特集 ●春ですよ*座談会

     生ごみ堆肥化の取組

 

  各地で生ごみを活かす活動が盛んです。単に“ごみ 減量”だけでは、しんどくなるばかりですが、畑づくりを通しての地域での交流、子どもたちの環境学習にもつながって環が広がり、本腰で取組み出す自治体も増えてきました。
  そこで、ごみかんのお膝元多摩地域で、活発に生ごみの活動に励んでいる3名の会員の方に集まっていただき、たっぷり3時間、実践報告や情報交換をしていただきました。
事務所が熱気で発酵しそうなほど、それはそれはエネルギーに溢れた座談会になりました。

司 会
  みなさんすでにお知り合いなのですが、今日は「ごみっと・SUN」の特集座談会なので、まず自己紹介からお願いします。
 

武蔵野市
石川洋一さん
 私は「クリーン武蔵野を推進する会」の生ごみ研究サークルというワーキンググループに属しています。
この会は27年ぐらい前にできた会で、会員は900名います。
  生ごみ研究サークルは97年にできたサークルで「省エネで堆肥化する」ことを実践するために、学習・実践・普及活動ををやろうと立ち上げました。
サークルの会員は50名でその中の事務局員の10名が中心に動いています。展示会や講習会、小中学校の落ち葉の堆肥化や農家に堆肥を持っていくなどの活動を行っています。
 

八王子市
土方彰子さん
  八王子で生ごみ堆肥化に取り組んでいるサークル「リサイクルお店やさんごっこの会」として活動しています。
家庭から出た生ごみを野菜の農家や畜産農家にもって行って、出来た野菜や乳製品をいただいたりしています。

  私も今までリサイクルや日の出の処分場問題などごみ問題オールラウンドでやってきましたが、こういう活動を始めて、ようやく農業との接点が深まって、循環型社会の小型版をやっていくってことがいいなぁ…って思っています。
  また、全国的には、NPO法人たい肥化協会の理事をやっていますが、この会は毎年一回、夏に、全国交流会を早稲田で開催しています。
毎回500人を超える大盛況で年々とても良い活動が報告されています。事務局をしていますので、てんてこ舞いですが、とても楽しみにしています。今年も8月に行いますのでよろしくお願いします。
  ついこの間ドイツ、デンマークにも視察に行ってきました。ヨーロッパの進んだ堆肥化システムが「日本でもやれる」と確信を持ちました。
 

小金井市
向井加代子さん
  「ごみ問題探検隊(小金井と府中の市民団体)」「小金井のごみを考える・とんぼの会」に所属しています。ごみかんの理事でもあります。
  とんぼの会では、日本最古といわれる焼却場、二枚橋清掃工場の立替問題に直面していて、市民でお金を集めてダイオキシンの土壌調査を行うなどの活動を行ってきました。
活動は対立型から参加型ヘということで、行政が作った3つの会(審議会、協議会、リサイクル会)全部に、会のメンバーが入っています。
  生ごみ堆肥化の活動としては、夏休みに小学校の生ごみ処理機に家庭の生ごみを投入する活動に何年か前から参加しています。行政の施策に協力しながら、なおかつ「こうしたらどうだろう」という市民からの提案や実践をしています。
 

地域の堆肥化取り組み状況

 

司 会
  具体的な活動について、少し詳しくお話ししてください。
 

石川さん
  武蔵野市は人口が約13万4千人で世帯数6万4千所帯。小規模だけど人口密度は日本で二番目とも言われています。しかし、農地も4%ほどあります。家庭から1万トンくらい出ると推定される生ごみを「地元の農家で使ってもらえれば」というのが私たちの会の願望です。
  それで、現在の堆肥化率はいったいどのくらいか予測を行いました。今まで、私たちの会で助成(市からの補助金による)してきたコンポストが3,000個、EMバケツが97個(84年度から01年度の累計)になります。また、市からの直接の補助金による生ごみ処理機が280台(95年度から01年度の累計)購入されています。

  これが現在どのくらい使用されているかということになると、私たちの会で、過去2回ほど追跡調査を行いましたが、EMバケツで、購入して2年後に半分ぐらいしか使っていなかったということがありました。それで、コンポストとEMバケツは約半分、生ごみ処理機は現在でもほぼ使用されていると仮定して約1,500戸の世帯が機器類を使って堆肥化に取り組んでいると予測しました。

