ごみの税負担から事業者負担へ
変えるのは今! 容器包装リサイクル法

 

  1995年、容器包装を市町村が分別回収し、事業者が再商品化する「容器包装リサイクル法」(以下、容り法)が制定されました。8年経った今、多くの自治体で回収が始まり、リサイクル率は年々伸びています。
けれども、現状はペットボトル飲料が勢いよく増え続け、相変わらず無駄な容器包装が付いてくるというのが実感ではないでしょうか。

  法制前から懸念された“収集コストが掛かり過ぎる。
事業者の負担が少ない。
分別が分かりづらい。
リユースヘのインセンティブが働かない”などの問題点は、97年の施行後さらに顕著になり、市民団体からは見直しの声が上がり、地方議会、市長会などから国に対し多くの意見書があげられています。

  今回の特集は施行後10年目に当たる2007年の改正に向け2005年から政府の検討が始まることになっている容リ法に照準をあて、市町村の現状を中心に問題点を検証してみたいと思います。

変えよう ! 容器包装リサイクル法
便利は

素敵よ!

ごみ減らしに努力している
私と
何もしないあの人と
税金から同じだけ
ごみ処理費用
取られるのっておかしい!!

 

「容リ法」の中身としくみ

  「容リ法」の正式名称は「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」という。1997年にペットボトル(以下、PET)とガラスびんを対象に、再商品化の義務を有する事業者を大企業に限定して一部施行、3年後の2000年には紙製及びプラスチック製の容器包装を加え、中規模事業者にまで適用者を拡大して完全施行された。

  法律では消費者は「分別排出」、市町村は「分別収集」、事業者は「再商品化」するという三者の役割分担が定められている。
再商品化の義務を負う事業者は「特定事業者」と呼ばれ、それぞれをPETを例に取って説明すると…
@容器を製造する事業者→PETボトルメーカー
A容器を利用して販売する事業者→ウーロン茶や清涼飲料水などの食品メーカー
B容器包装を利用して中身を販売する事業者→コンビニ、スーパーなどの流通企業
     …の三者に当たる。合わせて約20万社が対象となる。

事業者の再商品化は…
@自主回収
A指定法人への委託
B独自ルート…の三通りの方法があるが、中心は指定法人『(財)日本容器包装リサイクル協会(以下容リ協会)』というリサイクルを代行する機関への委託である。

  特定事業者は、容器包装の重量に応じて容リ協会に再商品化費用を支払い、協会はその委託金で再商品化の義務を代行する。

  一方、市町村は容リ協会と契約し、協会はリサイクル事業の選定(入札)を行う。自治体が収集した容器包装類は、新日鉄や日本鋼管などの落札した企業が費用をもらって引き取る。
言うなれば事業者も市町村も容リ協会に“お任せ”のしくみになっている。しかも、この容リ協会、プラスチック工業連盟、酒造組合、チェーンストア協会などの会長や元特許庁長官の面々が理事に、賛助会員には新日鉄や荏原などいずれもそうそうたる顔ぶれが並ぶ。

  容器包装の製造・流通・販売・再生に関わる主だった事業者で構成されている容リ協会に、市町村は何もかもお預けしちゃっていいの、と思う。

プラスチック容器包装材がごみでなくなる仕組み(名古屋市の事例)
食品、容器メーカー、流通企業など
・リサイクルの義務を負っている
・協会に費用を拠出する
 
一般家庭
・さっとゆすいで、資源用指定袋に入れて出す
 
・家庭から再生資源を収集する
・基準に適合する純度に選別、圧縮、梱包、保管する
日本容器包装リサイクル協会
・再生資源の入札を行い、業者に引き取ってもらう
 際の費用を決める
・再商品化を委託するする費用を払う
引き取る企業
・再生資源は新日鉄等が落札し、費用をもらって
 引き取る
・新日鉄は鉄鉱石の還元剤、コークス炉ガスなどに
 利用する
 

手間ひまかけて、税金使って、燃やしてしまうのか
遠方まで運ぶトラックは有害ガスや二酸化炭素を排出し
その上、交通事故まで起こしているに違いない
これが循環型社会、これで持続可能型社会が出来るの?

