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乾電池から見える

     生産大国、消費大国中国の現状
李 欣栄

 

  ごみかんフレンドリースタッフの李欣栄さんは、中国からの留学生で一橋大の大学院で社会学を研究しています。
  ごみっと・SUN38号で「緑色包囲」という中国のドキュメンタリー映画を紹介しました。乾電池の回収を一人でやっている女性の実話です。
これを見て、李さんに「中国の乾電池をめぐる現状は今どうなっているの?」と聞いたことから、今回、レポートを書いてくれました。高度経済成長まっただ中の中国の様子がよくわかりますね。

 
☆ 回収、わずか2%! ☆

  中国は電池の生産大国であり、消費大国でもある。現在、全国には規模を問わず、電池生産企業が1,400社あり、生産量は年間150〜160億本で、アメリカを抜いて世界一となっている。
  そして、北京市だけでも、年間6,000トンの使用済み乾電池が廃棄されている。
使用上から見れば、ポケットベル、携帯電話、ミニラジオ、ウォークマン、リモコンなどの電気製品に乾電池の利用率が最も高く、バッテリーは自動車や電気自転車に、ニッケルやカドミウムを含有する充電電池は携帯電話、電動玩具などに使われている。
  ポケットベルを例に取ってみると、全国のポケットベルの利用者は4,000万人で、一人の年間消費量を6、7本とすると、一年に2.5億本の廃乾電池が出されていることになる。

  中国の乾電池の生産量は世界の30%を占め、消費量は年間70〜80億本に達しているにもかかわらず、回収率はわずか2%しかない。
北京市で1998年に廃乾電池が本格的に回収されて以来、400トンの廃乾電池が集められているが、その回収率は僅か1.7%に止まっている。
  上海も1998年5月から回収作業を始めた。回収拠点は年々増加しているが、回収量は100トン余りで年間発生量の3,000トンと比べると、ごく微量である。

  回収率が低い水準に止まっている原因は、住民が環境保護意識を持たなさ過ぎるというところにある。
杭州市の三名の中学生がアンケート、インタビュー、文献検索などの方法を用いて、地元での廃乾電池の回収現状について調べてみた結果、市民の8割が廃乾電池の回収に全く無関心であった。
  もう一つの例を挙げてみると、長春市の各スーパーで200個くらいの乾電池回収箱が置かれていたが、しばらく経つと、ゴミ箱と化してしまい、結局、各スーパーの管理人が仕方なく、その回収箱の回収口を封じたり、あるいはその回収箱を撤去せざるを得なくなった。

 
☆ 大いに危惧される環境汚染 ☆

  廃乾電池が環境に汚染を引き起こす大きな原因のひとつは、そこに含まれる水銀である。
1990年代初頭、日本、アメリカなどの先進諸国は乾電池の無水銀化を実現した(水銀含有量は0.0001%以下)が、中国の場合は、まだ厳しい状況にさらされているとしかいえない。
  湖南省動力化学電源工程技術研究センターの楊毅夫博士の話によると、大企業が無水銀の電池を生産し始めたものの、多くの中小企業は低コストで質の悪い水銀電池を大量に生産し、市場競争で勝ち抜けるという奇異な現象さえ起こっている。

  回収率があまりにも低すぎて、使用済みの廃乾電池はほとんど生活ゴミにまぎれて簡易に埋められ、あるいは野積みされている。
言うまでもなく、乾電池には水銀だけではなく、カドミウム、鉛、亜鉛などの有害金属も多く含まれ、土壌や地下水の汚染を招きかねない。
特に充電電池とボタン電池はニッケルやカドミウムでつくられているので、いったん漏れ出たら、その被害は甚大である。
  単1の水銀乾電池1本が土の中で腐ったとすれば、1uの土壌を汚染し、その土の利用価値は永久になくなる。また、1個のボタン電池は600トンの水を汚染するが、この水の量は飲用水として、1人の人間が一生使っても使いきれない量である。

  また、廃バッテリの鉛再生技術については、依然として20世紀60年代のレベルにある。統計によると、全国のバッテリ蓄電池の生産量は年間5,000万個あまりで、鉛の含有量は30万トンである。
以前から回収企業は数多く点在するが、規模も小さく、優れた技術を持たないため、エネルギーの浪費や環境汚染に直接に繋がっている。
  鉛の回収率は80%〜85%だが、毎年2万トンの鉛が紛失してしまっているのが懸念される。再生のためのエネルギーの消費も、外国より三倍くらい高い(中国⇒500〜600キロ石炭/トン鉛 外国⇒150〜200キロ石炭/トン鉛)。汚染も深刻である。
製錬時に発生する鉛蒸気、煙、二酸化硫黄などの排出量は国家基準を何十倍も超えている。

