ごみっと・SUN 32号
環境のまちづくり 『ドイツ・フライブルグ』
 後編・PART2
ごみ・環境ビジョン21 

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市民力で実現 ・・・・・・・ 持続可能な地区(Vauban)

  今回のツアーで最も刺激を受けたのは、Vauban地区のエコ住宅と人々の暮らしぶりでした。
1992年、フライブルク市南端の38haのフランス軍基地跡「ヴォーバン」がドイツ連邦に返還され、フライブルク市が買い受けました。
ここを持続可能な地区にしたいと願う市民が1994年にNPO「フォーラム・ヴォーバン」を立ち上げ、都市計画に対し市民参加の道を開きました。

  住宅計画を進めるにあたり市から委託を受け、まずエコロジカルで社会的に意味のある建物を建ようということで、希望者に情報を提供したり、入居者のコーディネートをしてきました。

  まず初めに、省エネ効率の著しく高いパッシブハウスと呼ばれる住宅のひとつを見学しました。
この集合住宅には20世帯44人が入居しています。
3重の窓ガラスや外光を取り入れることにより、80%も省エネ効果があり、太陽光発電によって必要電力の10%を賄っています。またソーラーコレクターで温められたお湯で必要量の60%を自給しています。暖房は地下にある天然ガスによるコジェネレーションで100%自給しています。

  トイレは飛行機などでお馴染みの真空トイレを設置、通常なら6リットル使用する水を1リットルに節約して、さらにバイオガス装置への利用を計画しているとのことですが、残念ながらまだ稼動していませんでした。

  地下に設けられた洗濯室にはソーラーコレクターで暖めたお湯を使うエコロジカル洗濯機が2台あり、身体の不自由な方を除く全員で共用しています。
また2台の冷凍庫も共有。ここまでくるとかなり厳しい気もしますが、生活のリズムがゆったりとしているので、余計な心配かも知れません。

  訪れたのは平日の午後でしたが、色とりどりの野菜やパン、オリーブの実を並べた市では、打楽器の演奏やアートの展示もあり、人々が入れ替わり立ち替わり集っていました。

  中央の通りヴォーバンアレーは車が時速30Km/hに制限されており、両側が駐車場になっています。地区内には他に2つ駐車場があります。車乗り入れ禁上の居住区が多いのです。
またカーシェアリングの車も8台あるということでした。

  どの住宅にも花が溢れ、公園や道端でたくさんの子どもたちが裸足で遊んでいました。
住人の約20%は子どもだそうですから、若い年齢層の住民が多いとということです。
2006年までには路面電車の駅ができ、人口も5,000人になるということでした。

  ヴォーバンの幼稚園は2歳から6歳までが6クラス130名、小学校は1クラス15名の構成になっています。
木材を使ったエコロジカルな建物は工作やお絵描きなど用途ごとに部屋が区切ってあり、各部屋には静かに過ごしたい時の小さな別室が設けられています。子どもの心を思いやる、細やかな心遣い、幼児期から個を大切にするドイツの国民性の表れでしょうか。
雑木林に囲まれた広い庭では、動植物を育てて責任感を養い、さまざまな体験を通じて季節を身体で感じるような工夫がされています。
環境教育とは「身体が心地よくなること」と言い切る女性園長さんの言葉、ヴォーバンの未来もますます楽しみです。

 

フライブルク市のごみ処理とリサイクル

  フライブルク市の「ごみ経済の基礎データ2001」によると、ごみも含む紙、プラスチックなどの資源化量は275kg/人/年、それ以外の処分量=埋立て量は158kg/人/年で、両者を合わせると433kg/人/年になります。
  この数字はフライブルク市の市民一人あたり1年間のごみ発生量と見ることができますが、日本の場合、市町村によって違いはあるものの、一人1日、約1kg前後ですから、データ上はごみの発生量があまり変わらないということになります
。 ただし、多摩地域の資源化率でさえ20数%ぐらいですから、比べものになりません。

  フライブルク市の家庭や事業所からでたごみは「フライブルク・ごみ経済及び清掃有限会社」が収集を一手に引き受け、運ばれたごみは敷地内に集められます。
広大なごみ集積場の面積は22ha、256名の従業員(管理部門53名、現場作業員203名)が働いています。 

 

【リサイクリング・ホフ】
  隣接して、リサイクル施設である「リサイクリング・ホフ」があります。
ここも市の施設ですが、民営化されています。このようなセンターは市内にあと2ヶ所、約250名の従業員が働いています。

  毎年ゴミカレンダーを発行し、2枚のハガキが添付されていて、市民は出したい粗大ごみに印をつけて返送すると、取りに来るようになっていますが、大半は市民が自ら持ち込みます。
この日も、冷蔵庫などの大物を載せた自家用車がやってきました。手に余るものは、従業員が重機を使って手伝います。
年一回収集費を払えば、持ち込みは無料。まだ使えるもの(服、食器、家具など)は市民に3〜10ユーロで還元。ただし、電気製品は火災などの危険があるためリサイクルしないそうです。
大きな倉庫内はまさに展示場のよう、壁には価格表まで貼ってありました。
年間5,000万ユーロの収益があり、採算は取れるとのことです。

