ごみっと・SUN47号
特集・徹底討論

容器包装リサイクル法・改正
事業者 VS 市町村&市民
2005年3月19日開催「市民ごみ大学セミナー」より

  容器包装リサイクル法(容リ法)の審議は6月にも改正案の中間まとめを出す予定で進んでいます。
拡大生産者責任を徹底し、ごみが減る容リ法に変えることができるかどうか…「まさに今が正念場!」です。
 処分場の限界が迫り、リサイクルすればお金がかかる板挟み状態の市町村、リサイクルさえすればよい、使い捨て容器に抵抗がない消費者に、事業者はどう応えるのでしょうか。
 3月19日のシンポジウムは「改正必要なし」と豪語する事業者をお呼びして討論するという、ごみかんでは初めての試みでした。
   今回の特集は当日の議論を振り返り、合わせてごみ大学チームからの意見としても加えました。



大平敦さんの講演要旨 町田市民。コカコーラ、帝人を経て
日本容器包装リサイクル協会・全国清涼飲料工業会専務理事

◆ 容器包装の収集費用は市町村によってばらつきがあり、環境省の調査でも千倍ぐらい差が
 ある。人件費900万円(人/年)が妥当かどうかも問題。
◆ 分別収集により最終処分場の寿命が8年から13年に延び、節税になっている。
 消費者意識も向上した。


 ごみ処理のお金だからいくらかかってもいいという市町村は問題だけど、例えば、東京都瑞穂町
 では収集に半日かかる家もある。収集費用にバラツキが出るのは当然。
 後始末を市町村に押し付けてきた「生産者」の責任が問われている。
 消費者の分別意識は向上したけれど、一方でペットボトルをどんどん作っている。
 これじゃ、集めても集めてもお金がかかるばかり。



◆ 住民の排出するごみの種類と量は生活パターンで違う。容器包装も
 生ごみや雑誌などと同じ生活系ごみ。
 ほとんどの住民が日常的に排出しているので、税金を使うことは妥当。
◆ もし、事業者が市町村に代わって別々に回収したら、
 古紙、古布、容器包装と、相当な数のトラックが走ることになる。
◆ 事業者が市町村分別収集の費用を負担する場合、市町村の合理化
 へのインセンティブが低下する。
 社会コスト総額の増加が結局市民負担になる。


 事業者が製品ごとに広域で集めたり、収集から再商品化まで一貫して
 行えば、ずっと効率がよくコストも下がるはず。
 初めから事業者が負担してその価格を製品に転嫁すれば、
 消費者=受益者負担になって、税金負担はなくなる。



◆ リターナブルびんは重い、割れる、保管場所がいる、返却が面倒など
 不便なので減ってきた。使用義務を課すと、売れなかったらごみになる。
 リターナブルびんは回収率や回転率が低く、輸送距離が長いと環境負荷が大きい。


 3Rを進めるために知恵を出し合おうという時に後ろ向きな発言ではないか。
 ワンウェイ容器もリターナブル容器と同じく100%事業者負担で商品価格に含めれば同じ土俵に
 のる。
 リユースペットの可能性もある。
 ビールや牛乳のびんの回収率は97%、回転率でいえば35回以上再使用できる。



◆ 製品の選択権を持つのは消費者。流通は売れるもののみを扱うので、メーカーは流通の下請
 け的位置付けである。
◆ 消費者に不利益(不便さや高い価格)を納得させるだけの客観的データができるのか、
 また、規制を受け入れるほど、環境意識は向上するのか。


 かさ張る廃ペットボトルを収集・保管・選別させられる市町村こそメーカーの下請けといえる。
 製品に循環コストを加えていないから、消費者は安いとか使い勝手がいいだけで商品を選んで
 しまう。
 ちゃんと「収集+リサイクル費用」を乗せれば、過剰包装やリサイクルに不向きな容器を使ったら、
 商品の値段が上がり、そういう商品は売れなくなるはず。



◆ リサイクル困難な容器包装のリサイクルは、間接的に市民の負担になる。
 フランスではプラ容器包装はPETとHDPE(高密度ポリエチレン)のみ分別収集し、
 その他のプラは、マーク使用料は徴収するが、分別せずに熱回収する。
◆ 材料(マテリアル)リサイクルでは収集したプラのうち半分しか商品にならず、かなりの量が産業
 廃棄物になる。
 にもかかわらず入札で優先されるので、トンあたり10万円以上かかり、リサイクルコストを引き
 上げる要因にもなっている。