  一方、廃乾電池は厄介な有害廃棄物であるが、資源でもあるのだ。中国市場の占有率が92.5%を示している亜鉛マンガン電池を例に取ってみると、亜鉛、二酸化マンガン、鉄、銅、水銀、石墨などの鉱物資源の使用量は総量の75%を占めている。
そのうち、亜鉛、放電二酸化マンガン、鉄の使用率は70%を示している。
  中国電池工業協会のデータによると、亜鉛マンガン電池を生産するのに、亜鉛15万トン、放電二酸化マンガン27トン、銅0.8トン、鋼16万トンが使われていた。これほどの鉱物資源をむやみに捨ててしまうことは、不正処理による環境汚染を引き起こす誘因にもなるし、資源の浪費にも繋がっている。

 
☆ 廃乾電池を巡るとりくみ ☆

≪始まった分別収集≫
  廃乾電池による危害を最小限にするための第一歩として、分別回収を行うという認識が広がりつつある。この背景の下で、全国には廃乾電池の分別回収運動があちこちに現れてきている。
使用済みの乾電池を指定場所に持ち運ぶと、返金されるといった新しい試みさえ見られる。
  一方、水銀やカドミウムなどの有害物質が含まれていないアルカリ乾電池や、無水銀又は低水銀の乾電池は回収するより、回収しないままで生活ゴミとして処理した方が問題にならないと指摘する専門家もいる。
大量に集められてきた乾電池は、水銀などの有害物質を一ヶ所に集中させ、きちんと管理を行わない限り、逆に汚染を引き起こしやすい環境が作られてしまうから…というわけである。

  目下、全国から回収されてきた廃乾電池を有効に回収・処理・再利用できる企業はほとんど存在していない。民間組織やボランティアたちの熱意と努力のおかげで集められた何十万トン、何百万トンの廃乾電池は行き先が見つからず、溜まる一方である。

  ドキュメンタリー映画『緑色包囲』はこの現状を物語っている。主人公の田桂栄さんは、河南省新郷市で電池販売の店を経営している。10年前から、自ら廃乾電池の回収作業を始めていた。10年を経て、50トンの廃乾電池が集められた。
  ところが、受け取ってくれる企業が見つからず、田さんはその大量の廃乾電池を自分の手で保管せざるを得ない状況に陥っている。すでに、5万元の資金も投入した。彼女の事跡はアメリカの新聞にも掲載された。同じ現象は他の地域でも繰り返されている。
北京市の資源ゴミ収集センターは400トンの廃乾電池を回収したが、その大量の廃乾電池を未だに処理できないまま、専門の人が専門の場所で保管し続けている。

≪無害化処理への着手≫
  『中華人民共和国固体廃棄物汚染環境防治法』と『国家危険廃棄物名録』に基づいて、廃乾電池は水銀、カドミウム、鉛の成分が含まれているため、危険廃棄物として扱われなければならない。
 また、国家環境保護局及び中国軽工総会が公布した『電池製品の水銀含有量制限の規定について』の中で、2001年1月1日から、水銀の含有量が0.025%を超える電池の使用が禁止され、電池製品の上に「低水銀」あるいは無水銀という標識を記さなければならないと規定している。

  ちょっとうれしいことだが、廃乾電池の無害化処理が各地域で続々と着手し始められている。天津市において、近年回収された200トン余りの廃乾電池を固化処理し、電池本体を空気や水と遮断させることによって、その廃乾電池を安全に埋立て・処理できるようになった。
また、全国初の電気廃棄物の処理工場が2003年9月に江蘇省の無錫市に建設着工された。この工場が建設されることによって、年間3万トンの電気廃棄物を安全処理することができるといわれている。

  また、バッテリ電池の鉛回収については、江蘇、湖北、上海でそれぞれ三大企業が再生工場を建設し、再生鉛の生産量は年間10万トンに上り、全国の再生鉛総量の二分の一を占めている。この三つの企業は規模が大きく、生産量も多い。
より優れた技術をもつことによって、資源の回収率が高水準に達成され、環境に与える悪影響も最小限に抑えられる。特に江蘇春興合金はアメリカやドイツの技術を学び、廃気、廃水、残渣について、すべて国家基準を達成している。

