ごみっと・SUN45号
ペットボトルの新しいリサイクル

「ボトルtoボトル」

 

  ペットボトルのリサイクルの前に、その存在自体を問うべきという意見をお持ちの読者もいると思います。
しかし、一方で商品選択権を持つ消費者や販売店が優位に立つ現状があり、国民の約9割がペットボトル入り飲料を購入しているという現実の中では「より適正なリサイクル」を進めようとするメーカー努力にも目を向ける必要があります。

  04年4月から帝人ファイバー鞄ソ山事業所は世界に先駆けて、使用済みのペットボトルから新しいペットボトルの樹脂を作る「ボトルtoボトル」事業を始めました。
この新しいリサイクルや容器について樹脂メーカーの帝人グループと容器メーカーの東洋製罐鰍フ方にお話を伺いました。ここでは、御三方のお話をまとめてお伝えします。

講師  ◆佐藤和広 さん 帝人ファイバー 原料重合グループ長
 ◆池谷博さん  帝人化成梶@執行役員
 ◆森章次さん 東洋製罐梶@環境部長

 

ペットボトルとリサイクル

 すでにご承知と思いますが、ペットボトルはペットのように便利で可愛いいボトルという意味ではなく、材料の樹脂の名前であるポリエチレンテレフタレートの頭文字・PETから名付けられました。

 PET樹脂は微量の触媒(ゲルマニウム)以外には添加物は一切含まず、分子構造も窒素や塩素を含まず、炭素・水素・酸素だけで出来ています。したがって燃やしても有害な化合物・重金属が出ず、燃焼時の発熱量も中庸で焼却炉を痛める心配がありません。

 ペットボトル容器はその長所から消費量が急増中で03年実績では樹脂45万トン、500ml.ボトルに換算して150億本に達しています。容リ法の下でリサイクル率も年々向上していますが、今までのリサイクルはマテリアルリサイクルで、形を変えて繊維・シート・卵容器に加工されていました。

 この方法では融かす時の熱による樹脂の分解や不純物の混入などで質が低下し、一度だけのリサイクルしか出来ず、最後は埋めたり燃やしたり処分されていました。

分子レベルまで分解して再生

 企業理念「地球環境と共生をはかり、自然と命を大切にします」を実現するために、92年に帝人グループ・地球環境憲章を制定し活動をしてきました。
ポリエステル樹脂のトップメーカーとして@地球環境の限界、A基幹資源の限界を意識して、B環境先進企業が将来優位に立つと信じて取り組んでいます。
今は事業的には苦しいのですが将来を信じて立ち上げました。

 新しいリサイクルシステムは使用済みのペットを分子レベルまで分解・精製して再びペット樹脂を作る方法で、石油から作った物と同等の樹脂に生まれ変り、何度でもリサイクルが可能となります。
これをケミカルリサイクルと呼び、ペットボトルを原料に新しいペットボトルを作ることから「ボトルtoボトル」(水平リサイクル)ともいいます。

〜〜ボトルtoボトル〜〜
  分別収集された飲料を主とした食品用PETボトルを原料資源(石油代替原料)として活用し、再び品質の高いクリーンなPET樹脂および食品用ボトルに半永久的にリサイクルする。


具体的な工程

 プラントは山口県周南市の徳山事業所にあり、年間6万2千トンの処理能力(03年リサイクル量のおよそ1/4。実際の入荷量はこれより小さい)を持っています。
工程は大きく3つに分かれています。

 第1工程は市町村から引き取ったボトルを一辺10センチ程に破砕し、キャップやラベルなどを取り除き水で洗浄します。  第2工程は分解(解重合)し、DMT(テレフタル酸ジメチル)とエチレングリコールを作ります。
これを純度99.99%まで精製(石油から作られる純度は99.9%)します。
さらにDMTを加水分解してTPA(テレフタル酸)とします。
 第3工程ではTPAとエチレングリコールを反応(重合)させ、テレフタル酸とエチレングリコールが規則正しく100個程繋がったペット樹脂になります。

 樹脂は石油から作られたものと同じ製品(製品管理のためのロットは分けている)として同じ価格でボトルメーカーに出荷します。


環境負荷削減とコスト

 環境負荷として石油からDMTを作る工程に比べて、ペットボトルからDMTを作る工程の使用エネルギーは20%、二酸化炭素の排出量は50%に削減されました。

(編集注;生産コストは設備の稼働率や減価償却年数など一概に言えず、社外には出せないと具体的な数字の発表はありませんでした。
また、容器としての価格(現状)はスチールとアルミ缶がほぼ同一、ペットボトルは数十パーセント程度高いとのこと)。

PETボトル再商品化単価の推移(円/Kg)
平成10年平成11年平成12年平成13年平成14年平成15年
101.895.188.883.875.164.0
(財)日本容器包装リサイクル協会資料より
 

 
繊維to繊維のリサイクルも

 「ボトルtoボトル」に先行して、ポリエステル樹脂で作られている繊維のリサイクル「繊維to繊維」を02年より事業化しています。プラントの能力は1万トン/年で、当初は徳山事業所にありましたが、現在は松山事業所に移設して稼動しています。

 ボタンなどの異物も除去可能で、混紡された布から他の繊維を取り除いて原料にします。


リサイクルの課題

 何よりも使用済みのペットボトルの安定的な入手であります。現在の単年契約でなく複数年契約制度ができたらありがたいと思います。
また、汚れや異物の混入が一定レベル以下に保たれることが必要です。回収費用の負担など問題があり、議論されている事は承知していますが、自治体の活動によって量の確保と品質が保たれています。容リ法の効果は非常に大きいと思います。

 一方「繊維to繊維」はリサイクル率が低いのが現状です。
この分野についても有効な回収システムが出来ることを期待しています。

まとめ:ごみ・環境ビジョン21 理事 宮島和朗
 

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