 

過大な収集コスト、でもごみは減らない

  容リ法が完全施行されて4年目の03年度、全国3,241自治体のうち2,145自治体が分別収集に参加、容リ協会との契約自治体は02年度845が1,285に増加した。
100万都市でも札幌、仙台、名古屋、広島が乗り出している。

  容リ法では対象物の収集・保管までを自治体が費用負担する。再商品化全体に掛かるコストのうち、60〜70%が自治体負担であると言われている。

全国都市清掃会議が昨年名古屋市のコストを元に全国換算したところ、PETの場合、約1,000億円が自治体負担になっていることが分かった。驚くべき数字である。

  市町村が分別収集に乗り出すには、ごみより“資源”という正論ばかりではない、やむにやまれぬ理由がある。
処分場の逼迫である。崖っぷちに立たされた市町村はあえて高額なコスト負担を引き受け、資源化によるごみ減量をせぎるを得ない。

 

名古屋市の事例
  
 名古屋市の事例はデータの数値が明確でない等、 都合により2009年12月削除いたしました。




 
東京・武蔵野市の事例
  昨年8月、ごみ・環境ビジョン21は東京・多摩地域30市町村に対し、プラスチック処理に関するアンケートを行った。
調査の結果、容リ法については、PETが2市を除く自治体で、その他プラスチックは13自治体で実施していることが分かった。
また、容リ法に対し、「収集費用が掛かる、運搬に環境負荷がかかる、入札のため業者が分からず啓発が困難、収集量と経費が比例、複合素材多く分別が困難」など各自治体から切実な声が上がった。

  だが、26市町が事務組合を構成する日の出町の広域処分場への搬入規制量は厳しく、オーバーすれば、多額のペナルティを取られるため、どの自治体も分別回収に熱が入る。
  多摩地域でその他プラスチックの回収を実施したのは、ごみ量の最も多い武蔵野市が最初で、
00年7月であった。
翌3月までのPETを含む資源化費用は年度途中で同額の補正予算を止乗せし、約1億8千万。
1Kg400円で、過去5年のごみ処理経費平均50円の8倍となっている。

  事業者負担との比較では01年度実績で、PETがkg当たり市負担233円、事業者83円、その他プラスチックは市221円、事業者97円。
PETは約3倍、その他プラは2倍強、市の負担が重い。
ちなみにごみ処理費は48円で、いかにリサイクルコストが高いかわかる。
また20人以下の小規模事業者は再商品化義務が免除され、その分の費用は自治体負担のため、市ではさらにPETの0.3%、その他プラ2.7%分の費用負担をしている。

  資源化率は上がったが、ビン・缶が減り、PETやその他プラが増える、という容リ法の関題点を露呈させ、さらに埋め立てる際の不燃ごみの容積換算係数が変わり、減少した不燃ごみが埋め立て量の削減に繋がらない結果となった。
市は埋め立て量を削減するため、これまでの常識を覆し、10月から不燃ごみとして集めたプラスチックの焼却を開始する。

  名古屋市は処分場事業の中止、武蔵野市は同じく延命という切迫した事情が、採算を度外視したリサイクルに踏み切らせている。しかも結果的には思うような成果が得られていない。
これでは踏んだり蹴ったりではないだろう?

  こうした実情を自治体自らが国や事業者に訴えていかない限り、リサイクルが財政を圧迫するという状況は変わらない。
そのためにも市町村は人件費や委託費を含むリサイクルコストを計算し、公開する必要があるだろう。

  容リ法改正に向け、両市にはぜひとも先陣を切っていただきたい。

 

実は事業者もたいへん!?

