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ごみかん

ドイツ特派員の

理穂です

第 4 巻

 

ごみっと・SUN 40号
第19回 学校環境センター
Schul Umwelt Zentrum

 
  ベルリンには全部で13の学校環境センターがありますが、そのひとつ、ミッテ地区のセンターをご紹介します。
同センターは学校園での作業を通して自然と親しもうという1920年代の改革教育の流れに基づき、50年代に作られました。
現在は近辺70校の子供たちがやってくる環境教育の場となっており、学校への植物の配布や貸し出しもしています。数師や幼稚園の先生のための研修も実施しています。

  クルーガー ダーネルソン所長はギムナジウム(注)の教師でもあり、週の3分の2は同セターで働き、残りはギムナジウムで教鞭を取っています。センターにはほかに7人のフルタイムの庭師をはじめ、パートや研修生など全部で30人が働いています。

  分園と合わせて55,000平方メートルの広さを誇り、センター中心となるウエディングの中央園は22,000平方メートル。
ため池や畑、焚き火の場所、コンポストはもちろん、野菜栽培などをする作業園、植物のしくみやメンデルの法則など理論について学習園、各学校に配達するため毎月テーマごとに違つた植物を育てている配達園があります。

  隣接する小さな森には各所に番号が振ってあり、木の腐敗や年輪、蜂などテーマごとに自然体験ができるよう工夫されています。
温室の屋根に降り注いだ雨水は温室の下のタンクに溜め、温室内の水遣りに利用しています。温室の排水はアシの池で自然浄化して川に返します。雨水がただ下水に流れ込むのを防ぐとともに、有効利用しています。

  センターでは環境教育において「認識、行動、背景理解」の3点が重要であり、環境意識を持つこと、自然を理解し、説明し、表現し、体験することが久かせないと考えています。
最近若者の暴力行為が社会問題となっていますが、同センターでも週末や夜中に若者が侵入し、備品やベンチを壊していきます。
市長は「そのような若著を減らすためにも、同センターのような施殻は必要。心地よい環境や自然と親しむことで、心の不満が癒される」と話しています。
環境教育はただの教科のひとつではなく、社会の中でも重要な役割を担っているのです。
<注:ギムナジウム=4年制の小学校を卒業した後、大学進学希望者が進む9年制の学校>


ごみっと・SUN 41号
第20回 ソーラーエネルギーの駐車券発券機

 
  ドイツでは路上駐車は普通です。一見路上駐車は違法に見えますが、そこが実は近隣住民の駐車場となっているわけで、人々はその分の使用料を市に払っています。
それとは別に、街中での一般車の駐車は一部有料になっています。そこにあるのが駐車券発行機。ハノーファーでは286ある発券機すべてが太陽発電により動いています。

 上にミニ太陽パネルがついた駐車券発行機はドイツでは広く利用されており、ハノーファーでも10年ほど前から導入が始まりました。その利点はコストが安いこと。
機械自体は3,000ユーロ(約42万円)ですが、自家発電で自己完結しているため、公共電気網に配線する必要がありません。

 太陽はかんかん照る必要はなく、曇っていても日中の光で大丈夫です。12Vのバッテリーが組み込まれており、夜間や雨の日はそこに貯めてあった電気を使います。冬は日の短いドイツですが、問題ないとのこと。
機械は通常、待機状態のためほとんど電気はかからず、お金を入れて駐車券が発行されるときだけ電気がかかります。

 これなら電気をその場で効率的に利用できるし、電気が伝送の際に失われる心配もありません。ハノーファーの発券機はパネルが機械と一体化された形ですが、フライブルクでは発券機から3メートルほど上に棒が延びており、そこにパネルが設置されているのを見ました。
いろいろ町によってタイプがあるみたい。これこそ自然エネルギーを実用的に生かした例ですね。


ごみっと・SUN 43号
第21回 環境配慮の住まいづくりの職人を育てる

  ハノーファーにある職業訓練学校3(BerufsbildendeSchule 3)では、建築や建設関係の仕事に就く若者を養成しています。17歳以上の生徒約25,000人が通い、120人の教職員が働いています。同校では特に環境配慮することに重点を置いています。

