当初、県などに広域処理センターを作らせようとして挫折した環境省が次に考えたのが特殊法人・環境事業団だった。
法人の見直し論議で事業団は廃止の運命にあった。同省は「事業団にPCB処理のノウハウはないが、生き残らせるためにはこれしかない」(幹部)と事業団が国の補助金や借金で処理施設を造り、事業所の持ち込む廃葉物の処理を担う、今の仕組みが持ち込まれた。
だが、事業国にPCB処理のノウハウは何もない。大学教授ら専門家を集めた委員会でメーカーの技術を評価し、ブロックごとに入札を行い、建設を任せている。
かかった費用は全部、全国均一料金に上乗せされ、 1トンのPCB処理に数億円かかる。
当初、全国を8、9ブロックに分けるはずの計画は、結局5つになった。その先頭を走るのが北九州市。
事業団が新日鉄から買った市北部の響灘の埋め立て地で急ピッチで建設工事が進む。
156億円で新日鉄が受注した1期事業は日処理量0.5トン。6月には試運転に入る。隣では新日鉄が溶融炉を建設、PCB処理後の残さや基準以下の汚染物を燃やす。
2期工事は当初日6トンを計画していたが、その後、需要がないことがわかり2トンになりそう。
「当初試算した時に使った資料が誤っていたから」(事業団)というが、「国家プロジェクト」のわりに、計画はあまりにずさんだ。
国からの申し入れを受けた市は安全性と情報公開を前提に了解、翌年、130回の市民説明会を開催した。
安全監視委員会の設置など新たな方式は他の自治体のモデルにもなった。 委員の1人、津田潔さん(67歳)は「会社で公害問題に取り組んだ経験を生かしたかった。全国の処理施設を見学して理解が深まった」と話す。
ただ、中国、四国、九州の17県の廃棄物を受け入れることに「こんなに広げたら危険性が増す」(「響灘を危険物ごみ捨て場にするなの会」代表の南部和見さん)との声もある。
当初、九州だけのPCBを処理するはずが中国地方の立地が難航し、北九州が一手に引き受けたという事情もある。
反対運動側はPCBに含まれるダイオキシン類の連続測定装置の設置を要望しているが、「サンプリング器にすぎず、その期間の平均値が出るだけで、仮に高い値が出ても原因究明の役に立たず、お金がもったいない。」(自治体技術職幹部)と自治体側専門家の評価は辛い。 |