ごみっと・SUN45号
ごみの発生抑制は、まず足元から

特集 レジ袋を減らそう !

 

  全国各地でレジ袋削減運動が広がっています。ごみっと読者の皆さんならマイバッグは常識。
さまざまなかたちでレジ袋削減に取り組んでおられると思います。
10月31日のレジ袋削減交流集会でも、活発な意見交換が行われました。
それでも、なかなか上がっていかない「レジ袋の辞退率」。
  今回は特集でも「レジ袋」について掘り下げどうしたら削減していけるのか考えていきたいと思います。

レジ袋、いつからあったっけ

 レジ袋の誕生は1965年ころ、梨狩りで使っていた竹で編んだカゴが女性客のストッキングに引っかかることが不評だったため、それに目を付けた製袋メーカが今までにあった取手付きのポリエチレン袋の上部に「封止弁」(縛って袋を閉じる部分)をつけて改良。
これが好評だったためスーパーがレジ袋に応用したのがはじまりとされています。

 70年代後半には、丈夫で使い易く紙袋よりコストが安いことから、多くのスーパーで使用されるようになり、レジ袋はわずかな間で私たちの生活に定着していきました。

燃やしてもいいの?

  「ポリエチレンは燃やしても二酸化炭素と水が発生するだけ。
塩ビ(ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン)と違って塩素を含んでいないためダイオキシンや塩化水素等も発生しない」とされ、コンビニのレジ袋にも「この袋は燃やしても有害なガスは発生させません」と印刷されています。

  しかし、ポリエチレンでも不完全燃焼の場合は発がん性物質であるベンゼンが発生しますし、
蛍光エックス線による分析調査ではポリエチレンでも塩素が検出された例もあります。
また、緑や黄色に着色されたレジ袋の中には顔料にダイオキシン発生の触媒となる銅(Cu)や
有害重金属の鉛(Pb)が含まれているものもあり焼却・埋立時の大気や土壌への汚染が懸念されます。
カラフルな色つきのレジ袋はもちろん白いレジ袋も安易に使い捨てないことが必要です。

レジ袋は高密度ポリエチレン製
現在、使用されているレジ袋のほとんど(約98%)は、高密度ポリエチレン(HDPE)製です。
高密度ポリエチレンは、原油から沸点の差でガソリン・灯油等とともに生産された「ナフサ」からエチレンを精製。中圧〜低圧をかけて製造されます。
白っぽく不透明で剛性がありフイルム成形されレジ袋やごみ袋に使用されるほか、バケツや
シャンプー等の容器、灯油缶などに使われています。

 これに対してエチレンに高圧をかけて製造する低密度ポリエチレン(LDPE)は、牛乳パックの内側コーティングや生鮮食料品のラップなど透明なフイルムとして多用されています。


レジ袋を断るのは
そんなに 「いいこと」 なの?

…… レジ袋削減の意義 ……
 @ 代替可能性・実効性
 A 消費行動からの環境意識の形成
 B 廃棄物の減量
 C 石油資源の浪費・地球温暖化の抑制

  レジ袋は液体の容器や生鮮食品の包装と違い、マイバッグを持参するなど私たち消費者自身が注意すれば代替可能で実効性があります。
しかし、無料で配られるレジ袋は案外重宝で生ごみ袋やごみ箱の内袋、野菜保存袋などとして再利用されることが多いのも現実です。

「日野市ごみ減量推進市民会議」の実施したアンケート調査でも、買い物袋を持参しない理由として「ゴミ入れに利用するためレジ袋が欲しいから」という回答が20%以上ありました。

 しかし、一体どれくらいのレジ袋が再利用されているのでしょうか。
業界団体(日本ポリオレフィンフイルム工業組合)の試算でも、現在、日本国内で1年間に使用されているレジ袋は約 30万2千トンにものぼります。

 これをLLサイズ(肉薄化が進んだLLサイズ9.9g)に換算すると305億枚。
乳幼児を除いた国民1人当たりで、ざっと300枚/年間ももらっていることになります。(コンビニ等の中小のレジ袋で換算すれば当然さらに枚数が増えます)