  あと、集合住宅では、99年に建設された公団の団地「サンバリエ」(約600戸)で13機の大型処理機を導入しましたから、堆肥化率は4%弱ぐらいなのかなと推定しています。
これは、機器類を使った堆肥化の予測で、そのほかにも武蔵野市でも戸建てや社宅など土があるお宅が約3分の1ありますから、そこで各自が行っている堆肥化も若干あると予測しています。

  会では、小中学校の環境教育への協力を行ったり、市が設置した「ごみを減らそう行動委員会」に参加して、小学校にアンケートをとって堆肥化を中断していた学校3校に出向いて地域を巻き込んで堆肥化を再開させたり、市内のコミニティセンターで出るお茶がらの堆肥化などを実践しています。
 

向井さん
  小金井市の人口は約11万人です。去年の10月、小金井市と小平市は「食品廃棄物肥料化等事業検討委員会」を発足させました。
市の環境部長が委員長で、委員総数は20名。JAや農工大の先生やNPO法人の堆肥化協会の方、地元の農業者の方などが参加しています。
  現在は、2、3人の農家の方に農地に生ごみ堆肥を試験的に入れてくださることを打診し、OKしてもらったところです。
都市型の農業は小松菜を年に7回も収穫していたり、兼業農家も多く、広い畑の隅に試験的に入れるのとは違って、出来てくる作物が違ったものになってはいけないし、生ごみ堆肥の受け入れは農家にとっても勇気がいることなんだと実感しました。

  また、小金井市には小中学校の給食の生ごみを対象に、11機の大・中型生ごみ処理機を導入して年間約100トンの生ごみの堆肥化を行っています。それを夏休みの給食がない期間に処理機が空いているからと4年ほど前から「夏休み市民投入事業」を行っています。
  夏休みの一ヶ月間、土日を除いた毎朝、市民が家庭から生ごみを運んできて堆肥化するという事業ですが、03年度実績では、参加した市民は延べ1,311人、投入量1,532kg、ごみ出しを指導したり記録したり計ったりする市民ボランティアの投入管理者が102人です。

  市民が事前から広報などに努めた結果、前年の3倍になりました。ごみ減量ということでは一ヶ月間限りの活動で、たいした量にはならないけれど、ごみに関する「気づき」や理解のある市民を育てていくきっかけになっています。
  これに近い事例では藤沢市でもこのような取り組みを始めているようです。市民からこの取り組みを「通年でやって欲しい」という声も出ていますが、果たして、バケツを持って学校まで通う市民は多いのか、またお世話係も大変です。
 

「奇特な市民」だけによりかからない 堆肥化システムを

 

司 会
  実践上の課題についてはいかがでしょうか?
 

向井さん
  一部の奇特な市民、無償ボランティアに頼る構造には限界があると感じています。都市部では町会の組織率が下がり、ごみ減量推進員にもなり手がいない。
小金井市では推進員には多少手当てが出ていますが、夏休み投入事業などのように、投入管理者を全くの無償ボランティアに頼っていては続かないと思います。
公募制にしてある程度有償にするとかも必要なのではないでしょうか。
 

石川さん
  武蔵野市では、EMぼかしで処理した生ごみを畑に入れるということを3年やってきましたが、受け入れサイドの農家が農地を空けておかなくてはならなくなって、そこで代わりに、処理機を2台入れました。
  サンバリエ、ならびに他の8施設では150トンぐらいの生ごみを処理機で一次処理し、その後業者で堆肥にして、市内14軒ほどの農家で使ってもらっています。
市では50戸以上の集合住宅を新築する際には生ごみ処理機を入れるよう指導していますが、
コストが大変かかり、なかなか進まないようです。
 

向井さん
  人によって意識の度合いが本当に違う。意識していない人に、どうやって参加してもらうかが肝心だと思います。
 

土方さん
  これは、札幌市のパンフレットですが、生ごみの堆肥化のやり方がきめ細かく、わかりやすく書いてあります。一人ひとりの市民の意識を高めて、取り組めるようにこうやってキャンペーンしています。
 

向井さん
  生ごみを「ごみ」にしないことで得するように、地域通貨とか上手に使って、あとで介護などで使えるようなしくみが必要だと思います。
 

田舎発*ぼかし堆肥で若者の職場作り

 

司 会
  土方さん、地域通貨を使った例がありますか?
 

