ごみっと・SUN45号
全国各地でレジ袋削減運動が広がっています。ごみっと読者の皆さんならマイバッグは常識。
レジ袋の誕生は1965年ころ、梨狩りで使っていた竹で編んだカゴが女性客のストッキングに引っかかることが不評だったため、それに目を付けた製袋メーカが今までにあった取手付きのポリエチレン袋の上部に「封止弁」(縛って袋を閉じる部分)をつけて改良。 これが好評だったためスーパーがレジ袋に応用したのがはじまりとされています。 70年代後半には、丈夫で使い易く紙袋よりコストが安いことから、多くのスーパーで使用されるようになり、レジ袋はわずかな間で私たちの生活に定着していきました。
「ポリエチレンは燃やしても二酸化炭素と水が発生するだけ。 塩ビ(ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン)と違って塩素を含んでいないためダイオキシンや塩化水素等も発生しない」とされ、コンビニのレジ袋にも「この袋は燃やしても有害なガスは発生させません」と印刷されています。
しかし、ポリエチレンでも不完全燃焼の場合は発がん性物質であるベンゼンが発生しますし、
…… レジ袋削減の意義 ……
@ 代替可能性・実効性A 消費行動からの環境意識の形成 B 廃棄物の減量 C 石油資源の浪費・地球温暖化の抑制
レジ袋は液体の容器や生鮮食品の包装と違い、マイバッグを持参するなど私たち消費者自身が注意すれば代替可能で実効性があります。 「日野市ごみ減量推進市民会議」の実施したアンケート調査でも、買い物袋を持参しない理由として「ゴミ入れに利用するためレジ袋が欲しいから」という回答が20%以上ありました。
しかし、一体どれくらいのレジ袋が再利用されているのでしょうか。
これをLLサイズ(肉薄化が進んだLLサイズ9.9g)に換算すると305億枚。 杉並区の実施した「杉並区中継所搬入ごみ組成調査(平成14年度)」によればごみ中に含まれるレジ袋の約7割が単なるごみとして捨てられていました。 タダでいくらでももらえるレジ袋は「ごみの過剰包装ぶくろ」や「タダのごみ」として安易に廃棄されているのが現状です。
業界団体の試算では、レジ袋1枚を製造するのには原料の原油に換算して18.3mLが必要とされています。(内訳:レジ袋になった原油+製造過程のエネルギー)
現在、レジ袋の6割弱は輸入製品だといわれていますが、それを含めて年間使用量の305億枚のレジ袋の製造に原油を約55.8万KL消費していることになります。
また、京都大学環境保全センターの高月紘氏の試算によれば、焼却の際発生するエネルギーも含めて考えた場合、全ての国民が5年に一度買い替えるという設定で布袋やふろしきを持参し、レジ袋や紙袋を断った場合、資源(廃棄物)として年間約38万トン、石油エネルギーとして74万キロリットルが節約できると試算されています。 CO2(二酸化炭素)の削減量で考えても、気候変動による異常気象を実感する今、地球温暖化の抑制のために、レジ袋削減は私たちに実践できる緊急課題です。
街角で風に舞い、海に漂うレジ袋。ごみが詰め込まれ、あるいはレジ袋だけで…。 自然界でいつまでも分解されないで散乱するレジ袋は、さまざまな問題を起こしています。 イタリアでは1984年、死んで打ち上げられた鯨の胃袋からレジ袋などのプラスチック製袋が50枚も見つかったことがきっかけとなりレジ袋有料化がはじまりました。 イルカやウミガメなどの海洋生物は海中に漂うレジ袋をクラゲと誤飲して死亡するケースが多く、 日本でもレジ袋などのプラスチックの誤飲が原因でイルカが死亡するケースが後を絶ちません。 奈良公園でも、人間が捨てた食べ物の匂いの付いているレジ袋などのプラスチックを食べたシカが、食べ物が吸収できなくなり栄養不足で死亡するケースが増えているそうです。
レジ袋などのプラスチックは埋立処理しても半永久的に残ってしまうため、中国や台湾では「白色公害」と呼ばれています。
先述の高月氏による「京都市の家庭ごみの組成調査」では、ごみ中にレジ袋が占める割合は1998年から2001年までの4年間平均で7.3%(容積比)にものぼっています。 これから試算すると、コンビニやその他の店で使われるプラ袋も含めてレジ袋は国内で年間41.6万トン。498億枚も廃棄されていると予測されています。
スーパーやコンビニなどで無料で配られるレジ袋は容器包装リサイクル法(容リ法)の対象となっています。 最終処分場の逼迫問題を抱える東京都の多摩地区の自治体などでは、プラスチック製の袋は発熱量が高いため焼却炉の助燃剤となるとして、市民が「燃やせないごみ」として分別したフイルム系プラスチックを焼却処理していることもあります。