 杉並区の実施した「杉並区中継所搬入ごみ組成調査(平成14年度)」によればごみ中に含まれるレジ袋の約7割が単なるごみとして捨てられていました。

 タダでいくらでももらえるレジ袋は「ごみの過剰包装ぶくろ」や「タダのごみ」として安易に廃棄されているのが現状です。

日本が輸入する原油の「1日分弱」が
レジ袋に使われている

  業界団体の試算では、レジ袋1枚を製造するのには原料の原油に換算して18.3mLが必要とされています。(内訳:レジ袋になった原油+製造過程のエネルギー)

 現在、レジ袋の6割弱は輸入製品だといわれていますが、それを含めて年間使用量の305億枚のレジ袋の製造に原油を約55.8万KL消費していることになります。
これは、日本の年間原油輸入量である約2億4千万KL(02年)で比較すると、輸入量の1日分弱の原油がレジ袋に使用されていることになります。

 また、京都大学環境保全センターの高月紘氏の試算によれば、焼却の際発生するエネルギーも含めて考えた場合、全ての国民が5年に一度買い替えるという設定で布袋やふろしきを持参し、レジ袋や紙袋を断った場合、資源(廃棄物)として年間約38万トン、石油エネルギーとして74万キロリットルが節約できると試算されています。
これは、日本中の家庭で消費する総エネルギーの1.3%相当となります。

 CO(二酸化炭素)の削減量で考えても、気候変動による異常気象を実感する今、地球温暖化の抑制のために、レジ袋削減は私たちに実践できる緊急課題です。


散らばったレジ袋も問題を起こしている

 街角で風に舞い、海に漂うレジ袋。ごみが詰め込まれ、あるいはレジ袋だけで…。
自然界でいつまでも分解されないで散乱するレジ袋は、さまざまな問題を起こしています。
 イタリアでは1984年、死んで打ち上げられた鯨の胃袋からレジ袋などのプラスチック製袋が50枚も見つかったことがきっかけとなりレジ袋有料化がはじまりました。
イルカやウミガメなどの海洋生物は海中に漂うレジ袋をクラゲと誤飲して死亡するケースが多く、
日本でもレジ袋などのプラスチックの誤飲が原因でイルカが死亡するケースが後を絶ちません。

 奈良公園でも、人間が捨てた食べ物の匂いの付いているレジ袋などのプラスチックを食べたシカが、食べ物が吸収できなくなり栄養不足で死亡するケースが増えているそうです。

  レジ袋などのプラスチックは埋立処理しても半永久的に残ってしまうため、中国や台湾では「白色公害」と呼ばれています。
上海市では今年からレジ袋を有料化することが決定。台湾でも、2001年の台風の際、下水道にレジ袋がつまり洪水の被害が拡大したことから、大幅なレジ袋の使用制限をはじめています。
日本でも大雨時にレジ袋が排水枡に引っかかると水害を誘発する原因となることが懸念されているそうです。


「容リ法」ができて
レジ袋はリサイクルされるはずなんだけど…

 先述の高月氏による「京都市の家庭ごみの組成調査」では、ごみ中にレジ袋が占める割合は1998年から2001年までの4年間平均で7.3%(容積比)にものぼっています。
これから試算すると、コンビニやその他の店で使われるプラ袋も含めてレジ袋は国内で年間41.6万トン。498億枚も廃棄されていると予測されています。

 スーパーやコンビニなどで無料で配られるレジ袋は容器包装リサイクル法(容リ法)の対象となっています。
しかし、容リ法でのプラスチック容器包装は、引き取り総量でも年間で約37万トン(平成15年度実績)とまだまだ進んでおらず、そのうえ、レジ袋はごみ袋等として再利用されるので、実際には容リ法でリサイクルに出される量は少なく、ごみとして廃棄される場合の方が多いのが現実です。

 最終処分場の逼迫問題を抱える東京都の多摩地区の自治体などでは、プラスチック製の袋は発熱量が高いため焼却炉の助燃剤となるとして、市民が「燃やせないごみ」として分別したフイルム系プラスチックを焼却処理していることもあります。


スーパーはレジ袋をいくらでもくれるけど
お金かけているんだろ?

