ごみっと・SUN 31号
環境のまちづくり 『ドイツ・フライブルグ』 前編

ごみ・環境ビジョン21 

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  FoE Japanが企画したツアーに参加して、7月 2日から9日までドイツのフライブルク市を訪れました。
  フライブルクといえば、その廃棄物政策やBUND(ドイツ環境自然保護連盟)のアクションに触発されて発足したごみかんにとっては、国分寺に次ぐ第二の故郷? 前々から一度は行ってみたいと思っていました。
  廃棄物政策だけでなく自然エネルギーから有機農業、ホームステイ…と盛りだくさんの行程を
2回に分けてご紹介します。

 

自転車専用道と容器包装の詰まったDSD袋

  フランクフルト空港で今回のエコツアーの道案内人兼通訳、「ごみっと・SUN」のコラムでお馴染みの田口理穂さんと初対面。列車に乗り込んでフライブルクへ。
  改札口がない(日本のローカルな駅とは違う意味で)ので、いつの間にか通りに出ると、路上には自転車の絵があって、そこは自転車専用道になっています。
  主要な道路にはほとんどこの自転車専用道があって、車に遠慮しないで走ることができて、
自転車愛好家の私にはうらやましい限りです。

 ホテルまでの3、4分の道のりにはスーパーなどもあり、ごみ箱が複数点在、その傍らにはDSDの黄色い袋*1がまとまって出されていて、大きな紙容器から空き缶、プラスチックの袋まで、あらゆる容器包材が詰まっているのをすかさずウオッチングしました。

*1 DSDの黄色い袋
写真では黄色が薄くなりました

  包装廃棄物政令(91〜93年、段階的に発効)により包装材に関連する企業にその回収とリサイクルを義務付けた。
業界は共同でDSD社を設立、D社は包装材を回収する代わりに、商品に緑のマークを表示、マークの使用料金を各企業から集める。
  住民はマークの付いた包装材を黄色い袋に入れて、自宅の前に出し、D社が回収する。

 

太陽光パネルと木材チップ暖房のエコ・ホテル

  私たちが滞在したホテル「ビクトリア」は、2000年に「世界一環境に優しいホテル」に選ばれたというお墨付きの「エコホテル」です。
  1875年に祖父が創業、17年前、現オーナーになってから、朝食用のジャムやバター、各部屋の石鹸、シャンプーなどの個別包装を全廃したことにより、ごみは半減。洗剤も環境に配慮したものに替えたそうです。

  洗面所には「タオルが掛かっている場合はもう一度使いますという印。取り替えて欲しい場合は床に落としてください.。環境のためにご協力を」という札が置かれています。
  省エネランプはもちろん、センサーによって人が廊下に出ると点灯するなど、心憎いまでに細やかな省エネ対策を試みています。
  屋根一面に設置された太陽光パネルは2000年に、約50万ユーロかけて設置したということですが、同年施行した「再生エネルギー法」*2 のおかげで、採算は取れるとのことでした。

*2 「再生エネルギー法」
  91年の電力買取法で自然エネルギーの電力会社による買取が義務付けられ、2000年の再生可能エネルギー法で、普及のためにさらに高い価格での買取が義務付けられる。
02年には電力会社も脱原発法に合意。

  北海道より北に位置するドイツにとって、暖房の熱供給源はエネルギー問題の大きな比重を占めています。ビクトリアホテルでは、間伐材のチップをプレス、直径5oほどの細い棒状にして、燃やしています。

  旅行者の私たちにうれしいサービスは「レギオカルテ」*3を宿泊客に貸してくれることでした。
この券のおかげで、バスや市電などの公共交通機関を利用して、かなり遠くの見学地へも無料で行くことができました。
  マイカーの市街地への乗り入れ規制、公共交通への誘導が心有る事業者によっても支えられていることを実感しました。
「環境対策をお客さんには気づかせないように配慮するのがサービス」というオーナーの言葉には脱帽です。

  それに引き換え、数ヶ月前に宿泊した国内のホテルには、スリッパ用の紙製抗菌カバーまであって、愕然としました。
ああ!日本版エコホテルへの道は遠し。

*3 「レギオカルテ」
  フライブルク市及び周辺2,300kmの地域内でほとんどすべての公共交通(列車、バス、路面電車)に使用できる地域定期券。

 

ノー包装、マイバッグで、美しい市場やマーケット

  朝市やエコ市では、みんなが布袋や籠を手に手に買い物を楽しんでいます。店の人が袋を受け取り、色とりどりの野菜を詰め込む様子は、なんともおおらかな光景です。
  立ち寄ったスーパーでは、果物や野菜などのハカリのそばに小さな袋が置いてありました。
エコ・スーパーではその袋を回収する箱まであって、袋を再利用するようになっています。

  牛乳やジュースなどは、かなりびん入りが多く売られています。飲み終わったびんをリターナブルびん返却機に入れると、レシートが出るデポジット式。レジでお金と交換します。
  我が国でも動きの出たきたレジ袋は有料のところが多く、絵葉書などちょっとしたみやげ物を買ってもノー包装。
  ただ残念なことに、ペットボトルは意外に多く、ドイツではリユースペットも使われていますが、
ワンウェイの方が多いのでは?というぐらい並んでいました。

 

ワ イ ン ま つ り

  W杯で優勝すればビール飲み放題かも、という野望は逸したものの、何のことはない「ワインまつり」で大いに盛り上がりました。10時頃まで明るいフライブルクの夜、今が最もいい季節。
  仕事と活動に明け暮れる日本に戻りたくない!アルコール大好きのごみかんのメンバーへの
土産用に購入したワインも無包装まま手渡されました。

フライブルク市
  人口20万人 面積103km
  三分の一が森、ドイツ南西部「黒い森」のふもとに位置する中世の趣を残した学園都市。
  72年の原発建設反対運動をきっかけに市民と行政が環境保護運動に取り組むようになり、
  92年「環境首都」に選ばれた。


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