容リ法で大手スーパーが支払う再商品化委託料の8割がプラスチック製容器包装で、年間4〜5億円にものぼるといわれています。 某中堅チエーンストアでは、レジ袋とポリスチレン製トレイをあわせた プラスチック製容器包装の再商品化委託料は1億円を越え、レジ袋2億枚強の再商品化委託料は約7,000万円(1枚あたり30銭)かかっています。 レジ袋の原価は1〜2円かかるので、袋代+容リ法の委託料+1スタンプ5円のレジ袋辞退者への経費等でレジ袋にかかるコストはおよそ5億円にもなっています。 これに対してレジ袋が有料になれば「商品」になり容リ法の対象でなくなることから、当初、業界ではレジ袋を有料化しようという動きも見られました。
しかし、現在では家庭ごみの有料化が進み、この上レジ袋も有料になったのでは消費者の反発を買うおそれや購買客の同業他社へ流出の心配から、一部のスーパーを除いて業界のレジ袋有料化への動きは止まっています。 現在、業界としては現行の容リ法に関して、再商品化委託料は支払わされているのにレジ袋は容リ法ルートではほどんどリサイクルされていない矛盾について各方面に問題提起をおこなっています。
…… レジ袋削減の手法 ……
@ マイバッグキャンペーンA レジ袋辞退者への特典 B レジ袋への課税 C レジ袋の有料化
行政による積極的なマイバッグキャンペーンが繰り広げられマイバッグは確実に浸透しています。 レジ袋削減は消費者の選択で実現することから、消費者に レジ袋の問題を知ってもらい行動につなげていくキャンペーンは最も基本的で重要な取り組みといえます。
しかし、それと同時に経済的なインセンティブなどの手法を用いなければ「タダでいくらでもレジ袋がもらえる」(つまり、もらった方が得をする)
マイバッグは浸透しても「おしゃれなマイバッグの中にレジ袋」と、マイバッグ持参率とレジ袋辞退率には乖離がみられます。
しかし、企業の環境への取組として実施しているこの制度ですが、お店が積極的にこのシステムを推進しないのには、レジ袋の2円程度(卸値+再商品化委託料)に比べて辞退者に付与する1ポイントを5円程度に設定しているため、レジ袋を配布した方が安くつくことに理由があります。 これに対して、愛知県豊田市や東京都杉並区などでは自治体が補助を行ってエコシール制度を導入しています。豊田市では買い物袋持参率が年間約8%上がりました。 杉並区では売り場面積が500平方メートル未満の店に限定したため、地元小売店の活性化にも役立っています。高知県でもマイバッグキャンペーン月間(10月)に参加店をつのり、エコカードのスタンプラリーを実施。集まったエコカードで景品に応募したり「循環型社会づくり県民ファンド」に寄付したりできる仕組みをつくっています。 特典方式は消費者の経済的負担が増えないというメリットがあります。お店が積極的にこの方法を推進して行けるような仕組みづくりが求められます。
しかし、この方式は消費者に負担がかかる一方で、販売店に利得が生まれるという点で不公正でもあります。でも、もともとレジ袋にはお金(卸値や再商品化委託料など)がかかっており、レジ袋にかかる経費はお店の商品価格に転嫁されているので、この経費を正当に商品やサービスの向上に反映させた場合、不公正は解消されるでしょう。 先述のオーケーストアのようにたとえ有料になっても「経費を抑えて良い品をより安く」提供すれば、消費者からかえって支持される結果になります。 また、レジ袋の有料化は、現実に消費者の経済的負担を強いる方法なので、辞退者にポイントをつけるなどのメリットと、辞退したレジ袋代で得をするしくみにする…なども有効と思われます。 韓国では1992年に制定された「資源の節約とリサイクルに関する法律(資源リサイクル法)」の「一回用品使用規制」の規定で、スーパーのレジ袋やレストランの使い捨て容器などの無料配布が禁止されています。現在、レジ袋は20ウオン(2円)ですが、効果が期待できないという指摘がなされ、大手スーパーマーケットから徐々に中小の販売店まで50ウオン(5円)に引き上げられつつあります。
税収はごみの減量やリサイクルの推進、環境保全に利用するとされています。
しかし、税の施行は地域経済などへ大きな影響を与えることも予測されます。
区民・事業者・行政からなる「杉並区レジ袋削減推進協議会」では、07年7月の削減率60%をめざして毎年の目標を立て、レジ袋の削減に取り組んでいます。 この結果を踏まえて「推進協議会」では税の施行を回避するための取組みとして、区内のスーパー、小売店、コンビニなどのレジ袋有料化をすすめる「要請書」をまとめ、11月中旬にも区長に提出する方針を決めています。
こうしてみると、レジ袋の有料化や課税等の価格誘導的措置には…
レジ袋は代替可能で、私たち消費者が選択できるものです。
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