 何もかもマテリアルリサイクルにするのではく、リサイクルの手法は素材に合わせて選ぶのが
 合理的。
 塩ビなど再商品化が困難なもののリサイクルや、安易な焼却は検証する必要がある。



◆ リサイクル費用を払っていない大手事業者もいる。
 容リ協会のHPで払っている事業者を発表しているので、ただ乗り事業者には消費者パワーで
 不買運動などできないものか。国はやっと警告を出すようだが不十分。


 不買運動は大賛成。
 ただし、リサイクル費用未払いだけでなく、環境に配慮しない企業の製品は買わないように
 しなくては。



石川良一市長の講演要旨 稲城市長。東京都市長会会長
環境省・中央環境審議会委員。多摩川衛生組合管理者

 市長に就任した91年、清掃工場の建替えと最終処分場の確保が最大の懸案だった。
プラスチックごみを減らすために、ペットボトルを粉砕して卵パックにする機械を組合独自で開発したり、立川市で油化実験したり、容リ法ができる前から多摩地域ではいろいろやっていた。
上流で解決すべき問題をすべて下流で受け止めていたということだ。

 容リ法施行で何が起こったか。リサイクルだけ進み、他の2Rが進まない。
分別収集で意識は高まってきたが、法改正で3Rのインセンティブを
働かせることが重要。
 自治体の収集コストにばらつきがあるのは事実で、同じ東京でも
店頭回収している23区と、戸別回収している多摩地域では違う。
 多摩地域は内陸型処分場で限界があるから、26%を超えるリサイクル率を達成している。
市民1人年間2万円のごみ処理費がかかる。埋めるだけなら安いがそうはいかない。
リサイクルすればするほど、コストがかかり苦しむ。
最終処分量が減っているといっても大量リサイクルしているからで、産廃になっているような「見せ掛けのリサイクル」もある。

 環境負荷の大きいものはリサイクルコストが多くかかるので、収集費用は商品価格に含ませればいい。リサイクルした分のコストは自治体に還元されるようなシステムを作ってほしい。
ビールびんのリユースシステムは容リ法ができてズタズタにこわされ、引き取らない店やワンウェイと同じように扱っている店もある。
消費行動も変わったが、意図的にリターナブルシステムを見殺しにしたように思える。割れにくくて軽量化したびんもある。こうした容器に統一して、ワンウェイはリサイクルコストを高くするなど、リユースのための規制が必要だ。



太平さんに質問

 リユースビンが必ずしも環境にやさしくないということだが、リユースペットボトルはどうなるのか?
 ドイツのリユースびんは、ローカルのマーケットを事業者が守るため。
コカコーラでも設備もありびんを守りたいとやってきたが守れなかった。
 リユースペットは安全と衛生面でむずかしい。リユースペットを使っているドイツがいくらコスト
   をかけているのか、実情を知りたい。
   プラスチック容器のリユースは安全に課題がある。その代わり事業者としてはペットボトルから
   ペットボトルを作る「BtoB」(ボトルツーボトル)で資源を再利用している。

 拡大生産者責任で3Rを優先する商品開発をすればいいのではないか。
 同じ中身でも缶に比べ、ペットボトルは1本当たり10円くらい利益が少ない。
本当は缶に入れて売りたい。中身メーカーはペットボトルが出て危機感を持った。
市民の意識があがってリユースボトルが売れるというなら作る。

 リターナブルびんが環境にやさしくないのか。
 びんが6割しか戻らなければ4割はごみ。洗うのに水、運ぶにも資源がかかる。
 環境省がLCAを3年間研究したが、わからないという結論が出た。ドイツでも国が認めた方法で最近LCAの調査結果が出たが、リユースびんとペットボトルは同じ負荷だという。

 プラスチックやペットボトル輸出をどう思うか。
 リサイクル分野も鎖国でもしない限り、グローバル化が避けられない。
中国がいつまでも買ってくれればいいが、長期的な戦略を持った秩序が必要。広域リサイクルは全面的に賛成ではない。



パネルディスカッション  大平 敦さん
 藤原 哲重さん
…小平・村山・大和衛生組合事務局長
 佐々木 義春さん…多摩地域リサイクル事業団連合会代表理事
 古林 和佳子さん…武蔵野市民。ごみ総合対策課専門委員
 服部 美佐子…ごみ・環境ビジョン21理事

服 部
 これから目指すべき循環型社会を、立場を超えてどのように作るか、どうやって3Rを実現していくか、これが最も重要だが、大平さんからこの点に関して事業者としての明快な発言がなかった。
 石川市長が言っていたのは、ごみ処理では立ち行かなくなったということ。
ここを共通認識として、資源として市町村が集めるのがいいのか、事業者が資源として静脈産業の中で回していくのが最も効率よく環境負荷も軽減できるのではないか、意見が分かれる。
その辺もあとでご発言いただきたい。