土方さん
  山梨の南部町のNPO法人なんぶ農援隊では、給食センターの生ごみをぼかしあえにして「ぼかし飼料」にし、それを鶏に食べさせ「ぼかし卵」を生産しています。
  そして鶏糞も「ぼかし堆肥」にして、それで大豆を作って、大豆から味噌を生産し、それを売るためにお店まで持って若者の雇用も生み出しています。
会員内で使える「竜馬札」という一枚500円相当の地域通貨を、一日ボランティアをした人に3,000円分を渡しているそうです。それで卵を買ったり、味噌を買ったりできます。
現在は、山の仕事の手伝いや田舎暮らしを体験してもらう体験参加型町おこしまで企画して、もともと外からやってきた彼らですが村の人たちにも受け入れられています。
  実際に行ってきて感激しました。できた有機大豆がまた、すばらしく大粒でおいしいんです。
 

向井さん
  地産池消も大事だけど、農村と都市部が姉妹都市的にやっていくのもいいですね。
 

土方さん
  実際、私たちは、八ヶ岳のふもとの、長野県川上村の方とそういう関係を続けていますが、土がふかふか。農薬も使わないでやっています。
  東京の農家はぎりぎりの敷地でやっているから非常に慎重だけど、ここの方は「都会の生ごみを引き受けます」「都会の人に見に来て欲しい」と言ってくださっています。いいものだったら使ってくれる。
 

司 会
  塩分については問題ないでしょうか。
 

土方さん
  実際にたい肥化協会で検査しましたが、日本は雨も多いので普通に食べる食品程度の塩分は問題ありません。
  ドイツでも家庭でのコンポストには野ねずみ対策で「食べ残し」は不向きとされていますが、自治体で回収する生ごみは食品残渣でもOKになっています。
分別を徹底して、タバコとかの異物を混入しないようにするのはもちろんです。
 

できた堆肥の使い道

 

司 会
  小金井の堆肥の配布はどうなってますか?
 

向井さん
  月に2回、市のリサイクル事業所で配布していますが、一人が衣装箱の半分ぐらい持って行っています。あと、市の植木の無料配布や市民まつりなどで多くの人が持ち帰っています。
  また、小金井市は公園が多く、市民がボランティアで小金井公園の管理を行っていますが、今回は苗木だけに堆肥を使いました。
堆肥は重いので、できればこれも有償にして、出来た堆肥をたくさん使ってもらうようになればと考えています。
農家に使ってもらうだけではなく、都市には都市の生ごみ堆肥の使い道があると思います。
 

土方さん
  船橋市では市が農地を借り上げて市民で「生ごみを投入する人」を募集し、市民農園を始めました。
相続税対策で農家が有利になるようにして、農家の人の土地を借りてやるようにするといいですね。
 

石川さん
  マイバッグキャンペーンの先進都市埼玉県北本市に視察に行きましたが
「ごみを減らそう市民会議」では、市民農園は生ごみを持ってくる人しか貸さないそうですよ。
 

向井さん
  公園の隅でも畑とか作ってもいいのではないかしら。公園ということで制約があるのでしょうか。
 

石川さん
  学校でもやれば子どもたちが自然の循環を勉強できますね。
 

土方さん
  自治体レベルでは、名古屋市(人口217万人)や、岐阜市などの50万人規模の自治体でも家庭ごみの堆肥化が広がっています。
名古屋市はまだ一部ですが、事業系生ごみとの混合で120トンの堆肥化プラントを作って、200世帯からはじめて02年度には500世帯の堆肥化を実施しています。
  名古屋市は周りが農業地帯で、知多半島などできた堆肥を引き受ける市がありました。
 

向井さん
  焼却施設の建替えが迫っているので、行政といっしょに堆肥化の方向を強力に進めていきたいです。
ひとつでも自治体で成功すると他の地域にも波及すると思うので、がんばります。
 

マルチまがい商法にご注意

 

司 会
  ところで小金井市の市報に「生ごみ処理機の売り込みに注意」という記事が出ていましたね。
 

向井さん
  家庭ごみの有料化とともに最近多摩地域に、システムで30万円、機械だけだと10万の生ごみ処理機の売込みが行われています。集合住宅の多い多摩や八王子でも多いようですよ。
  パンフレットやホームページでは、都市と農村を結ぶしっかりした循環型社会システムのようにうたっていますが、処理機で一次処理したものを月1万円で買い取るなんて、冷静に考えるとあり得ないことですよね。
説明会があちこちで開かれて、知人からの紹介などで購入する人を増やしているようなので、小平市や小金井市などでは、行政も注意を呼びかけています。
 

司 会
  こういうお騒がせもありますが、次年度もさらに生ごみ堆肥化の実践が前進できるように、がんばってください。今日はどうもありがとうございました。
 


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