の有料化と不払い問題を重ね合わせると、費用負担を逃れたいという皮算用が見え隠れします。

 その後、7月末の支払期限ぎりぎりに「法律の義務を果たした上で主張していくべきだ(朝日新聞)」と態度を一変、スーパー95社で作るチェーンストア協会は関係5省と容器包装リサイクル協会とを相手取って訴訟を起すとしています。
しかし、不払い宣言が消えるわけではありません。
審議会の委員として発言の機会を与えられているにも拘らず、スタンドプレイを続けるチェーンストア協会に業界のエゴを感じるのは私だけでしょうか。

容器包装まで有料化!
 さらに、中間まとめの終盤に事業者側は異物の混入などを理由に「容器包装廃棄物を排出する時点で(袋などを)有料化すること」と「自治体が焼却施設で燃やし発電する方法をリサイクルの手法として認めれば、費用の低減につながる」を主張、検討課題に盛り込まれてしまいました。

 まず、容器包装廃棄物の有料化ですが、これはいわゆる費用の「後取り」方式です。
市民は嵩を減らそうと容器をつぶしたりはするでしょうが、リサイクルしてもらおうとせっかく分別したのに、お金を徴収したのでは、事業者責任はますます曖昧になってしまいます。
容器包装によって利益を得た事業者とそれを買った受益者である消費者がリサイクル費用を負担する、「拡大生産者責任」とは相容れません。

プラスチック製容器包装の焼却!
 容器包装の大半を占めるプラスチック製容器包装を分別収集する自治体は年々増えています。
政令指定都市でも名古屋に続き札幌、仙台、広島(ごみっと・SUN44号参照)、今年4月から横浜(同48号参照)、大阪市で始まりました。

 リサイクル手法で最優先されているマテリアル(材料)は約50%がリサイクルされずに残渣となっています。
マテリアルはプラスチック製容器包装の中で、トレイや袋に使われているPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)を限定して分別し、残渣を少なくしようということが合意されています。

 問題はこの先、市町村の収集量が再商品化能力を上回ってしまうかもしれないことです。
費用の増加を回避したい事業者側は、焼却施設で焼却し、発電することをリサイクルと認めようと主張しています。
こうした背景には、ペットボトルなどはリサイクル業者の競争が激しく、落札価格が年々下がっているのに、プラスチック製容器包装は、鉄鋼炉でプラスチックを利用する製鉄メーカーなどのリサイクル業者が少なくて競争原理が働かず、高止まりになっているという現状があります。

 2005年度の委託費用はペットボトルのキログラム当り31.2円に対し、プラスチック製容器包装は2.5倍の80円でした。国が新規の事業者の参加を押し進めれば、健全な競争が行われ、事業者の委託費用も軽減されるはずです。
しかし、自治体での焼却を認めさせてしまったら、可燃ごみと容器包装を分別する意味がなくなり、容リ法自体が崩れてしまいます。
安易な焼却によってリサイクルを後退させるのではなく、新たなリサイクル手法の開発を推進し、競争原理が働く仕組みづくりこそ、審議会で検討すべきでしょう。
審議会では事業者側は大手のリサイクル業者への気兼ねがあるのか、高止まり現象についてはほとんど議論がありません。

 中間まとめは見直しの方向性が出されたに過ぎません。
夏のパブリックコメントを経て、8月末には審議が再開される予定です。
分別収集・選別保管費用は約3000億とされますが、中間とりまとめで示された「一部負担」の具体的な割合は今後の議論に委ねられています。

パブリックコメント(public comment)
 行政などが規制の設定や改廃をするとき,原案を公表し,国民の意見を求め,それを考慮して決定する制度。
1999年1月から全省庁に適用された


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