藤 原
 20年近く小平市でごみの担当をしてきた。
小平市は人口17万9000人でモデル的な人口密度だ。小平市の予算は400億円、
清掃事業費は03年度25億円で、そのうちの17%、4億2000万円がリサイクル費用。
 ペットボトル収集は97年から全市的にやっている。1億6600万円かけて大きな施設を作ったが4〜5年で処理能力が満杯になった。
97年は111トンだったが、03年では594トンと膨れ上がり、市の施設では処理しきれない。
 メーカーはオートメーション生産だが、中間処理は合理化できない。委託費を低く抑え1本1本手作業でふたを取る。
自主規制がなくなり小型ペットボトルが次々に発売され、本数が増えて手間がものすごい。
資源化コストが1本あたりボトル(1.5g)で15.4円もかかっている。缶なら機械選別で安くすむ。
 しかもペットボトルは指定法人では無償で引き取られる。キログラム25円で買うという民間ルートもあり売りたいが、指定法人を脱退すると民間が買ってくれなくなった場合に困るので、半々でやっていく自治体が増えている。
指定法人は儲けているのではないか。その分を市町村に戻すという法改正をしてほしい。
 選別費用から市況価格を視野に入れて判断してもらいたい。適正価格のコストを事業者に負担していただき生きた税金の使い方をしたいので、大平さんにも市民としてわかってほしい。

佐々木
 多摩地域のリサイクル施設の委託業務をしている。多摩市は人口14万3千人だが、1日ペットボトル1万5千本のふたを人の手で取っている。
 びん・缶・紙の市況が逆有償化し、このままではごみになるので容リ法が制定されたという背景がある。
 紙製やプラ容器包装は回収が進まず、焼却処理という提案まで出ているが、それはコストがかかる容リ法に問題があるからだ。

古 林
 武蔵野市は容器包装の回収を始めた02年当初、予定の2倍の量が集まって補正予算を組んだ。コストもごみ収集の6倍かかった。
 昨年10月からごみ処理を有料化し、資源は無料なので「その他プラ」は2倍以上の量が出た。引渡し量も2倍になると思う。
プラスチックの収集業務委託料は約2億円、キロ約180円。ごみ処理の3〜4倍かかっている。
 市は無駄のない方法でやりたいが、市長は最終処分場の管理者として政策的判断で容リ法に乗せてきた。
多摩地域にとっては最終処分場延命の資源化である。消費者としては、リサイクル経費は内部化していくのが一番。
全部事業者が負担しろとは言わないので、自治体が回収した分は返してほしい。自治体が容リ法に乗れるシステムにしてほしい。

服 部
 パネラーの方に、小平市、多摩市、武蔵野市の実情も含めて容リ法の問題点を話していただいた。
大平さんにも自治体の厳しいリサイクル事情を分っていただいたと思う。論点はいろいろあるが、ここからはリサイクル費用の製品価格への内部化に絞って進めたい。事業者はなぜ内部化できないのか。

選別費用はメーカーが負担すべき

大 平
 そこが一番大切だと思うので聞いてほしい。
内部化でPETボトルが減るのか、120円のものが130円、140円になって消費者は買わなくなるか。ごみは減らないと思う。減るならいい制度だが。
 消費者は買うときにごみを意識しない、捨てる時に意識する、という全国都市清掃会議の調査がある。自動販売機で値上げしても利便性を求めて買う、これを「価格弾力性が小さい」という。

藤 原
 ペットボトルが出てきて経費がさらに掛かっている。そういうものは税金ではなく、メーカー負担してほしい。収集は別にしても少なくとも選別費用は出してほしい。市町村が回収したペットボトルを、無償ではなく「買う」努力もしてほしい。

大 平
 制度改革の最大の目的は発生抑制と社会コストを減らすこと。ごみは減らないが、税金のかわりに事業者の金を使うというのでは何のための改革か。
 ペットボトルが増えたと言うが、清涼飲料容器全体ではほぼ横ばい。ペットボトルは小さいものでもびん、缶より大きいが、軽いので運ぶコストも安く環境負荷も小さい。
環境省が発表した容量当たりのコストの比較ではほぼ同じ。

容器はミカンの皮と同じだから行政サービス?

