ごみっと・SUN49号
どう考える?国外リサイクル

アジアへ向かう循環資源
2005年7月17日開催「市民ごみ大学セミナー」より

  いまや、生産もリサイクルも中国を始めとする東アジア頼みの日本。
昨年春、不適物混入で、中国は日本からの廃プラスチックの輸入を禁止したものの、裏ルートからの輸入は止まりません。
  一方、廃ペットボトルは、国内のリサイクルの受け皿を素通りして高額で買いとってくれる中国への流れが加速し、品薄状態に。
今回の市民ごみ大学セミナーでは中国でのリサイクルの現状や国外リサイクルをどう考えるかなど経済産業省のワーキングチームの座長である細田衛士さん(慶應義塾大学経済学部長)を講師に学習しました。



はじめに

  資源・再生資源はすべて循環している。
その循環をうまく利用しないと資源の浪費、あるいは他方で環境問題を引き起こす。
いま「東アジアの資源循環をどう考えるか」は緊急の問題になっている。このまま放っておくと汚染を拡大した資源循環が進んでいってしまう。
ものの流れを管理し、コントロールしなければならない。

【1】動脈経済の背景
  日本は1955年〜72年の17年間で、実質経済成長率10%
という他のどの国も経験したことがない高度経済成長の時代を
経てきた。
当時、アメリカから古紙やスクラップ鉄を大量に輸入し、生産力を
高め構造物を作ってきた。同じことが中国に言える。
今、中国は資源の吸収源になっている。

 日系企業の海外進出
  85年のプラザ合意以降の円高を受けて、日本企業が海外拠点をアジアに求めるようになってきた。
日系企業の現地法人が増加し、生産拠点が海外に移転した結果、海外生産比は93年度7.4%だったのが02年度は17.1%になった。当然、資源の需給バランスが変化してきた。
  90年代を通じて、一般機械や電気機械のアジア圏域内貿易が拡大し、一般機械の総輸出額は90年の359億ドルから、00年の1204億ドルへ増加。電気機械は436億ドルから1929億ドルへ増加した。

 大国としての中国
    経済発展で消費量が急激に伸び、世界の「有効需要」の牽引役となっている。
素材需要の増加で相場への影響を与え、スクラップ鉄やPET樹脂などの相場が高騰している。

【2】静脈経済の背景  E-waste(電気電子機器廃棄物)の現状

 日本の家電リサイクルの現状
   従来型の使用済み電気機器の処理は、市町村における粗大ごみ処理ないし産業廃棄物としての処理で、ほとんどリサイクルされず、有害廃棄物処理もおざなりだった。
 01年4月、家電リサイクル法の実施で4品目が家電メーカーの責任でリサイクルされることになり、質の高いリサイクルがなされている。
ただし、処理費用は排出時に徴収という日本独特のシステムでテレビなどの不法投棄も増加した。

 PCリサイクルの現状
   事業系PC(パソコン)は、メーカー自身による回収、リース・レンタル会社による回収、販売会社や販売店による回収、専門業者による回収の4つのルートでリサイクルしてきた。
 家庭系のPCは「資源有効利用促進法」の下、メーカーは自主的にリサイクルの目標率を設定している。
03年度はデスクトップ型PC本体が50%、ノートブック型PCが20%、ディスプレイ装置が55%。

 携帯電話のリサイクル
   販売店から通信事業者に回収される携帯電話の量は、排出時の40%程度とみられ、多くの使用済み携帯電話がユーザーのもとに放置されているか、回収されても海外に流出するものとみられている。
砒素や鉛も入っておりリサイクルには注意を要する。
国内で非鉄精錬業者の手に渡れば、ほぼ100%のリサイクルが可能。

【3】E-wasteの潜在資源性と潜在汚染性

 再生資源は有用な金属などを含んでいる一方、適正に管理されない場合、環境を汚染する有害物を含んでいる。
資源性という性質を持つ物資は市場に委ねてもいいが、汚染性という性質を持つ物資は管理された取引が必要となる。ここがポイントである。鉛などのように両方の性質を備えたものもある。

 誰もが資源性に着目しがちである。
例えば1トンの使用済み携帯電話の中には280グラムの金、140グラムのパラジウム、銀はさらに入っている。
しかし、汚染物質のガリウム、砒素、鉛も入っている。

 資源性にだけ着目して汚染性は無視してしまうと、潜在的だった汚染が顕在化してくる。
これを管理しないで資源循環させるととんでもないことになる。
市場経済は生かすが透明なルートをどうやって作るかが重要になってくる。

【4】E-wasteの海外流出
野焼きされる残渣

 使用済み家電製品は1800万台、回収率は50〜60%で残りは中古品として国内のリユース市場に回るものもあるが、かなりの部分が中古品や、つぶして雑品という形で東アジアを中心とした海外に輸出される。
 多くの雑品はバーゼル条約対象物とみられるが、条約に従って輸出されたとは思われない。
今後、日本やアメリは汚染物質の輸出国として国際批判を浴びるかもしれない。

【5】東アジアの資源循環

 広域リサイクルの必要性
 再生資源を日本のみで適正リサイクルするのは難しい。
ブラウン管などは需要バランスがとれない。素材需要の大きい東アジアに流れざるを得ない。
(グラフ参照)
 資源の有効利用には広域リサイクルが必要だが、一方、潜在汚染性の大きな使用済み物質を海外でリサイクルするのは危険。
海外でできないことは日本に輸入してリサイクルすることも考えるべきである。

【6】広域リサイクルの可能性

 透明な静脈貿易とバーゼル条約との関係
   中国は昨年、A-press(車をプレスしたもの)や廃プラスチックの輸入を禁止した。
汚染の顕著化に対する恐れがこのような再生資源に対する輸入規制をもたらした。
現在、静脈貿易はバーゼル条約に基づくしかないが、あまりに厳しい規制にすると、かえってブラックマーケットに流れて制御できなくなる。
実際、廃プラスチックは香港経由で輸入しているが、これはゲートを絞ったチェックの役目を果たしていると考えられる。

 新しいレジーム(体制)の形成
  透明で管理された資源循環の流れをつくり、役割分担しながら東アジア圏域で資源循環を行うことが望ましい。
その場合の日本の位置づけをしっかりすべき。まず国内リサイクルシステムを構築する。
この5月に日本がリードして3Rのための国際会議を開催したが、このような流れを一層強くし、政府主導で透明性のある東アジア圏域の資源循環体制を構築する。
 中国・韓国・台湾を含めて、潜在汚染性のある品目についてパイロットプランを策定・実行してはどうか。
いま、中国では賃金が高くなってきており、今度はベトナムに流そうかと考える人もでてくるかもしれず、汚染がますます拡散する恐れもある。
早急に健全な体制をつくる必要がある。


日本からの廃プラスチックの輸出


日本からの鉄屑の輸出



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