 例えば雨水利用のトイレ。水槽などの部品は企業から寄付を受け、組み立ては授業の一環で生徒たちがしました。屋根の上には地元電力会社の協力を得て、ソーラーパネルを設置し、太陽発電の原理を学んでいます。
教材室には環境熱を利用した最新式の温水器、パッシブハウスで使われている熱交換器、暖房器具が各種並び、触りながら比べることができます。
南西の壁には小さなソーラー温水器も設置。暖められた湯は構内のインターネットカフェで利用されています。階段わきの壁にはソーラー温水器を利用しての家庭のバスルームを再現。上水と排水の流れがわかります。

  大工さんのクラスではエコロジカルな家具づくりについてのパネルがあり、加工の際のエネルギー消費や塗料についてはもちろん、環境について配慮することがなぜ必要なのか、どのような利点があるのかがまとめられています。
 建物の清掃については、環境への影響を含め、さまざまな清掃技術や洗剤について比較しています。

  同校は8年前からユネスコプロジェクト指定校になっており、環境、文化、交流をテーマに、タンザニアの学校と提携して飲料水確保のプログラムを現地で実施しています。
生徒の一部自己負担と、企業や一般からの寄付で、タンザニアには2度出かけています。昨年はタンザニアから生徒が訪れ、交流の輪が広がっています。
  特に授業の環境という単独科目はないけれど、すべての教科に環境の要素が取り入れられています。教師のダイダーさんは「生徒たちは環境というと、面倒くさい、お金がかかるというイメージを持っており、まずそれを取り除くことが第一。
職業を通して環境に貢献できるのだということを生徒たちが理解し、学んだ技術を将来役立ててほしい」と話し、環境について抵抗なくなじめるよう授業に工夫をこらしています。

 環境意識を持つことは、生活全般について積極的にかかわること。
理論と実践の伴った授業を受け、のちのち環境にやさしい住まいを自分で作れるようになるなんてうらやましい限りです。


ごみっと・SUN 44号
第22回 「食」を通しての環境教育、出前します!
    [Bildungswerk Kronsberghof]


五感を使いながら自然を体験
 ハノーファーにある「教育活動所・クロンスベルクホフ(Bildungswerk Kronsberghof)」をご紹介します。
同ホフは、農業、健康な食、持続可能な消費体系をテーマに環境教育を実践しています。
ヨーグルトは豚肉からできていると思っていた…など食卓に並んだ食べ物がどこからきているか知らない子どもたちの
現状をみて、1999年に設立されました。
当初は自給自足のヘルマンス村に本拠地を置いていましたが、昨年同村のプロジェクトが頓挫してからは、出張サービスという形で環境教育を行っています。

 先日市内で開かれた環境フォーラムでは、五感についてのスタンドを設置しました。
布袋の中に手を突っ込んで何が入っているか推測したり、
ハーブを触って匂いをかいだり、さまざまな実の入った黒い小ビンを振ってどのビンの中身が一緒であるか当てたり、ライ麦・小麦・大麦・カラス麦の違いを見比べたり。五感をフルに活用した遊びです。
日ごろ身近にあってもよく知らなかったことを体で発見することで、子どもたちは自然への関心を高めていきます。

 生産者と消費者が顔の見える関係を目指して地域とのかかわりに重点に、地産地消を提唱。
学校に出かけていって子どもたちに食べ物の大切さを伝えるだけでなく、地元の食べ物を子どもたちに提供するよう学校側に働きかけています。
代表のコーネリア・ハーバーベックさんは「頭と心と手を使っての学習がモットー。五感を使った実践的でわかりやすい方法で、子どもたちに食と生活、環境の関わりを教えています」と話しています。
穀物からパンを作ったり、牛の乳搾りをしたり、野菜やハーブを育てるなど、野外活動も充実しています。

 また今年初め、同ホフがまとめ役となり、市環境センターや学校生物センター、エコりんご園
「グッド・アドルフホフ」などが提携して「食・学校・農業ネットワーク」を作りました。
食分野を中心に、市内と近隣町村の子どもたちにますます充実した環境教育を施すことに尽力しています。


ごみっと・SUN 45号
第23回 ドイツの強制デポジット その後の思わぬ展開


ペットボトルのビール
 2003年1月に強制デポジット制が実施され、炭酸飲料の使い捨て容器すなわち缶やビン、プラスチック容器がその対象になりました。
販売にあたって25セント(約35円)のデポジットを取り、回収のさいに返します。
これをきっかけに昨年10月よりペットボトルのビールが市場に出回るようになりました。ドイツ一のディスカウント店アルディが、これまで缶だったビールをペットボトルに全面切り替え。これに追随するように他のディスカウント店もペットボトルを導入したためです。

