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ごみっと・SUN 35号
“ごみ探偵団” 報告その 3
ごみ回避&リユースに向かう韓国

  「サッカー観戦 コップ再利用」(朝日新聞03,3,13日付)…大分市の競技場では、紙コップで売っていたビールやジユースをポリプロピレン製の容器に入れ、100円のデポジット(預り金)で販売し、飲み終わったら、回収所に戻すと100円が戻る。
プラスチック製コップは洗って20回程度再利用する…の記事は、リサイクル一辺倒の我が国にあって、久々に目の覚めるニュースだった。
記事の冒頭には「環境省が競技場やイベント会場などで使い捨て容器を減らすため『リユースカップ』の普及に乗り出す」とあり、ファストフードなどでの使い捨て容器を止めさせたい「ごみ探偵団」にも、環境省の後押しをお願いしたいところだ。

  さて、韓国ではいよいよ今年1月からファストフードチェーン店などでリユース容器への切換え、テイクアウト容器のデポジットが始まった。
使い捨て飲料容器には1個100ウォン(約10円)の処理費用が各々の販売価格に上乗せされている。

  一月に訪韓した方のお話によると、スターバックスでは「マグカップか、紙コップかどちらにするか」聞かれたそうだ。ごみ探偵団では5月に韓国視察を計画しており、事前学習会を重ねている。
その報告を兼ね、すでに「ごみっと」に登場したソウル特別市東京事務所の朴成培さん、立教大学朝鮮語講師の石坂浩―さんのお話を元に、韓国ごみ事情を紹介したい。

  「使い捨て容器を減らすための自発的な協約」は、韓国・環境部の後押しによって、ファストフードチェーン7社とコーヒーチェーン24社が締結したもので「資源の節約と再活用促進に関する法律」が裏付けとなっている。

  1992年に制定されたこの法律は従来のごみ処理という発想ではなく、文字通り、資源の節約と再活用、つまりリサイクルの促進を目的とするもので、「生産者に生産量や材質に応じた処理費やリサイクル費用を負担させ、処理やリサイクルの財源にする」ことも含まれている。法律はドイツの「循環経済廃棄物法」を参考に作られたということだ。

  当時、ソウル市がたてた「22区に11ヶ所の焼却場を建設する長期計画」に対し、市民は「再活用すれば、新たな処分場はいらない」と猛反発した、と言われている。

  「ごみの従量制」は日本の「有料化」を指すもので、韓国はこの従量制を第一ステップとして、焼却ごみを減らし、再活用に向けて動き出した。
だが、韓国のごみの従量制も中央政府や国会議員への説明、一般市民向けのシンポジウムやPR活動、マスコミの協力などさまざまなプロセスを経て、1995年1月1日から実施された。この7月から実施された地方分権を前に、国レベルで実施したというのも興味深い。

  「生ごみの資源化」は脱焼却・再活用の大きな柱で、韓国では堆肥化だけではなく、養豚など飼料化の方が多い。生ごみは2〜3日に1回収集され、家庭ではバケツかビニール袋(集合住宅の場合は大きな容器)に入れて出す。
1ヶ月に一律1000ウォン(約100円)が課せられる。

  1994年9月に「大量飲食店・給食事業所」に生ごみの減量義務が課せられた。面積の規模によって、課金するようになり、資源化が進んでいる。導入当初は10〜20%の資源化であったが、現在約60%の生ごみを再活用している。

  さらに、使い捨てだけでなく過剰包装に対しても規制がある。市の職員がデパートなどで化粧品やおもちゃなどを購入、専門機関で過剰包装の割合や材質を調査、違反した製造会社に改善命令を出し、後日会社は改善内容を報告する、というもので、実効性のある規制がうらやましい限りだ。

  他にもリターナブルびんに力を入れる「韓国ガラスリサイクル」ではパンフレットなどでPRしている。「ガラスびんは繰返し再使用の後でも、新しいびんの原料として再利用ができる」つまり、20〜30回の繰返し使用後にも100%再利用可能であることを強調している。
2001年の韓国のリユース率は生産量の30.8%だが、政府はガラスびん各社に生産量の45%をリターナブルびんにするよう勧めている。

  韓国ガラスリサイクル協議会は数年前より頻繁に来日し、日本ガラスびん協会などを訪ねて、情報を収集してきたという。昨年、訪韓したガラスびん協会の方から「今の韓国は日本から学ぶことはもうないだろう」「5年の間に逆転した」という話た聞いた。

  台湾でも「ポリ袋及びポリスチレンを含む使い捨て食器の使用制限」が1月1日から実施された。措置を不満とするプラスチック関連労働者が大掛かりなデモをしたり、失業者が出て、日本でも話題になったが、環境保護署が同月19日発表した意識調査によると、市民の85%以上が満足している、85%はビニール袋の使用量が減少、76%は使い捨て食器の使用量が減少したと答えた、という。

  リサイクルに明け暮れている日本が、着実に「脱使い捨て」に向かう韓国や台湾から学ぶことは多い。


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