 
☆ これから… ☆

≪乾電池の無水銀化≫
  1997年に『電池製品の水銀含有量制限の規定について』が公布された。当該規定の中で、2002年まで低水銀化(0.0025%以下)、2006年まで無水銀化(0.0001%以下)といった目標を達成することが決められている。
2001年1月1日から、水銀の含有量が0.025%を超える乾電池の生産を禁じ、同時に、国内市場で販売される国産電池又は輸入品について、製品に「低水銀」あるいは「無水銀」といった標識を明記しなければならないし、明記されない場合には、その販売を禁止することとなる。

  2005年1月1日から、水銀の含有量が0.0025%を超える電池の販売も禁止されている。
  また、2005年1月1日から、0.0001%を超えるアルカリ亜鉛マンガン電池の生産を禁じ、2006年1月1日から、その経営販売を禁じることと決められている。

≪実効性のある政策・法規へ≫
 『中華人民共和国固定廃棄物汚染環境防治法』(1996年)に基づいて『廃電池汚染防治技術政策』が2003年10月に制定・施行されるようになった。
この政策では、廃電池の分類・収集・運搬・総合利用・保管・処理をいかに行うかの技術指導を規定し、処理施設の選択や建設及び管理を指導し、環境保護ビジネスに導くことを目指している。
  ところが、これは、あくまでも指導的なものに止まっており、実効性のあるものとは到底考えられないだろう。しかも、これと表裏一体の関係にある『環境法』は1979年、『固定廃棄物汚染環境防治法』は1996年に早くも制定されたが、あまり機能していないということである。

 こうした現状に陥るのは、法律を機能させる具体策や実施細則が欠けているところに起因している。この現状を是正するために、各級地方政府(地方自治体)及び各地の環境保護機関が地元の状況に対応して、より適切な措置をとるべきである。

≪生産業者への責任追及≫
  生産業者に使用済み乾電池の回収及び無害化処理責任を負わせることが肝心なところであり、企業による生産技術や処理技術の開発に向けて国からの補助金や政策面の援助が必要となる。
また、消費者からの協力を求めるためには、国民の環境保護意識を高め、環境教育を強化しなければならない。


生産大国、消費大国中国の現状

乾電池から見える

     生産大国、消費大国中国の現状
李 欣栄

 

  ごみかんフレンドリースタッフの李欣栄さんは、中国からの留学生で一橋大の大学院で社会学を研究しています。
  ごみっと・SUN38号で「緑色包囲」という中国のドキュメンタリー映画を紹介しました。乾電池の回収を一人でやっている女性の実話です。
これを見て、李さんに「中国の乾電池をめぐる現状は今どうなっているの?」と聞いたことから、今回、レポートを書いてくれました。高度経済成長まっただ中の中国の様子がよくわかりますね。

 
☆ 回収、わずか2%! ☆

  中国は電池の生産大国であり、消費大国でもある。現在、全国には規模を問わず、電池生産企業が1,400社あり、生産量は年間150〜160億本で、アメリカを抜いて世界一となっている。
  そして、北京市だけでも、年間6,000トンの使用済み乾電池が廃棄されている。
使用上から見れば、ポケットベル、携帯電話、ミニラジオ、ウォークマン、リモコンなどの電気製品に乾電池の利用率が最も高く、バッテリーは自動車や電気自転車に、ニッケルやカドミウムを含有する充電電池は携帯電話、電動玩具などに使われている。
  ポケットベルを例に取ってみると、全国のポケットベルの利用者は4,000万人で、一人の年間消費量を6、7本とすると、一年に2.5億本の廃乾電池が出されていることになる。

  中国の乾電池の生産量は世界の30%を占め、消費量は年間70〜80億本に達しているにもかかわらず、回収率はわずか2%しかない。
北京市で1998年に廃乾電池が本格的に回収されて以来、400トンの廃乾電池が集められているが、その回収率は僅か1.7%に止まっている。
  上海も1998年5月から回収作業を始めた。回収拠点は年々増加しているが、回収量は100トン余りで年間発生量の3,000トンと比べると、ごく微量である。