 デポジット制実施当初は容器の回収に当たり、買った店でのみ可能で、しかもレシートを見せなければならないと消費者にはずいぶん面倒な仕組みでした。
9ヶ月の暫定期間を経て昨年10月から全国統一回収システムを確立しなければならず、製造者、販売者は頭を悩ませていました。
そこで登場したのがペットボトル。スーパーのチェーン名を埋め込んで製造できるので、缶より回収しやすいと考えたのです。

 北ドイツの大手ビール会社ホルステンは新聞のインタビューで「我々はペットボトルが必要だと思っていないし、消費者も好んでいない。けれど環境省一押しのデポジット制が缶をプラスチックにした」と語ります。ペットボトルは缶よりも製造費が高くつくし、泡が抜けやすくなるので味が落ちます。商品の入れ替えの早いディスカウント店ならよいでしょうが、何ヶ月も棚に並ぶ可能性のある小売店ではお勧めできません。

 実際のところビールのペットボトルの人気は高くありません。おいしくないという人がほとんど。
しかしペットは軽くて、持ち運びが便利。飲み残したら蓋をすることもできます。しかもディスカウント店にはそれしか置いていない。
ですから長くビールに親しんできた世代はまだまだビン支持者が圧倒的に多いのですが、若者の間でじわじわと広まってきており、現在ではビールシェアの6%をペットが占めるようになりました。

 ビールだけでなく飲料全般でペットボトルの威力はどんどん強くなってきています。8年前ドイツにきたばかりのころは何でもかんでもビンで重くて苦労したものですが、最近はコーラや水もどんどんペット化されています。
強制デポジット制によりリユースビンやリユースペットの利用が増えましたが、使い捨てプラスチック容器も一時は減ったもののやはり根強く残っています。
缶もスーパーや駅などで見かけますが数はずいぶん減りました。使い捨てのペットは中国に輸出されているという話も聞きます。ドイツは環境に配慮し法的整備もしていますが、思わぬ抜け穴があったりして、なかなか思うように進んでいません。
現在では牛乳やオレンジジュースのパックもデポジットにしようという案も浮上しており、模索が続いています。


ごみっと・SUN 46号
第24回 使い捨て容器の強制デポジット制 2月改正に!


店頭に山積みのペットボトルのビール
  2003年1月からドイツ全土で導入されている使い捨て飲料容器の強制デポジット制が今年2月より、改正になります。
この改正により対象範囲が広がり、どこでも飲料容器を返すことができるなど消費者にわかりやすい制度となるはずですが、一方でその便利さが本来の目的と反して、使い捨て容器の増加を促すのではないかと指摘されています。

  もともとデポジット制はリユース瓶の使用率を高め、環境に配慮することが目的ですが、デポジットの基準がわかりにくく、回収システムの不統一が批判を浴びていました。


  現行の強制デポジット制はガス入り水、コーラ、ビールなど炭酸入り飲料の使い捨て缶や瓶、
プラスチックボトルが対象です。
2月7日よりカンパリソーダなどカクテル類がデポジットの対象に含まれ、アイスティーなど炭酸でない飲料については12ヶ月の暫定期間を経て、2006年春からの実施が決まりました。
牛乳やワイン、果汁ジュースは対象外のまま。デポジット料は一律25セント(約35円)に統一されます。

  また現在では購入した店またはそのチェーン店でしか容器を返すことができませんが、12ヶ月の暫定期間後はどの小売店でも引き取ってもらうことができるようになります。
現制度は外国企業の参入の妨げになるとして欧州裁判所にかけられ、違法ではないと認定されましたが、実施や回収方法の変更を勧告されていました。
今回の改正はEU委員会や欧州裁判所の基準に見合ったものになっています。

  リユース瓶の使用は制度導入後一時盛り返したものの、使い捨て容器の利用は全体として増える傾向にあります。前回書いたように環境に配慮してのデポジット制が缶からペットへの変換を促すなど、思わぬ誤算も生じています。
さらにどこでも使い捨て容器が返せるとなると、かえってその便利さが使い捨て容器の増加を促すことになりかねません。
また他国の空容器を集めてドイツで換金するということも可能になり、制度の不備が指摘されています。

  連邦政府は環境にやさしい政策を探っているけれど、消費者の意向や欧州連合の基準、そして現実に可能な統一システム確立というさまざまな壁があり、完璧な解決策はなかなか見つからず、まだ先は見えてきません。


田口理穂 ハノーファー大学学生・ごみかんドイツ特派員


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