ごみっと・SUN 32号
環境のまちづくり 『ドイツ・フライブルグ』
後編・PART1
ごみ・環境ビジョン21 

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  ツアーの初日、ホテルビクトリアから、歩いて15分ぐらいのところにある今泉みね子さんのご自宅にうかがいました。ごみかん誕生のきっかけになったフォーラムでシュルツさん(BUND設立者)の通訳をしていただいた今泉さんとは、帰国した際に何回かお会いして、貴重な情報をいただいています。
  後編は今泉さんのお話を中心に、ヴォーバンの街、ホームスティなどの話題をお届けします。

 

エコノミーを考えたエコロジー

  閑静な住宅街の一角にある建物には三世帯が居住していて、今泉さんのご自宅は三階です。スライドを使ってのお話は、これからエコツアーに出かける私たちに相応しく、フライブルク市のタイムリーな環境情報が詰まっていました。

 

[交通のこと] ・・・・・・・ 自転車に優しいまちなのね
  ドイツでは8歳から自転車は車道を通らなければならない。
そのため市内の150Kmの道路に自転車専用道が設けられている。 車の制限速度も、自転車の
速度(10Km/h)より遅く走らなければならない道路や、子どもたちが遊ぶ道路(15Km/h)もある。

また市役所では、車通勤者の駐車代をレギオカルテ(前編参照)に対する補助金に当てたり、
遠距離通勤者で相乗りや「パークアンドライド」(注@)を利用した場合、税金控除の対象になる…
というように、環境に配慮すると得をする政策をとっている。
76年から99年まで人口は増えているが、車の台数は変わらない。

注@:
郊外に住む人には公共交通のある場所まで車を使って乗り換える。そのための無料駐車場がある。

 

[ごみのこと] ・・・・・・ 来年から缶デポジットが導入されるんだって
  まず、フライブルク市のごみ分別の概要は次の通り。
紙・ボール紙 緑の容器 リサイクル 
生ごみ 茶色の容器 BKFでガス化・堆肥化 週一回、回収される
処分されるごみ 黒の容器 埋め立て 紙おむつ、汚れた紙、タバコの吸い殻など限定されたもの
プラスチック容器包装 黄色い袋 DSD社(注A)によるリサイクル 費用は企業負担
粗大ごみ リサイクリング・ホフに持ち込み リユース 粗大ごみ、家具、衣料など多様
倉庫は展示場、販売している
ワンウェイびん 路上のびんポスト リサイクル 緑、茶色、透明の三種類に分ける
リュースびん お店で回収 デポジット制 投入するとレジーとが発行され
レジで換金される、1本18円

  埋立てごみを回収する回数や容量は、あらかじめ市と取り決めることができる。今泉さんが住む住宅では2週間に1度回収、容器の4分の1を使用。
6,000円/年で最も少ない。容器が上げ底になつているのが、ドイツらしくて笑える。
最終処分される埋立てごみの量は10年ぐらいほとんど変わらないそうだ。

  一般廃棄物技術指針の規定により2005年以降、埋め立てるものは有機物質が3%〜5%以下でなければならないため、フライブルク市では焼却処理の方針をたて、焼却場の建設が計画されている。

きめ細かさに感心したのは「布オムツ」のこと。使用者には赤ちゃん1人につき、市から50ユーロ(約5900円)補助が出る。

  飲料容器はリユース率が72%を下回ると、強制デポジットが導入されるという法律(包装廃棄物政令=注B)があり、現在67%となつているため、来年1月1日から缶のデポジット制になる。

  また、DSDに対抗して現れたランドベル(注C)とは、裁判でも争うていたが、エコ・インスティテュート(注D)が審査し、DSDの方が優れていると評価した。

  ほとんどのスーパーにびん回収機が設置され、持参した使用済みのびんを投入すると、レシートが出る仕組みになっている。レジにそのレシートを持っていくと換金される。 (瓶1本当たり約18円)