  容リ法で大手スーパーが支払う再商品化委託料の8割がプラスチック製容器包装で、年間4〜5億円にものぼるといわれています。
 某中堅チエーンストアでは、レジ袋とポリスチレン製トレイをあわせた プラスチック製容器包装の再商品化委託料は1億円を越え、レジ袋2億枚強の再商品化委託料は約7,000万円(1枚あたり30銭)かかっています。
 レジ袋の原価は1〜2円かかるので、袋代+容リ法の委託料+1スタンプ5円のレジ袋辞退者への経費等でレジ袋にかかるコストはおよそ5億円にもなっています。
 これに対してレジ袋が有料になれば「商品」になり容リ法の対象でなくなることから、当初、業界ではレジ袋を有料化しようという動きも見られました。

 しかし、現在では家庭ごみの有料化が進み、この上レジ袋も有料になったのでは消費者の反発を買うおそれや購買客の同業他社へ流出の心配から、一部のスーパーを除いて業界のレジ袋有料化への動きは止まっています。
 ところが、1998年に一枚6円でレジ袋の有料化を開始したスーパーのオーケー(株)では、当初売り上げが20%落ち込んだものの1年ほどで回復。
「コストを抑えて良い物を安く」という経営方針が消費者に支持され、近年10%の売り上げの伸び率を記録しています。
もちろんレジ袋も「商品」として採算がとれ、レジ袋辞退率も平均8割程度にものぼっています。

 現在、業界としては現行の容リ法に関して、再商品化委託料は支払わされているのにレジ袋は容リ法ルートではほどんどリサイクルされていない矛盾について各方面に問題提起をおこなっています。


よ〜くわかったよ。
で、どうしたら減らせるのかねー?

…… レジ袋削減の手法 ……
 @ マイバッグキャンペーン
 A レジ袋辞退者への特典
 B レジ袋への課税
 C レジ袋の有料化

マイバッグキャンペーンの
効果と限界
 東京都の多摩市・武蔵野市・日野市をはじめ全国で市民や
行政による積極的なマイバッグキャンペーンが繰り広げられマイバッグは確実に浸透しています。
 レジ袋削減は消費者の選択で実現することから、消費者に
レジ袋の問題を知ってもらい行動につなげていくキャンペーンは最も基本的で重要な取り組みといえます。

 しかし、それと同時に経済的なインセンティブなどの手法を用いなければ「タダでいくらでもレジ袋がもらえる」(つまり、もらった方が得をする)
無料配布店でのレジ袋辞退率のアップには限界もみられます。

 マイバッグは浸透しても「おしゃれなマイバッグの中にレジ袋」と、マイバッグ持参率とレジ袋辞退率には乖離がみられます。
 マイバッグキャンペーンに取り組んでいる「クリーンむさしのを推進する会 マイバッグチーム」では昨年12月「レジ袋1円の導入」を行政に提案。
「日野市ごみ減量推進市民会議」でも、2年間のマイバッグデーキャンペーンが終了する来年6月までに「レジ袋無料配布の中止」への道筋をつけることを目標に、今年3月、日野市議会から東京都に対し、事業者へのレジ袋無料配布中止の働きかけを要請する意見書を提出しています。

日野市ごみ減量推進市民会議
大型スーパー13店舗


レジ袋を断るともらえる
スタンプやシール
自治体がバックアップするところも!
 レジ袋辞退者にスタンプやシールなどを交付し、ポイントが貯まったら金券などとして使えるシステムは現在、大手スーパーをはじめ中小のお店でも実施されています。
しかし、企業の環境への取組として実施しているこの制度ですが、お店が積極的にこのシステムを推進しないのには、レジ袋の2円程度(卸値+再商品化委託料)に比べて辞退者に付与する1ポイントを5円程度に設定しているため、レジ袋を配布した方が安くつくことに理由があります。