下のグラフはPETの生産量とリサイクル状況である。

ペットボトルの生産量とリサイクル率
2002年8月
ペットボトルリサイクル推進協議会作成

  リサイクル率は50%に届く勢いだが、生産量は急増している。
02年は生産量約43万t、回収量約20万tで23万tがごみとなる。容り法施行以前よりごみPETは多くなっている。
ごみPETの処理はもちろん税金だ。行方も気になる。
なぜ増えるか?PET事業者は30%程度しか負担していないため「PETのような使い捨て容器を使った方が得をする」しくみなのである。

  作ってはリサイクルするPET業界は「再生処理しやすい容器を使えば費用負担が軽くなる」ことから、アルミキャップをプラスチックに替え、ラベルもはがしやすく、色は無色透明に、と今やデザイン性よりリサイクル性が重視されるそうだ。
同じく、2リットル入りPETは5年で20%の軽量化が進み50gを切るなど、プラスチック使用量の抑制にも力を入れている。

  廃PETのリサイクルはどうだろうか。回収が始まった一時期、想定量を上回る市町村からの回収に、処理されず山積みになつたPETが社会問題化した。
しかし、その後再生処理への参人が相次ぎ、98年度に28社だった事業者数は2002年には56社に倍増。
先の状況は逆転、処理能力はあるが、廃PETの確保が進まず、工場稼働率30%以下のところもある。委託単価は下降し続け、03年度は1kg当たり64円と98年度より4割り近く安くなった。

  さらに帝人が100億円の設備投資で手掛ける、樹脂原料に還元するケミカルリサイクル、いわゆるボトルtoボトルが本格稼動、10月には再生樹脂を利用したPETが市場に出回る。
すでに数万t規模の受注を得たため、他社が打撃を受けるのは必至で回収量と処理能力のミスマッチは広がるばかりだ。

  業界を擁護するつもりはないが、リサイクル性を重視する企業努力や再生処理業がおかれた状況を事実として受け止める必要はある。
いずれにしてもPETの大量生産と大量リサイクルをつなぐ底知れない世界が形成されている。

  その他プラスチックは再処理方法のみ触れておきたい。
コークス化学原料化が全体の33%、高炉還元が24%と合計57%とマテリアル(材料)リサイクルより多くなっている。
処理価格はトン当たりマテリアル(材料)リサイクルで10万円前後、新日鉄のコークス炉が6〜7万円で最も安い。

  同社の千葉県君津工場には1都12県80自治体から廃プラが運ばれる。材料リサイクル業者は中小が多く、再生樹脂の商品化の確保が難しい状況だ。

  昨年、衆議院会館で行われた、市民主催の集会で、環境省の担当者が「この不況で負担金がきついので容リ法を何とかして欲しい、と中小の事業者が直訴しに来る」と洩らした。「市民の言い分ばかり聞いていられない」ということだろう。
事業者側が容リ協会に支払った額は00年度の172億円から、02年度は約400億円に達するという。

  委託事業者は当初の500社から約6万社に急増した。しかし今なお、約14万社以上が『フリーライダー』(ただ乗り)だということを忘れてはならない。
負担義務を怠ると、50万日以下の罰金が科せられるが、今の態勢でどこまでそれが徹底されるかも定かではない。

 

市町村から改正を目指そう

  2年ほど前、パネルディスカッションで同席した環境省リサイクル推進室の担当者は容リ法の問題点が議論されつつも「(自治体の負担は)循環型社会作りの授業料と思って欲しい」と発言、問題多い法律を作ったこともさることながら、その法律を強引に運用し続ける国の姿勢に愕然とした。

  容リ法の付則には「制度の施行後10年を経過した場合において、政府は施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて、必要な措置を講ずる」という規定が設けられ、4年後の07年がその10年目に当たる。
検討は05年から始まることになっている。やっと巡ってきた法改正のチャンスである。
市町村でごみの発生抑制や分別に力を注いでも、ごみ処理の大半を税金で負担する限り、リサイクルをすればするほど時間や金やエネルギーを浪費し、事業者は生産自体を改めようとはしない。

☆リサイクル費用を製品価格に含め、その商品を購入する消費者が負担する
☆容器製造時に課税する
☆環境負荷の高いものは税金を高くする
☆リサイクルよりリデュース、リユースを推進するさまざまな手法を盛り込んだ!容リ法に変えるため、市・町・村から声を上げていきたい。