注ADSD社(デュアルシステム・ドイチュランド):
包装材令への対応として産業界が出資し、包装ごみを処理・再生利用を図るために設立。企業はDSD社にライセンス料を払い、商品にグリューネプンクト(緑の点マーク)を表示。
消費者はマークのついた包装ごみを分別排出、DSDが分別センターで分別し、素材ごとに再生メーカーに送られる

注B包装廃棄物規制令:
1991年施行。包装材メーカーや販売者が回収、再利用の責任を負う。

注Cランドベル:
分別しないで回収し、焼却して、熱回収しようという方式。ランドベル郡で始まつたので、この名前が付いている

注Dエコインスティテュート:
専門家を集め、市民からも企業からも依頼を受ける環境研究機関

 

[エネルギーのこと] ・・・・・・・ 脱原発へのアプローチを着々と歩んでいるんだネ
  市民の間に浸透し、大きな動きはないように思える廃棄物政策に対し、脱原発という大きな目標に向けて動き始めているエネルギー政策は、今泉さんご自身も注目し、話にも熱が入る。

  エネルギー政策は「省エネ」「エネルギーの有効利用」「再生エネルギー」の3本柱。 公共施設で断熱材やサーモスタットなどによる省エネ政策を取り入れ、電力使用量が減っている。
今泉さんも使っている省エネランプは全戸配布されたもので、なんと8W。消費電力は通常の5分の1。

  市の原発電力の使用率は60%だったが、タバコ会社や小さな企業が独自の電力会社を作って、水力や風力、木材チップのコジェネなどの電気を買い取り依存率が30%に下がった(今泉さんは黒い森の小さな町「シェーナウ」の市民がつくった再生エネルギー100%の電力会社「シェーナウ電力」から電気を買つている)とはいっても、まだ再生エネルギーが電力に占める割合は6%(ちなみに日本は5%)。
2010年までに12%、30年には50%をめざしている。

  風力発電はデンマークを抜いて世界1位。3万5千人の雇用を生んでいる。太陽光発電は日本についで2位。
太陽光株式会社も誕生し、ビジネスとしてじゅうぶんに成り立つ。この2年間はまさにノーラエブーム。温泉が出る日本では「地熱発電Jが最適ではというアドバイス。

  こうした政策を支えるのは、2000年にできた再生可能エネルギー法(前号参照)による。スペインやフランスにも同じ法律ができた。

 

[学校では]
  BUNDは、各学校に「7ヶ月でCOを21%減らそう」と呼びかけた。
子どもたちは節電や節水、缶飲料を飲まないなどの実践をCOに換算し、参加した子どもたちはみんなCO削減を達成することができた。
また省エネについてのハンドブックを作り、広めたところ、いろいろな自治体で光熱費や水道費を減らした学校にはその分の経費が半分返ってくるという取り組みも始まっている。

  2月に省エネ政令ができて、新築の建物は従来の30%、暖房エネルギーが少なくならなければいけない。省エネ対策をしようとエネルギーコンサルタント(省エネコンサルタント)に頼むと、半額は補助金が出る。
エコロジカル税制改革で、ガソリン税に加え、コジェネには税金を安くする、無硫黄ガソリンには税金を掛けないなど差別化している。「お金をどこに使うか」という言葉が印象的。

  前々から気になっていた「DSDの袋には半分ぐらい他のものも混入している、と聞いているがどうなのか」
という私の質問に対しては、「マークの判別は無理、悪いのはDSDに加盟しない業者であって、
本来ならマークのない包材は企業に返さないといけないがそれはなかなかできないので、袋に入れるのは仕方がない。」との回答だった。

  南ドイツは中小のビールエ場などがあり、昔からジユースが定着している。
リユースはおそらく80%以上。
それに比べ北ドインは大企業が多く、使い捨ての傾向も強い、国レベルのリユース率が下がったのは、北ドイツが原因だと思われる。

  98年からドイツの政権は社会民主党と緑の党で、この間エネルギー政策は大きく進展したが、9月の総選挙で保守政権になる可能性が高く、環境政策が後退するのではないかと懸念されている。


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