 これに対して、愛知県豊田市や東京都杉並区などでは自治体が補助を行ってエコシール制度を導入しています。豊田市では買い物袋持参率が年間約8%上がりました。

 杉並区では売り場面積が500平方メートル未満の店に限定したため、地元小売店の活性化にも役立っています。高知県でもマイバッグキャンペーン月間(10月)に参加店をつのり、エコカードのスタンプラリーを実施。集まったエコカードで景品に応募したり「循環型社会づくり県民ファンド」に寄付したりできる仕組みをつくっています。

 特典方式は消費者の経済的負担が増えないというメリットがあります。お店が積極的にこの方法を推進して行けるような仕組みづくりが求められます。

レジ袋の「有料化」は
起爆剤になるかも!
 生活協同組合の店舗や一部のスーパーではすでにレジ袋を有料にして高いマイバッグ持参率(60%〜90%)をほこっています。レジ袋削減を大きく進めるにはレジ袋の有料化等の価格誘導的措置は有効な手段といえます。

 しかし、この方式は消費者に負担がかかる一方で、販売店に利得が生まれるという点で不公正でもあります。でも、もともとレジ袋にはお金(卸値や再商品化委託料など)がかかっており、レジ袋にかかる経費はお店の商品価格に転嫁されているので、この経費を正当に商品やサービスの向上に反映させた場合、不公正は解消されるでしょう。
(しかし、そうではない場合も多々あるので監視が必要)

 先述のオーケーストアのようにたとえ有料になっても「経費を抑えて良い品をより安く」提供すれば、消費者からかえって支持される結果になります。

 また、レジ袋の有料化は、現実に消費者の経済的負担を強いる方法なので、辞退者にポイントをつけるなどのメリットと、辞退したレジ袋代で得をするしくみにする…なども有効と思われます。

 韓国では1992年に制定された「資源の節約とリサイクルに関する法律(資源リサイクル法)」の「一回用品使用規制」の規定で、スーパーのレジ袋やレストランの使い捨て容器などの無料配布が禁止されています。現在、レジ袋は20ウオン(2円)ですが、効果が期待できないという指摘がなされ、大手スーパーマーケットから徐々に中小の販売店まで50ウオン(5円)に引き上げられつつあります。

杉並区の
課税方式のその後
 2002年3月、杉並区では地方分権一括法で認められた新しい自治体の権限である「法定外目的税」制度を利用して、レジ袋1枚につき5円の税金を消費者から徴収するという「すぎなみ環境目的税」を可決しました。
税収はごみの減量やリサイクルの推進、環境保全に利用するとされています。

 しかし、税の施行は地域経済などへ大きな影響を与えることも予測されます。
そこで、実施時期はレジ袋の使用状況や景気の動向を見て決めるというもので、削減が進めば「場合によっては税を施行しないこともありうる」として、現在、先述のエコシール制度などの課税以外のさまざまな取組みを展開しています。

 区民・事業者・行政からなる「杉並区レジ袋削減推進協議会」では、07年7月の削減率60%をめざして毎年の目標を立て、レジ袋の削減に取り組んでいます。
今年の削減目標は40%でしたが、7月実施した「マイバッグ等持参状況調査」ではマイバッグ等持参率は併用者を含めても31.8%にとどまり削減目標40%には届きませんでした。

 この結果を踏まえて「推進協議会」では税の施行を回避するための取組みとして、区内のスーパー、小売店、コンビニなどのレジ袋有料化をすすめる「要請書」をまとめ、11月中旬にも区長に提出する方針を決めています。

  こうしてみると、レジ袋の有料化や課税等の価格誘導的措置には…
● 市民・事業者の十分な理解
● 広域での一斉開始
● 行政の主導・支援
    …が必要です。

 レジ袋は代替可能で、私たち消費者が選択できるものです。
レジ袋を何気なくもらい続ける生活、レジ袋を当たり前に渡し続ける商業活動に警鐘を鳴らし、物質的な豊かさや利便性・効率性だけを追い求める私たちの今の暮らしが将来世代の環境に与える影響を考え直したいものです。

   ++++ 参考図書 ++++
*レジ袋いりませんハンドブック:ふろしき研究会
*レジ袋通信:杉並区

ごみかん理事 三島佳子



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