  回収率が低い水準に止まっている原因は、住民が環境保護意識を持たなさ過ぎるというところにある。
杭州市の三名の中学生がアンケート、インタビュー、文献検索などの方法を用いて、地元での廃乾電池の回収現状について調べてみた結果、市民の8割が廃乾電池の回収に全く無関心であった。
  もう一つの例を挙げてみると、長春市の各スーパーで200個くらいの乾電池回収箱が置かれていたが、しばらく経つと、ゴミ箱と化してしまい、結局、各スーパーの管理人が仕方なく、その回収箱の回収口を封じたり、あるいはその回収箱を撤去せざるを得なくなった。

 
☆ 大いに危惧される環境汚染 ☆

  廃乾電池が環境に汚染を引き起こす大きな原因のひとつは、そこに含まれる水銀である。
1990年代初頭、日本、アメリカなどの先進諸国は乾電池の無水銀化を実現した(水銀含有量は0.0001%以下)が、中国の場合は、まだ厳しい状況にさらされているとしかいえない。
  湖南省動力化学電源工程技術研究センターの楊毅夫博士の話によると、大企業が無水銀の電池を生産し始めたものの、多くの中小企業は低コストで質の悪い水銀電池を大量に生産し、市場競争で勝ち抜けるという奇異な現象さえ起こっている。

  回収率があまりにも低すぎて、使用済みの廃乾電池はほとんど生活ゴミにまぎれて簡易に埋められ、あるいは野積みされている。
言うまでもなく、乾電池には水銀だけではなく、カドミウム、鉛、亜鉛などの有害金属も多く含まれ、土壌や地下水の汚染を招きかねない。
特に充電電池とボタン電池はニッケルやカドミウムでつくられているので、いったん漏れ出たら、その被害は甚大である。
  単1の水銀乾電池1本が土の中で腐ったとすれば、1uの土壌を汚染し、その土の利用価値は永久になくなる。また、1個のボタン電池は600トンの水を汚染するが、この水の量は飲用水として、1人の人間が一生使っても使いきれない量である。

  また、廃バッテリの鉛再生技術については、依然として20世紀60年代のレベルにある。統計によると、全国のバッテリ蓄電池の生産量は年間5,000万個あまりで、鉛の含有量は30万トンである。
以前から回収企業は数多く点在するが、規模も小さく、優れた技術を持たないため、エネルギーの浪費や環境汚染に直接に繋がっている。
  鉛の回収率は80%〜85%だが、毎年2万トンの鉛が紛失してしまっているのが懸念される。再生のためのエネルギーの消費も、外国より三倍くらい高い(中国⇒500〜600キロ石炭/トン鉛 外国⇒150〜200キロ石炭/トン鉛)。汚染も深刻である。
製錬時に発生する鉛蒸気、煙、二酸化硫黄などの排出量は国家基準を何十倍も超えている。

  一方、廃乾電池は厄介な有害廃棄物であるが、資源でもあるのだ。中国市場の占有率が92.5%を示している亜鉛マンガン電池を例に取ってみると、亜鉛、二酸化マンガン、鉄、銅、水銀、石墨などの鉱物資源の使用量は総量の75%を占めている。
そのうち、亜鉛、放電二酸化マンガン、鉄の使用率は70%を示している。
  中国電池工業協会のデータによると、亜鉛マンガン電池を生産するのに、亜鉛15万トン、放電二酸化マンガン27トン、銅0.8トン、鋼16万トンが使われていた。これほどの鉱物資源をむやみに捨ててしまうことは、不正処理による環境汚染を引き起こす誘因にもなるし、資源の浪費にも繋がっている。

 
☆ 廃乾電池を巡るとりくみ ☆

≪始まった分別収集≫
  廃乾電池による危害を最小限にするための第一歩として、分別回収を行うという認識が広がりつつある。この背景の下で、全国には廃乾電池の分別回収運動があちこちに現れてきている。
使用済みの乾電池を指定場所に持ち運ぶと、返金されるといった新しい試みさえ見られる。
  一方、水銀やカドミウムなどの有害物質が含まれていないアルカリ乾電池や、無水銀又は低水銀の乾電池は回収するより、回収しないままで生活ゴミとして処理した方が問題にならないと指摘する専門家もいる。
大量に集められてきた乾電池は、水銀などの有害物質を一ヶ所に集中させ、きちんと管理を行わない限り、逆に汚染を引き起こしやすい環境が作られてしまうから…というわけである。

  目下、全国から回収されてきた廃乾電池を有効に回収・処理・再利用できる企業はほとんど存在していない。民間組織やボランティアたちの熱意と努力のおかげで集められた何十万トン、何百万トンの廃乾電池は行き先が見つからず、溜まる一方である。