服 部
 「内部化」についてはどうなのか。

大 平
 内部化で事業者が負担するとどういいことがあるのか。市町村が住民と事業者が納めた税金を使ってごみ処理をしているのはそれが最も合理的だから。
容器包装だけ取り出して事業者が負担すべしというのはどういうことか。
みかんの皮も容器。

藤 原
 市町村は従来のごみ処理と違う意味で資源分別をやっている。
容器包装は収集しないとか、法律の枠からの撤退も考えられるが、国を挙げて循環型社会を作ろうというときに、撤退するわけにはいかない。
役割分担の中で労力やコストを分散しようというときに、事業者が負担しないのはおかしい。

大 平
 住民へのサービスは行政の仕事ではないか、容器包装の収集だけ行政サービスをしないというのはどういうことか。

藤 原
 家電法と同じ。家電は単品だからメーカーが回収義務を負い、ペットボトルは消費財だからしなくていいということではない。

大 平
 農産物は農家が回収するのか。家庭ごみ有料化でごみが減っているという事例がある。内部化するなら150円対500円とか差をつければ、話は別だが。

古 林
 有料化でごみは減ったが資源は増えた。

容器が有償になればよいのか?

藤 原
 小平市が容器包装を容リ協会に出すのをやめて民間に売ったらどうなるか。

大 平
 協会は売るなとは言っていない。協会と結んでいる契約量を守らず、売れるから外に売るということはやめてほしいといっている。

藤 原
 売れるのに、協会に出したらゼロ円ということは運営がどうなっているのか。買うことはできるはず。

大 平
 そこは法改正が必要。アルミ缶は売れるから有償指定を受けて法から外れている。
ペットボトルも売れるから法から外れることもある。
それで具合悪いのかというのが法改正の論点の一つ。

藤 原
 市況の中で売れるのは対象を外れるのか、任意に出入りできるようにするのか、事業者が収集コストを負担するのか。

大 平
 制度変更はエネルギーと費用がかかる。効果がないことをいたずらにいじって、税金の負担を事業者負担に付け替えるべきではないと思う。

事業者負担は下がり、自治体負担は上がっている

佐々木
 事業者の負担は減っている。BtoBなど税金が投入された巨大な施設もどんどんできている。一方で、自治体の負担は一切下がっていない。一般財源から、増えていく容器にどんどん税金を使って対応していくと今後どうなるのか。

大 平
 ペットボトルが有償で回らないのは日本だけ。アメリカもフランスもドイツも売れている。
税金で払うのも事業者が払うのも形が変わっても税金で、いずれにしても社会コスト。
これを減らすことが必要。
特定事業者として払っているコストを100%市町村に渡しているのがフランスのやり方、私のビジョンとしてはそういう世の中にしたい。

佐々木
 それは非常にいい。藤原さんが言ったように、売れているのに我々再商品化事業者は、指定法人にも出しているし随意契約でも買っている。
生産者の負担が下がっているのが問題。容リ法は分担を適当にやったからこうなった。

大 平
 どう変えるか、端的に言えば無駄なコストをやめてトータルコストを下げれば費用負担のし方も事業者の金を100%市町村が使うこともありえる。
内部化は効果がないのでやめよう。

藤 原
 有料化をしている自治体は100%分別してもらうために、ごみは有料、資源は無料だがペットボトルやトレイが増えているので資源も有料にしようという話もある。
分けても分けなくても有料なら市民は分けなくなる。分けた資源をメーカーがコスト負担するなら、市民も行政も安心して協力できる。

服 部
 時間が来たので話を原点に戻させてもらうが、大量リサイクルシステムはお金をかけて整いつつあるが、このままでは、私たちが望むごみが減って資源が循環される社会が作れないということは、異論がないと思う。大平さんもうなづいている。
これから先どうするか、内部化には大平さんは強く反対しているが、私たちはリサイクルにかかる費用をすべて内部化して、事業者が効率のいい収集をすればコストが下がり、リサイクルに適した製品を作れば環境負荷も減るという展望を描いている。
 今日は時間切れで議論が白熱したまま終わらせるしかないが、どのように変えるかは、今日の議論を踏まえ事業者と立場を超えて話し合いを続けたい。

討論を振り返って

 限られた中での討論でしたが、容リ法改正をめぐる事業者と市町村の違いが鮮明になりました。
 処分場が逼迫し、ごみ処理では立ち行かなくなってリサイクルに踏み出した市町村は煩雑な作業や多大な費用などさまざまな負担を強いられています。
事業者には「ごみ処理」「行政サービス」という考えに固執せず、共に「循環型社会」を作る者として、市町村の声を真摯に受け止めていただきたいと思います。
ごみ大学チーム
服部美佐子、江川美穂子、西条拓磨
 

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