  また、日本ではすべて可燃、不燃と一括りされそうな、カーペット、金属片、剪定枝、ベッドの枠、ベニヤ板、プラスチック製品、コルク、アルミ、洗剤の容器など、大小のコンテナに分別されていました。
古いオイル、ペンキなどの有害ゴミは専門家が処理するそうです。

  自発的な市民と民間企業との連携がなんともうらやましい限りでした。

 

【注目のBKF】
  次に15分ほど歩いて、辿り着いたのが生ゴミガス化・堆肥化施設「BKF」。
通りから目に付くのが、聳え立つ円筒形のタンク。11,000mの敷地内に入っても臭いはほとんど気になりません。

  早速、事務所でお話をうかがいました。
稼動3年目というこのプラントでは年間3万tの生ごみを処理しています。
フライブルク市、約20万人と近隣の分を入れて、約45万人分。一人当たりの発生量は年間70kgになります。
気になるコストは建設費800万ユーロ(約9億円)。市からの委託費用はごみ1t当たり80ユーロ、年間240万ユーロ(2.7億円)。

  ピットに集められた生ごみなどの有機物は粉砕され、水分を加えて55℃に加熱し、ある程度分解します。
そしてさらに水分を加え75%含んだものを高さ72m、3,500t入る円筒形のタンクに送り込んで、
3〜4週閲発酵させ、40%は堆肥化し、その過程で発生するメタンガス(生ごみ1tあたり140〜150m)は発電に使います。

  プラント稼動に使った残りの電気は売却しています。年間量は400万kwで360万ユーロ(9ユーロ/kw)。
堆肥は、宣伝を兼ねて、農家に無料配布しています。また別のコンポスト会社に卸し、さらに熟成させています。
45万人分の生ごみを飲み込む巨大なタンクは、資源まで灰にしてしまう焼却炉と違って、堆肥と電気を生み出しています。ここでも「どこにお金を使うか」という今泉さんの言葉が蘇ります。

 

BUND・会員37万人、確かな存在感

  1996年12月にBUNDの設立者の一人、エアハルト・シュルソ氏をお呼びして、開催したフォーラムがごみかん誕生のきっかけになったのですが、その当時、BUNDの会員数は約25万。
今回、伺った南ライン上流支部の事務局長アクセル・マイヤー氏によると、現在その数は37万人。7年足らずの間に12万人も増えていました。

  20名以上は集えるという事務所の壁には森林や鳥の保護、遺伝子組換えや原発の反対行動などのパネルが…。
こうした多岐にわたる環境運動と地元のグループでは具体的な行動をし、支部としては政治的、あるいは市民の意識を高めていくという説明に会員が増え続けるとントがあるような気がしました。

  この日、マイヤーさんはスイスにある核廃棄物最終処理場の計画に反対している関係者との会合に出かける予定でした。
環境問題に国境はなく、他国のNGOと連携は日常的に行われているようでした。 なお、マイヤーさんは緑の党の議員で、フライブルク市では市長選があり、7月1日に大都市で初めて緑の党の市長が誕生しました。

 

石畳の町・シュタウヘンとホームスティ

  滞在中の週末は、黒い森のふもとにある小さな町シュタウヘンで、地元の環境団体のメンバーと交流会を持ち、ホームスティを体験しました。

  まず、石畳を踏みながら、小高い丘の上にある城壁へ散歩に。水路が流れ、窓辺に色とりどりの花が咲き乱れる町並みは、時を忘れさせます。
交流会ではテラスの真下まで森の樹木が生い茂る広々としてリビングで、地元の皆さんが持ち寄ったドイツの家庭料理の温かいもてなしを受け、両国の活動の報告、最後はアルコールも手伝って「上を向いて歩こう」や「勝利の日まで」などの大合唱…。
旅の疲れを吹き飛ばす楽しい宴は深夜まで続きました。

  各々分宿をした翌日は一緒に黒い森の出に登って、ハイキングを楽しみました。
帰りのゴンドラから見下ろすと、立ち枯れた杉の樹が目に付きます。これでも良くなったとの説明でしたが、酸性雨が及ぼした無残な姿でした。

  1週間足らずの滞在でしたが、ドイツに関する知識や情報が生きた経験と置き換わったような気がします。
ページの関係ですべての訪間先を紹介することはできませんでしたが、説明を伺った方々は、どなたも雄弁で、市民団体だけではなく、行政に委託を受けた民間企業の方たちでさえも、自らの実践に誇りを持っていて、そのお話は留まるところを知りません。

  最大の収穫はそうした“市民力”に数多く出会えたことかも知れません。
実際に目にした環境政策や具体的な成果の数々、太陽光発電、公共交通への誘導策、びんデポジット…。
彼らの元気をもらって、私たちはもっともっと“市民力”をつけ、行政のお尻をたたく必要がありそうです。


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