  ドキュメンタリー映画『緑色包囲』はこの現状を物語っている。主人公の田桂栄さんは、河南省新郷市で電池販売の店を経営している。10年前から、自ら廃乾電池の回収作業を始めていた。10年を経て、50トンの廃乾電池が集められた。
  ところが、受け取ってくれる企業が見つからず、田さんはその大量の廃乾電池を自分の手で保管せざるを得ない状況に陥っている。すでに、5万元の資金も投入した。彼女の事跡はアメリカの新聞にも掲載された。同じ現象は他の地域でも繰り返されている。
北京市の資源ゴミ収集センターは400トンの廃乾電池を回収したが、その大量の廃乾電池を未だに処理できないまま、専門の人が専門の場所で保管し続けている。

≪無害化処理への着手≫
  『中華人民共和国固体廃棄物汚染環境防治法』と『国家危険廃棄物名録』に基づいて、廃乾電池は水銀、カドミウム、鉛の成分が含まれているため、危険廃棄物として扱われなければならない。
 また、国家環境保護局及び中国軽工総会が公布した『電池製品の水銀含有量制限の規定について』の中で、2001年1月1日から、水銀の含有量が0.025%を超える電池の使用が禁止され、電池製品の上に「低水銀」あるいは無水銀という標識を記さなければならないと規定している。

  ちょっとうれしいことだが、廃乾電池の無害化処理が各地域で続々と着手し始められている。天津市において、近年回収された200トン余りの廃乾電池を固化処理し、電池本体を空気や水と遮断させることによって、その廃乾電池を安全に埋立て・処理できるようになった。
また、全国初の電気廃棄物の処理工場が2003年9月に江蘇省の無錫市に建設着工された。この工場が建設されることによって、年間3万トンの電気廃棄物を安全処理することができるといわれている。

  また、バッテリ電池の鉛回収については、江蘇、湖北、上海でそれぞれ三大企業が再生工場を建設し、再生鉛の生産量は年間10万トンに上り、全国の再生鉛総量の二分の一を占めている。この三つの企業は規模が大きく、生産量も多い。
より優れた技術をもつことによって、資源の回収率が高水準に達成され、環境に与える悪影響も最小限に抑えられる。特に江蘇春興合金はアメリカやドイツの技術を学び、廃気、廃水、残渣について、すべて国家基準を達成している。

 
☆ これから… ☆

≪乾電池の無水銀化≫
  1997年に『電池製品の水銀含有量制限の規定について』が公布された。当該規定の中で、2002年まで低水銀化(0.0025%以下)、2006年まで無水銀化(0.0001%以下)といった目標を達成することが決められている。
2001年1月1日から、水銀の含有量が0.025%を超える乾電池の生産を禁じ、同時に、国内市場で販売される国産電池又は輸入品について、製品に「低水銀」あるいは「無水銀」といった標識を明記しなければならないし、明記されない場合には、その販売を禁止することとなる。

  2005年1月1日から、水銀の含有量が0.0025%を超える電池の販売も禁止されている。
  また、2005年1月1日から、0.0001%を超えるアルカリ亜鉛マンガン電池の生産を禁じ、2006年1月1日から、その経営販売を禁じることと決められている。

≪実効性のある政策・法規へ≫
 『中華人民共和国固定廃棄物汚染環境防治法』(1996年)に基づいて『廃電池汚染防治技術政策』が2003年10月に制定・施行されるようになった。
この政策では、廃電池の分類・収集・運搬・総合利用・保管・処理をいかに行うかの技術指導を規定し、処理施設の選択や建設及び管理を指導し、環境保護ビジネスに導くことを目指している。
  ところが、これは、あくまでも指導的なものに止まっており、実効性のあるものとは到底考えられないだろう。しかも、これと表裏一体の関係にある『環境法』は1979年、『固定廃棄物汚染環境防治法』は1996年に早くも制定されたが、あまり機能していないということである。

 こうした現状に陥るのは、法律を機能させる具体策や実施細則が欠けているところに起因している。この現状を是正するために、各級地方政府(地方自治体)及び各地の環境保護機関が地元の状況に対応して、より適切な措置をとるべきである。

≪生産業者への責任追及≫
  生産業者に使用済み乾電池の回収及び無害化処理責任を負わせることが肝心なところであり、企業による生産技術や処理技術の開発に向けて国からの補助金や政策面の援助が必要となる。
また、消費者からの協力を求めるためには、国民の環境保護意識を高め、環境教育を強化しなければならない。


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