 

先進先進事例 1
「脱・使い捨て」へ、動き始めた韓国
  焼却・埋め立て中心であった韓国ごみ政策が、1994年「資源の節約と再活用の促進に関する法律」施行を機に一変。翌年には、法律に基づき「一回用品(使い捨て用品)使用規制」が実施された。
当初は拘束力がなく実効性に乏しかったが、度重なる法改正後、今年1月から本格的な規制に取り組んでいる。規制対象は飲食業、宿泊業、販売店などで使用されるカップ、皿、歯ブラシ、弁当箱、レジ袋などである。

  また「商品材質別包装法基準」では商品の体積に対する包装の割合、回数、材質基準が設けられている。リサイクルしやすい包装材の使用、PVCの使用禁止も定めている。
両者とも不履行が明らかとなれば、直ちに300万ウォン(30万円)の罰金が課せられる。

  業界独自の取り組みとしては、02年、ファストフード24社とコーヒーショップチェーン7社が「一回用品使用削減のための自発的協約」を結び、1月から、店内飲食は多回用品の使用、テイクアウトはデポジットが始まった。
協約の大きな担い手となったのは、KZWMN(ごみ問題解決のための全国市民協議会)という97年に270の市民団体がネットワークを結び政策提言の活動を行っている団体で、企業と政府が協約を結べるようコーディネート、実施後の監視も行う。

  韓国最大のファストフード企業ロッテリアは、リーダー的存在で100坪以上の全店舗で、温かい飲み物はマグカップ、冷たい飲み物はプラスチックカップの多回用品を使用する。デポジットはすべての店舗で実施、デポジット金は100ウォン(10円)だが、現在返却率は30%と低めである。

  またデパート、スーパーなど流通業界では、02年「一回用品使用削減のための自発的実践宣言」を発表。レジ袋を有料化、プラスチック製50ウォン、紙製100ウォンと価格表示、返却時に返金する。
マイバッグ持参は50ウォンの割引。プラスチック包装材の使用削減や過剰包装の自制も明記されている。
現状は無料で配布する商店やマイバッグ持参率が20%未満など徹底されていないものの「…一回用品による廃葉物発生を根本的に減らすよう我々流通業界が率先して手本を示す…」と書かれた宣言文と実効性のある中身に見習うことは多い。

 

先進事例 2
リユース社会をめざすドイツ

  ドイツでの「包装廃棄物規制令」(1991年施行)は自治体負担が多い容リ法と違い、企業がすべて引き取りリサイクルしなくてはならない。
実際は産業界が出資して設立したDSD社(デュアルシステム・ドイチェランド)が処理し、再生利用を図る。

  またリサイクル一辺倒にならないために、飲料容器はリユース率が72%を下回ると、強制デポジットが導入されるという規定(この規定は特筆すべきことで、こうした約束事を容リ法に書き込んで欲しい)がある。
しかし、ディスカウントショプの出現や缶ビールの大量販売などにより72%を下回ったため、今年1月からデポジット制になった。

  例えば缶入リビールや炭酸飲料は、1.5リットルまでは32円、それ以上は63円のデポジット金が上乗せされた。買った店にレシートをもって行かなければ返金されないこともあり、ここに来て多大な影響が出ている。

  DSDは、各参加企業から各商品の容器の材質・容量によって決められたライセンス料を、その商品の販売量に応じて支払いを受けているが、特にライセンス料の高いペットボトルが減った(売れなくなった)ことで、今年は3億1000万ユーロの減収になると言われている。(昨年の収入は19億ユーロ)。

  来年度からは、牛乳パックやワインびんの強制デポジットも検討されており、もし、これらも導入されれば、DSDは、いくつかの工場を開めねばならない等の大打撃を受けることになるといわれている。

  それは実際に法律にうたわれた強制デポジットが発生抑制に大きな効果を生んでいるという証で、さすがドイツである。こうした流れから私たちは多くのことを学ぶことができる。

(情報提供:FOEJapan)

ごみかん理事:服部美佐子


容器包装材のリサイクルデータ集


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